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「ハーフ」「女優」という言い方はNG? 長谷川ミラがラジオの発信で心がけていること

「ハーフ」「女優」という言い方はNG? 長谷川ミラがラジオの発信で心がけていること

Z世代の一人として積極的に社会問題について発信するモデル・長谷川ミラ。オールジェンダーブランドを運営したり、自身がナビゲーターを担当する番組『START LINE』(毎週金曜16:30~20:00)でも、多様性にまつわるトピックスを紹介したりしている。

昨今、メディアも多様性のある社会に向けて価値観のアップデートが求められている。長谷川はメディアで発信する立場として日々どんな思いと向き合っているのだろうか。また自身が大好きだと語る、K-POPのおすすめ曲や今後番組で挑戦したいことを訊いた。

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ラジオナビゲーターは努力ではまかないきれない壁がある

──番組開始から1年が経ちましたね。日々どんな気持ちで番組を届けていますか。

こんなに早い一年は人生で初めてだったし、まだ全然慣れていないですね。いまでも毎週「闘うぞ!」という気持ちで挑んでいます。それに、モデルの仕事をしているとなかなか同じ現場で何かを作り上げるというのはなかったので、毎週金曜日に同じ場所に来て、スタッフさんとチームで取り組むということのたのしさ、むずかしさも勉強になっています。

──番組冒頭の英語での曲紹介がすごく印象的です。インスタグラムのストーリーズでも毎週その様子をアップされていますが、はじめたきっかけは?

番組当初から「私のJ-WAVEらしさは何だろう」ということをずっと考えていて、オープニングを英語で海外のナビゲーターみたいにやってみたら、ジョン・カビラさんやクリス・ぺプラーさんっぽくなれるかなと思ってはじめてみたんです。でも、いまだに毎回手が震えるほど緊張していますね。

私は子どものときから、「何でもすぐにできる」というタイプではなくて。努力しないと何もできないから、逆に「準備してきたから失敗してもいいや」と緊張することがなかったんです。でも、ラジオは毎週違うゲスト、違う天気、違う世の中の状況……努力だけではまかないきれない部分がたくさんありますよね。だから一年経った今でも毎回緊張しています。

「ハーフ」「女優」はNG? 決めつけずに考えていく

──番組では、LGBTQやセルフラブなど、多様性にまつわるトピックスも多く紹介されていますよね。昨今、「ハーフ」ではなく「ミックス」と言ったり、「女優」を「俳優」と言ったりなど、価値観のアップデートが言葉にも表れています。ミラさんは番組でも意識していますか。

私は番組を通じて社会が作ってしまったさまざまな壁について考えてほしいと思っています。私自身は「ハーフ」と言われても全然気になりませんが、番組に出るときは、一定数のミックスの人たちが「嫌だ」と感じているんだったら、それはきちんとメディアとしての責任をとるべきだと感じていて。自分のインスタでは「ハーフ」と表現しますが、番組の放送中はJ-WAVEを代表しているつもりなので、そこを意識しているよというアピールを込めて言葉の表現には気を付けています。

チームのみなさんと相談しながら進めることもたくさんあります。以前、台本に「男の子だけど、かわいい」というフレーズがあったのですが、「これはジェンダーバイアスがかかっているからカットしましょう」と話し合って削ったこともありました。

──「ハーフ」にしろ「女優」にしろ、本人が自称している場合はどうするか、という問題もありますよね。

そうですね。本当に言葉遣いはケース・バイ・ケースだなとも思っていて。以前SCANDALさんとご一緒したことがあったのですが、SCANDALさんは自ら「ガールズバンド」と言っていたので「それは修正しないほうがいい」と思い、そのままご紹介しました。「ハーフ」ではなく「ミックス」と言うことや「女優」と「俳優」を言い換えることが必ずしも正しいことだとは断言できないから、型にはめるよりも相手を気遣うという姿勢をメディアがお手本となって伝えるべきだと思います。

今の日本に足りないのは「芸能人が社会問題について話すこと」

──ミラさんはSDGsにまつわるさまざまな問題を発信されていますね。メディアでは「若い世代に影響力を持つインフルエンサー」として取り上げられることも多いかと思います。どんな意識で活動されているんでしょう?

実は、私自身がSDGsを発信しているといったことは一回もないんです。もともとイギリスに留学しているときにジェンダー問題や環境問題、LGBTQなどに関心を持ってずっと発信してきたのですが、コロナ禍に入ってSDGsが流行り始めたとき、「ミラちゃんが言ってることってSDGsだよね」と後付けで言われた形なんです。だから、もし「社会問題にはどんなものがあるの?」と訊かれたら「SDGsの項目を見てみたらいいんじゃないかな」と提案はしますけど、私は何か特定のジャンルに取り組む“活動家”ではないんです。

自分は社会問題について何ができるだろう?と考えたとき、フェミニズムから海洋プラスチックの問題まで、それぞれの分野で活動している同年代の子がたくさんいることを知って、「今必要なのは、新たな活動家じゃなくて、メディアに出てしゃべれるタレントやモデルなのかな」と思ったんです。私は社会問題を考えてもらうきっかけを作るパイプのような役割を果たして、活動されているみなさんの取り組みが円滑に進むようにしたい。その目標を達成するためにも『START LINE』は欠かせない仕事だと思っています。

──専門家ではない芸能人が、メディアで政治や社会問題を話すのは、日本では避けられてきたことだと思います。ミラさんは堂々とお話されていて、すごく希望を感じました。メディアでそういった話題を話すことが怖いと思ったことはありますか?

正直、今でも怖いです。でも、日本にも貧困があるし、男女平等問題なんて最低レベルじゃないですか。でも、なぜこんなに考える人が少ないかと言ったら、明らかに芸能人が社会問題について話している量がほかの国に比べて少ないからだと思うんです。

例えばアメリカでは、大統領選の直前になると、モデルたちが「選挙に行こう!」とインスタのストーリーを載せて、そういった時期にメイク動画などを投稿したら炎上します。でも、日本だと政治の話をしたほうが炎上しますよね。それって絶対おかしいし、「なんで自分の国のことについて話しちゃいけないの?」と思います。もっと日本の社会で政治や社会問題などを話しやすくするためには、「こういうことを一回考えてみない?」と話し合ったり、考えたりする姿勢をもっと日本の芸能界が発信していかないといけないのではと思います。

かっこよさ=見た目のよさだけじゃない。新しい美の基準を提示したK-POP曲

──ミラさんはK-POPがお好きで、番組でも選曲されていますね。読者に向けておすすめの一曲を教えてください。

2NE1の『UGLY』ですね。2NE1は、目がくりくりしていて脚が細いことが美しい、という従来の価値観とは違う美しさを提示し続けてきたグループ。この曲も外見のコンプレックスに悩む様子を歌っています。私は2NE1に出会ってから、「かっこよさは見た目だけで決めるものではない」と美というものに対しての意識がすごく変わりました。

──コロナ禍で今は難しいですが、いつか番組にもK-POPアーティストが来てほしいですね。

スタッフさんにも「K-POPのアーティスト、誰か出ないですか」といつも言っているんです。最近、いつ来てもしゃべれるように、韓国語のオンライン講座に申し込んだりもしました。コロナが明けたら、実際に韓国に行ってインタビューをするのが夢ですね。

(取材・文=J-WAVE NEWS編集部)

長谷川ミラ プロフィール

1997年7月7日生まれ、南アフリカとのミックスでロンドンの美大(セントラル・セント・マーチンズ)に在籍する現役大学生!(現在休学中)
2017年より自身のブランド「JAMESIE」を立ち上げ若者に大人気。自身のライフスタイルを発信するYouTubeチャンネルも話題。

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