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松任谷由実は「いつも新米の船乗りでいたい」と…武部聡志が“1970年代前半の東京”をテーマに語る

松任谷由実は「いつも新米の船乗りでいたい」と…武部聡志が“1970年代前半の東京”をテーマに語る

作曲家/編曲家/音楽プロデューサーの武部聡志が、「1970年代前半の東京」をテーマに亀田誠治と音楽談議を繰り広げた。

武部が登場したのはJ-WAVEで放送中の『Mercedes-Benz THE EXPERIENCE』(ナビゲーター:亀田誠治)。その時代、その場所で、どんな音楽を聴きたいか──時代を越えて、国境を越えて、ナビゲーターの亀田誠治が旅好き・音楽好きのゲストとともに音楽談議を繰り広げる、空想型ドライブプログラムだ。ここでは12月3日(日)にオンエアした内容をテキストで紹介する。

松任谷由実の、時代の空気をまとったデビュー曲

今回、武部は空想ドライブのテーマとして「1970年代前半の東京」をセレクトした。

武部:自分の音楽の血や肉になっているベースをもう一度検証したいと思って。自分が中学時代、1970年代の東京の学校があった麻布周辺であったり、日比谷野音であったり、その辺りを旅してみたいなと。

そんな武部は空想ドライブミュージックの1曲目に荒井由実の『返事はいらない』を紹介した。



武部:1970年代前半というとユーミンがデビューした時期でもありまして、かまやつひろしさんのプロデュースによるシングルです。

亀田:初々しい声ですね。数あるユーミンさんの曲の中でこの曲を選んだわけは?

武部:今年、50周年のツアーをやって、彼女がやっぱりいつもMCで言うんですよね。いつも新米の船乗りでいたい、いつもフレッシュな気持ちでいたいって。ステージでデビュー曲はめったにやらないんですよ。なんだけど、この当時の音楽の匂いみたいなもの、それが当時のミュージシャンのサウンドが詰まってるので時代の空気をまとったデビュー曲だなって思っています。

亀田:今、武部さんはユーミンさんのツアーを何年やられてるんですか?

武部:出会ったのは1980年なんです。だから考えてみるとデビューから8年後。リアルタイムで聴いていたユーミンに出会って、まさか自分がバックで『中央フリーウェイ』や『雨のステイション』を弾くことになるとは思わないじゃないですか。最初に曲たちを聴いたときは本当に鳥肌が立つほどの感動で。その後、80年直後は僕は竹内まりやさんのほうに参加してたんです。そこから83年にユーミンのツアーの音楽監督というかたちで参加して、それ以来全てのツアーは参加しています。

はっぴいえんどで、日本のロックシーンは変わった

武部は2曲目にシカゴの『クエスチョンズ67/68』を紹介した。



武部:これは中学生の頃、夢中になって聴いたグループです。初来日の武道館公演に行って、本当に目の前で観て、これはすごいって。そのあとライブする度に毎回観に行きました。当時、ブラッド・スウェット・アンド・ティアーズとかシカゴとか、いわゆるロックがベースなんだけどちょっとジャズっぽい匂いであったり、そういうクロスオーバーしたサウンドが中学生ながらにすごく憧れて。譜面なんてないですから耳コピしてピアノで全部弾けるようにコピーしたんですよ。だからライブとか観に行くと自分が全部コピーした曲だから本当に興奮しますね。

亀田:ピアノをパートをコピーするんじゃなくて、他のパートのおいしいところも自分のピアノの弾き語りに全部取り入れていくと。もうここからプロデューサーとかアレンジャーが始まってるじゃないですか。そういう音楽が届いてくる環境がお家にあったんですか。

武部:71、72年はいろんなアーティストが来日したんです。シカゴもブラッド・スウェット・アンド・ティアーズも、グランド・ファンク・レイルロード、レッド・ツェッペリン、フリーとか全て観に行きました。

亀田:全て観に行くって、お金持ちのお家だったんですか?

武部:理解があったんでしょうね。そういうコンサートに行かせてくれる。

続いて、武部は3曲目にはっぴいえんどの『風をあつめて』をセレクトした。



武部:やっぱり1970代前半を語る上では、このバンドがいたからこそ日本のロックシーンは変わったんではないのかって。そのパイオニアであるグループですね。はっぴいえんどは歌ってるボーカリストによって曲のタイトルが変わりますよね。だから(鈴木)茂さんがボーカルの曲であったり、大滝(詠一)さんがボーカルのときであったり。『風をあつめて』は細野(晴臣)さんがリードボーカルですけど、やっぱり根底には松本 隆さんの歌詞っていう。この歌詞の世界、日本語にのせたロックを実験的にやられてましたから、どの曲も面白い歌詞が多いんですよね。

亀田:ちょっと都会的でもあり煙に巻かれてる感じもあるし。

武部:ストレートじゃないんですよね。

亀田:何を比喩にしてるのかって考えたりとか。でも口ずさむと気持ちよかったりして。

武部:この曲は今でもイベントとかでいろんなアーティストが集まったときに、一緒にセッションしてできる曲ですよね。それくらい今でも歌い継がれてるっていうのが素晴らしいですよね。

サディスティック・ミカ・バンドの衝撃

武部は当時、はっぴいえんど、荒井由実の他に、サディスティック・ミカ・バンドの音楽も衝撃を受けたと振り返る。

武部:この3アーティストを聴いたからこそ、自分も音楽をやろうという気になったと思うんですよね。

そんな武部は最後の空想ドライブミュージックにサディスティック・ミカ・バンドの『ダンス・ハ・スンダ』をセレクトした。



武部:このバンドを聴いたから日本のバンドでも外国で勝負できるみたいな。素晴らしいミュージシャンが集まったグループで、これはファーストアルバム『SADISTIC MIKA BAND』のナンバーです。

武部:この曲がいいのは、加藤和彦さんが主線を歌っていて、小原 礼さんがハモってるツインボーカルなんですね。僕はこれを日比谷野音で観て。そのときは2枚目のアルバム『黒船』というアルバムを出す直前だったと思うんです。『黒船』に収録されたナンバーもそのときやってました。野音で観た姿が、とにかく他のロックバンドってわりと汚い格好をしてたんですけど、アメリカのカントリーの影響なのか。そういうものの影響だと思うんですけどいわゆるチェックのシャツみたいなのを着たり、ジーンズでっていうのが多かった中で、サディスティック・ミカ・バンドだけはすごいスタイリッシュで、いわゆるブリティッシュロックのラメのジャケットを着て、細い革のパンツを履いて、ものすごく華やかでした。

『ジブリをうたう』アレンジで心がけたこと

プロデュースしたスタジオジブリのトリビュートアルバム『ジブリをうたう』が発売中だ。くるりの岸田 繁、松下洸平、幾田りら、満島ひかり、木村カエラなど豪華アーティストが参加している。

武部:このキャリアになると若いアーティストたちとどうやって交わっていこうかとか、これまでの日本の名曲をどうやって歌い継いでいけばいいかとか、そういう役割をになってきたんだなって思うと、自分でそういうものを企画したりプランを立ててプレゼンテーションして、アーティストを口説いて。そういうことって自分のためにもなるし、きっとお客さんも喜んでくれるんじゃないかなって。これは2、3年がかりで作りました。

亀田:ジブリのオリジナル曲ってみんな映画を何回も観て、リピートして聴いていて誰もが知っているみんなの曲だと思うんですよ。このアルバムはめちゃくちゃチャレンジングな仕事じゃないですか。

武部:原曲を聴いたときに、原曲を上回ろうと思って勝負してもダメだと思ったの。そうじゃなくて新しい息吹を加えるか、アーティスト寄りに作った方がいいなと思いました。だから楽曲はすごくスタンダードナンバーだけど、参加してくれるアーティストの音楽のバックボーンとかを考えながら、それぞれのアーティストのマッチングといいアレンジを考えようと思って作りました。

来年3月27日(水)には『ジブリをうたう』のアルバム参加アーティストらが集う一夜限りのスペシャルコンサート「武部聡志プロデュース 『ジブリをうたう』 コンサート」が東京国際フォーラム ホールAで開催される。

武部聡志の最新情報は、ハーフトーンミュージックグループの公式サイトまで。

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2023年12月10日28時59分まで

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番組情報
Mercedes-Benz THE EXPERIENCE
毎週日曜
21:00-21:54