音楽、映画、エンタメ「ここだけの話」
ミッツ・マングローブが「新宿の夜」に思うこと…街の歴史や人の変化を、藤原しおりと紐解く

ミッツ・マングローブが「新宿の夜」に思うこと…街の歴史や人の変化を、藤原しおりと紐解く

ミッツ・マングローブと藤原しおりが、新宿の町とその歴史について語り合った。

2人がトークを展開したのは、J-WAVEの番組『HITACHI BUTSURYU TOMOLAB. ~TOMORROW LABORATORY』。オンエアは12月10日(土)。

同番組はラジオを「ラボ」に見立て、藤原しおりがチーフとしてお届けしている。「SDGs」「環境問題」などの社会問題を「私たちそれぞれの身近にある困りごと」にかみ砕き、未来を明るくするヒントを研究。知識やアイデア、行動力を持って人生を切り拓いてきた有識者をラボの仲間「フェロー」として迎えて、解決へのアクションへと結ぶ“ハブ”を目指す。

ミッツが過ごしてきた街・新宿

新宿近辺の歴史について、伊藤賀一の著書『歴史と地理がいっきにわかる東京23区大全+多摩・島しょ地域39市町村』(SBクリエイティブ)から一部抜粋、編集して紹介しよう。

時代は明治に入り、1923年に発生した関東大震災からの復興以降、交通網の発達により、新宿駅周辺は百貨店、映画館、劇場、カフェなどがひしめき、四谷や神楽坂に変わる繁華街として急速に変貌を遂げた。しかし大戦中の空襲によって新宿区の大半は焼け野原になり、人口は戦前のおよそ40万人から5分の1のおよそ8万人に激減し、新宿は大きく変わることになった。

戦後、昭和20年(1945年)に「光は新宿より」というキャッチコピーを掲げた新宿マーケットが新宿通り沿いに開かれ、新宿駅周辺には多くの闇市が誕生。闇市自体は4、5年で急速に消えていったものの「新宿を新東京のもっとも健全な場所に」という目標を掲げて、現在の歌舞伎町一丁目付近に、歌舞伎の演舞場を建設しようという動きから、新しい街の名前は「歌舞伎町」と名付けられた。しかしこの計画は頓挫してしまい、新宿コマ劇場や多くの飲食店、サウナなどが目立つようになり、日本屈指の盛り場・歌舞伎町が誕生した。

ミッツ:新宿マーケットは私も初めて聞きました。それが起点になって今の新宿通りのあの雰囲気ができたのかなって。

藤原:正直、東京に来てからも、新宿は意外とピンポイントでしか訪れてなくて。「お笑いライブをよくする場所」としてライブ会場にはよく行っていたんですけど、「あの場所にはどの道をいけば、あそことあそこがつながるのかな?」という感じで、新宿というイメージがすごく「点」なんです。

ミッツ:基本的には3本しか道がなくて。甲州街道、新宿通り、靖国通り。新宿区は広いですけど、新宿周辺だけでとらえるとね。あの3本がほぼ並行線上に走っていて、それを交差する形で明治通り、それで四谷側に外苑西通りと東通りがあるという風に、碁盤の目でとらえると意外とわかりやすいんです。

藤原:ミッツさんは新宿にはどれくらいいらっしゃるんですか。

ミッツ:住んでから20年経ってないかな。出入りするようになったのは20歳前ぐらいからなので、25年以上ですね。

藤原:ミッツさんはもともと横浜ご出身ですが、新宿に20年住むにいたるまでに、ほかの区にも住んだりされました?

ミッツ:世田谷区に一瞬だけ住んだことがあって。ほぼ新宿二丁目とかその近辺で仕事をしていたんですけど、横浜から通っていて。不便は不便だし時間もかかるので、とにかく都内に住もうと思って実家を出て。でもいきなり新宿に住んじゃうと、こういう仕事柄、オンとオフがつけにくくなるし、100パーセントどっぷり新宿にずっといるのもどうなんだろうと思って。要はちょっと怖かったんです。いきなりそこに飛び込むというか、そこの住人になるというのがね。なので横浜と新宿のあいだをとって、世田谷の用賀というところに住んでました。だけど「そんな無駄なことはやめよう」って、すぐ新宿に(笑)。なんだったんだろうな、あの世田谷の2年間は。

ミッツは「新宿って雑多。いろいろなタイプの人間がいる」と話す。

ミッツ:人種もそうだし職業もそうだし、生活環境や経済レベルみたいなのも、本当にいろいろな人がいるので、そのなかにまぎれているのが自分には都合がよくてね。悪目立ちしなくて済むというか。

新宿の街はどう変わった?

新宿の再整備について、「乗りものニュース」の枝久保達也さんのコラムから一部抜粋、編集、再構成して紹介。

新宿駅周辺の再整備が動き出したのは2017年。駅、駅前広場、駅ビルなどが有機的に一体化した「新宿グランドターミナル」の構想が策定され、2046年の完了を目標とした事業計画が決定した。この計画の一環として、小田急電鉄と東京メトロは2020年9月、東京再生特別地区都市計画を発表。2040年をめどに小田急百貨店の入る小田急ビルと、新宿地下鉄ビルディングを建て替え、地上48階、高さおよそ260メートルの超高層ビルを建設すると発表した。また、京王電鉄とJR東日本も2022年4月、2040年代までに京王百貨店の周辺を建て替える構想を発表している。

【関連記事】新宿駅西口は「滞在時間が短い」という課題が…大規模再開発でどう変わる?

ミッツ:2046年となると20年ちょい……。まだ生きてるか。

藤原:生きてますって(笑)。新しい新宿の姿も「変わったなあ」と見ているかもしれないですよね。

ミッツ:そうね、使いこなす年齢ではなくなってるかもしれないけど、変わっていって「変わったね」は見届けられるのかな。でも一番変わったのは、新宿髙島屋が南口にあるじゃないですか、あの一帯ってかつては全部貨物線路だったんです。新宿駅があって代々木側のほうに進むと、横にブワーッと貨物のターミナルがあって、何十本も線路が並んでいるっていう。その新宿貨物駅を廃止して、あそこの跡地を再開発して髙島屋やタイムズスクエアを作ったというのが1990年代の大きな出来事のひとつではありましたよね。

藤原:街が変わっても新宿にいる人たちの種類とか空気感はあまり変わらないんですか?

ミッツ:私の父親はずっと新宿伊勢丹が仕事場だったんです。だから昼間の新宿で働いていた人。私は夜になると新宿に出てくる人種。そこにいる人たちが変わるので、それぞれの景色はあるとは思います。歓楽街の部分はそんなに変わってない。だけど歌舞伎町は実際にコマ劇場が今のTOHOシネマズになったりとか、ちょこちょこと変わりながら、ふと見ると「あ、あのビルなくなってる」「ここ、こんなのになったんだ」とかね。そういうのはあるけれども、私のなかではそんなに大きくドーンと急激に景色が変わったのは、髙島屋以来ないんだよね。

「夜主体」の人間として思うこと

子どもたちを取り巻く状況について、産経新聞の記事から一部抜粋、編集、再構成して紹介。

東京で唯一の24時間体制の認可保育園、生後43日から就学前までの子どもに対応する「エイビイシイ保育園」が新宿区の大久保にある。園長の片野清美さんはこの地域に生きる親たちを応援し、子どもたちを30年以上見守り続けている。

ミッツ:歌舞伎町とかで夜働いている知り合いもけっこういて。ちょこちょこ子どもがいる人もいるので、たぶんそういう人たちが使っている保育園がこれなのか、こういったものがあの近辺にはほかにもあるのか。

藤原:働いている人たちにとって本当に必要なことですもんね。

ミッツ:私は夜主体の人間なので。保育所とかはまた別だけど、基本的には「夜はやってないんだ」というのをある程度覚悟はしないと、夜の住人にはなれないんです。夜に昼間と同じ利便性を求めるのは、土台無理な話。どっちがマジョリティ、マイノリティかといったら昼間のほうがメジャーなわけだから、そっちに人口が集中するし、労働力もそこのほうが強いわけだからね。夜はなにかしら不便になるという。その範囲のなかでやればいい話だしね。よく「不夜城」みたいなことを言うけど、私はちょっとおかしいと思っていて。夜はある程度暗くないと夜っぽくないし。そういう意味で新宿は本当に一番夜が明るい街ではあるんだけどね。

感謝をしながら住み続ける

『アンパンマン』の生みの親であり、新宿区の名誉区民でもあった、やなせたかしさんが2004年に防犯と防災のマスコットとして新宿区にプレゼントしたキャラクター「新宿シンちゃん」。新宿区の公式YouTubeチャンネルにある動画「新宿シンちゃんパトロール わるい大人に気をつけて」の再生回数は110万回を超えている。

新宿シンちゃんパトロール わるい大人に気をつけて

ミッツ:一時期「新宿浄化作戦」を掲げた人がいるんだけど、本当に浄化できるのかやってみるのもいいかなともちょっと思った。ただ、ならないと思うのよ。

藤原:それで変わるならとっくに変わってるかもよ? ということですよね。

ミッツ:どぶ板に白いペンキを塗っただけで、どぶはどぶじゃない?っていう、その意地が新宿にはあるんだよ。

藤原:そういう「いざとなったときに黙ってないわよ」みたいな底力を感じます。今日お話を聞いて、本当に一筋縄にはいかない、ひも解いていってもひも解くことができない街というか、研究が尽きない街だと思いました。

ミッツ:私はとにかく感謝をしながら住んでいます。「こんな私を受け入れて住まわせてくれて、どうもありがとう。しっかり働いて区民税を払います」って。

J-WAVE『HITACHI BUTSURYU TOMOLAB. ~TOMORROW LABORATORY』は毎週土曜20時から20時54分にオンエア。

この記事の続きを読むには、
以下から登録/ログインをしてください。

  • 新規登録簡単30
  • J-meアカウントでログイン
  • メールアドレスでログイン
番組情報
HITACHI BUTSURYU TOMOLAB.〜TOMORROW LABORATORY
毎週土曜
20:00-20:54