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樋口真嗣が明かす、監督に必要不可欠な“心の中の炎”にのんも興味津々

樋口真嗣が明かす、監督に必要不可欠な“心の中の炎”にのんも興味津々

女優・創作あーちすと のんが、映画監督の樋口真嗣と対談。コロナ禍で生まれた、リレー形式で動画をつないでいく「カプセル怪獣計画」誕生のきっかけや、映画監督に必要な要素などを語り合った。

のんと樋口が登場したのは、11月15日(日)放送のJ-WAVEのPodcast連動プログラム『INNOVATION WORLD ERA』のワンコーナー「FROM THE NEXT ERA」。のんは同番組の第3週目のマンスリーナビゲーター。

外出自粛中は群雄割拠の三国志みたいな状態だった

見えない大怪獣コロナと自分の怪獣との戦いを自宅で撮影し、リレー形式でつないでいく「カプセル怪獣計画」。樋口をはじめとする5人の監督が、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛要請を受け、「怪獣の人形に願いを込めてコロナウイルスを倒そう」という趣旨のもと立ち上げた企画だ。

カプセル怪獣けいかく せつめいビデオ

のんは「カプセル怪獣計画」に参加。その番外編であり、全編ほぼリモートで撮影された映画『8日で死んだ怪獣の12日の物語』にも出演を果たした。

映画『8日で死んだ怪獣の12日の物語』予告

樋口:もとはコロナの影響で撮影の現場が止まってしまったときに、Zoomでみんなで集まって話してモヤモヤしていて。さみしさもあって「なんかやりたいな」っていうのと、当時は行定(勲)さんとかが仲間の役者とかを集めて、Zoomみたいなもので短編映画のようなものを作っていたりして。みんな自分たちでなんかやろうぜっていうのがあったんですよ。やっていくうちに誰が先にやるかわからない、群雄割拠の三国志みたいな状態になっていて、誰かが一番乗りしたらその人が勝ちみたいな。
のん:誰がリモート動画に挑戦するかっていう。
樋口:そう。だから急がなきゃと、ものすごい勢いで考えて「今やらなきゃ」って。

リモート動画を撮る際、樋口は自撮りをする難しさを感じたという。

樋口:まず、目線が合わない。いかに自分が小心者かとわかったんだけど、(カメラじゃなくモニターに映る)自分を見ちゃうんですよ。あとで見ると、ちょっと目線が下に向いていて、自信がない己の奥底が見透かされているように見えるわけです。
のん:悲しいですね(笑)。自撮りが下手だったんですね。
樋口:自撮り下手くそおじさん(笑)。だから、50回くらいやり直して。『シン・ウルトラマン』で一緒にやった斎藤(工)さんや長澤まさみさんとかと一緒にZoomで飲んだときに、「あなたのお願いがいかに面倒くさい注文だったか」って話を散々されて、やっぱり自分で撮ると納得がいかないので。
のん:私も(「カプセル怪獣計画」の動画は)7回くらい撮り直しました。50回までは行かなかったけど。
樋口:撮る人と撮られる人が分かれているからこそできることってあるじゃないですか。客観性とか。自分に見えない何かいい部分がそこに映っていたら、本人は気に入らないけどそれはOKだよってことが意外とあるんですよね。

監督に必要不可欠な「気持ち」とは?

樋口は、これから映画界にどのような人材が必要だと考えているのか。のんが質問を投げかける。

樋口:のんさんは映画『のんたれ(I AM NON)』で監督もしていますよね。作ったってことは、作りたいから作ったわけで、また作ってみたいと思ったりするわけじゃないですか。
のん:思っていますね。
樋口:一度作ると味をしめて、楽しいじゃないですか。
のん:楽しい。あと「こうすればよかった」とか思うと、次こそってなりますね。
樋口:僕にも「監督になりたいんですけど、どうしたらいいですか?」って質問が来るんです。そのとき本当に答えに困るんですよね。監督って、監督をやりたいからやっているわけじゃなくて、撮りたいものがあるから監督になっているわけじゃないですか。「まず撮りたいものがないと、監督になれないよ」って、ここまで出かかって……でも、それは自分で気付かないといけないことだと俺は思うわけ。誰かに言われて「じゃあ、作ろう」だと、やっぱり一歩踏み遅れている感じがする。一歩踏み出すってそういうことだと思うので、「これが作りたい」がないと。誰かが提案してきたものに対して「いや、違う」とか「そうじゃないんだ」ってことの踏ん張りが足りなくなるんです。「これが作りたい」じゃなくて「監督やりたい」っていう人も中にはいるんだけど。
のん:監督という人になりたいってことですよね。
樋口:職業として監督になりたい。監督と呼ばれたい。監督としてモテたい、モテないんだけど。監督で金持ちになりたい、なれないんだけど。そうやって勘違いするのか、そういう人って意外といるわけですよ。そうじゃなくて、「何がなんでもこれが作りたい」って気持ちがないと、途中で作りたいものがどんどんほどけていくし、ぼやけてしまう。絶対に最初から最後まで貫き通すためには、作りたいものを自分の中で持っていないと。それは心の中で燃えている炎みたいなものだったりするので。
のん:ものすごく、そうだなって思っていました。
樋口:だから、それがあれば誰でも監督になれると思います。

映画制作は、かつてないほど平等な時代に

昨今はスマートフォンが映画撮影に用いられるようになった。『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』でも一部スマホで撮影されたシーンがあるという。

樋口:極論、スマートフォンで撮れるんですよ。
のん:それこそ『8日で死んだ怪獣の12日の物語』もスマホで撮りましたもんね。
樋口:『シン・ゴジラ』の頃から使うようになって、来年夏に公開予定の『シン・ウルトラマン』でもスマホを使いました。
のん:どういうことですか?
樋口:メインのカメラは、お芝居とかでピントを合わせたりしますよね。動いた人物に合わせてピントを合わせるのは、残念ながらまだスマホでできないので。部屋の中のアップとかはちゃんとしたカメラで撮るけど、あまり動きがない広いシーンってあるじゃないですか。途中でパンっとそういうシーンが欲しくなったりするとき、本来であればちゃんとしたカメラを使ってもう一度引きで撮るけど、時間がもったいないから、それぞれが持っているスマホで撮っちゃう。
のん:そうなんですか!
樋口:それがないと、これから先はできない。

撮影方法が多様化すれば、競争は激化する。そこで重要になるのが、「何を撮るか」という監督のビジョンだ。

樋口:何を撮るかということをきちんと考えていけば、実は今はかつてないくらいの平等な時代になっている。観てもらえるかどうかは、何をやるかで変わってくる。「どうやったら観てもらえるか」ってことが映画なんじゃないかなと思います。ものすごく自由なかわりに、ものすごい競争が始まっているんじゃないかなと。今までは経験といったものがないとダメだったりしたものが、全くそうじゃなくなっていると思うので、ものすごくチャンスだと思います。

番組では他にも、樋口が最近の映画業界について語る場面もあった。J-WAVEのポッドキャストサービス「SPINEAR」でも聴くことができる。

・SPINEAR
https://spinear.com/shows/innovation-world-era/

『INNOVATION WORLD ERA』では、各界のイノベーターが週替りでナビゲート。第1週目はライゾマティクスの真鍋大度、第2週目はASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正文、第3週目は女優で創作あーちすとの「のん」、第4週目はクリエイティブディレクター・小橋賢児。放送は毎週日曜日23時から。

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2020年11月22日28時59分まで

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番組情報
INNOVATION WORLD ERA
毎週日曜
23;00-23:54