J-WAVEで放送中の番組『JAM THE WORLD』(ナビゲーター:グローバー)のワンコーナー「UP CLOSE」。7月18日(水)のオンエアでは、水曜日のニュース・スーパーバイザーを務めるフォトジャーナリスト・安田菜津紀が登場。医師の働き方改革について考えました。
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■医師の労働時間、ほかの職業よりも多い傾向に
参議院本会議で成立した「働き方改革関連法案」。これ以上、残業してはいけないという上限を決め、違反に罰則を設けたものですが、医師への適用は5年先送りとなりました。患者の命を救う医師が、長時間労働のために命を落とすケースなども見られる医師の働き方は、どのような改革が必要なのでしょうか。
共同通信は18日、岐阜市民病院が、診療科別に月の残業時間の上限を100~120時間とする労使協定(36協定)を結んだと伝えました。同病院では昨年、医師の残業の上限を150時間としていたことが判明しましたが、新たな協定でも80時間などとされる過労死ラインを超えています。
医師の働き方をどのように捉えていけばよいのか。「医師の働き方改革に関する検討会」の構成員で、提言書「『壊れない医師・壊さない医療』を目指して」をまとめた、青葉アーバンクリニック医師の三島千明さんと一緒に考えました。
医師の勤務実態について「クリニックや病院などの勤務地や、科によって医師の勤務実態に差があり一概にはいえない」としながらも、「医師の資格保持者は全国で約30万人います。週60時間以上働く職業のうち、医師の労働時間は他の職業に比べ38パーセントと多いといわれている」と三島さんは話します。
病院勤務医の場合、女性よりも男性の方が労働時間が長く、年齢別でみると、研修医が多い20代が多いと説明しました。
■医師の職業観や倫理観による長時間労働
安田:(医師の長時間勤務は)医師不足も一因と考えられるのでしょうか。
三島:医師不足というよりは、現場で求められる医療に対して、供給側が足りていない状態はあると思います。ただ、それだけではなく、医師は「目の前の患者を救いたい」という志を持っているので、「勤務時間が終わったからすぐ帰ろう」とか「これで自分の診療は終わりだ」などの意識よりも、「患者がいたら患者の治療が終わるまで、そばについておこう」とか「治療をしなくてはいけない」など、患者中心の思いになりやすい。そういった医師の職業観や倫理観が長時間労働に影響を及ぼしていると思います。
安田:「長時間働いて当たり前」ということが、倫理的に受け継がれてしまった部分があるのではないのでしょうか。
三島:そこは非常に難しいところですね。若手医師や医学生のアンケートによると、現場からはジレンマや悩みが多く見られました。目の前で医療を必要とする患者に対して、そこに自分たちが携わらなくてはいけないし、それをするべきだと思う一方で、自分自身の健康やプライベートも大事にしたい。その間で現場の医師はすごく悩んでいるのではないかと思います。特に、若い世代の医師は、もっと経験を積んで自分の理想とするような、地域で役立つ医師になりたいので、そのために多くの患者の病気を見て、手術や処置をなるべく経験したいと考えています。例えば「労働時間が規制されることで、医師の経験が十分にできなくなるのではないか」との思いもあるため、一概に全ての医師が長時間労働をしたくないのではなく、その間で揺れているという現状です。
■注目される医師のタスクシェアリングとタスクシフティング
医師の長時間労働をなくすために、注目すべき取り組みはあるのでしょうか。
三島:病院や管理者が、働いている医師に対して個人任せにせず、「精神的な負担がないか」や「検診をちゃんと受けているか」など、既存の健康管理をする仕組みをもっと徹底する必要があるといわれています。また、新しい取り組みとして、タスクシェアリングとタスクシフティングが注目されています。
タスクシェアリングとは、ひとりの医師が全ての業務をおこなうのではなく、医師同士で診療などの業務を共用化していく考え方です。それによって、ひとりの医師の負担が減り、患者に安定した質の高い医療が提供できます。
またタスクシフティングとは、業務の移行・移管です。医師がおこなっている業務のなかで、患者さんと実際に話して診察・処置する時間よりも、診断書や紹介状など書類作成といった事務作業に加え、問診や採血など必ずしも医師でなくともできる作業が多くあります。地域、病院の現状に合わせて、医師の代わりにできる業務を、看護師や事務の方など、さまざまな職種の人と協力しておこなうという考え方です。
■医療を受ける側は、かかりつけ医を持つことが必要
安田:成立した「働き方改革関連法案」について、医師に関しては労働の上限に違反した場合の罰則適用が5年間先送りになりました。これについてどう捉えていますか。
三島:非常に難しい問題だと思っています。医師として地域に必要な地域医療をしっかりと維持していく必要もありますし、医師の健康管理をおこなうこと。これを両立するには、さまざまな課題があります。それを改善するためには、タスクシェアリングやタスクシフティングの仕組み作りなどが必要になるため、時間がかかる問題だと思います。
この問題を解決するために、医療を受ける側にできることは、「信頼できるかかりつけ医を持つ」ことだと三島さんは話します。
三島:患者さん側にできることとして、身近に信頼できるかかりつけ医を持つことが大事だと思います。というのも今、夜間の救急病院のコンビニ受診が問題になっています。本当に救急で受診されることは問題ないのですが、日中忙しいために夜に受診するといった自己都合で頻繁に受診する場合があります。その一方で、どの病院にかかればよいのか分からず、複数の病院の複数の科を受診してしまう場合もあります。これは患者さんに全て責任があるわけではありませんが、そういったときに、救急や専門の病院にかかってしまった場合、本当に必要な患者が適切にみてもらえなかったり、大きな病院の医師の忙しさに繋がってしまうことがあります。そのため、かかりつけ医を持つと、どの科に行っていいのかを相談し、病気の予防に努めることができます。また、検診を受けて健康管理ができたりなど、自分の健康を自分で考え、かかりつけ医とどこに行けばよいかを相談しながら決めるスタイルが、これからの限られた医療資源を守るために必要だと思います。
医師の働き方を見直すことで、私たちが受ける医療の質が向上するのかもしれません。
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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld
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■医師の労働時間、ほかの職業よりも多い傾向に
参議院本会議で成立した「働き方改革関連法案」。これ以上、残業してはいけないという上限を決め、違反に罰則を設けたものですが、医師への適用は5年先送りとなりました。患者の命を救う医師が、長時間労働のために命を落とすケースなども見られる医師の働き方は、どのような改革が必要なのでしょうか。
共同通信は18日、岐阜市民病院が、診療科別に月の残業時間の上限を100~120時間とする労使協定(36協定)を結んだと伝えました。同病院では昨年、医師の残業の上限を150時間としていたことが判明しましたが、新たな協定でも80時間などとされる過労死ラインを超えています。
医師の働き方をどのように捉えていけばよいのか。「医師の働き方改革に関する検討会」の構成員で、提言書「『壊れない医師・壊さない医療』を目指して」をまとめた、青葉アーバンクリニック医師の三島千明さんと一緒に考えました。
医師の勤務実態について「クリニックや病院などの勤務地や、科によって医師の勤務実態に差があり一概にはいえない」としながらも、「医師の資格保持者は全国で約30万人います。週60時間以上働く職業のうち、医師の労働時間は他の職業に比べ38パーセントと多いといわれている」と三島さんは話します。
病院勤務医の場合、女性よりも男性の方が労働時間が長く、年齢別でみると、研修医が多い20代が多いと説明しました。
■医師の職業観や倫理観による長時間労働
安田:(医師の長時間勤務は)医師不足も一因と考えられるのでしょうか。
三島:医師不足というよりは、現場で求められる医療に対して、供給側が足りていない状態はあると思います。ただ、それだけではなく、医師は「目の前の患者を救いたい」という志を持っているので、「勤務時間が終わったからすぐ帰ろう」とか「これで自分の診療は終わりだ」などの意識よりも、「患者がいたら患者の治療が終わるまで、そばについておこう」とか「治療をしなくてはいけない」など、患者中心の思いになりやすい。そういった医師の職業観や倫理観が長時間労働に影響を及ぼしていると思います。
安田:「長時間働いて当たり前」ということが、倫理的に受け継がれてしまった部分があるのではないのでしょうか。
三島:そこは非常に難しいところですね。若手医師や医学生のアンケートによると、現場からはジレンマや悩みが多く見られました。目の前で医療を必要とする患者に対して、そこに自分たちが携わらなくてはいけないし、それをするべきだと思う一方で、自分自身の健康やプライベートも大事にしたい。その間で現場の医師はすごく悩んでいるのではないかと思います。特に、若い世代の医師は、もっと経験を積んで自分の理想とするような、地域で役立つ医師になりたいので、そのために多くの患者の病気を見て、手術や処置をなるべく経験したいと考えています。例えば「労働時間が規制されることで、医師の経験が十分にできなくなるのではないか」との思いもあるため、一概に全ての医師が長時間労働をしたくないのではなく、その間で揺れているという現状です。
■注目される医師のタスクシェアリングとタスクシフティング
医師の長時間労働をなくすために、注目すべき取り組みはあるのでしょうか。
三島:病院や管理者が、働いている医師に対して個人任せにせず、「精神的な負担がないか」や「検診をちゃんと受けているか」など、既存の健康管理をする仕組みをもっと徹底する必要があるといわれています。また、新しい取り組みとして、タスクシェアリングとタスクシフティングが注目されています。
タスクシェアリングとは、ひとりの医師が全ての業務をおこなうのではなく、医師同士で診療などの業務を共用化していく考え方です。それによって、ひとりの医師の負担が減り、患者に安定した質の高い医療が提供できます。
またタスクシフティングとは、業務の移行・移管です。医師がおこなっている業務のなかで、患者さんと実際に話して診察・処置する時間よりも、診断書や紹介状など書類作成といった事務作業に加え、問診や採血など必ずしも医師でなくともできる作業が多くあります。地域、病院の現状に合わせて、医師の代わりにできる業務を、看護師や事務の方など、さまざまな職種の人と協力しておこなうという考え方です。
■医療を受ける側は、かかりつけ医を持つことが必要
安田:成立した「働き方改革関連法案」について、医師に関しては労働の上限に違反した場合の罰則適用が5年間先送りになりました。これについてどう捉えていますか。
三島:非常に難しい問題だと思っています。医師として地域に必要な地域医療をしっかりと維持していく必要もありますし、医師の健康管理をおこなうこと。これを両立するには、さまざまな課題があります。それを改善するためには、タスクシェアリングやタスクシフティングの仕組み作りなどが必要になるため、時間がかかる問題だと思います。
この問題を解決するために、医療を受ける側にできることは、「信頼できるかかりつけ医を持つ」ことだと三島さんは話します。
三島:患者さん側にできることとして、身近に信頼できるかかりつけ医を持つことが大事だと思います。というのも今、夜間の救急病院のコンビニ受診が問題になっています。本当に救急で受診されることは問題ないのですが、日中忙しいために夜に受診するといった自己都合で頻繁に受診する場合があります。その一方で、どの病院にかかればよいのか分からず、複数の病院の複数の科を受診してしまう場合もあります。これは患者さんに全て責任があるわけではありませんが、そういったときに、救急や専門の病院にかかってしまった場合、本当に必要な患者が適切にみてもらえなかったり、大きな病院の医師の忙しさに繋がってしまうことがあります。そのため、かかりつけ医を持つと、どの科に行っていいのかを相談し、病気の予防に努めることができます。また、検診を受けて健康管理ができたりなど、自分の健康を自分で考え、かかりつけ医とどこに行けばよいかを相談しながら決めるスタイルが、これからの限られた医療資源を守るために必要だと思います。
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