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「寂しい」「いっぱい食べちゃう」を抑える、簡単な行動は? 脳科学者の中野信子が解説

「寂しい」「いっぱい食べちゃう」を抑える、簡単な行動は? 脳科学者の中野信子が解説

脳科学者の中野信子と藤原しおりが、J-WAVEで対談。「寂しさ」を感じるメカニズムと、その解決法にせまった。

ふたりがトークしたのは、J-WAVEの番組『HITACHI BUTSURYU TOMOLAB. ~TOMORROW LABORATORY』。オンエアは11月6(土)。 同番組はラジオを「ラボ」に見立て、藤原しおりがチーフとしてお届けしている。「SDGs」「環境問題」などの社会問題を「私たちそれぞれの身近にある困りごと」にかみ砕き、未来を明るくするヒントを研究。知識やアイデア、行動力を持って人生を切り拓いてきた有識者をラボの仲間「フェロー」として迎えて、解決へのアクションへと結ぶ“ハブ”を目指す。

寂しさには「セロトニン」が関わっている

中野は東京都出身の脳科学者、医学博士、認知科学者。9月には最新著書『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』(アスコム)を上梓した。

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そんな中野は、脳科学的な「寂しさ」には脳内の神経伝達物質「セロトニン」が関わっていると説明。「なにかがおかしい」「寂しさが原因なんじゃないか」と自己分析し、調べてみると「セロトニンの分泌が減っていた」というケースがしばしば起こるのだという。しかし「寂しい」の感じ方は人によって違う。

中野:人それぞれの「内的モデル」という、人間関係のひな型になるような対応の仕方が、かなり小さいときにできるんですね。できたときに、人との付き合い方が薄い人と、普通の人と、それから濃すぎる人というのが出てきちゃうんです。濃すぎる人は、そばに誰かがずっといてくれないと不安で寂しくなりやすいタイプ。ひとりでいることに耐えられないタイプの人はけっこうな割合でいるんです。たぶん2割ぐらいいるだろうと考えられています。常に人がいないとつらい、という状況の人って仕事どころじゃなくて、自分のしんどさをなんとかしたいがために、あらゆる物事を使うことになっちゃうので、それはやっぱり適切な状態とは言いにくい。本人が一番つらいですよね。それをなんとかするために「こういうメカニズムがありますよ」と調べられてはきたんだけれども、「セロトニンですよ」と一言で言っちゃうと、わりと救われないですよね。
藤原:「全部が本当にセロトニンなのかな?」って思っちゃいますよね。

幸福ホルモン「オキシトシン」は人との関わりが少ないと減る

中野はセロトニンと、もうひとつ重要な物質として「オキシトシン」が関わっていると説明。

中野:「人肌恋しい」と言ったりしますが、「人肌恋しい」の感覚ってオキシトシンをもうちょっと出したいなとか、そういうことに近いのかなという感じ。「肌」がなかなかキーワードとして面白くて、スキンシップでオキシトシンが分泌されたり、温かいものに触れたり、誰かに名前で呼ばれたりすると分泌されるので。それだけでほっとしたりしますよね。
藤原:オキシトシンは、セロトニンとは違う、幸福を感じる物質なんですか?
中野:そうですね。オキシトシンは幸せホルモンと呼ばれたりします。成長ホルモンと同じような役割を果たしていて、傷が早く治るとか組織を成長させる役割を果たす物質なんですが、これが人とのインタラクション(相互作用)が少ないときに減ってしまうんです。一説によれば免疫力とも関係あるよという話もあるので、これがなかなか分泌されなくなってくると「ちょっとしんどいな」という感覚があり、それも「寂しい」に含まれるかもしれないですね。
藤原:食べ物の栄養素と一緒で「1つの栄養ばかり摂るんじゃなくて、違う栄養も摂っておかないといけないよ」みたいなことなんですかね?
中野:そうですね。栄養だけを与えていても脳って育たないんですよね。オキシトシンが成長ホルモンの役割を果たし、スキンシップや愛情を与えることで体も脳も育っていくので。愛情が栄養みたいなところがあるんです、人間って不思議なことに。
藤原:深いですね! 科学で証明されているのかもしれないけれど、非科学的というか。
中野:境界領域みたいな話ですよね。

なんか寂しい…そんなときは日光を浴びよう

続いては「寂しさと季節の関係」について。季節の変わり目、特に秋はうつ病になりやすい季節として注意が必要で、気温の変化はもちろん日照時間が減ることで、日光を浴びることでできるセロトニンの生成量が減ってしまうことも要因だと、精神科医の片田珠美がWEBメディアのインタビューで解説している。中野も日を浴びることの重要性を説いた。

中野:日照が足りないことによってセロトニンが減っちゃうんです。日照時間の少ない国や地域でうつ病になる人が多いという相関が出ているんですよね。「ちょっと寂しいな」と思ったときや、気分が落ち込んでどうにもならないと思ったときに「もしかして」と日照を疑うのもやってほしいなと思います。
藤原:新しい気づきです。秋から冬にかけての特定の季節にのみ症状が出て、春や夏になると収まるサイクルを繰り返す「季節性うつ」があるんだと初めて知りました。「あれ、もしかして私かも?」って思っちゃうところがあって。
中野:当てはまります?
藤原:めちゃくちゃ当てはまります。9月後半ぐらいからガクッと。「あれ? 前まで朝ジョギングしたり、ひとりでいてもまったく平気だったのに、なんか寂しいぞ」とか。あと、めっちゃ食欲が出ちゃうんです。それって「食欲の秋」ってもんじゃない、それをはるかに超えた「ちょっとおかしい、お腹を満たしたい以上に食べてないか?」みたいな症状が出てきて、一体なんだろうと思っていたんですよね。
中野:セロトニンには食欲を適度に抑えてくれる役割もあるので、セロトニンが足りなくなると、それだけでいっぱい食べちゃうことが起こります。目安としては「お腹がいっぱいなのに食べたい」という気持ちが起きちゃうところですね。お腹がいっぱいで気持ち悪いんだけど、心の空洞を埋めるために食べるみたいなことをやっちゃってるときは、セロトニンが足りないバロメーターになるので、気を付けてみてください。
藤原:予防法はなにかあるんですか?
中野:日光を浴びる、特に朝日を浴びるのが大事です。朝カーテンを開けて、できればヒジぐらいまで出して15分ぐらい外を散歩してみてほしいんですよね。
藤原:私、半そでで出る! できるだけ肌を出してセロトニンを増やしたい。日焼けを気にして隠している人たちも多いですけど、やっぱりセロトニンを増やすためには出したほうがいいんですね。
中野:皮膚と目をね。明るいところに出て、日光の当たっているところで目にも光の刺激を入れるのはとても大事です。もうひとつ言うのであれば、セロトニンは合成されて15時間後にメラトニンという物質に変わるんです。このメラトニンは入眠に必要な、睡眠導入に必要な物質で、「自然に眠くなる」という現象が起きているとき、メラトニンが生成されて眠くなっているんです。セロトニンがうまく合成されていないと眠れないんですよ。眠れずに2時3時になって頑張って寝て、朝起きてもだるい、いまは運動するどころじゃない、と悪循環になっちゃうことがあります。その悪循環を断ち切るためにも、朝は日光を浴びることをぜひやってほしいなと思います。
藤原:日光を浴びるのはタダですからね!

体を温めるのも有効。「自分を大事にする」意識で

「寂しいと感じると体温が下がる」という説があり、精神の安定には体を温めることが大切と言われている。脳には島皮質(とうひしつ)という部分がある。ここは、体と心に温かさを感じたときに反応するため、体の温かさと心の温かさを混同しやすいのだそうだ。これを中野は「脳のバグのようなもの」と笑う。

中野:温泉に入ってみようとか、寝具を少し柔らかい上質なものを使おうとか、そういう工夫ができると思います。自分にもっと優しく、自分を甘やかすのではなく、自分を大事にするトレーニングのきっかけになります。
藤原:「寂しい」を解決しようとしたときに、自分に目を向ければ向けるほど、どんどんひとりの時間が増えて、余計寂しさにつながるんじゃないかと不安に思っている人もいると思うんです。
中野:確かにそうだね。
藤原:「寂しい」イコール「人と一緒にいないから」、「ひとりでいるから」と直結してしまう思考を持つ人はたくさんいると思うし、私もそのひとりだったりします。その前に、自分を大切にする、自分が喜ぶことをする、それでいいんだという、灯台下暗しというか、そんな近くのことからでいいんだって思いました。
中野:自分を大事にする練習を一緒にやっていけるといいなと思います。

J-WAVE『HITACHI BUTSURYU TOMOLAB. ~TOMORROW LABORATORY』は毎週土曜20時から20時54分にオンエア。

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2021年11月13日28時59分まで

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番組情報
HITACHI BUTSURYU TOMOLAB.〜TOMORROW LABORATORY
毎週土曜
20:00-20:54