俳優の森山未來がスガ シカオと『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』の思い出を振り返った。
J-WAVEで放送中の『Mercedes-Benz THE EXPERIENCE』(ナビゲーター:スガ シカオ)。その時代、その場所で、どんな音楽を聴きたいか―――時代を越えて、国境を越えて、ナビゲーターのスガ シカオが旅好き・音楽好きのゲストと共に音楽談義を繰り広げる、空想型ドライブプログラムだ。
12月5日(日)の放送では、森山をゲストに招いて2人でトークを繰り広げた。
スガ:2012年ね。俺も選んでいこうと思います。最初はなにを聴きながら行きましょう?
森山:『Limited Addiction』、東京女子流ですね。
スガ:東京女子流にだいぶ入れ込んでるよね。
森山:確かにちょっと、ウィキペディアにはずっと「東京女子流が推し」って書かれていて。
スガ:(笑)。
森山:当初言っていたのがずっと書かれていて。
スガ:2012年はけっこうハマってたんだね。
森山:それこそ(主演した)『モテキ』が2011年に映画化されて、それの曲だったので。『モテキ』の映画が出たときの記念にMIX CDみたいなのが出て、そのなかに東京女子流が入ってたんです。
スガ:ちゃんと音楽としてまず好きになったんだ。
森山:「好きだなあ」と思っていたら、ゴールデン街のなかにアニソンとかアイドルソングばかりをかけている飲み屋が1軒あって。たまたま隣合わせた人が東京女子流のプロデューサーだったんです(笑)。
スガ:それは運命感じちゃうね(笑)。
森山:そこで盛り上がってしまって、たぶんそのときに買ってダウンロードしたのがこのアルバムでした。
森山:よく本当に『ヘドウィグ』の訳詞をやってくれましたよね。
スガ:俺は独立したばかりでなんの仕事もなかったのよ。
森山:独立したのが11年でしたっけ?
スガ:そう、11年の秋。なんにもやることなかったから、ひたすら訳詞をずっとやっていたんだよね。
森山:確かZeppかどこかのライブの観に行かせてもらって。そのあとの飲み会の席だったような気がするんですけど、ミュージカルの訳詞に関しての話みたいなのをスガさんと話した記憶があるんです。
スガ:「歌を歌わない人が訳すよりも、歌を歌う人が訳さないと絶対にいい伝わり方がしないんじゃないかと僕は思う」みたいなことを言われた記憶がある。
森山:そのころはもっと前の段階だったんです。あのころの記憶があったから(改めて)「ぜひやってもらいたい」という話をさせてもらったときに、まさかやってくれるとは思ってなくて。
スガ:あとにも先にああいう訳詞の仕事ってあの1本だけだと思うし、これからもたぶんないと思う。自分的にも訳詞で「こんなことが得られるだろうな」というのはあったんだけど、ものすごい大きい影響を受けちゃったんだよね。何回も『ヘドウィグ』のサントラを聴く、曲を聴くじゃない? そうこうするうちにそれが自分のルーツになっちゃうぐらい聴いちゃったの。だからあの仕事のあとにメチャクチャ『ヘドウィグ』のサントラのなかから出てくる音っぽいものが自分の曲のなかにすごく出てくる。だから俺に対して影響の大きい仕事だった。
森山:スラングもメチャクチャ多い歌詞だし……。
スガ:辞書調べてもさあ、載ってないわけよ。
森山:(笑)。
スガは仕方なくアメリカ人の友人に歌詞について尋ねたところ、あまりに過激な内容に友人は顔をしかめながら訳の内容を教えてくれたことを告白。そして訳詞が一番難しかったという『The Origin Of Love』を『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』のサウンドトラックからセレクトしてオンエア。
森山:かなうならば、あのときのスガさんから送られてきている(『The Origin Of Love』の)デモをまだ僕は持ってるから、あれをかけたいぐらいですね。
スガ:(笑)。デモを作らないとたぶんこれは歌えないだろうなと思って、難しすぎてね。
森山:もう、超スガ節で。
スガ:スガ節炸裂だったよね。
森山:あれは宝物ですよ。
森山:ヘドウィグというキャラクターがすごく地べたをはいつくばって生きているという設定は、西ドイツ、東ドイツ、日本であれ変わらなかったので。それこそ(スガが稽古を)見学に来てくれたときとかも、僕はずっと東京都内の公園を自転車で回ってたんですよ(笑)。
スガ:野宿してたってこと?
森山:テントを持って。
スガ:あのとき!?
森山:夏でしたね。自転車にヨガマットとテントだけ持って、稽古が終わったらその辺で寝るみたいなことをなぜかやってました。
スガ:すげえ! 俺ちょっと鳥肌立っちゃった。
森山:知らなかったですか?
スガ:知らないよ!
森山:(笑)。
スガ:初めて聞いたよそんな話!
森山:まあ、あんまり言うことでもないかなと思っていたから。あのころはそうだったんです。
スガ:そのあと、バンドリハみたいなのにも行って。そこで未來くんが出てきて歌をやって、俺は「こうやったほうが楽に歌える」みたいなぐらいのアドバイスをしつつ、そのときはまだ全然、まだびっくりしなかったんだよね。で、本番を観に行ったら、メチャクチャ……もう舞台にいるのが未來くんじゃないんだよ。
森山:もちろん稽古のときは衣装、メイクとかなにもないじゃないですか。やっぱりドラァグクイーンの人のルーツというのはメイクとかウィッグとか衣装とか、それが武装でもあって。
スガ:そういう歌もあったね。
森山:『Wig In A Box』じゃないですか?
スガ:そうだ! 俺もフルメイクして、衣装も全部着て出てきて本番で初めて観たときに「もう未來くんじゃない」って。声も未來くんじゃなかったし、なにもかも未來くんじゃなかったね。
森山:それこそライブじゃないですけど、稽古して出る要素だけじゃないというか。ドラァグクイーンとして舞台に立つという設定ではありますけど、だからこそ出てくる生っぽさでもあり、それがエネルギーでもあるみたいな。
スガ:ライブだしね。ミュージカルじゃなくてライブだから余計「演じてます」じゃないんだよね。
森山:それだと成立しないんだろうな、というのがありました。
スガ:レコーディングスタジオが借りられなくて。アコースティックギターとかを録るのに自分の家でマイクスタンドを立てて、その上に3枚ぐらい毛布かけて防音の部屋みたいなのを作って、そこでアコギを弾いて録ってたんだよね。
森山:スタジオを借りられないというのは?
スガ:予算がないから。インディーズで出したはいいけど、プロモーションもなにもないから売れるかどうかもわからないじゃない? だからとりあえず1枚目は予算をかけられないみたいになって。マネージャーもいなかったから。できる限りDIYで録った。
森山:予算ということでいうと、いままでのスガさんのキャリアで考えたら別にお金を出すことはきっとできたんだろうけど、そこをあえて選ばずに、せっかく独立したから、そういうことだったのかなって。
スガ:潤沢なお金があって独立した感じじゃなかったから。
森山:そうなんですね。悪い意味じゃなくてすごく空気感がヒリヒリしていたのを覚えてます。
スガ:ヒリヒリしてたね(笑)。なんかずっとピリピリしてたね、2012年のころは。これは確か『ヘドウィグ』の打ち上げで渡したんだ。
森山:そうだ! そうです。
その打ち上げには椎名林檎がいたのだそう。自分が訳詞を手がけたかった、と語るほど舞台を気に入っていたそうで、森山は「福岡とかまで来てくれました」と振り返った。
森山と伊藤沙莉が主演する映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』が現在公開中。その他の情報は公式サイトまで。
スガが空想ドライブをナビゲートする『Mercedes-Benz THE EXPERIENCE』のオンエアは、毎週日曜21時から。
J-WAVEで放送中の『Mercedes-Benz THE EXPERIENCE』(ナビゲーター:スガ シカオ)。その時代、その場所で、どんな音楽を聴きたいか―――時代を越えて、国境を越えて、ナビゲーターのスガ シカオが旅好き・音楽好きのゲストと共に音楽談義を繰り広げる、空想型ドライブプログラムだ。
12月5日(日)の放送では、森山をゲストに招いて2人でトークを繰り広げた。
『モテキ』の記念MIX CDに入っていた東京女子流の思い出
2012年に上演された舞台『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』では、森山が主演のヘドウィグ役、スガは楽曲の日本語訳詞を担当したこともあり、森山はこの日の空想ドライブのミュージックを2012年をキーワードにセレクトした。スガ:2012年ね。俺も選んでいこうと思います。最初はなにを聴きながら行きましょう?
森山:『Limited Addiction』、東京女子流ですね。
スガ:東京女子流にだいぶ入れ込んでるよね。
森山:確かにちょっと、ウィキペディアにはずっと「東京女子流が推し」って書かれていて。
スガ:(笑)。
森山:当初言っていたのがずっと書かれていて。
スガ:2012年はけっこうハマってたんだね。
森山:それこそ(主演した)『モテキ』が2011年に映画化されて、それの曲だったので。『モテキ』の映画が出たときの記念にMIX CDみたいなのが出て、そのなかに東京女子流が入ってたんです。
スガ:ちゃんと音楽としてまず好きになったんだ。
森山:「好きだなあ」と思っていたら、ゴールデン街のなかにアニソンとかアイドルソングばかりをかけている飲み屋が1軒あって。たまたま隣合わせた人が東京女子流のプロデューサーだったんです(笑)。
スガ:それは運命感じちゃうね(笑)。
森山:そこで盛り上がってしまって、たぶんそのときに買ってダウンロードしたのがこのアルバムでした。
スガに大きな影響を与えた『ヘドウィグ』の訳詞
スガは「Hi, Mercedes」と話しかけるだけで起動する対話型インフォテイメント・システム「MBUX」に『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』について尋ねた。MBUX:『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』は1997年にオフブロードウェイで上演され、ロングランを記録したミュージカルです。主人公のヘドウィグは旧東ドイツ生まれ。男性から女性に性転換手術をし、ロックシンガーとなり、さまざまな苦難に見舞われながらも、愛を求め生きていく姿が描かれています。2001年には原作者の1人、ジョン・キャメロン・ミッチェルの監督、脚本、主演によって映画化され、より多くの層にその存在が知られるようになりました。
森山:よく本当に『ヘドウィグ』の訳詞をやってくれましたよね。
スガ:俺は独立したばかりでなんの仕事もなかったのよ。
森山:独立したのが11年でしたっけ?
スガ:そう、11年の秋。なんにもやることなかったから、ひたすら訳詞をずっとやっていたんだよね。
森山:確かZeppかどこかのライブの観に行かせてもらって。そのあとの飲み会の席だったような気がするんですけど、ミュージカルの訳詞に関しての話みたいなのをスガさんと話した記憶があるんです。
スガ:「歌を歌わない人が訳すよりも、歌を歌う人が訳さないと絶対にいい伝わり方がしないんじゃないかと僕は思う」みたいなことを言われた記憶がある。
森山:そのころはもっと前の段階だったんです。あのころの記憶があったから(改めて)「ぜひやってもらいたい」という話をさせてもらったときに、まさかやってくれるとは思ってなくて。
スガ:あとにも先にああいう訳詞の仕事ってあの1本だけだと思うし、これからもたぶんないと思う。自分的にも訳詞で「こんなことが得られるだろうな」というのはあったんだけど、ものすごい大きい影響を受けちゃったんだよね。何回も『ヘドウィグ』のサントラを聴く、曲を聴くじゃない? そうこうするうちにそれが自分のルーツになっちゃうぐらい聴いちゃったの。だからあの仕事のあとにメチャクチャ『ヘドウィグ』のサントラのなかから出てくる音っぽいものが自分の曲のなかにすごく出てくる。だから俺に対して影響の大きい仕事だった。
森山:スラングもメチャクチャ多い歌詞だし……。
スガ:辞書調べてもさあ、載ってないわけよ。
森山:(笑)。
スガは仕方なくアメリカ人の友人に歌詞について尋ねたところ、あまりに過激な内容に友人は顔をしかめながら訳の内容を教えてくれたことを告白。そして訳詞が一番難しかったという『The Origin Of Love』を『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』のサウンドトラックからセレクトしてオンエア。
森山:かなうならば、あのときのスガさんから送られてきている(『The Origin Of Love』の)デモをまだ僕は持ってるから、あれをかけたいぐらいですね。
スガ:(笑)。デモを作らないとたぶんこれは歌えないだろうなと思って、難しすぎてね。
森山:もう、超スガ節で。
スガ:スガ節炸裂だったよね。
森山:あれは宝物ですよ。
役作りのために野宿
森山は『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』について、ナイトクラブ生まれという作品の成り立ちや、ジェンダーに悩むドラッグ・クイーンという設定、作品の舞台が共産主義体制下の東ドイツから2011年の東日本大震災が起きた日本に移り変わったことで役作りに苦労。そこで選んだ選択は「野宿をする」ということだった。森山:ヘドウィグというキャラクターがすごく地べたをはいつくばって生きているという設定は、西ドイツ、東ドイツ、日本であれ変わらなかったので。それこそ(スガが稽古を)見学に来てくれたときとかも、僕はずっと東京都内の公園を自転車で回ってたんですよ(笑)。
スガ:野宿してたってこと?
森山:テントを持って。
スガ:あのとき!?
森山:夏でしたね。自転車にヨガマットとテントだけ持って、稽古が終わったらその辺で寝るみたいなことをなぜかやってました。
スガ:すげえ! 俺ちょっと鳥肌立っちゃった。
森山:知らなかったですか?
スガ:知らないよ!
森山:(笑)。
スガ:初めて聞いたよそんな話!
森山:まあ、あんまり言うことでもないかなと思っていたから。あのころはそうだったんです。
スガ:そのあと、バンドリハみたいなのにも行って。そこで未來くんが出てきて歌をやって、俺は「こうやったほうが楽に歌える」みたいなぐらいのアドバイスをしつつ、そのときはまだ全然、まだびっくりしなかったんだよね。で、本番を観に行ったら、メチャクチャ……もう舞台にいるのが未來くんじゃないんだよ。
森山:もちろん稽古のときは衣装、メイクとかなにもないじゃないですか。やっぱりドラァグクイーンの人のルーツというのはメイクとかウィッグとか衣装とか、それが武装でもあって。
スガ:そういう歌もあったね。
森山:『Wig In A Box』じゃないですか?
スガ:そうだ! 俺もフルメイクして、衣装も全部着て出てきて本番で初めて観たときに「もう未來くんじゃない」って。声も未來くんじゃなかったし、なにもかも未來くんじゃなかったね。
森山:それこそライブじゃないですけど、稽古して出る要素だけじゃないというか。ドラァグクイーンとして舞台に立つという設定ではありますけど、だからこそ出てくる生っぽさでもあり、それがエネルギーでもあるみたいな。
スガ:ライブだしね。ミュージカルじゃなくてライブだから余計「演じてます」じゃないんだよね。
森山:それだと成立しないんだろうな、というのがありました。
打ち上げでの出来事
森山が最後のドライブミュージックに選んだのは、スガから直接をCDを受け取ったという曲『傷口』だった。スガが独立後のインディーズ時代に出したシングルで、曲作りには苦労があったという。スガ:レコーディングスタジオが借りられなくて。アコースティックギターとかを録るのに自分の家でマイクスタンドを立てて、その上に3枚ぐらい毛布かけて防音の部屋みたいなのを作って、そこでアコギを弾いて録ってたんだよね。
森山:スタジオを借りられないというのは?
スガ:予算がないから。インディーズで出したはいいけど、プロモーションもなにもないから売れるかどうかもわからないじゃない? だからとりあえず1枚目は予算をかけられないみたいになって。マネージャーもいなかったから。できる限りDIYで録った。
森山:予算ということでいうと、いままでのスガさんのキャリアで考えたら別にお金を出すことはきっとできたんだろうけど、そこをあえて選ばずに、せっかく独立したから、そういうことだったのかなって。
スガ:潤沢なお金があって独立した感じじゃなかったから。
森山:そうなんですね。悪い意味じゃなくてすごく空気感がヒリヒリしていたのを覚えてます。
スガ:ヒリヒリしてたね(笑)。なんかずっとピリピリしてたね、2012年のころは。これは確か『ヘドウィグ』の打ち上げで渡したんだ。
森山:そうだ! そうです。
その打ち上げには椎名林檎がいたのだそう。自分が訳詞を手がけたかった、と語るほど舞台を気に入っていたそうで、森山は「福岡とかまで来てくれました」と振り返った。
森山と伊藤沙莉が主演する映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』が現在公開中。その他の情報は公式サイトまで。
スガが空想ドライブをナビゲートする『Mercedes-Benz THE EXPERIENCE』のオンエアは、毎週日曜21時から。
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番組情報
- Mercedes-Benz THE EXPERIENCE
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