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石崎ひゅーい×松居大悟、コロナ禍で「表現活動を止められてしまう状態」に感じたこと

石崎ひゅーい×松居大悟、コロナ禍で「表現活動を止められてしまう状態」に感じたこと

劇団ゴジゲンの主宰で映画監督の松居大悟がナビゲートする、J-WAVEで放送中の『JUMP OVER』。ラジオ、映画、演劇、音楽などの枠を越えた企画を発信し続けている。

11月18日、25日(水)は、ゲストに石崎ひゅーいが出演。ふたりは友人であり、松居が石崎のMVを監督したり、同番組発の舞台『みみばしる』の音楽監督を石崎が務めたりと、仕事でも関わりがある。同番組のオープニングテーマも石崎が手がけたものだ。

【18日の記事】石崎ひゅーい、楽曲は「人と会うこと」で生まれる。松居大悟が訊く制作の話

ここでは、25日のオンエアから、映画『アンダードッグ』の主題歌でもある新曲『Flowers』の制作秘話を聞いた部分を紹介する。



光が当たらない人に光を当てるような物語に…胸に響いた監督の言葉

石崎は11月24日に新曲『Flowers』配信リリースした。

石崎ひゅーい『Flowers』

この曲は、森山未來、北村匠海、勝地 涼などが出演する武 正晴監督の映画『アンダードッグ』の主題歌に起用されている。11月27日(金)から公開中だ。

映画『アンダードッグ』予告編

映画『アンダードッグ』あらすじ

一度は手にしかけたチャンピオンへの道……そこからはずれた今も〝かませ犬(=アンダードッグ)〟としてリングに上がり、ボクシングにしがみつく日々をおくる崖っぷちボクサー・末永晃(森山未來)。幼い息子・太郎には父親としての背中すら見せてやることができず“かませ犬”から“負け犬”に。一抹のプライドも粉砕され、どん底を這いずる“夢みる”燃えカスとなった男は、宿命的な出会いを果たす。一人は、 “夢あふれる”若き天才ボクサー・大村龍太(北村匠海)。児童養護施設で晃と出会いボクシングに目覚めるが、過去に起こした事件によってボクサーとして期待された将来に暗い影を落とす。もう一人は、夢も笑いも半人前な “夢さがす”芸人ボクサー・宮木瞬(勝地涼)。大物俳優の二世タレントで、芸人としても鳴かず飛ばずの宮木は、自らの存在を証明するかのようにボクシングに挑む。三者三様の理由を持つ男たちが再起という名のリングに立つとき、飛び散るのは汗か、血か、涙か。
公式サイトより)

【関連記事】勝地涼が明かす森山未來との絆。ボクシングシーンでは小声で「痛い…」

石崎:映画『百円の恋』とかNetflixのドラマ『全裸監督』とか武監督の作品は観させてもらっていて、そんな中でオファーをいただきました。それまで武監督とはお会いしたことがなくて、映画のプロデューサーの佐藤 現さんが僕の音楽がこの映画に合うんじゃないかと言ってくれたみたいで、「自由に作ってほしい」というような感じでオファーをいただいた感じですね。
松居:そのときは映画の内容をどこまで知っていたの?
石崎:台本はもらった。その後に撮影現場に行かせてもらって、そのときに初めて武監督と会って。そこで話した言葉がすごく頭の中に残っていて、けっこうそれを頼りに曲を書いた感じで。
松居:現場では役者さんともやり取りをした?
石崎:森山未來さんとかに少しだけあいさつさせてもらって。ボクシングシーンは見られなかったんだけど、現場のボクシングジムを見させてもらった。本当のジムを貸し切って撮影したのかな。
松居:そのときに、武監督とどんな会話をしたの?
石崎:「普段、光を浴びないやつに、最後めちゃめちゃ光を当てるような物語にしたいんだ」みたいなことを言われていて、それがすごく胸に響いたというか。その言葉で一気に曲を想像できたといいうか。素敵な言葉をくれたんです。

石崎はこの映画に、こんな言葉を寄せている。

<自粛期間中、スーパーと家との往来の日々の中、ひび割れたコンクリートから不格好な姿で咲いてる花を見つけました。その姿が、まるでこの物語の登場人物達のようだと感じたんです。この歌は「僕」の歌じゃなくて「僕ら」の歌です。>

石崎:この曲は自分の歌じゃダメだなと思ったんだよね。映画自体も3人主役がいるような感じで、その3人がボクシングに向かっていくそれぞれの人間模様を描いていたし、自分というよりはみんなで並走しているような曲を書きたいなと思ったんですよね。
松居:「ひび割れたコンクリートから不格好な姿で咲いてる花」って、決して育ちやすい環境じゃないけれども、必死に光に伸びようとしている感じだよね。
石崎:コンクリートから咲いてる花って全然きれいじゃないけど、生きようとしている姿を言葉にしようかなと思ってたんだけどね。

外出自粛期間に制作。考えていたことは

石崎は『Flowers』の制作当時を振り返る。

石崎:この曲の制作を最後詰めていたのは、コロナ禍で状況が悪くなるときだったから、人からヒントをもらうクセのある俺としては、それがないわけ。だから大変な制作ではあったのよ。曲のかけらみたいなものはあったけど、その曲を詰めてた時期が外出自粛期間とかぶって、何にもないところから書かなくちゃいけないっていう状況になって。

石崎は撮影現場を見学した際に、プロデューサーから森山未來の映画のスチール写真をもらった。当時、その行為を不思議に思っていたが、その後、曲制作ではその写真があって助かったという。

石崎:その写真を机に置いて、それを見ながら曲を作ったりしてたな。
松居:難しいのは、今作っているけど、この映画が公開するときにどんな世の中になっているかわからなくって、歌っているのが正しいことじゃなくなるかもしれないって読めないのが怖いなと思って。
石崎:だからこそ、直接的にそういう表現はしないで、もっと大きく捉えられるような言葉選びをしてるはず。なんだけど、きっとそういうモヤモヤしている生活とか、困窮している社会からの脱却みたいな感じに聞こえる。それはどっちでも捉えられるような歌だといいなと思ってた。

曲作りの後、武監督からは「勇気をもらった」というコメントがあったそうだ。

石崎:映画の編集自体も(コロナ禍の不自由な時期にやっていたこともあって)、すごく勇気をもらったと言ってくれて。同じ表現者ではあるから、自分の意志とは裏腹なことで表現活動を止められてしまう状態だったじゃない。それって怖いじゃん。2011年の東日本大震災のときも同じようなことを感じたんだけど。
松居:俺も近いことを感じた。作品を作ることが正義なのか、作らないことが正義なのかって、わからなくなってきたよね。
石崎:そうそう。それとちょっと似ている感じもあったけど、俺たちは作ってなんぼだからってことがあって、そういうのが作品と監督の思いみたいなものと共鳴したのかなと思った。
松居:こういう世の中じゃなかったら、違う歌になっていたのかもしれないよね。
石崎:不幸中の幸いなのかもしれない。

石崎の新曲『Flowers』とともに、映画『アンダードッグ』もぜひチェックしてほしい。

また、石崎は12月25日(金)に東京・渋谷WWWで弾き語りワンマンライブ「世界中が敵だらけの今夜に」を開催する。その他の情報は、公式サイトまたは、オフィシャルTwitterまで。

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