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『シン・ウルトラマン』今の観客に“子どもの頃に感じたワクワク”を届けるための工夫は? 樋口真嗣監督が語る

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『シン・ウルトラマン』今の観客に“子どもの頃に感じたワクワク”を届けるための工夫は? 樋口真嗣監督が語る

映画監督の樋口真嗣が、人生に影響を与えた書籍の一節を紹介し、現在公開中の映画『シン・ウルトラマン』の制作エピソードについて語った。

樋口監督が登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『ACROSS THE SKY』(ナビゲーター:玄理)のワンコーナー「DAIWA HOUSE MY BOOKSHELF」。本棚からゲストのクリエイティブを探る20分間だ。5月15日(日)のオンエアをテキストで紹介。

映画『シン・ウルトラマン』の監督の本棚に注目!

樋口監督は1984年公開の映画『ゴジラ』で映画界入りを果たした。以降、『日本沈没』『進撃の巨人』などの話題作の監督を務め、『シン・ゴジラ』では、日本アカデミー賞最優秀作品賞に加えて、総監督の庵野秀明さんとともに最優秀監督賞を受賞した。5月13日から公開されている『シン・ウルトラマン』は、現在多くの人々から注目を集めている。

玄理:『シン・ウルトラマン』の公開、おめでとうございます!
樋口:ありがとうございます。コロナ禍によって、よくも悪くも人生で一番時間をかけた作品となりました。撮影していたのはコロナ禍になる前からなので、街の人々がマスクをしていない状態なんです。そのため、追加の映像を撮ろうと思っても撮れなかったんですよね。今はみんながマスクをしているから。
玄理:そうですよね! 今はエキストラさんを大量に呼ぶことも難しいでしょうし。
樋口:映像を観ていると「昔はよかったな」という気持ちになりますよ(笑)。



本棚の上にはゴジラのフィギュアが並ぶ

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樋口監督の本棚を写真を見ながらトークを進行する玄理は、本棚の上にある大量のフィギュアが気になったようだ。

玄理:大量のフィギュアの足が見えるんですけど、これってゴジラですよね?
樋口:全部ゴジラです(笑)。
玄理:これってご自身で集められたものなんですか?
樋口:はい。ゴジラが一番好きなので、元々持っていたものです。1作ごとに顔も全然違うんですよ。気が付いたら本棚に並んじゃっていました。
玄理:本当にゴジラがお好きなんですね。ゴジラの作品に関わることができた当時、かなり嬉しかったのでは?
樋口:そうですね。最初にいただいた仕事が『ゴジラ』だったんですよ。

当時、オイルショックの影響などを受けて映画産業自体が衰退し、『ゴジラ』シリーズは1975年から制作がストップしている状況だった。

樋口:「10年ぶりにゴジラを作ります」という話になったとき、いてもたってもいられなくなったんですよ。この歴史的瞬間に立ち会わなくてどうすると思いました。当時は高校生だったのですが、バイトで『ゴジラ』の撮影に潜り込むことができました。
玄理:潜り込めるものなんですね!
樋口:運がよかったと思いますよ。
玄理:そこからずっとゴジラの作品に関わって『シン・ゴジラ』も制作されたと。相当幸せなことですよね。
樋口:僕らが子どもの頃って怪獣ブームというものがあって、毎日怪獣の番組がやっていた時代があったんですよ。今は好きなものが多様化していますけども、昔は全員が同じ方向を向いていたんですね。みんな怪獣やウルトラマンが好きでした。将来の夢を聞かれたら、『ウルトラマン』を撮った円谷英二監督になりたいって言っていたんですよ。
玄理:そうなんですね。
樋口:だけど、小学生から中学生ぐらいになってくると「いつまでも怪獣ばかり見ていられない」って感じに周りがなっていってね。気がついたら俺一人だったんですよ(笑)。
玄理:(笑)。本棚の本も、下一列はほぼ特撮のものばかりですもんね。
樋口:コロナ禍になって、だいぶ減らしたほうなんですよ。
玄理:本棚には『三体』(重慶出版社)といったSFの書籍もありますけども、いずれ自分がやってみたいなと思う作品も並べているんでしょうか?
樋口:『三体』は仕事とは関係なく「読みたい!」と思った本ですね。
玄理:『三体』は世界的に話題になった中国のベストセラーですよね。映像化するならかなり大変そうな作品ですよね。
樋口:普段の小説を読むときとは違う脳味噌を使わせてもらったなと思う作品でしたね。
玄理:物理学や化学の話がかなり出てきますもんね。

樋口監督は「お家時間を利用して読んだ本のなかで本棚に残したいと思った本」として、石井岳龍(いしいがくりゅう)の『映画創作と自分革命 映画創作をめぐって』(有限会社アクセス)を挙げた。

書籍を読むことで自信のマインドを整える

樋口監督の人生に影響を与えた一節は、デザイナー・石岡瑛子が2005年に出版した書籍『私 デザイン』(講談社)に記されている。

「このような時代をサヴァイヴしていくために最も大切なことは、内側から湧き上がってくるほんとうの“自分力”を培うことかもしれない」

樋口:書籍は2005年に出たものでして、石岡瑛子さんは素晴らしいデザインを世に出して2012年に亡くなられた方です。
玄理:近年も石岡瑛子さんの展示がされていましたよね。自分のなかから湧きあがってくるパッションといいますか、内側に向けた本が樋口さんにとって響いているのでしょうか?
樋口:繰り返し同じ本を読むって、よほどのことがないとないんですよ。そして、繰り返し読む本を本棚に置くようになっちゃうんですね。そうするとどうしてもマインド的なものを自分のなかをチューニングするというか、尊敬する人の考え方を読むことで自分を合わせていくんですよね。
玄理:大事な行動だと思います。

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過去作を知らない人でも『シン・ウルトラマン』は楽しめる!

樋口監督は、リスナーに向けて『シン・ウルトラマン』に込めた思いを語った。

樋口:ウルトラマンは昔からやっているシリーズだから「昔の作品を知らないと楽しめないんじゃないか」という先入観があると思うんですよ。だけど、今回から観ても大丈夫です。むしろ、初めて観る人に向けて作ったと言っても過言ではないんです。
玄理:ほうほう!
樋口:初代 『ウルトラマン』は1966年にテレビ放映されたんですけども、(作中で描かれていたのは)その時代の“未来”の話だったんですね。未来の世界で怪獣が現れてさあどうするって話なんですよ。でも、今観るとスタートポイントが“過去”だから「昔の未来」みたいで古いと感じるじゃないですか。今観る人たちにとっては未来だと感じないわけです。
玄理:その通りですね。

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樋口:自分たちが子どもの頃に観た“ワクワク”とは違った形になるってことに気付いたので、僕らが感じたような気持ちを味わうには基準点を現在にズラさないといけないんですね。ズラすことで、同じ話なのに新しく感じるってことに気付いたんです。そのことに気付いたのは脚本をやった庵野秀明なんですけどね(笑)。
玄理:気付いたのは庵野さんだって言える樋口さんが好きです(笑)。
樋口:ありがとうございます(笑)。
玄理:5月13日から公開している『シン・ウルトラマン』は、樋口真嗣が監督を務め、企画と脚本は庵野秀明さんが手掛けています。ぜひ劇場に足を運んでみてください!

『ACROSS THE SKY』のワンコーナー「DAIWA HOUSE MY BOOKSHELF」では、本棚からゲストのクリエイティヴを探る。オンエアは10時5分頃から。

『シン・ウルトラマン』公開情報

■キャスト
斎藤 工 長澤まさみ 有岡大貴 早見あかり
田中哲司/西島秀俊
山本耕史 岩松 了 嶋田久作 益岡 徹
長塚圭史 山崎 一 和田聰宏

企画・脚本:庵野秀明
監督:樋口真嗣
准監督:尾上克郎
副監督:轟木一騎
監督補:摩 砂 雪
音楽:鷺巣詩郎

■コピーライト
(C)2021「シン・ウルトラマン」製作委員会
(C)円谷プロ

■公開日
2022年5月13日

■公開情報
全国東宝系にてロードショー

■公式サイト
https://shin-ultraman.jp/

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