音楽プロデューサーでベーシストの亀田誠治が、「日比谷公園大音楽堂」や、2023年6月3日(土)と4日(日)に開催の「日比谷音楽祭」の魅力を藤原しおりと語り合った。
亀田が登場したのは、藤原しおりが「チーフ」としてナビゲートする、ラジオを「ラボ」に見立てたJ-WAVEの番組『LOGISTEED TOMOLAB. TOMORROW LABORATORY』(通称トモラボ)。「私たちの身近にある森羅万象」をテーマ(イシュー)に取り上げてかみ砕き、ラボの仲間としてゲストを「フェロー」として迎え、未来を明るくするヒントを研究している。
ここで紹介するオンエアは5月20日(土)。
藤原:亀田さんにとって日比谷公園の思い出はなにかありますか?
亀田:野音周りの実行委員長をやる前から日比谷公園が好きで。日本のセントラルパークに見えるの。都会の真ん中にあって、野音のようなコンサートができる場所がある。日比谷の街って演劇や映画館、劇場とかいっぱいあるじゃないですか。「お、これブロードウェイじゃん」みたいな。ちょっぴり小粒でかわいらしいんだけど、日本のセントラルパークという感覚で。僕はニューヨークで生まれたんだけど、自分のDNAのなかに日比谷公園という都会のオアシスみたいなものを受け入れてしまう。そういうDNAが深く根付いているんじゃないかと思います。
藤原:昔とリンクする部分があるというか、反応している部分があるんでしょうね。
亀田:あると思います。あとは景色が好きで。野音のときに僕らはミュージシャンとしてもステージに立つんですけど、ビルと青空、木々が見えて、そこに向かってステージ上から音を鳴らすこの感覚はたまらないんです。
藤原:その気持ちよさみたいなものは理解できるというか。私も日比谷は東京の中の好きな場所で、すがすがしさというか、歩道も車道も広いし。
亀田:“抜け感”がいいよね。
藤原:そこで音楽をやる側も聴く側も気持ちいいんだろうな、というのはなんとなく感じます。
亀田:いわゆる公園って人々の心を癒す場所であったり、都会のなかにある自然であったり。人の心を柔らかくしてくれるというか、リラックスさせてくれるミッションが公園にはあるような気がしていて。そういうなかで音楽があったりとか、さまざまな人との出会いがあったりみたいな。人間が豊かに暮らしていくなかで欠くことのできない場所なんじゃないかなと思います。
亀田の野音の思い出は少年時代にさかのぼるという。亀田が現地を訪れる前には、キャンディーズが「普通の女の子になりたい」と解散宣言をしたり、学生運動の集会が開かれたりと、多様な出来事が起きていて、それに衝撃を受けたそうだ。
亀田:なんでも受け入れているなという。その自由な場所というイメージが、自分がステージに立つまではありました。
藤原:確かに、ロックな場所というか(笑)。
亀田:あと僕が覚えているのは、ジョン・レノンが亡くなったときに追悼集会も野音でおこなわれているんです。これは僕が携わっている100周年記念事業のホームページのトップ画面にも出てきて「こんなこともあったんだ」と。
藤原:「楽しい」みたいなことと「悲しい」みたいなこと全部、みんななぜか野音を選ぶんだ。
亀田:その振れ幅がロックみたいな(笑)。
亀田:いろいろな新人さんたちが出るフェス形式のライブで野音のステージに立ったときに、もうね、青空が目の前に見えて。お客さんの顔が全員手に取るように見えるの。
藤原:そういう風に見えるんだ。
亀田:その距離感の近さ。あとは自分がポーンと弾いたベースの音がドラムの音と一緒になって、空に向かって飛んでいくような。実際に青空が見えて、もっと言うと空に向かって飛んでいくというよりも、その先の宇宙にまで自分の音が飛んでいくんじゃないか、みたいな。「あんたは大物になるよ」みたいに肯定してくれる、野音ってそういう空気がある気がしました。
藤原:ほかの野外のステージもきっと経験されていると思いますけど、野外ということだけが理由じゃないんでしょうね。
亀田:たぶん東京の空であったり、キャパ3000人のちょっとコンパクトな大きさであったり、ビルが見えて木立が見えてみたいなことだったりとか。あとは時間の変化。昼間から夕焼けになって、夕焼けから夜の景色になって真っ暗になっていく景色とかも、たまらないんです。あとはキメのバラードね。
藤原:キメ?
亀田:これでみんなが泣くような、感動的な涙腺崩壊のバラードのピアノイントロが始まった瞬間に「ピーポーピーポー」みたいなのも聞こえて、これも野音なんです。もうなにが起こるかわからない、これが魅力です。
藤原:予定通りにならない感じもいいんですね。そこに来られたお客さんもうれしいでしょうね。
亀田:野音にいると「それもまた人生」という言葉がピッタリ当てはまるような気がします。
亀田:J-POPに新しい刺激がほしくて始めて、年のうち1カ月ぐらい渡米するようになって。そのうちに自分の生まれ故郷でもあるニューヨークに毎年夏に通うようになって。そこで1日3本ミュージカルを観たりとか、当時はイチロー選手もニューヨークにいたりしたので野球の試合を観に行ったりして。とにかくアメリカの活発なエネルギーや文化をめいっぱい吸収したい気持ちで、50歳のおっさんが少年に戻ったような気持ちで通っていくなかで、ニューヨークのセントラルパークでお散歩していたら風に乗って音楽が聴こえてくるんです。
藤原:へー!
亀田:気持ちがよくて。公園の通路にたくさんの人が行列を作って並んでいて「これはなにをやっているんだ?」と訊いたら、セントラルパークではひと夏毎日フリーコンサートがおこなわれていると。その整理券のために並んでいるわけですよ。ピクニックバスケットとかも広げちゃって、サンドイッチとワインとかを飲んでいる若者もいれば、手をつないでいるかわいらしい老夫婦が並んでいたりとか。人種も言葉もいろいろ混じっているニューヨークのなかで音楽を聴くために公園で気ままに1日をすごして、自分の目当てのアーティストのフリーライブを観るってすごく豊かだなと思って。こういうことをちょっと忘れていたなと思って。「J-POPに新しい刺激を得るために自分はコライトするんだ」とか、すごく肩に力が入ってニューヨークに行っていたんですけど、そうじゃないところに音楽の役目があるんじゃないのかなと思って。
亀田:まず受け皿としてのひな型に、ジャンルというカテゴリーを設けない。それよりもトップアーティスト、もしくは魅力のある最高の腕と実力とスキルとハートのあるアーティストから音楽を伝えていくという。そういう風にどれだけ純度の高い想いや文化が届けられるか。それを届けることのできるアーティストを東京の都会の真ん中に集めて無料でやれば、絶対に届いていくという確信があります。
さらに亀田はコロナ禍で「不要不急」と言われた音楽を応援したいとも語った。
亀田:欧米を持ち上げるわけじゃないですけど、欧米に比べて日本は文化とかアーティストとか、芸術文化に関しての認知度がどうも高くない。優先順位があとにくるのがどうしても気になっていて。そういうなかで、実は文化や芸術が人の心の気づきになっていたり、健康な精神を育むための心の種になっていたりします。コロナ禍で「ソーシャルディスタンス」という言葉がありましたけど、僕がもっと気になっていたのは、SNSで心無い言葉が飛び交っていたり、どこかとどこかの国同士の仲が悪くなったり、「マインドディスタンス」のほうが問題じゃないのかなと思って。音楽や文化は、人の心の距離にスッと波動や粒子のように入り込んでいって、つないでいったり共感したり埋めていくことができる。なのでメッセージ性というよりも、音楽やアートそのものの存在が人の心に及ぼしてくれる癒しやパワー、エナジーを大事にしたくて。それをトップアーティストの手から直で渡したいというのが「日比谷音楽祭」の理念です。
「日比谷音楽祭 2023」の詳細は、公式サイトまで。
J-WAVE『LOGISTEED TOMOLAB. TOMORROW LABORATORY』は毎週土曜20時から20時54分にオンエア。
亀田が登場したのは、藤原しおりが「チーフ」としてナビゲートする、ラジオを「ラボ」に見立てたJ-WAVEの番組『LOGISTEED TOMOLAB. TOMORROW LABORATORY』(通称トモラボ)。「私たちの身近にある森羅万象」をテーマ(イシュー)に取り上げてかみ砕き、ラボの仲間としてゲストを「フェロー」として迎え、未来を明るくするヒントを研究している。
ここで紹介するオンエアは5月20日(土)。
日本のセントラルパーク
亀田は2019年より開催している、親子孫3世代がジャンルを超えて音楽体験を楽しめるフリーイベント「日比谷音楽祭」の実行委員長を務めるなど、さまざまな形で音楽のすばらしさを伝えている。2023年には開設100周年を迎える野音の記念事業の実行委員長にも就任した。藤原:亀田さんにとって日比谷公園の思い出はなにかありますか?
亀田:野音周りの実行委員長をやる前から日比谷公園が好きで。日本のセントラルパークに見えるの。都会の真ん中にあって、野音のようなコンサートができる場所がある。日比谷の街って演劇や映画館、劇場とかいっぱいあるじゃないですか。「お、これブロードウェイじゃん」みたいな。ちょっぴり小粒でかわいらしいんだけど、日本のセントラルパークという感覚で。僕はニューヨークで生まれたんだけど、自分のDNAのなかに日比谷公園という都会のオアシスみたいなものを受け入れてしまう。そういうDNAが深く根付いているんじゃないかと思います。
藤原:昔とリンクする部分があるというか、反応している部分があるんでしょうね。
亀田:あると思います。あとは景色が好きで。野音のときに僕らはミュージシャンとしてもステージに立つんですけど、ビルと青空、木々が見えて、そこに向かってステージ上から音を鳴らすこの感覚はたまらないんです。
藤原:その気持ちよさみたいなものは理解できるというか。私も日比谷は東京の中の好きな場所で、すがすがしさというか、歩道も車道も広いし。
亀田:“抜け感”がいいよね。
藤原:そこで音楽をやる側も聴く側も気持ちいいんだろうな、というのはなんとなく感じます。
亀田:いわゆる公園って人々の心を癒す場所であったり、都会のなかにある自然であったり。人の心を柔らかくしてくれるというか、リラックスさせてくれるミッションが公園にはあるような気がしていて。そういうなかで音楽があったりとか、さまざまな人との出会いがあったりみたいな。人間が豊かに暮らしていくなかで欠くことのできない場所なんじゃないかなと思います。
亀田の野音の思い出は少年時代にさかのぼるという。亀田が現地を訪れる前には、キャンディーズが「普通の女の子になりたい」と解散宣言をしたり、学生運動の集会が開かれたりと、多様な出来事が起きていて、それに衝撃を受けたそうだ。
亀田:なんでも受け入れているなという。その自由な場所というイメージが、自分がステージに立つまではありました。
藤原:確かに、ロックな場所というか(笑)。
亀田:あと僕が覚えているのは、ジョン・レノンが亡くなったときに追悼集会も野音でおこなわれているんです。これは僕が携わっている100周年記念事業のホームページのトップ画面にも出てきて「こんなこともあったんだ」と。
藤原:「楽しい」みたいなことと「悲しい」みたいなこと全部、みんななぜか野音を選ぶんだ。
亀田:その振れ幅がロックみたいな(笑)。
音が宇宙まで飛んでいくような感覚
亀田が野音のステージに立ったのは30代のころで、当時自分がアレンジ、プロデュースをしたデビュー直後の椎名林檎のサポートアーティストとしてだった。亀田:いろいろな新人さんたちが出るフェス形式のライブで野音のステージに立ったときに、もうね、青空が目の前に見えて。お客さんの顔が全員手に取るように見えるの。
藤原:そういう風に見えるんだ。
亀田:その距離感の近さ。あとは自分がポーンと弾いたベースの音がドラムの音と一緒になって、空に向かって飛んでいくような。実際に青空が見えて、もっと言うと空に向かって飛んでいくというよりも、その先の宇宙にまで自分の音が飛んでいくんじゃないか、みたいな。「あんたは大物になるよ」みたいに肯定してくれる、野音ってそういう空気がある気がしました。
藤原:ほかの野外のステージもきっと経験されていると思いますけど、野外ということだけが理由じゃないんでしょうね。
亀田:たぶん東京の空であったり、キャパ3000人のちょっとコンパクトな大きさであったり、ビルが見えて木立が見えてみたいなことだったりとか。あとは時間の変化。昼間から夕焼けになって、夕焼けから夜の景色になって真っ暗になっていく景色とかも、たまらないんです。あとはキメのバラードね。
藤原:キメ?
亀田:これでみんなが泣くような、感動的な涙腺崩壊のバラードのピアノイントロが始まった瞬間に「ピーポーピーポー」みたいなのも聞こえて、これも野音なんです。もうなにが起こるかわからない、これが魅力です。
藤原:予定通りにならない感じもいいんですね。そこに来られたお客さんもうれしいでしょうね。
亀田:野音にいると「それもまた人生」という言葉がピッタリ当てはまるような気がします。
セントラルパークのフリーコンサートを日本で
2023年6月3日(土)、4日(日)に開催される「日比谷音楽祭」について話を聞く。50代になって楽曲制作のためにニューヨークを訪ねるようになったことが開催のきっかけになったという。亀田:J-POPに新しい刺激がほしくて始めて、年のうち1カ月ぐらい渡米するようになって。そのうちに自分の生まれ故郷でもあるニューヨークに毎年夏に通うようになって。そこで1日3本ミュージカルを観たりとか、当時はイチロー選手もニューヨークにいたりしたので野球の試合を観に行ったりして。とにかくアメリカの活発なエネルギーや文化をめいっぱい吸収したい気持ちで、50歳のおっさんが少年に戻ったような気持ちで通っていくなかで、ニューヨークのセントラルパークでお散歩していたら風に乗って音楽が聴こえてくるんです。
藤原:へー!
亀田:気持ちがよくて。公園の通路にたくさんの人が行列を作って並んでいて「これはなにをやっているんだ?」と訊いたら、セントラルパークではひと夏毎日フリーコンサートがおこなわれていると。その整理券のために並んでいるわけですよ。ピクニックバスケットとかも広げちゃって、サンドイッチとワインとかを飲んでいる若者もいれば、手をつないでいるかわいらしい老夫婦が並んでいたりとか。人種も言葉もいろいろ混じっているニューヨークのなかで音楽を聴くために公園で気ままに1日をすごして、自分の目当てのアーティストのフリーライブを観るってすごく豊かだなと思って。こういうことをちょっと忘れていたなと思って。「J-POPに新しい刺激を得るために自分はコライトするんだ」とか、すごく肩に力が入ってニューヨークに行っていたんですけど、そうじゃないところに音楽の役目があるんじゃないのかなと思って。
日比谷音楽祭の魅力
亀田は「日比谷音楽祭」の特徴はボーダレスなところだとして魅力を解説した。亀田:まず受け皿としてのひな型に、ジャンルというカテゴリーを設けない。それよりもトップアーティスト、もしくは魅力のある最高の腕と実力とスキルとハートのあるアーティストから音楽を伝えていくという。そういう風にどれだけ純度の高い想いや文化が届けられるか。それを届けることのできるアーティストを東京の都会の真ん中に集めて無料でやれば、絶対に届いていくという確信があります。
さらに亀田はコロナ禍で「不要不急」と言われた音楽を応援したいとも語った。
亀田:欧米を持ち上げるわけじゃないですけど、欧米に比べて日本は文化とかアーティストとか、芸術文化に関しての認知度がどうも高くない。優先順位があとにくるのがどうしても気になっていて。そういうなかで、実は文化や芸術が人の心の気づきになっていたり、健康な精神を育むための心の種になっていたりします。コロナ禍で「ソーシャルディスタンス」という言葉がありましたけど、僕がもっと気になっていたのは、SNSで心無い言葉が飛び交っていたり、どこかとどこかの国同士の仲が悪くなったり、「マインドディスタンス」のほうが問題じゃないのかなと思って。音楽や文化は、人の心の距離にスッと波動や粒子のように入り込んでいって、つないでいったり共感したり埋めていくことができる。なのでメッセージ性というよりも、音楽やアートそのものの存在が人の心に及ぼしてくれる癒しやパワー、エナジーを大事にしたくて。それをトップアーティストの手から直で渡したいというのが「日比谷音楽祭」の理念です。
「日比谷音楽祭 2023」の詳細は、公式サイトまで。
J-WAVE『LOGISTEED TOMOLAB. TOMORROW LABORATORY』は毎週土曜20時から20時54分にオンエア。
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