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永瀬正敏がオファーを受ける基準とは? 映画『ちょっと思い出しただけ』も松居大悟と語る

永瀬正敏がオファーを受ける基準とは? 映画『ちょっと思い出しただけ』も松居大悟と語る

俳優の永瀬正敏と、映画監督・松居大悟が映画『ちょっと思い出しただけ』について語り合った。

永瀬が登場したのは劇団ゴジゲンの主宰である松居がナビゲートする、J-WAVEで放送中の『JUMP OVER』。オンエアは2月23日(水)。同番組ではラジオ、映画、演劇、音楽などの枠を越えた企画を発信し続けている。

永瀬がオファーを受ける基準とは?

永瀬は2月11日から公開された、松居がメガホンを取った映画『ちょっと思い出しただけ』にジュン役で出演している。
松居:「永瀬さんといえば」というのは、みんなそれぞれ違うイメージがあると思っていて。僕は山田洋次の『息子』とか、石井克人の『PARTY7』とか、尖ったときの印象と『息子』とのギャップに、「この人はいったい何者なんだろう?」という印象がすごくあるんです。いまやられている作品もまた全然雰囲気が違ったりすると思うんですが、キャラクターは仕事を選ぶときに意識されていますか?
永瀬:それはあんまり意識していなくて。基本的にはよくばりなので、いろいろな役をやってみたいなというのはありますけど。役者は自分たちから動いたときは別ですけど、それ以外はオファーがこないと受け身なので、「こういう役」とかあんまり理想を持たないようにしているんですね。きて出会った役が、一番やりたかった役なんだと思うようにはしています。
松居:選ぶときの基準はありますか? たぶん、全部を受けるわけにはいかないじゃないですか。
永瀬:まあ、そうなんですよね。「あとから思えば」ということが多いんですけど、最初のとっかかりは台本やプロットを途中下車しないで一気に読めたときっていう。
松居:へー!
永瀬:あとから思うと(そういう作品を)やらせていただいていることが多いなっていう。まあ順番もあるんですけど。僕は映画を同時進行ができないもので、順番ももちろんあるんですけど。でも思い返せばそういうことが多いですね。
松居:もらった台本を一気に読めたとき。
永瀬:ええ。「ちょっと携帯」とか「ちょっと飲み物」みたいな途中下車が入らないというか。
松居:自分の役がどうとかはあまり関係ないんですね。作品がっていう。
永瀬:そうですね。途中で自分の役がどれだったかわからなくなっちゃうときもありますね。

現在も日本や海外を問わずに活躍を続ける永瀬。現在公開中の映画『ホテルアイリス』では主演を映画初出演の台湾のモデル、陸夏とともに演じている。

松居:あれも海外の出演者の方だったりとか、ロケ地も台湾ですよね。どこからが真実でどこからが虚構かわからなくて「自分とは一体なんなのか」というすごく普遍的なテーマでありながら、なんかすごく背徳的な感じがあって。昨日観たんですけど面白かったです。
永瀬:ありがとうございます。
松居:ああいうのも挑戦じゃないですか。あれはどういう経緯で?
永瀬:昔からお世話になっている、一緒に80年代90年代を戦ってきた信頼の置けるプロデューサーさんがいらして「ある監督がどうしても撮りたい企画があって、ちょっと1回本を読んでみてもらえないか」と言われて読んでいって。小川洋子さんの原作があるんですが、原作では(自分の役が)ちょっと年上なんです。なので読ませてもらって面白かったんですけど「僕が老けメイクだったりとかするんじゃ、ちょっと映画のためにならないと思うんですけどね」みたいな話をしていたら、僕がやった役を少し年齢を下げて、ご一緒する主演の女優さんをもうちょっと年齢を上げてやろうと思っているんだって言われて。「じゃあ、ぜひぜひ」という感じだったんです。

松居が永瀬にオファーした経緯

映画『ちょっと思い出しただけ』は、ジム・ジャームッシュ監督の『ナイト・オン・ザ・プラネット』から影響を受けたクリープハイプの尾崎世界観が『ナイト・オン・ザ・プラネット』という曲を作り、そこから松居が脚本を書いて映画化が実現。永瀬が過去にジャームッシュ作品にも出演していることもオファーの理由だったという。

松居:ジャームッシュ作品の世界を生きていた永瀬さんがこの世界に来てくれたらすごくいいなと思って、台本を書いてオファーさせていただいたんです。そのときはどう思われました?
永瀬:うれしかったですね。もちろんいまもジャームッシュは映画を作り続けているけど、僕らが興奮しながら観ていたころの作品というのはもう随分前の作品なので。そこから影響を受けた方々がいて、今またそのオマージュというかなんというか、映画を作ろうとしてくれているんだ、というのがまずすごくうれしくて。
松居:『ミステリー・トレイン』じゃジャームッシュが(当時)36歳とかで、僕がいま36歳なんです。それもあとで知ったんですけど。
永瀬:そうか、あのとき36なんですね。
松居:僕の名前というか作品は知っていたんですか?
永瀬:もちろん観させていただいていました。
松居:ありがたいです。台本をお渡ししたときに「1回会って話しましょう」とお会いして。照生がいつも通る道のベンチに座っているジュンという役でお願いしたい、というところで。このジュンというのが『ミステリー・トレイン』のジュンなのか、そうじゃないのか、みたいな話がすごく印象に残っていて。「『ミステリー・トレイン』のジュンだとしたら、それはジムが作った役だからそれはちょっと難しいかもしれないけど」と言われて「いや、そうじゃないジュンです」みたいな話をさせていただいて。
永瀬:そうでしたね。
松居:作品のなかの役は全然違うものなんだけれども、ジム・ジャームッシュのDNAというか、そういうものだったりとかはこの作品には生きてもらいたいというのでやりとりをさせてもらって。時間が1年ずつさかのぼっていく話なんですけど、ジュンという人だけは時間が順行していくというか。それは愛にまつわる話で、照生と葉はもう別れてしまっているんだけれども……とか、いろいろな人がいろいろな出会いがあったり別れがあったりするんですけど、ひとり愛を貫く人がいてほしいと思って。ジュンがその役で、愛を貫く人は物語の構成すら超越してほしいと思って永瀬さんにお願いしたんです。そんな役としてはイメージがしづらいというか、そこに関しては大丈夫でしたか?
永瀬:「これ僕だけ順で言ってるんですか?」みたいなことは何度かお聞きしました。そこだけつかんでいればというか、わかっていればあとはもう現場でお任せしたいという風に思っていましたね。「どういう風にアレンジしてもらえるんだろう?」みたいなことを。1日だけの撮影だったんですけど、主演のおふたりの6年間は1日で目撃できる役だったので。ベンチに座りながら、いろいろな感情がありましたね。
松居:それこそ衣装合わせのときとかに「胸にバラを刺して、そのバラが段々枯れていくのはどうだろう?」みたいな話とかで、ジュンという役をどう見せるかについて打ち合わせさせてもらって。それも衣装合わせなんだけど、衣装合わせというよりも普通に作品をどう見せるのか? の話し合いのほうが長く話した気がして、すごくうれしかったですね。

松居は永瀬が公開後の舞台挨拶で「(鈴木慶一の)タクシー運転手をやりたかった」と発言したことに触れた。永瀬は冗談だったとしながらも、発言に至った理由があるという。

永瀬:もともとジムが作った『ナイト・オン・ザ・プラネット』というのは、同じ時刻でいろいろな国のタクシーの運転手さんたちの人間模様を描いた作品なんです。ジムさんに会ったときに「東京、撮れなかったんだよね」って話をされていて。それはなんでかというと「ナイトじゃないから」っていう、時差の関係でデイ(昼)になっちゃうと。
松居:明け方に向かっていく話ですからね。
永瀬:だからそれは残念だったな、という話をしていたので。それも含めてもしジムさんが作るんだったら、お客か運転手かのどっちかというのはもちろん思っていたので(笑)。
松居:それが『ナイト・オン・ザ・プラネット』の東京編だとしたら(笑)。
永瀬:でも慶一さんもすばらしかった。

映画『ちょっと思い出しただけ』の公式サイトはこちら

同番組では3月2日も永瀬正敏とトークを繰り広げた。2022年3月9日(水)までradikoで聞くことができる。

【radikoで聞く】https://radiko.jp/share/?sid=FMJ&t=20220303020000

松居大悟がナビゲートするJ-WAVE『JUMP OVER』の放送は水曜の26時から。

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2022年3月2日28時59分まで

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JUMP OVER
毎週水曜
26:00-27:00