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菊地成孔「ガンダムが誰か知らなかった」 アニメ・ドラマの音楽を担当するとき、原作との距離感は?

菊地成孔「ガンダムが誰か知らなかった」 アニメ・ドラマの音楽を担当するとき、原作との距離感は?

J-WAVEで放送中の番組『INNOVATION WORLD』(ナビゲーター:川田十夢)のワンコーナー「ROAD TO INNOVATION」。各界のクリエイター、イノベーターに話を聞くコーナーだ。

3月5日(金)のオンエアでは、音楽家で文筆家の菊地成孔が登場。音楽の聴き方や、アニメやドラマの音楽制作の秘話、コロナ禍における心境を語った。

やるのはジャズ、聴くのは世界中なんでも

川田は菊地を「文化的で無双な人」と表現。縦横無尽に表現の場を変えて、“好き放題”している印象があると話す。音楽家としての経歴を振り返ると、意外な番組への出演経験が語られた。

川田:最初の盤として残っているのは、ティポグラフィカ(Tipographica)作品ですか?
菊地:そうですね。でもこれは僕がリーダーじゃないので。メンバーとしてサックスを演奏して、曲名を付けてただけなので、僕の盤ということではないですよね。でも音源でいちばん古いですかね。

菊地は当時、上京して音楽学校に行ったが、しばらく生活が苦しい時期があり、ティポグラフィカと平行してスタジオミュージシャンをしていたそうだ。「その前はヒモだった」と笑いつつ「そんなに表現者としての知識とかはあまり考えず、思うがままにやっていた」と当時を振り返る。

川田:でも、ジャンルとしては最初からジャズだったんですよね。
菊地:そうですね。ジャズが好きなので。ただ、ジャズって言ってもいろいろありますけどね。
川田:同世代に甲本ヒロトさんとかいて、音楽変遷的にはバンドブームとかもあるなかで、それをどういうふうに見られていましたか?
菊地:僕、『イカ天』(『三宅裕司のいかすバンド天国』)に出たことがあるんで。アマチュアですけど。2回か3回、もっと出たかな。もちろん自分が歌うとかじゃないですけど、ちょっとラッパがほしいとかいう感じで出たんで。音楽は、やるほうはジャズですけど、聴くのはなんでも聴くので。世界中のものを聴きます。
川田:だからザ・ブルーハーツとかも、べつにわけて考えてなかったと。
菊地:ザ・ブルーハーツは甲本さんが同い年だからっていうわけじゃないですけど、甲本さんは素晴らしいと思いますよ。詞から何から。詞がいちばんいいと思うけど、歌もすごいし、何から何まですごいから、ホントに天才じゃないですかね。

アニメやドラマの原作との距離

菊地は、マンガを原作としたアニメやドラマの音楽を制作している。『LUPIN the Third~峰不二子という女~』や『機動戦士ガンダム サンダーボルト』、最近では荒木飛呂彦による人気マンガ『岸辺露伴は動かない』実写ドラマの音楽を担当して話題となった。

川田:アニメやドラマの原作との距離ってどうされているんですか?
菊地:もちろん知っている原作もありますし、知らない原作もありますし。でも僕はゲーム、マンガ、アニメとかジャパンクールをあまり嗜まないので。嫌いとかじゃないんですけど、他にやることがあるから嗜む時間がないっていうか(笑)。でも、『LUPIN the Third~峰不二子という女~』のときは、さすがに『ルパン三世』は知っていたのですけど。そのあともスピンオフばっかりやってるんですけど、『機動戦士ガンダム サンダーボルト』のときは、『ガンダム』っていう名前は知っていたけども、ガンダムが誰か知らなかったので(笑)、しまったと思ったんです。
川田:“誰か”知らない(笑)。
菊地:でも「何でもいいからジャズを当ててくれ」と言われて。『機動戦士ガンダム』の原作は膨大でしょ?
川田:膨大ですね。
菊地:だから今から録音までに予習しましょうなんてすると徹夜が続いちゃうので、あえて観てないですね。ただ、「ガンダム」の音楽をやるって言うとみんながざわついちゃって。

『岸辺露伴は動かない』は、『ジョジョの奇妙な冒険』のスピンオフ作品。今回も「大変なことだ」と周囲に言われたそうだが、菊地は「いや、知らないんだよね」と返したのだとか。

菊地:音楽家が原作を貴ぶべきだというご意見もあるのでしょうけども、あえて出来上がった作品だけを観てやってますけどね。
川田:でも音楽がピタッと作品にハマっていますよね。原作にこの音楽が流れてたんじゃないかって思うくらい。
菊地:よかったです。オファーをくださるプロデューサーさんとか監督さんとかが「音楽は何でもいいよ」っていう場合と、「これとこれで」って細かい内容の場合があるので。『岸辺露伴は動かない』のときは比較的、細かかったですね。
川田:『ガンダム』のときの音楽で民謡の『串本節』を使われてたじゃないですか。それは(菊地)成孔さんの判断ですか。
菊地:そうですね。
川田:あの音と『ガンダム』の妙もすさまじかったですね。
菊地:『ガンダム』のときは、スタッフの人たちが「音楽は全部お任せします」って言って、本当はいただけないんですけど、曲を選んで張るって感じで。オーディオとかも全部やらせてもらいましたし、整音もやりましたね。

コロナ禍は「そういうこともあるでしょ」

菊地が主宰するビッグバンド「DC/PRG」は、3月26日(金)に大阪・梅田バナナホール、4月2日(金)に東京・新木場スタジオコーストをまわるツアー「Hey Joe, We're dismissed now」をもって解散する。

川田:新型コロナ以降のご自身の活動はどう感じられていますか?
菊地:今回の解散だとかライブに、新型コロナは外側からしか関係してないですけどね。僕の内側は、世の中が何かあっていろんなことがやりづらくなっちゃったりとか(は、ないですね)。うちの親族一同は太平洋戦争を経験しているから、灯火管制とかアメリカの音楽は聴くなとか、家にある鉄製のものを全部軍に出せとかそういうのもあったわけ。しかもそれは6年間続いたわけなので、2、3年みんなマスクしてるからって困ったとかは何ともないというか。そういうこともあるでしょって感じですよね。だから解散するのも新型コロナは関係ないですね。

菊地は1月に『次の東京オリンピックが来てしまう前に』(平凡社)を上梓。こちらもぜひチェックしてほしい。

菊地成孔の最新情報は、公式サイトまで。

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