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かつて「511日間」も上映された名作『ウエスト・サイド・ストーリー』 魅力を湯川れい子が語る

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かつて「511日間」も上映された名作『ウエスト・サイド・ストーリー』 魅力を湯川れい子が語る

ミュージカル映画『ウエスト・サイド・ストーリー』の魅力とは? 音楽評論家の湯川れい子が語った。

湯川が登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』(ナビゲーター:別所哲也)のワンコーナー「Allbirds MORNING INSIGHT」。ここでは、10月18日(月)のオンエア内容をテキストで紹介する。
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湯川れい子(写真:前田昌宏)

ショービジネスを変えた名作

ミュージカル映画『ウエスト・サイド・ストーリー』は1957年にニューヨーク・ブロードウェイでミュージカルとして初演され、1958年のトニー賞2部門を受賞。その後、1961年に映画化され、アカデミー賞10部門を受賞したという名作。別所は湯川へ「初めてこの映画をご覧になったことを覚えてらっしゃいますか?」と話を聞いた。

湯川:もう鮮烈に覚えていますね! 有楽町のピカデリー劇場。昔は川があったんですよ、数寄屋橋に。
別所:そうなんですよね、だから橋という風になってるんですもんね。
湯川:そうなんです。私はピカデリー劇場でこの映画を観て、あまりにも感動してしまって、しばらく椅子から立てなかった記憶があって。それからその後、数寄屋橋の上に立って川の流れを見ながら、しばらくぼーっとしてた記憶があるんです。この映画はね、封切られてから511日間、約1年半近く公開されていましてね。
別所:うわあ、超ロングランですね!
湯川:そう! 超ロングラン。いまでは考えられないですよね。
別所:映画ですもんね。ミュージカル映画。
湯川:それほど上映が続いたんですけど、ここから、日本の、いやこれは世界もですけど、テレビもダンスもステージも音楽もガラリとショービジネスが変わりました!

いまでは考えられないロングラン上映。日本のショービジネスも多く変わったとのことだが、どこに魅力があったのだろうか。

湯川:とにかくその頃は巨大スーパーパナビジョンというスクリーンそのものが鮮烈な大きさだったんですけど、そのスクリーンにニューヨークの街のウエストサイドを俯瞰するところからピーっと口笛かなんかが聴こえて、それから俯瞰する絵がガーッとウエストサイドのバスケットコートに迫っていくわけですよね。もう、そこからあとは息をつくこともできなかった! なにしろ、ジェローム・ロビンズのダンスの振り付けですよ! 私たち日本人が知っているようなダンスではなかったです。

NYのリズム、息吹が吹き込まれた名曲の数々

湯川は、ジェローム・ロビンズの名前を挙げ、『ウエスト・サイド・ストーリー』の魅力を解説した。

湯川:ジェローム・ロビンズの振り付けはバレエのダンスに非常に近かった。当時の日本ではヴォードヴィル的なタップダンスが入ったようなものが多かったんですけど、彼のダンスはそういったものではなく、ニューヨークの街そのもののリズムを取り入れてとてもエレガントに見えるダンスだったんです。それはたぶん、バレエの振り付けや映画監督までこなす彼だからこそだと思うんですが、それよりも私は、やっぱりね、ハーンスタインとジェローム・ロビンズのこのふたりの組み合わせがすごかったと思うんです。
別所:そうですね。いま作曲家のお名前が出ました、レナード・バーンスタイン。
湯川:もう少し、ジェローム・ロビンズのお話をすると、彼はニューヨーク・マンハッタンの生まれなんです。映画で大活躍したフレッド・アステアに憧れてダンサーを志した人なので、彼のダンスの振り付けにはニューヨークのリズムがあったんですね。そして、バーンスタインはマサチューセッツの生まれで、ユダヤ系のアメリカ人。25歳のときからずっとニューヨークで仕事をしてブロードウェイをやってますから、この人にもニューヨークの息吹があったんです。ふたりともニューヨークのリズムと息吹をもったこのコンビネーションで、『ウエスト・サイド・ストーリー』ができているということが私はすごかったと思います。

ニューヨークのリズムが魅力だったと話す湯川。『ウエスト・サイド・ストーリー』は劇中、数多くの名曲が歌われている。

別所:例えば、『Something's coming』、『Maria』、『America』、『Tonight』など本当に一つ一つがゾクゾクするなという楽曲ばかりなんですが、この楽曲が持っている意味みたいなものは湯川さんはどう捉えていますか?
湯川:やっぱり、ブロードウェイミュージカルというものを知り尽くしているふたり。なおかつバーンスタインはメロディーメーカーでもあったんです。しかもとにかくニューヨークのリズムを知っている。このときはプエルトリコの女優はまだリタ・モレノしかいなかった時代ですけど、いまはジェニファーロペスとかブルーノマーズとかプエルトリコ系の人もたくさん活躍していて、だから今度のね、スピルバーグバージョンで楽しみなのはどれほどこういった本当のヒスパックのプエルトリコ系の人たちがキャスティングに生かされているかということ。
別所:そうですよね〜!
湯川:これも楽しみのひとつなんですが、そういった意味でバーンスタインという人がラテンのリズムとジャズもミックスしてこのウエストサイドストーリーの音楽を作ってらっしゃる。ブロードウェイで最初に作られたから、そういうものが活かされてる楽曲だと思いますね!

別所は続けて、オリジナル版『ウエスト・サイド・ストーリー』が傑作と言われる訳について、湯川に聞いた。

湯川:やっぱり音楽とダンスと、そしてニューヨークそのもののリズムですかね。1964年東京オリンピックの年に、初めて私たちも500ドルの外貨を獲得することができて、私はオリンピックの最中にニューヨークに降り立っているんですが、空港からマンハッタンに入っていくとき、橋を渡ってまずウエストサイドなんですね。右手にバスケットコートが見えたときは本当に「ここだあ〜!」と思いましたね。
別所:本当に貴重な経験をされ、その世界が重なっていったという興奮が伝わってきました。

公開から60年、再び映画となった『ウエスト・サイド・ストーリー』

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番組は終盤、12月10日に公開される、スティーブン・スピルバーグ監督がメガホンをとったスピルバーグ版『ウエスト・サイド・ストーリー』についての話題へ。登場するキャストの話題を話す中、湯川はベルナルド役が誰になるのか気になると話す。

湯川:ジョージ・チャキリスが演じたベルナルドは誰がやるんですかね?
別所:本当に! 僕も子供の頃初めて『ウエスト・サイド・ストーリー』観て、そこから何度も観ている映画ではあるんですが、あのジョージ・チャキリスのみずみずしい、キラキラ輝くスターが誕生した映画だなと子供ながら思っていました。
湯川:正直、私たちはポーランド系のジェット団とかプエルトリコ系のシャーク団だとか分からず初めて観てるわけです。でも明らかに顔の濃さが当然違うわけですよね。そこで初めてヒスパニックの方たちが置かれていた立場やウエストサイドがどういった場所なのか、何度も何度も足を運んで、初めて行った64年に行ったときは「危ないから行ってはいけない」と言われましたもん。その頃のハーレムや黒人の方が住まれているところなんかは行くこともできなかった。

別所は公開から60年を経たいま、再び映画となった『ウエスト・サイド・ストーリー』について湯川に聞く。

別所:当時とは人種差別、表現の仕方、置かれている状況も少し違うと思いますけど、スピルバーグ版『ウエスト・サイド・ストーリー』はいかがですかね?
湯川:全く違うんですけど、ブラック・ライブズ・マターという問題がいまだにアメリカでは引きづられているように、スピルバーグは今回の映画を通して言いたいことが色濃くあるのだろうなって思うんですよ。残念ながらまだ観ることができていないのでなんとも言えないんですけど……。
別所:そうですよね〜! これは期待が膨らむばかりですね! 
湯川:公開が待ち遠しいですね!

『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』のワンコーナー「Allbirds MORNING INSIGHT」では、あらゆる世界の本質にインサイトしていく。放送は月曜~木曜の6時30分頃から。

(構成:笹谷淳介)

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