音楽、映画、エンタメ「ここだけの話」
子育ては「自分の時間が奪われているわけではない」 作家兼会社員の岡田 悠が育休経験を語る

子育ては「自分の時間が奪われているわけではない」 作家兼会社員の岡田 悠が育休経験を語る

会社員兼作家の岡田 悠さんが、育休の日々をつづったエッセイ『1歳の君とバナナへ』について語った。

岡田さんが登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『GOOD NEIGHBORS』(ナビゲーター:クリス智子)のワンコーナー「TALK TO NEIGHBORS」。ここでは、10月3日(月)のオンエアをテキストで紹介。

育児はまさに新しいことだらけ

普段は会計ソフトを作る会社に勤務する岡田さんは、旅行記を中心にさまざまなウェブメディアで執筆している。8月には約1年の育休の日々をつづったエッセイ『1歳の君とバナナへ』(小学館)を上梓した。

【『1歳の君とバナナへ』の紹介】
今、家族をつくること。その不安と痛みの、先にある希望とは。

会社員兼ライター・岡田 悠による育児エッセイ。2020年、コロナウイルスの脅威が広まる中での「結婚式中止」という苦渋の決断に始まり、妻の妊娠、出産、育児は、「自粛」の空気による困難の連続。コロナに限らず、「こんな時代に家族をつくる」ことには不安と痛みがつきまとう。だけど、その先には希望のようなものが、たしかにあった。

1年弱の育休を取り、仕事復帰後も家庭中心の日々を送る、2020年代の父親像。我が子へ語りかける手紙の形式で紡ぐ、ユーモアと愛情に包まれた新時代のニューノーマル・育児エッセイ。
(小学館ホームページより)


クリス:コロナの頃と育休の時期が重なってるんですね。

岡田:妻の妊娠が分かったのが2020年4月なので、コロナが始まった時期と重なってました。

クリス:岡田さんは育休をどういう時期に取られたんですか。

岡田:2020年の11月に子どもが生まて、翌月から約1年間取りました。

クリス:初めてのお子さんですよね。人によると思うんですけど、新しいことばかりだから、ハラハラする日々だと思うんですけど、そのあたりを絶妙な視点で書かれていて驚きました。この時期に書こうと思った理由は?

岡田:クリスさんがおっしゃったとおり、まさに新しいことだらけで消化しきれないことが毎日起こって、これって本当に旅行に行っているときと似ているなって。旅行行ったときって予想外のことが毎日起きて、それを自分の中で消化するために書くみたいな感じだったので、それと同じようにこれも書こうと思ったのがきっかけですね。

岡田さんは子どもが生まれる前に、「僕の旅は一人旅だし、ずっと一人暮らしをしてきたし、基本的に一人の行動が好きであまり時間をジャマされたくなかったから、子どもができたらどうなっちゃうんだろう」と心配していたという。

岡田:でも、実際に生まれてみると、物理的には確かに時間が割かれるんですけど、それって自分の時間が奪われているわけではなくて、それ自体も自分の時間を過ごしてるなっていう感覚がすごく強くあって、「これ前もって教えてよ」みたいな。誰も教えてくれなかったこともあったから、そういうのも書きたいと思いました。

「君」と「僕」 手紙の形式で書いた理由

『1歳の君とバナナへ』で子どもや家族のことをつづった岡田さん。普段、書いている旅行記の執筆とはどんな違いがあるのだろうか。

岡田:旅行記は自分の話をすればいいのである意味気が楽なんですけど、子どものことを書くとなると、子どものプライバシーだったり、子どもが大きくなって嫌に思われたら嫌だなっていうのがあったりして、その辺りは神経を使いましたね。「お前の父がこんなこと書いてるぞ」みたいな感じで子どもが言われても嫌ですし。そこはけっこう大変でした。

クリス:『1歳の君とバナナへ』というタイトルにされていて、お子さんに向けて書く手紙のようなつづりかたでしたよね。

岡田:そうですね。この本の全体が手紙として書いていて、子どもに「君」っていうかたちで書いているんですけど、君に呼びかけるような形式にしました。

クリス:その距離感がとてもいいもので新鮮な感じでした。

岡田:子どものことを考えたときに、子どもに向けて書いた手紙だったら子どもに胸を張って自分としても読ませられるかなって思って。子どもとある意味で対等な立場に立って手紙として書くことでその辺りをカバーできないのかなって思いました。

クリス:そういうアイデアはすぐに行き着いたんですか。

岡田:最初は旅行記みたいに淡々と客観的に書いてたんですけど、途中で変更して、子どものプライバシーみたいな話もあるし、僕は育児が刺激的ですごい体験だなって思ったんですけど、ご家庭によって子どもが寝る、寝ないによっても大変さとか状況とかも変わるので、なるべく主語を大きくしないようにしないといけないかなと思って、主語のいちばん小さい文章って手紙だなと思って。僕と君の間だけのものだよっていうふうに書くことで、いいものをかけるんじゃないかなってことで途中でそういう形式に変えました。

社会はこうやって助け合って生きているんだ

岡田さんは約1年間の育休期間を振り返り、「育児以外もいろいろできると思ってたけど何もしなくて、あっという間に終わった」とコメントした。

岡田:一方でさみしさみたいなものもあって、「(育休が)終わっちゃったな」って。ずっと子どもといたのに、もっと子どもといたかったなって思ったりもして。

クリス:岡田さんはどういった経緯で育休を取られたんですか。

岡田:もともと育休は取りたいと思っていて、どれくらい取ろうかなっていうところで迷っていました。最初は3カ月と思っていたんですけど、法的には男性も女性も1年間は育休が取れると決まっていて、あとは自分の意志をどう通すかってところなんですけど、最初は3カ月って提案したんですけど、上司の方に「それくらい休むんだったら、取れるだけ取ったら」って言ってもらったので、じゃあマックスでって。

岡田さんは実際に親になったことで、いろいろな気付きや意識の変化があったという。

岡田:働いているときは社会との接点があったんですけど、そこをいったん切り離したときに、社会っていうものにこれだけ支えられているんだっていうのが実感としてあって。病院に行って子どもの医療費が無料だったりとか、育休期間の給料が振り込まれているとか、ベビーカーだと席を譲ってもらえたりとか、そういうことが積み重なると、こうやってみんなが助け合って生きているんだなっていう、めちゃくちゃ当たり前なことを改めて思いました。

クリス:子どもが生まれると社会を見る視点が変わりますもんね。

岡田:ちょっとだけ税金が好きになりましたね(笑)。僕は仕事で会計ソフトを作ってるので、ずっと税金の勉強とか計算ばっかりやっていて大嫌いだったんですけど、ちょっと親しみを覚えるようになりました。

僕が行った国に子どもを連れていきたい

これまで70カ国以上を訪れた岡田さん。コロナ禍で海外には行けていないが、「今はまだ行かなくてもいいかな」という心境だと話す。

岡田:子どもができて、子どもと散歩していると、例えば近所の公園に行ったとしても子どもが「こんなにすごい場所があるんだ」って興奮するんですよね。毎日行っているのに「何ここ!?」みたいに喜ぶ姿があって、そういう場所に一緒に行ってるとその驚きとか興奮がちょっと乗り移ったような、追体験しているような感覚になって、けっこう近場でも楽しいんですよね。

クリス:この本でも、旅でもすごいって思うけど、育児も毎日すごいって思うって書かれてましたよね。

岡田:旅をやり直してるって感覚があるので、今はそんなに海外とか行かなくてもいいかなって思ってます。

クリス:旅に行くことも大事だけど、旅は続くから行ってる、行ってないがそんなに大きな問題じゃないって思うこともありますか。

岡田:そうですね。もうちょっと子どもが大きくなったら海外に連れて行ってどんな反応をするかとか楽しみですね。なので僕が新しい国に行くというよりは、僕が行ったことがあるところに連れて行って、どんな反応をするのかって。

クリス:どの辺がすごく反応しそうですか。

岡田:何でも反応するので(笑)。でも最近、工事現場がすごく好きで。クレーン車とかダンプカーとか建設重機の名前をどんどん暗記しているから、すごく工事してる国とか(いいかもしれませんね)(笑)。

J-WAVE『GOOD NEIGHBORS』のワンコーナー「TALK TO NEIGHBORS」では、さまざまなゲストから「とっておきの話」を訊く。放送は月曜~木曜の14時10分頃から。

この記事の続きを読むには、
以下から登録/ログインをしてください。

  • 新規登録簡単30
  • J-meアカウントでログイン
  • メールアドレスでログイン
番組情報
GOOD NEIGHBORS
月・火・水・木曜
13:00-16:00