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注目の若手映画監督・枝 優花が体感した「映画館の意義」とは

枝監督の自主制作映画『少女邂逅』。インディーズ映画ながら数々の国際映画祭に選出された

注目の若手映画監督・枝 優花が体感した「映画館の意義」とは

注目の若手映画監督、枝 優花がJ-WAVEに登場。映画を撮り始めたきっかけやアイデアの源、コロナ禍で感じた映画館の意義について語った。

枝監督が登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』(ナビゲーター:別所哲也)のワンコーナー「Allbirds MORNING INSIGHT」。

12月28日(火)のオンエア内容をテキストで紹介する。

映画を撮り始めた意外なきっかけ

枝監督は1994年生まれの27歳。監督を務めた自主制作映画『少女邂逅』は、香港国際映画祭や上海国際映画祭に招待され、バルセロナ・アジア映画祭では最優秀監督賞を受賞した。また、羊文学やindigo la End、KIRINJIなど、さまざまなアーティストのショートムービーやミュージックビデオを手がける、注目の若手監督だ。

そんな彼女だが、もともと映画監督を志していたわけではないという。

枝:映画が好きだったので、何か映画のお仕事はしたいなと思っていたんですけど……。映画監督っておじさんがやるものだと思っていたので、(自分でも)できるって知らなくて(笑)。

別所:あははは。そこが笑えるな(笑)。それで、それで?

枝:学生時代に入っていた映画サークルで「みんなで一本の映画を作りましょう」となったときに、監督を志望していた男の子が撮影のギリギリに脚本を持って逃げてしまって。でもロケ地も撮影日も決まっているしどうにもならなくなっちゃって、しょうがなく私が監督をしたのが始まりです。

別所:人生ってわからないね。しょうがなくやってみて、意外とハマっちゃったと。どうしたんですか、そのときは。脚本もないわけでしょ?

枝:本当に何もわからないまま脚本を書いて、先輩たちに教えていただきながらとりあえずやってみたらけっこう面白かったっていうのが本当にきっかけなんですよね(笑)。

別所は、自身が俳優を志したことも偶然だったと明かす。

別所:僕もね、俳優になんかこれっぽっちもなってやろうなんて思ってなかったですから! 18歳、いや19歳までか。

枝:そうなんですか!?

別所:大学で英語劇っていうお芝居をやって、舞台でお芝居をやることが面白い!って思った。そこからですからね。ミュージカルをやるなんて、これっぽっちも思ってませんでした。だから人生ってわからない!

“当たり前”に納得できない…創作に活きた性格

枝監督の制作のインスピレーションは、日常の疑問から生まれるそうだ。常に「これ、面白いかも」と考え、発想をふくらませるクセがついているという。

枝:例えばテレビで、政治家の方が紙を見て謝罪をしているのとかを見ると、「なんで、紙を見てるんだろう?」という疑問を抱いて、どんどんふくらんでいくんです。今年作ったショートムービーはそこから着想を得て作りました。

もともと、「みんなが当たり前に見ていることに、わりと立ち止まって考えちゃう」性格で、それが創作に役立っているという。別所も枝監督の発言に賛同し、“引っかかってしまう“当たり前のこと”を、歪み”と表現した。

別所:その歪みって自分だけじゃなく、他の人も「わかる、あるある」って感じてたりね。

枝:そうですね。意外と作ってみると、皆さんが実はどっかで変だなと思っていたとわかったりして面白いですね。

別所:まさに、僕は創作の原点は「クエスチョンマーク」と「ビックリマーク」だとずっと思ってます。疑問に思うことと「あー、わかる、あるある」とハッとなるビックリマークが生まれたときって、楽しいですよね。

音楽から着想を得た映画『息をするように』

コーナーでは、枝監督の作品『息をするように』の主題歌であるKarin.の『過去と未来の間』が流れた。『息をするように』は、この主題歌から着想を得て作られたそうだ。

別所:音楽からインスパイアされて映像や物語が広がっていくことってありますよね。僕もCINEMA FIGHTERS project(※作詞家 小竹正人の詞の世界観を脚本・ショートフィルム化するプロジェクト)をやっています。この楽曲のどんなところが胸に刺さったんですか?

枝:生きていてうまくいかなかったりとか、その葛藤だったり。子どもと大人の狭間で生きていて、どうしたらいいんだろう?みたいな、Karin.さんが書かれたのは10代のときだったとおっしゃっていたので、10代のときの感覚をどういうふうに映像に閉じ込められるかっていうのがテーマですね。

『息をするように』は、伊藤万理華が少年の演じた。

枝:内容としては、自分のアイデンティティだったり、ちょうど学生時代って自分が何者かであるかってことに向き合う時間だと思うんですけど、そこに対して葛藤している男の子話を描いています。

「誰もがクリエイターになれる」時代だけど…

スマートフォンが普及し、動画の撮影が簡単になった。SNSを筆頭に発表する場も多く、「誰もがクリエイターになれる」と言われることも多い。そんな今、枝監督は作り手として、何が大切だと考えているのだろうか。

枝:「誰もがクリエイターになれる」って言葉を、2021年は多く聞いたなと思っていて。その上で、作らせていただいている身としては、作っているとき「誰もができることじゃない」とも感じていて。あとは、誰もができないからこそ、作る意味があるものを作っていかなければいけないんだと改めて実感するというか。映像制作のきっかけは人それぞれだと思うんですけど、作っていく中で、自分だからこそできるもの、この人だから作る意味があるんだというものが、これからっもっと増えていくといいよなと、すごく感じました。

別所:いろんなやり方で作れるし、いろんなやり方で届けられる、観られる時代になったからこそ“シネマ”“映画”って何なんだろう、映画的って何だろうって考えたりしますよね。

枝:しますね! それもすごく議論しましたね、2021年は。

別所:なんか、答えは出ました?

枝監督はコロナ禍、映画館の意義に思いを巡らせ、落ち込んでしまったことがあったという。

枝:家でNetflixを観る量が圧倒的に増えて、映画館に足を運ばない時期があったりとか、「こうやって廃れていってしまうのかな」と落ち込んだんです。ただ、年末になって映画館に行く余裕ができて、久々に他の観客と同じ瞬間に笑ったり、同じ瞬間に息を飲んだり。帰りはバラバラだけど、同じ映画を観たという感覚でエレベーターを降りたときに、この体感って絶対に家ではできないし、この体験ができなくなったことを自分は渇望していたのだと実感して。やっぱりまだ映画館の可能性はあるなっていうのがわかったので、ちょっとホッとしたんですよね。

別所:やっぱり同じ空間で暗闇の中で、光の絵の具が作ったスクリーンに映った世界を共有・体感する時間って特別な時間ですよね。

枝:そうですね。これがなくなっちゃうのはダメだなって思いました。

枝の最新情報は公式ページ(https://bridgehead-jp.net/eda_yuuka.html)まで。

『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』のワンコーナー「Allbirds MORNING INSIGHT」では、あらゆる世界の本質にインサイトしていく。放送は月曜~木曜の8時35分頃から。

(構成:笹谷淳介)

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