音楽プロデューサーでドラマーのmabanuaが、曲終わりのフェードアウトとカットアウトの秘密に迫った。
mabanuaがリモートで登場したのはJ-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。ここでは12月1日(水)にオンエアした内容をテキストで紹介する。
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mabanuaは日本人プロデューサー、ドラマー、リミキサーとして、Chara、米津玄師、星野 源、Official髭男dismなどの楽曲を手掛けながら、CM楽曲や映画、ドラマ、アニメの劇伴も担当。またToro y Moi、Madlib、Thundercatなど海外アーティストと多数共演を果たす。さらに、Shingo Suzuki、関口シンゴとのバンド・Ovallのメンバーとしても活動中。
あっこゴリラ:そもそも楽曲がフェードアウトで終わるのってどんな理由があるんですか?
mabanua:その理由はおそらくふたつあると思います。ひとつは終わり方が分からないから、そのまま音を小さくしていっちゃおうというアーティスト側の都合。もうひとつは音楽的に見て、リスナーからもアーティスト目線からも曲が終わってほしくないのでエンドレスな感じを醸し出せることかなと思います。
Little Eva『The Loco-Motion』
mabanua:この曲がフェードアウトの元祖か分からないけど、僕が知る限りはたぶんこの曲あたりから始まったんじゃないかなと思います。これは1962年の曲。アメリカのR&Bシンガーで最後はフレーズがループして終わっていきます。“Loco-Motion”っていわゆる動いていくって意味だからその通り動き続けて消えていくみたいな曲との意味合いもあるのかなって。
あっこゴリラ:めっちゃいい! これはおそらくみなさんが聴いたことある曲ですよね。確かにずっと広がり続けるというか動き続けるというメッセージとフェードアウトの効果が一致していますよね。
続いてmabanuaはCurtis Mayfieldの『Move On Up』を選曲した。
Curtis Mayfield『Move On Up』
mabanua:『The Loco-Motion』がシンプルなフェードアウトとして考えると、Curtis Mayfieldはフレーズをずっとリフレインさせていく感じ。タイトルが『Move On Up』なので、これも「動き続けるぜ」と演奏を延々とやっていく感じですかね。
あっこゴリラ:「このコンガは止まらねえよ」って感じで、止まっちゃったら『Move On Up』じゃないもん。1970年の楽曲ですね。
mabanua:たぶんこの時代の人たちってジャムセッションで曲を作っていることが多いんですけど、この手の人ってずっと演奏をやってるんですよ(笑)。この曲は終われなくなってフェードアウトしようかって感じだと思います。
あっこゴリラ:モータウンのアーティストとかってフェードアウトがめっちゃ多そうですよね。
mabanua:この曲が収録されてるアルバムを聴くと、ほとんどフェードアウトなんです(笑)。
あっこゴリラ:そういう仕方なくフェードアウトにしたってことも含めていいですよね。
mabanua:パッションが優先だってことで、それもいいですよね。
フェードアウトが印象的な曲として最後にmabanuaはThe Beatlesの『Helter Skelter』をセレクトした。
mabanua:フェードアウトはフェードアウトなんですけど、一回去ったかと思ったらまた戻ってくるっていう。またフェードインして、最後にドンガラガッチャンって終わるんですけど、フェードアウトからまたフェードインしてくる特殊なエンディングの曲ですね。
あっこゴリラ:おそらくこの時代のThe Beatlesは実験的にこの曲をやったんでしょうね。
mabanua:一瞬、放送事故かと思いますよね(笑)。
あっこゴリラ:最高だな! この曲を初めて聴いたときは「おお!」ってなりましたよね。
mabanua:メンバーのひとりかプロデューサーの誰かが「終わり、終わり!」って終わらせてる感じがすごく出てると思いますね。
あっこゴリラ:これって何でだと思いますか?
mabanua:音楽的なところで言うと、たぶんギターソロとかキーボードソロでアウトロを引っ張るのがちょっと今は流行りじゃないのかなって。例えばEaglesの『HOTEL CALIFORNIA』みたいなフェードアウトの仕方は今の時代からすると主流じゃないのかなと思います。あと、どうしてもフェードアウト終わりってクサくなるので、クールにきめたい場合は(カットアウトのほうがきまるから)、最近の流行りではないのかなって。
あっこゴリラ:でも、最近の曲はパツって終わる曲が多いから、逆に伸ばしたいなって思っちゃってますけどね(笑)。
mabanua:最近はイントロも短くしてくれって流れがあるじゃないですか。だから曲の頭とお尻は付け足しみたいな。
あっこゴリラ:そういうのってサブスク時代だからってことも言われていますよね。だんだん曲の分数も短くなっているから。
mabanua:そうですよね。歌が終わったら次の曲、みたいな感じなんですかね。
あっこゴリラ:でもBGMとしてサブスクのプレイリストを流しているときはフェードアウトの曲があるといいんですよね。ブツって終わらないから。
mabanua:サビですごく盛り上がっているときにバツって切って、いきなり身ぐるみを剥がれちゃったみたいなカットアウトで終わる曲もありますよね。聴く人が「えっ、何?」みたいになる効果を狙っていることも結構多いと思います。
あっこゴリラ:確かにドキッとしますよね。
カットアウトが印象的な曲をmabanuaがセレクト。まずLimp Bizkitの『Just Like This』を紹介した。
Limp Bizkit『Just Like This』
mabanua:これは1999年の曲なのですが、終わり方が超カッコよくて。ロックバンドなのでひずんだギターでジャーンと終わるかと思ったら別曲をDJでつないだかのような、ちょっとおしゃれな終わり方をするんです。
あっこゴリラ:いいですね、これは!
mabanua:ロック少年だった僕からすると、頭を振ってたんだけど「あっ、おしゃれ」で終わる感じで(笑)。
mabanuaは続いて、Red Hot Chili Peppersの『Can't Stop』をセレクトした。
あっこゴリラ:すばらしい。『Can't Stop』でしかないですね。ずっと首を振ってる感をたゆまずに気持ちよく終われますよね。
mabanua:この曲みたいに終わりがボーカル残しっていちばん聴く側をゾクッとさせる効果があって、マニアックなんですけどたぶん歌い手のヘッドホンから漏れるシャカシャカって音がちょっと聴こえたりするんですよ。そういうの結構萌えちゃうんです(笑)。レコーディングブースの空気も感じさせるようないい終わり方なんですよね。
最後にあっこゴリラはリスナーからの「カッコいい理想の曲の終わり方は?」というメッセージを紹介した。
mabanua:キメで終われるのがいちばんミュージシャンとしてハードルが高いんですけどカッコいいんですよ。最後、ジャジャジャジャって終われると、ダサくなっちゃうんだけど裏返すとダサカッコいいと紙一重みたいなところがあって、それで終われたらいちばんいいかなって。
あっこゴリラ:それはカッコいいですよね。ライブだと、キメめた後にドゥクドゥン、バーンみたいな感じで終わることがあるじゃないですか。私はもともとドラマーなんですけど、それがやりたくなくて(笑)。
mabanua:マジですか。僕はドゥクドゥンだけできればあとはいいですって感じだったから。そこだけドラマーが支配権を握れるから、そこだけ俺に任せてくれって感じですね。
あっこゴリラ:こうやって曲の終わり方も注目して聴くとよりその曲が楽しくなると思います。
J-WAVE『SONAR MUSIC』は月曜~木曜の22:00-24:00にオンエア。
mabanuaがリモートで登場したのはJ-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。ここでは12月1日(水)にオンエアした内容をテキストで紹介する。
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フェードアウトで終わるよさとは
フェードアウトは音楽の音量がだんだん小さくなって曲が終わる効果であり、カットアウトは音楽がブツっと終わる効果である。最近ではカットアウトの曲が主流だそうで、その理由をmabanuaが解説した。mabanuaは日本人プロデューサー、ドラマー、リミキサーとして、Chara、米津玄師、星野 源、Official髭男dismなどの楽曲を手掛けながら、CM楽曲や映画、ドラマ、アニメの劇伴も担当。またToro y Moi、Madlib、Thundercatなど海外アーティストと多数共演を果たす。さらに、Shingo Suzuki、関口シンゴとのバンド・Ovallのメンバーとしても活動中。
あっこゴリラ:そもそも楽曲がフェードアウトで終わるのってどんな理由があるんですか?
mabanua:その理由はおそらくふたつあると思います。ひとつは終わり方が分からないから、そのまま音を小さくしていっちゃおうというアーティスト側の都合。もうひとつは音楽的に見て、リスナーからもアーティスト目線からも曲が終わってほしくないのでエンドレスな感じを醸し出せることかなと思います。
フェードアウトはパッション優先?
mabanuaはフェードアウトが印象的な楽曲として、Little Evaの『The Loco-Motion』を紹介した。Little Eva『The Loco-Motion』
mabanua:この曲がフェードアウトの元祖か分からないけど、僕が知る限りはたぶんこの曲あたりから始まったんじゃないかなと思います。これは1962年の曲。アメリカのR&Bシンガーで最後はフレーズがループして終わっていきます。“Loco-Motion”っていわゆる動いていくって意味だからその通り動き続けて消えていくみたいな曲との意味合いもあるのかなって。
あっこゴリラ:めっちゃいい! これはおそらくみなさんが聴いたことある曲ですよね。確かにずっと広がり続けるというか動き続けるというメッセージとフェードアウトの効果が一致していますよね。
続いてmabanuaはCurtis Mayfieldの『Move On Up』を選曲した。
Curtis Mayfield『Move On Up』
mabanua:『The Loco-Motion』がシンプルなフェードアウトとして考えると、Curtis Mayfieldはフレーズをずっとリフレインさせていく感じ。タイトルが『Move On Up』なので、これも「動き続けるぜ」と演奏を延々とやっていく感じですかね。
あっこゴリラ:「このコンガは止まらねえよ」って感じで、止まっちゃったら『Move On Up』じゃないもん。1970年の楽曲ですね。
mabanua:たぶんこの時代の人たちってジャムセッションで曲を作っていることが多いんですけど、この手の人ってずっと演奏をやってるんですよ(笑)。この曲は終われなくなってフェードアウトしようかって感じだと思います。
あっこゴリラ:モータウンのアーティストとかってフェードアウトがめっちゃ多そうですよね。
mabanua:この曲が収録されてるアルバムを聴くと、ほとんどフェードアウトなんです(笑)。
あっこゴリラ:そういう仕方なくフェードアウトにしたってことも含めていいですよね。
mabanua:パッションが優先だってことで、それもいいですよね。
フェードアウトが印象的な曲として最後にmabanuaはThe Beatlesの『Helter Skelter』をセレクトした。
あっこゴリラ:おそらくこの時代のThe Beatlesは実験的にこの曲をやったんでしょうね。
mabanua:一瞬、放送事故かと思いますよね(笑)。
あっこゴリラ:最高だな! この曲を初めて聴いたときは「おお!」ってなりましたよね。
mabanua:メンバーのひとりかプロデューサーの誰かが「終わり、終わり!」って終わらせてる感じがすごく出てると思いますね。
最近はなぜカットアウトが主流なのか
続いて、カットアウトで終わる曲をmabanuaが解説した。最近はフェードアウトの曲が激減し、カットアウトの曲が激増しているそうで、番組スタッフがJ-WAVEで放送中の『TOKIO HOT 100』にランクインした100曲の終わり方をリサーチすると、カットアウトで終わる曲が100曲中87曲あり、フェードアウトで終わる曲は13曲だった。あっこゴリラ:これって何でだと思いますか?
mabanua:音楽的なところで言うと、たぶんギターソロとかキーボードソロでアウトロを引っ張るのがちょっと今は流行りじゃないのかなって。例えばEaglesの『HOTEL CALIFORNIA』みたいなフェードアウトの仕方は今の時代からすると主流じゃないのかなと思います。あと、どうしてもフェードアウト終わりってクサくなるので、クールにきめたい場合は(カットアウトのほうがきまるから)、最近の流行りではないのかなって。
あっこゴリラ:でも、最近の曲はパツって終わる曲が多いから、逆に伸ばしたいなって思っちゃってますけどね(笑)。
mabanua:最近はイントロも短くしてくれって流れがあるじゃないですか。だから曲の頭とお尻は付け足しみたいな。
あっこゴリラ:そういうのってサブスク時代だからってことも言われていますよね。だんだん曲の分数も短くなっているから。
mabanua:そうですよね。歌が終わったら次の曲、みたいな感じなんですかね。
あっこゴリラ:でもBGMとしてサブスクのプレイリストを流しているときはフェードアウトの曲があるといいんですよね。ブツって終わらないから。
mabanuaセレクト カットアウトが印象的な曲
続けて「カットアウトの効果は?」とあっこゴリラがmabanuaに訊く。mabanua:サビですごく盛り上がっているときにバツって切って、いきなり身ぐるみを剥がれちゃったみたいなカットアウトで終わる曲もありますよね。聴く人が「えっ、何?」みたいになる効果を狙っていることも結構多いと思います。
あっこゴリラ:確かにドキッとしますよね。
カットアウトが印象的な曲をmabanuaがセレクト。まずLimp Bizkitの『Just Like This』を紹介した。
Limp Bizkit『Just Like This』
mabanua:これは1999年の曲なのですが、終わり方が超カッコよくて。ロックバンドなのでひずんだギターでジャーンと終わるかと思ったら別曲をDJでつないだかのような、ちょっとおしゃれな終わり方をするんです。
あっこゴリラ:いいですね、これは!
mabanua:ロック少年だった僕からすると、頭を振ってたんだけど「あっ、おしゃれ」で終わる感じで(笑)。
mabanuaは続いて、Red Hot Chili Peppersの『Can't Stop』をセレクトした。
mabanua:この曲みたいに終わりがボーカル残しっていちばん聴く側をゾクッとさせる効果があって、マニアックなんですけどたぶん歌い手のヘッドホンから漏れるシャカシャカって音がちょっと聴こえたりするんですよ。そういうの結構萌えちゃうんです(笑)。レコーディングブースの空気も感じさせるようないい終わり方なんですよね。
最後にあっこゴリラはリスナーからの「カッコいい理想の曲の終わり方は?」というメッセージを紹介した。
mabanua:キメで終われるのがいちばんミュージシャンとしてハードルが高いんですけどカッコいいんですよ。最後、ジャジャジャジャって終われると、ダサくなっちゃうんだけど裏返すとダサカッコいいと紙一重みたいなところがあって、それで終われたらいちばんいいかなって。
あっこゴリラ:それはカッコいいですよね。ライブだと、キメめた後にドゥクドゥン、バーンみたいな感じで終わることがあるじゃないですか。私はもともとドラマーなんですけど、それがやりたくなくて(笑)。
mabanua:マジですか。僕はドゥクドゥンだけできればあとはいいですって感じだったから。そこだけドラマーが支配権を握れるから、そこだけ俺に任せてくれって感じですね。
あっこゴリラ:こうやって曲の終わり方も注目して聴くとよりその曲が楽しくなると思います。
J-WAVE『SONAR MUSIC』は月曜~木曜の22:00-24:00にオンエア。
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