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角野隼斗×宇宙飛行士・山崎直子、実は親戚。宇宙で音を感じた瞬間とは?

角野隼斗×宇宙飛行士・山崎直子、実は親戚。宇宙で音を感じた瞬間とは?

ピアニスト・角野隼斗と宇宙飛行士・山崎直子が、「宇宙と音楽」をテーマに対談を行った。

この対談をお届けしたのは、2024年12月24日(火)にオンエアされたJ-WAVEの特別番組『J-WAVE CHRISTMAS SPECIAL TOKYO TATEMONO Brillia MUSIC OF THE SPHERES EXTENDED』。毎週日曜に角野隼斗がお届けしている番組『TOKYO TATEMONO MUSIC OF THE SPHERES』が2時間に拡大し、角野と市川紗椰がツインナビゲートしたスペシャルプログラムだ。

角野は同番組で、宇宙飛行士・山崎直子のほか、ピアニスト・上原ひろみと対談。また、複合施設「ののあおやま」(東京都港区北青山)内にあるスタインウェイのショールーム「スタインウェイ&サンズ東京」で収録した、スペシャルなピアノ演奏をお届けした。
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「ののあおやま」にて

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角野隼斗と山崎直子、実は…

角野隼斗は2018年、東京大学大学院在学中に音大以外の学生として初となるピティナピアノコンペティション特級グランプリを受賞。2021年には、ショパン国際ピアノコンクールのセミファイナリストに選出。2024年は13,000人を集める日本武道館単独リサイタルを開催したり、世界デビューアルバム『Human Universe』をリリースしたりと躍進している。

一方の山崎は史上2人目の日本人女性宇宙飛行士として、2010年にスペースシャトル「ディスカバリー号」の乗員として飛び立ち、国際宇宙ステーションの組み立てなどに従事した。2011年、JAXA退職後は宇宙に関わるさまざまな事業で社会貢献している。

異なる分野で活躍するふたりだが、実はとある関係性で……。

角野:山崎直子さん、お久しぶりです!

山崎:お久しぶりです! 隼斗君もこんなに大きくなられて(笑)!

角野:何年ぶりでしょうか。というのも、私たちは親戚同士でして。僕の父のいとこにあたるんですよね。

山崎:そうですね。 

角野:そんなにたくさんお会いしたわけではないのですが、子どもの頃から何度かお会いしております。

山崎:最後はたぶん、隼斗君が高校生だったときですよね。

角野:僕が開成高等学校に通っていたときに、講演会に来てくださいました。

山崎:よく覚えていますよ。

角野:そこで宇宙飛行士としての体験を語ってくださったのを僕も覚えています。

山崎:こうしてクリスマスイブにゆっくりと話せるのは嬉しいです。

角野:いつかお話ししたいなと思っていたので、今回こういう形でお招きすることができました。いろいろ聞きたいこともたくさんありますので、楽しく話していけたらと思っています。

幼少期から宇宙に憧れがあった2人

角野:宇宙に行くってなかなかない経験じゃないですか。最初に宇宙に行ったときはどんな気持ちでした?

山崎:ワクワクと、あとは宇宙に来られたことに対する感謝でしたね。候補者になってから宇宙に飛び立つまでに11年かかったので、そのあいだ本当にいろんな方のお世話になっていたんですね。だから、いろんな人の顔が走馬灯のように浮かびました(笑)。いよいよ行くんだって感じでしたね。

角野:怖さはありましたか?

山崎:もちろんリスクはありますし、過去に事故があったことは重々わかってはいるんです。実は、宇宙に行く前は遺書を書くことが伝統になっているんですね。でも、不思議と怖くはないんですよ。早く行きたいって感じでした(笑)。

角野:ワクワクのほうが勝っていたんですね。

山崎は幼少期から宇宙に憧れを抱いてはいたが、宇宙飛行士になることは想像していなかったとう。

山崎:「大人になったらみんな宇宙に住んでいるのかな?」とか「みんなスペースコロニーに行っているのかな?」といった未来図を描いていましたね。隼斗君も子ども時代から宇宙に興味が?

角野:僕も数学や宇宙にすごく興味があって。それこそ、山崎直子さんが宇宙飛行士ということからも、影響を受けていたと思います。

山崎:嬉しいです!

角野:そういう本を、図書館で借りてきて読むのが好きでしたね。東大にいた頃も航空宇宙工学科を目指そうとした時期があったんですけども、結局、別のほうに行っちゃいました。

山崎:私からしたら数学・情報の最先端を学ばれて、それを音楽と繋げられているのが隼斗君ならではだなと思います。

角野:そういった経験があるなかでどういった音楽を自分は作れるのかなといつも考えていて。それで、今回『Human Universe』というアルバムを出しました。

宇宙空間で“音”を感じた瞬間

古代ギリシャでは、天球(地球上の観測者を中心とする半径無限大の仮想の球面)の運行が音を発し、宇宙全体が音を奏でている「天球の音楽」という発想があった。実際に宇宙を経験した山崎は、どういった音を捉えることができたのだろう?

角野:実際、空気がないと音は出ないと思うのですが、宇宙に行かれた方として、宇宙の音はどんなものを思い浮かべますか?

山崎:宇宙空間は空気のない世界だから、音はないはずなんです。だけど、地球の地平線から少しずつ太陽が顔を出し、白い強烈な光が届いてくるとき、熱や明るさと一緒に音も伝わってくるような感じがしましたね。

角野:なるほど。想像がつかないのですが、とても綺麗そうですね。

山崎:私の表現力だと、そういった伝え方になるのでもどかしいんですけども、隼斗君がそれを宇宙で見たらどう表現されるのかなって思います。

角野:ちなみに、スペースシャトルの中ではどういった音が鳴っていますか? 飛行機の中みたいなイメージですか?

山崎:そうですね。常にゴーッという音がバックグラウンドに響いています。エアコンが24時間稼働している音と、周りに冷却用の水が流れているんですけど、それをポンプで回しているのでキーンとした高音が混ざっています。

バッハが紡ぐ音楽には“宇宙”がある

国際宇宙ステーションの組み立てミッションおよび、宇宙に関するさまざまな実験に参加した山崎。空き時間は音楽プレイヤーに入れた音楽を聴いていたという。

角野:どんな音楽を聴かれていたんですか?

山崎:子どもの頃に好きだったアニメの曲だったり、J-POPから洋楽、ジャズなどいろいろ持っていきました。結局、一番聴いていたのは『G線上のアリア』です。

角野:おお、バッハ。勝手なイメージですけど、たしかにバッハは(宇宙に)合いそうですね(笑)。

山崎:やっぱりそう思う?

角野:僕はバッハから、とても宇宙的なものを感じるんですよ。人間が作ったような感じがしない瞬間があるといいますか。宇宙の、人の手ではどうにもならない部分を表せているような気がします。

山崎:そうですか。私もよくわからないままに、だけど不思議としっくりきましたね。

「宇宙は故郷」発言の真意に迫る

番組では、角野の世界デビューアルバム『Human Universe』の表題曲『Human Universe』がオンエアされた。

Human Universe

山崎:素敵な音ですね! 本当に宇宙的。最初は11拍子で作られているんですよね?

角野:そうですね。それは宇宙が11次元で作られているかもしれないっていう仮説から取っています。

山崎:音の重なりが本当に宇宙を感じました。

角野:ありがとうございます。ここ数年、いろんな宇宙のニュースを目にして、僕もワクワクしています。最近だと、JAXAが月面着陸を成功していたり、どんどん人と宇宙の距離が近くなっていくと感じています。今後、どういった方向に向かっていくと思われますか?

山崎:私がいた国際宇宙ステーションは地上から約400キロメートル上空にあって、いまは地球の淵を回っている状態なんですね。これからは月や火星、より遠くを目指していく探査が活発化していくと思います。それと同時に地球の周りはもっと民間が活動して、それこそ宇宙ホテルや商業宇宙ステーションができたり、宇宙旅行に行く人、宇宙に出張する人が増えてくると思います。

角野:何かのインタビューで、「宇宙は故郷」と話されていたのがすごく印象的でしたが、どういうときにそう感じられたのでしょうか?

山崎:スペースシャトルに乗って打ち上がって、8分30秒後にはもう宇宙に到達するんですね。最後のほうは3Gぐらいのグッと重い力なんですけども、エンジンが止まるといきなり無重力になるんです。そこで体が浮いた瞬間、なんだか懐かしい感覚になったんです。体中の細胞が喜んでいる、と言うとちょっと言い過ぎかもしれないけれど(笑)。まるで故郷みたいな懐かしい感じがしたんですよ。

角野:お母さんのお腹の中にいる感覚ですかね?

山崎:かもしれないですね。海に入ると懐かしいと表現する人と、ちょっと似ているかもしれない。

角野:無重力も包まれている感覚なんでしょうか?

山崎:そんな感じでしたね。

角野:面白いなあ。

宇宙から地球に帰還した際、山崎は重力の強さに驚いたという。

山崎:地球に戻ったとき、こんなに重いんだってビックリした。紙1枚、鉛筆1本でも重いですし、自分の舌も重い感じがして、喋るのも億劫になりました(笑)。

角野:舌が重い(笑)!? そういう風に感じたことがないので面白いですね。

宇宙でピアノはどんな音を奏でる?

いつか音楽家として宇宙に飛び立ち、音楽を奏でたいと語る角野。2人は宇宙での演奏について思いを巡らせる。

角野:無重力のなかでアコースティックピアノを弾くことは難しいかもしれないですよね。重力でハンマーが戻ってくるから、無重力だとどうなるんだろう。

山崎:弦の震え方もまた違ってくるかもしれないですしね。

角野:重力がないと弦がずっと震え続ける、みたいなことはあるのでしょうか

山崎:宇宙空間だと空気がないので空気抵抗で揺れは止まらなくなります。宇宙船の中だと、ちゃんと止まってくれると思います。でも、実際どうなるのかはわからないですねえ。

角野:残響は長くなりそうな気はします。いつか誰か試してほしいです。

山崎:いやいや、隼斗君がやってください(笑)。

角野:そうですね、僕がやりたいです(笑)。今後やってみたいこと、チャレンジしたいことはありますか?

山崎:いつになるかわからないんですけど、月に小さな学校、寺子屋を作れたらいいなっていう夢があります。

角野:へええ!

山崎:私は初めて日本を出たのが20代半ばぐらいだったんですけど、すごく衝撃を受けたんですね。いろんな国や地域から、特に若い世代のみなさんが月に集まって、一緒に地球を見ながら宇宙のこと、地球のことを学べたら素敵だろうなって。そこからそれぞれが国や地域に戻って成長していけば、宇宙船地球号といいますか、連帯感が生まれてくるんじゃないかなと思っています。

ピアニスト・角野隼斗が音楽をとおしたさまざまな”出会い”を語る『ACROSS THE SKY』のコーナー『TOKYO TATEMONO MUSIC OF THE SPHERES』の放送は毎週日曜の11時30分ごろから。1月12日28時ごろまで再生可能の回では、ポーランド生まれの若き天才ギタリスト、Marcinと角野隼斗が語り合っている。

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番組情報
J-WAVE CHRISTMAS SPECIAL TOKYO TATEMONO Brillia MUSIC OF THE SPHERES EXTENDED
2024年12月24日
22:00-24:00