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ダイソン、27億5000万ポンド(約4372億円)投じて技術開発! 「野望」を同社の女性エンジニアに聞く

ダイソン、27億5000万ポンド(約4372億円)投じて技術開発! 「野望」を同社の女性エンジニアに聞く

掃除機や羽のない扇風機など、家電製品で数々のイノベーションを起こしてきた会社・ダイソン。同社のヘアケアRDD(※) シニアデザイン エンジニアのヒダヤ オスマンさんが、現在の研究や今後のビジョンについて語った。(※RDD=Research Design & Developmentの略)

ヒダヤさんが登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『INNOVATION WORLD』(ナビゲーター:川田十夢)のワンコーナー「GLOBAL OPEN INNOVATION」。オンエアは6月2日(金)。

「無視されているような問題」も解決していく

ダイソンは5月、ダイソン日本法人設立25周年を記念したイベント「Dyson launch pad- ダイソンの出発点」を、「原宿Jing」で開催した。川田が展示会に赴いた際に、シンガポールから来日したヒダヤさんに直接インタビューをおこなった。

川田:ダイソンで、どんなお仕事を担当されているんでしょうか。

ヒダヤ:基本的に電気統合、メカニカルデザインを担当しています。ここ4年間、シンガポールでデザインエンジニアチームの一員として、ヘアケア製品に携わっています。デザイン、開発、ドライヤー「Dyson Supersonic Shine」などの製品を作っています。「Dyson Airwrap™マルチスタイラー」(過度な熱に頼らずに、カール、ブロー、ドライが可能な製品)も担当していました。ダイソンでは最新のエンジニアリングを使いながら製品開発をおこなっています。試作品を作ったりシミュレーションをしたり、エンジニアリングのドローイングとかテストをおこなったり。音響関係やパフォーマンスのテストもおこなっていきます。

ヒダヤさんは新卒エンジニアのトレーニングなど、若手の育成もしていると語った。

ヒダヤ:我々はエンジニアの問題を解決しています。たとえば安全性や効率性、製品のビジョンを用いながら、タイトなタイムラインのなかで仕事をしています。すべてのエンジニアリングの要素を取り入れながら、エンジニアリングの解決案を編み出して、コンプライアンスや信頼、テスターとして品質、そして製造関係すべてを網羅しています。我々はダイソンのエンジニアなので、ほかの方々が無視するような問題解決をするのが大好きです。

実験は「女性エンジニアの髪の毛」を使用する

ヒダヤさんはダイソンでの雇用の平等さと、女性エンジニアだからこそできる実験について語った。

ヒダヤ:シンガポール、特にダイソンでは男女平等を大事にしておりますので、世界にくらべて女性が多いと思います。そういう意味でもダイソンは魅力的な会社です。しかし、日本のみならず世界中で多くの女性エンジニアが出てくるといいですよね。ヘアケアで大事なのは、やはり「女性が支援してくれる」ということです。ユーザートライアルや実験もおこないますので。女性の髪の毛を使っています。髪質はタイプ1からタイプ4の髪質がありますが、マネキンの髪の毛は使いません。我々は女性のエンジニアの髪の毛も使うことがあります。

川田:ダイソンのエンジニアたちが気を付けていることはあるんでしょうか。

ヒダヤ:すべてを大切にしています。たとえば昨年、500万ポンドを研究開発にあてています。20の新製品をここ3、4年かけて出していくんですが、それに向けての投資です。このような最先端の施設をUK、マレーシア、フィリピンに設けて、より健康的な髪を作るために問題解決をしています。本日6000名以上のエンジニア、ヘアサイエンティスト、そしてプロのスタイリストを雇用しながら、世界中でヘアケアの解決案を網羅しています。本質的なものを作ろうと思っていますし、先駆的なものとソリューションを提供したいと思っています。

川田:今日、(ダイソンのイベントに)お邪魔してびっくりしたのは、エンジニア本人が自分でデモをやってくれたりしたことです。あまり見たことがないというか。特に日本のメーカーは絶対にそういうことをしないから。でも、とても実感を持って伝えてくれたから、いいところが伝わるんです。こういうのもダイソンのイズムがあるんでしょうか。
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「Dyson Launch Pad~ダイソンの原点」にて。川田もDyson Supersonic Shine ヘアドライヤーを体験し、髪の変化の様子に驚いていた。

ヒダヤ:ダイソンには実はちょっと変わった人や好奇心のある人が多いんです。我々はデスクに向かって仕事をしているのではなく、いつも動き回っています。私自身もオフィスに行くと毎日7000歩、歩きます。たとえば我々のダイソンオフィス、RMTの部分に行きますと、みんな走り回ったり歩き回ったり、手もずっと動いて何かを作っています。ダイソンのエンジニアは手を使う人間が多く、それが一番早い方法で、いろいろ習得したり問題解決できる方法だと考えています。

世界規模でヘアケアを研究

ヒダヤさんは、国によって異なる髪質などの研究についても説明した。

ヒダヤ:2022年に世界最大規模のヘアケアの研究をしました。それによってグローバルなさまざまな髪質とかスタイリングの在り方を研究しました。グローバル規模でデータを収集し、髪の科学、エンジニアリングを通じて分析をおこないました。国によって髪の問題が違います。日本でもシンガポールでもUKでも違う髪の問題をみなさまが抱えています。アジアの髪の毛とほかの国の髪の毛は違いますし、スタイルの好みも違います。ある国はカーリーヘア、ある国はボリュームヘア、ある国は真っすぐ、そういう好みの違いもありますので、どの国でもどの要望にも応えられる製品を作らなければなりません。

川田:いまヒダヤさんが感じでいるヘアケア製品の業界の課題、ダイソンの抱えている課題がありましたら教えてください。

ヒダヤ:ヘアケアエンジニアとしてたくさんの課題があり、毎日直面しています。ご存じの通り毎日問題解決をしていて、問題は止まることなくやってきます。髪の科学、ヘアタイプの研究もしておりますので、たくさんの情報があります。そして国別で違う情報があります。ヘアタイプや質感や髪型がどう違うのかも研究しなければなりません。また、ユーザーすべての問題を検討しながらベストなヘアスタイル、そして健康的な髪型が実現するようにしなければなりません。

ヒダヤさんは「いかに髪にダメージを経験させないようにするか」が重要だと解説。髪は一度ダメージを元に戻ることがないのだという。

ヒダヤ:150度以上になるとαケラチンがβケラチンになってしまいます。230度以上だと髪の毛は溶け始め、さらにダメージを受けてしまいます。なので我々エンジニアのチャレンジは、ヘアサイエンスを使いながら、我々の製品にそれを反映させる。それがちゃんとしていることを確証しなければなりません。何度も何度もテストにかけ試行錯誤します。たとえば熱関係や音関係、気流関係、そして商品のパフォーマンス別にもさまざまな調査をおこなわなければなりません。

川田:最後にダイソン社、ヒダヤさん個人のビジョンなどあれば教えてください。

ヒダヤ:エンジニアとして我々は新しいことを学ぶのが大好きですし、新しいスキルを得ることも大好きです。ただ知るだけではなくて、世界中でどういう新しいことが起きているのかを知りたいと思っています。我々は新しい技術を開発していますので「既存の情報」がありません。我々は27億ポンドの投資をここ5年かけてしていきたいと思っています。

27億ポンドの投資 については、2020年にダイソンが計画を発表し、2022年12月には次のステージについて発表(27億5000万ポンド=約4372億円、1ポンド=159円換算)。

※出典
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000033.000042335.html
https://www.dyson.co.jp/community/news/software-and-connectivity.aspx


ヒダヤ:シンガポールでもフィリピンでもブリストルでもさまざまな技術センターや製造センターが作られています。このような新しい空間は我々の野望のスケールを反映していますし、今後も製造キャパを増やしていきたいと思っています。ダイソンのエンジニアは、私もそうですが、よりよいソリューションをエンジニアリングの問題にあてていきたいと思っています。ダイソンはこのようにクリエイティビティを引き出してくれる空間を作ってくれているので、今後も問題解決に真摯にあたっていきたいと考えています。

『INNOVATION WORLD』のワンコーナー「GLOBAL OPEN INNOVATION」は、各分野のエキスパートを招き業界トレンドをお届けする。放送は毎週金曜の21時15分ごろから。

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