読書が人々に与える影響や、本を読む意義について、本と人を繋ぐ「読書室」主宰・三砂慶明さんが語った。
三砂さんが登場したのは、J-WAVE『KURASEEDS』(ナビゲーター:山中タイキ)。9月29日(木)までオンエアしていた。最終回の様子をテキストでお届けする。
三砂:私がおすすめしたいのは、本屋に行ってみること。近くに本屋がなければ、図書館やネット書店でもいいと思います。一周まわってみて、気になる本を1冊を買い、できれば目に見えるところに置いて、時間のあるときにめくっていただく。そうすると、芋づる式に次の本に繋がっていくんじゃないかなと思っています。本を読んだら、誰かに感想を語っていただきたいです。本の出会いを重ねると、きっとその人の人生がどこかで変わっていくんじゃないかなと思っています。
本は静的なイメージを持たれがちだが、人々に“変化”を与える存在だと三砂さんは解説する。読むだけでなく話すことで、自分が変わることを実感できるのでは、と語った。
三砂:ジャーナリストのアン・ウォームズリーが、カナダの刑務所で開かれた読書会を1年間取材したノンフィクションです。ウォームズリーという著者は、読書会に参加する前に強盗に襲われて死の脅威に晒されたという経験があったので、刑務所の読書会自体に否定的でした。ですが、囚人たちがどんな本を読んでどんな話し合いをしているのかという好奇心が勝ち、徐々にのめり込んでいくんです。なぜ彼らが収監されることになったのかという背景を知ることによって、囚人たちとの心の距離がどんどん縮まっていきます。ウォームズリー自身も本を愛する受刑者たちの言葉や姿勢に心を動かされて、読書会で読む本を真剣に選び始めるんです。
書籍では、読書によって囚人たちの行動が変化する様が描かれている。
三砂:囚人たちはどんなに難しい本、長い本でも読書会までに読み終えて参加してくれるんです。しかも、彼らは自分の人生を背負って発言してくれるんですよ。この本がすごく面白いなと思うのは、読書会に参加していた囚人たちが別の刑務所に移送されても、自分たちで新しい読書会を立ち上げたり読書の魅力を他の囚人たちに伝えようと四苦八苦する姿が描かれているところです。
佐藤:本を読んでその感想を言うことで「自分の場合はね」みたいに、自分の内側に入っていくドアの役割をしてくれるんですよね。いろんな本をみんなで読むことによって囚人の人たちの関係性が深まっていくのは、本がすごくいい媒介になっているってことがわかりますね。
山中:同じ1冊を読んでいるんだけども、みんな違った視点があるんですね。
三砂:向井先生自身は30数年にわたって読書会に参加されてきた経験がおありです。この本のすごいところは、本を読むことと人生について語り合う場が交差するときに化学反応が起こるってことを、自分の経験で書いておられることなんです。いろんな本と出会って、本を語ることで人生の“色”が変わるんですね。しばらく本と遠ざかっていた人にも、向井さんの稀有な人生を通じて、読書の魅力にもう1度出会い直すことができます。読むことで暮らしが豊かになるってことを実感させていただきました。
山中:『プリズン・ブック・クラブ コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年』が読書の魅力に気付かされる本であるとするならば、『読書会という幸福』は語ることで体験できるもの、さらに気付かせてくれるものが詰まっている本です。
三砂:前提として、読むことは私からすると呼吸するのと同じぐらい人間にとって大切なことじゃないかなと思っています。少なくともメソポタミアで文字が発明されてから、だいたい6000年ぐらい人間は文字を読んできました。なぜ文字を読むのか? 私たちは誰もが「自分が誰で・どこにいるのか」ということを少しでも知ろうとして、自分自身や自分を取り巻く社会そのものを“読んで”きました。
本に限らず、人は星、地形、ジェスチャー、音など、生きる上で読まざるを得ない生き物だと三砂さんは解説する。
三砂:読書が人を進化させてきたという研究結果があります。人間は読書をするとき、書かれている文章を飛び越えて自分だけの思考を展開し始めます。読書というものを通じて、考えることを培ってきました。本を読むことは、暮らしを豊かにする基本的な技術ではないかと思っています。
最後に山中は、リスナーにメッセージを送った。
山中:この番組がテーマにしてきた「暮らしが芽吹く」という言葉。今日よりもこの先がちょっといい日に、少しでも豊かになるようなヒントを届けられたらという思いがありました。みなさんの暮らしのなかで本も、1つの種になっていますでしょうか?
三砂さんが登場したのは、J-WAVE『KURASEEDS』(ナビゲーター:山中タイキ)。9月29日(木)までオンエアしていた。最終回の様子をテキストでお届けする。
本は“語ること”も大切
『KURASEEDS』最終回では、“暮らしのなかの読書”に注目した。本の魅力を再発見したり面白さを感じてもらえる企画を実施する「読書室」主宰・三砂慶明さんがゲストに登場。三砂さん自身も『千年の読書 人生を変える本との出会い』(誠文堂新光社)、『本屋という仕事』(世界思想社)といった、本の魅力を伝える書籍を発売している。まず、三砂さんから「本の楽しみ方」を聞いた。三砂:私がおすすめしたいのは、本屋に行ってみること。近くに本屋がなければ、図書館やネット書店でもいいと思います。一周まわってみて、気になる本を1冊を買い、できれば目に見えるところに置いて、時間のあるときにめくっていただく。そうすると、芋づる式に次の本に繋がっていくんじゃないかなと思っています。本を読んだら、誰かに感想を語っていただきたいです。本の出会いを重ねると、きっとその人の人生がどこかで変わっていくんじゃないかなと思っています。
本は静的なイメージを持たれがちだが、人々に“変化”を与える存在だと三砂さんは解説する。読むだけでなく話すことで、自分が変わることを実感できるのでは、と語った。
読書の習慣が囚人たちに変化をもたらす
三砂さんは「暮らしが豊かになる本」として、『プリズン・ブック・クラブ コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年』(紀伊國屋書店)を挙げた。三砂:ジャーナリストのアン・ウォームズリーが、カナダの刑務所で開かれた読書会を1年間取材したノンフィクションです。ウォームズリーという著者は、読書会に参加する前に強盗に襲われて死の脅威に晒されたという経験があったので、刑務所の読書会自体に否定的でした。ですが、囚人たちがどんな本を読んでどんな話し合いをしているのかという好奇心が勝ち、徐々にのめり込んでいくんです。なぜ彼らが収監されることになったのかという背景を知ることによって、囚人たちとの心の距離がどんどん縮まっていきます。ウォームズリー自身も本を愛する受刑者たちの言葉や姿勢に心を動かされて、読書会で読む本を真剣に選び始めるんです。
書籍では、読書によって囚人たちの行動が変化する様が描かれている。
三砂:囚人たちはどんなに難しい本、長い本でも読書会までに読み終えて参加してくれるんです。しかも、彼らは自分の人生を背負って発言してくれるんですよ。この本がすごく面白いなと思うのは、読書会に参加していた囚人たちが別の刑務所に移送されても、自分たちで新しい読書会を立ち上げたり読書の魅力を他の囚人たちに伝えようと四苦八苦する姿が描かれているところです。
佐藤:本を読んでその感想を言うことで「自分の場合はね」みたいに、自分の内側に入っていくドアの役割をしてくれるんですよね。いろんな本をみんなで読むことによって囚人の人たちの関係性が深まっていくのは、本がすごくいい媒介になっているってことがわかりますね。
山中:同じ1冊を読んでいるんだけども、みんな違った視点があるんですね。
読書には人生を変える力がある
続けて三砂さんは、『プリズン・ブック・クラブ コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年』の翻訳者である向井和美の書籍『読書会という幸福』(岩波新書)を紹介した。三砂:向井先生自身は30数年にわたって読書会に参加されてきた経験がおありです。この本のすごいところは、本を読むことと人生について語り合う場が交差するときに化学反応が起こるってことを、自分の経験で書いておられることなんです。いろんな本と出会って、本を語ることで人生の“色”が変わるんですね。しばらく本と遠ざかっていた人にも、向井さんの稀有な人生を通じて、読書の魅力にもう1度出会い直すことができます。読むことで暮らしが豊かになるってことを実感させていただきました。
山中:『プリズン・ブック・クラブ コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年』が読書の魅力に気付かされる本であるとするならば、『読書会という幸福』は語ることで体験できるもの、さらに気付かせてくれるものが詰まっている本です。
本を読むことで得られるものは?
私たちにとって、本を読む行為はどんな意味・意義を持つのだろう?三砂:前提として、読むことは私からすると呼吸するのと同じぐらい人間にとって大切なことじゃないかなと思っています。少なくともメソポタミアで文字が発明されてから、だいたい6000年ぐらい人間は文字を読んできました。なぜ文字を読むのか? 私たちは誰もが「自分が誰で・どこにいるのか」ということを少しでも知ろうとして、自分自身や自分を取り巻く社会そのものを“読んで”きました。
本に限らず、人は星、地形、ジェスチャー、音など、生きる上で読まざるを得ない生き物だと三砂さんは解説する。
三砂:読書が人を進化させてきたという研究結果があります。人間は読書をするとき、書かれている文章を飛び越えて自分だけの思考を展開し始めます。読書というものを通じて、考えることを培ってきました。本を読むことは、暮らしを豊かにする基本的な技術ではないかと思っています。
最後に山中は、リスナーにメッセージを送った。
山中:この番組がテーマにしてきた「暮らしが芽吹く」という言葉。今日よりもこの先がちょっといい日に、少しでも豊かになるようなヒントを届けられたらという思いがありました。みなさんの暮らしのなかで本も、1つの種になっていますでしょうか?
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