野菜だけで大満足なファストフードとは？ 『作ってあげたい彼ごはん』の料理家・SHIORIに聞く

植物性の食品のみを使った料理は、かつて「ヴィーガンの人が食べるもの」という印象があったが、今は幅広い層にとってひとつの食の選択肢として広まっている。中目黒には、「サステナブルなファストフード」をコンセプトにしたお店もある。

店主は、『作ってあげたい彼ごはん』など人気レシピ集で知られる料理家・フードコーディネーターであるSHIORIさん。どんなお店なのか、どんな味なのか、『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』のナビゲーターである別所哲也が実食しながら話を聞いた。

SHIORIさんが登場したのは、同番組のワンコーナー「Allbirds MORNING INSIGHT」。オンエアは2月3日（木）。

野菜だけでも、満足度ばっちり。ファラフェルとの出会いは？

SHIORIさんのお店は、ファラフェルスタンド「Ballon」。ファラフェルとは、ひよこ豆などを潰して揚げたコロッケのことで、中東料理の一つだ。

SHIORIさんがファラフェルを知ったのは10年前。パリで初めて食べ、「野菜だけで、こんなにおいしく満足度の高いものができるんだ」と衝撃を受けたという。

SHIORI：ただ、当時の私は、『作ってあげたい彼ごはん』で肉や魚のガッツリ料理を紹介していて、「野菜だけの料理は私とは違う分野だな」と思っていたんですが、これなら男子も喜ぶし、日本にもっと広めたいなって思ったんです。

そして2017年に同店をオープンした。

別所：お店は中目黒にあるようですけど、これはなぜ？

SHIORI：私自身がそこら辺の界隈に住んでいたのと、中目黒ってけっこうグルメな街でいろんなお店があるので、そんな中でファラフェルスタンドがあってもいいんじゃないかなって思ったんですよね。

別所：わかる、食のさまざまなルーツが中目黒でね。ジンギスカン屋さんとか、おいしいお店がいっぱいあるもんね。

SHIORI：そうなんです！　いろんなグルメを求めて皆さんが集う街なのでこれはピッタリじゃないかなと思って。

「体や環境にいい」だけでなく「おいしい」が大事

近年、ヴィーガンやサステナブルという言葉が一気に広まった。SHIORIさんは「とてもいいことだと思う」としながら、より広めていくための考えを述べた。

SHIORI：どんなに体によくても、環境によくても、おいしくないと続かないじゃないですか、人間って。おいしくて、体にもよくて、環境にもよいっていうのがハッピーなことだと思います。おいしく食べてたら、気づけばヴィーガンだった、サステナブルだったという循環を目指して行ったほうが、結果的に世間に広まっていくしみんなハッピーなんじゃないかなって思ってます。

別所：やっぱり感覚だよね。楽しいとかおいしいとか嬉しいに繋がってないと。

SHIORI：そうなんです。じゃないと根付いていかないですよね。頭ごなしに難しいことを言っても。

東京は、多種多様な料理を楽しめる。別所は東京の食事情の変化について、何を大事にしたいかをSHIORIさんに聞いた。

SHIORI：私の願いのひとつとしては、“安さに重きを置かない”こと。今の日本は、本当に安くておいしいものが食べられる幸せな国だと思うんですけど、安さ競争に入っていくと、みんなが結果として苦しくなっていく。だから、ちゃんと本質的な価値を認めて、真っ当な価格をお支払いする、そういう世の中になっていってほしいなと願ってます。

別所：そうだね。安さ競争の時代は終わって、価値のあるものを認めていく時代に「食」も変化してほしいですね。ちなみに子どもたちにとっての食の選択ってどうでしょうか？

SHIORI：ヴィーガンは、イコールで「全てのアレルゲンを除去できる」わけではないんですけど、特に（アレルギーの人が）多い乳製品とか卵などは使っていないので、そういう意味ではみんなが同じ食卓を囲めるっていうのはすごくいいことだなと思いますね。

卵、砂糖、乳製品不使用のソフトクリームも

スタジオには「Ballon」のファラフェルサンドが登場し、別所も「すごくおいしい！」「食べごたえがある」と太鼓判を押す。野菜同士のうまみや食感を“重ね合わせる”という工夫をしているそうだ。

また、「Ballon」にはファラフェルサンドの他にソフトクリームもある。珍しく感じるが、SHIORIさんによると、最近は少しずつ増えてきているのだそう。

SHIORI：ベースに、乳製品ではなくて豆乳を使っています。そして卵、砂糖、乳製品不使用でその分、アガベパウダーとか甘酒を使っているので全体的に優しい甘味なんですよ。

別所：けっこう甘酒もひとつのキーになってくると思うけど、海外ってどうなの？　そもそも甘酒って知らないでしょ？

SHIORI：まだまだ海外ではあまり知られてない、日本が誇るものだと思います。

別所：ね！　この番組でも、米麹の甘酒と酒粕の甘酒があるんだぞ、なんて話もしてるんです。
v SHIORI：素晴らしいです！

甘酒を使用して作られる「Ballon」のソフトクリームには、9種のトッピングがある。ラズベリーソース、パッションフルーツ、ソルトクランブル、カカオニブのほか、黒蜜きな粉という日本人に馴染み深いトッピングも人気だとか。

食卓を通じて世界を旅する

SHIORIさんは「Ballon」の他にオンラインレッスンを展開している。コロナ禍になってスタートし、料理とオンラインの相性のよさに気づいたそう。

SHIORI：対面には対面のよさがもちろんあるんですけど、オンラインだと皆さん好きな場所で好きな時間に観ることができるんですよね。現在、全世界約30ヵ国からご参加いただいているんですけど、これってオンラインじゃなかったら開けなかった可能性なので、料理とオンラインは相性がいいなと思います。

別所：アーカイブもあるから、自分の空いた時間でも観られるっていうことですね。レッスンでは和洋中、世界の料理と色々なメニュー展開ですけど、最近は台湾料理も？

SHIORI：そうですね。1月は台湾のちまきとか大根もちをご紹介しました。

別所：いいね！　僕八角が大好きなので。もうあの香りがたまらない！　「台湾だ！」って感じするじゃないですか。

SHIORI：そうですね！　今なかなか旅行に行けない時期なので、だからこそ食卓から世界を旅するっていうのはとても楽しいことだと思います！

別所：食を通じてぜひ、世界へ旅に出ましょう！　

『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』のワンコーナー「Allbirds MORNING INSIGHT」では、あらゆる世界の本質にインサイトしていく。放送は月曜～木曜の6時30分頃から。

（構成：笹谷淳介）