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外国人労働者の受け入れ拡大における、日本語教育の問題点とは?

外国人労働者の受け入れ拡大における、日本語教育の問題点とは?

J-WAVEで放送中の番組『JAM THE WORLD』(ナビゲーター:グローバー)のワンコーナー「UP CLOSE」。11月12日(月)のオンエアでは、月曜日のニュース・スーパーバイザーを務める津田大介がお休みのため、ジャーナリストの堀 潤が登場。外国人労働者の受け入れ拡大における日本語教育に注目しました。


■外国人教育支援の不足と劣化

今国会で大きな焦点となっている「外国人労働者の受け入れ拡大」問題。政府は11月2日に閣議決定し、今国会中での成立を目指していますが、受け入れの規模などについては今後議論するとして、不明点が多い状況です。

こうしたなか、この日のオンエアでは、外国人の受け入れにともない必ず必要になる「日本語教育」の現状に注目。海外にルーツを持つ子どもたちに日本語教育の機会などを提供している「YSCグローバル・スクール」の責任者で、NPO法人青少年自立援助センターの田中宝紀(いき)さんにお話を伺いました。

田中さんには2年ほど前に、『JAM THE WORLD』で「言語難民」をテーマにお話いただき、言葉が分からずに教室で孤立してしまっている子どもたちが、教育機会を受けられずにいると問題提起をしてくれました。

:この2年で海外から日本にやってくる人が増えましたよね。
田中:今、公立の学校に在籍していて日本語が分からない子どもたちは、全国に4万3千人いると言われ、この10年で1.6倍くらい増えています。さらに、そのなかの1万人が何も支援を受けていない「言語難民」「言語教育難民」と言えるような状況にあります。
:2年前には何も支援を受けていない人は6千人くらいと言われていましたよね?
田中:当時は7千人弱くらいだったと思いますが、あっという間に増えてしまいました。

この2年ほどで、全く言語の支援を受けられていない子どもたち3、4千人も増えている現状に対し、堀は「この数年で彼らの受け皿の整備が進んでいないのでは?」と指摘します。

田中:基本的に体制整備があまり進まないなかで数が増えているので、支援の量と質としては劣化し、不足が進んでいる状況です。


■地域の担い手や受け入れ体制が崩壊?

海外からの労働者の数は現在で128万人を超え、今後さらに増えていくと言われています。そして政府は彼らの受け皿を拡大していこうとしています。この現状について田中さんはどのように考えているのでしょうか。

田中:これ以上、外国人労働者が増えた時に、支援も含めて誰が受け皿になるのか。地域の担い手や受け入れ体制が崩壊してしまうのではないかと不安な気持ちを持っています。まずは受け入れ体制の整備があって入口の議論が進むのであれば、ある程度の準備ができますが、そういった準備もままならないまま、まず先に受け入れることが議論されている状況に強い危機感を受けています。

以前、「YSCグローバル・スクール」を訪れた堀は、「10代半ばやそれより若い段階に母語を離れて、外国語圏で暮らして勉強をすることは本当に大変なことと感じた」と話します。

田中:耳で聴いて自然に外国語を覚えられる年齢は10歳くらいが限度だと言われています。その年齢を超えて日本にやってきた場合は、しっかり第2言語として文法などを含めて日本語を体系的に学んでいく必要があります。しかし、そういった受け入れ体制が未整備のまま子どもたちが年齢を重ねていくと、母語も伸びず、日本語も不十分な状況に陥ることも少なくありません。
:柱になる言語があると、外国語が苦手でも、相手とだけじゃなくて自分の心のなかでの会話もできますよね。
田中:自分の頭のなかで物事を考えるための言語を、何語であっても1本の柱として持っておかないと、思考が深まらなかったり、抽象的な概念が獲得できなかったりします。そうなると、アイデンティティなど難しい問題に直面したときに、考えが深められずに投げやりになってしまい、自分が誰なのか分からない苦しい状況に陥る子どもたちも少なくありません。


■共に生きていく社会をどうデザインしていくか

「言語難民」や「言語教育難民」といわれる子どもたちに対して、今後どのような対応が必要になってくるのでしょうか。

田中:これから外国人人材を必要とする地域の多くが、今現在、少子高齢化で産業の担い手不足に陥っています。若い人がおらず、外国人の子どもたちを支援する人たち自体も高齢化が進み、基盤が弱くなっている現状です。それを全て学校の先生に押しつけても、ノウハウがなかったり、忙しすぎるなどして時間的な余裕がありません。担い手不足は産業だけではなく、支援側にも起きているという認識のもと、若い人たちがいかにこの問題に携わっていけるかが重要です。例えば日本語教育の専門家の専門性をしっかり国が認知して、自治体が補助金を得て雇用しやすいようにしていく。その日本語教育の専門家が地域のなかで若い人たちを巻き込みながら、子どもたちをサポートしていき、未来に続いていく体制の整備を進める必要があると思います。
:今の国の議論を見ていると、社会保障の制度や在留資格の法整備などの問題提起は進んでいますが、教育関連についてはまだまだ議論が未成熟ではないかと感じます。
田中:今は入り口の議論に終始していると感じます。すでに日本には250万人以上の外国籍の中長期滞在者がいるので、彼らが抱えている問題の解決を先に進めていくべきかなと思います。彼らと私たちが共に生きていく社会をどうデザインしていくか、未来を見据えた議論が国民のみなさんを含めて広くしっかりおこなわれることが大切です。この問題は日本において非常に重要な転換点となるにも関わらず、中身のないまま数だけが増えていってしまい、現場のみなさんがとにかく混乱するのではないかと懸念しています。

「外国人労働者の受け入れ拡大」の問題は、未来の日本の問題として、私たち自身も見つめていくことが大切なのではないでしょうか。

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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld

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