J-WAVEで放送中の番組『ANA WORLD AIR CURRENT』(ナビゲーター:葉加瀬太郎)。10月17日(土)のオンエアでは、映画監督・深田晃司がゲストに登場。ここでは、カンヌ国際映画祭での印象に残った出来事や、アフリカの映画祭で経験したアクシデントについて語った部分を紹介する。
葉加瀬:カンヌ映画祭で一番エキサイティングな出来事はなんでしたか?
深田:やっぱり上映のときですね。大勢のブラックタイの方たちが、自分の映画を観ますから。音響設備もすごくいいものを使っているんですよ。ただ、映画が終わってからスタンディングオベーションをしてくださったときは、どういう顔をして立っていればいいのかわからなくて戸惑いました。
葉加瀬:あはは(笑)。上映中はお客さんの反応を見て、終わったらステージに立つもんね。たしかに不思議な感覚ですね。
深田:海外の観客は反応がダイレクトでしたね。ビックリすると「うわあ!」って言うし、おもしろい場面ではよく笑います。あと、これは海外の方でよくあることなんですけれど、自分に合わないなと思った映画は途中で席を立ってしまうんですよ。この反応に耐えられないと、日本の監督は心に深い傷を負いますね。
葉加瀬:心が折れちゃうよね(笑)。
深田:日本の観客は真面目で優しいので、つまんないなと思っても最後まで観てくださいます。あと、上映後には映画の質疑応答をする時間があるのに、エンドクレジットが流れ出すと人がどんどんと出ていくんですよ。「このあとトークがあるのにな。映画がつまんなかったのかな」と心配になって見ていたら、出て行こうとしたおじいさんと目が合ったんですね。そうしたら、おじいさんは笑顔を浮かべながら「すごくおもしろかったよ」と言ってくれたんです。おもしろかったのなら、残ってくれたらいいのにって思いました(笑)。
葉加瀬:(笑)。コンサートに関しても言えることなんだけれど、海外の観客は「エンターテインメントをどう楽しむか」に重きを置いているよね。日本人は優しいというか、何かと気を遣うのよ。
深田:ほかのお客さんや作り手のことを考えながら映画鑑賞していると思いますね。最初は海外の反応に戸惑いはしたのですが、その経験を経て日本の映画館に行くと「もっと自由に映画を観てもいいのにな」と感じることはあります。
葉加瀬:たしかに(笑)。暗黙のルールみたいなものはありますよね。
深田:2011年に映画『歓待』を上映するためにアフリカのダーバンに行きました。印象に残っているのは、アパルトヘイト政策が廃止されてからだいぶ経ってはいるけれど、やはり差別が根強かったところですね。黒人が都心部に移ってからは、白人が都心を離れて郊外にコロニーを形成してしまったので、全然交わりがないんですよ。
葉加瀬:なるほど。
深田:映画祭に関しても白人ばかりが参加することになってしまっているので、映画祭の関係者たちも現状を嘆いていました。ただ、『歓待』を上映したときは黒人のお客さんも何人か来てくれていて、映画祭を楽しんでいましたね。『歓待』という作品は、日本における人種問題や外国人排除をテーマにした作品だったので、映画終了後の質疑応答を楽しみにしていたんです。そして、お客さんたちと一緒に15分ぐらい映画を観ていたのですが、慌てたスタッフさんがいきなり入ってきて、スクリーンの前でディレクターとミーティングをはじめちゃったんですよ。
葉加瀬:えっ、上映中にですか?
深田:はい。映画がまだ続いているにもかかわらず、話し合いがはじまってしまいました。そうこうしているうちに館内アナウンスが流れてきたのですが、内容は「火事です。今すぐ映画館を出てください」でした。映画館はショッピングモールの中にあるシネコンでしたので、映画をストップして避難することになりました。外に出てみたら消防車が3台ぐらい集まっていました。
葉加瀬:大変な状況だね。
深田:どうやらショッピングモールでボヤ騒ぎがあったそうです。
葉加瀬:それで、映画上映は中止になっちゃったの?
深田:もう一度上映することになっていたのですが、1週間以上先だったので、自分はその日まで滞在できませんでした。ダーバンに行くこと自体、一生に一度あるかないかの経験なのに、それに加えて映画鑑賞中の火事ですからね。これはもう奇跡だなって思いました。
葉加瀬:本当だね(笑)。いろんなことがすごいタイミングで重なったんですね。
深田監督の最新作『本気のしるし 劇場版』が現在上映中。第73回カンヌ国際映画祭のオフィシャルセレクション2020に選出された同作は、漫画家・星里もちるによる同名コミックを原作に、森崎ウィンを主演に迎えた作品だ。
【深田晃司監督インタビュー】男性が求める女性像のアンチテーゼ。映画『本気のしるし』はイライラするけど…
【あらすじ】
中小商社に勤める会社員・辻一路。社内の評判はよく、恋人関係のような女性もいるが、他人に好かれるのも他人を好きになるのも苦手で、本気の恋をしたことがない。ある日、彼はコンビニで不思議な雰囲気の女性・葉山浮世と知り合う。しかし、彼女と関わったばかりに次々とトラブルに巻き込まれていく。魅力的だが隙と弱さがあり、それゆえ周りをトラブルに巻き込んでいく浮世と、それに気づきながら、なぜか彼女を放っておけない辻。辻は裏社会の人間と関わり、仕事や人間関係を失いながらも、何とか彼女を手に入れようと、さらなる破滅の道へと歩み出す……。
(公式サイトより)
『ANA WORLD AIR CURRENT』では、スタジオを飛行機の機内に見立て、葉加瀬とゲストが「旅」をテーマに語り合う。放送は毎週土曜日の19時から。
日本と海外における“映画鑑賞スタイル”の違い
深田監督は、映画『歓待』や『ほとりの朔子』など、国内外で高い評価を得る作品を数多く輩出。映画『淵に立つ』は、第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門にて審査員賞を受賞した。深田監督が振り返る、カンヌ国際映画祭での印象深い思い出とは。葉加瀬:カンヌ映画祭で一番エキサイティングな出来事はなんでしたか?
深田:やっぱり上映のときですね。大勢のブラックタイの方たちが、自分の映画を観ますから。音響設備もすごくいいものを使っているんですよ。ただ、映画が終わってからスタンディングオベーションをしてくださったときは、どういう顔をして立っていればいいのかわからなくて戸惑いました。
葉加瀬:あはは(笑)。上映中はお客さんの反応を見て、終わったらステージに立つもんね。たしかに不思議な感覚ですね。
深田:海外の観客は反応がダイレクトでしたね。ビックリすると「うわあ!」って言うし、おもしろい場面ではよく笑います。あと、これは海外の方でよくあることなんですけれど、自分に合わないなと思った映画は途中で席を立ってしまうんですよ。この反応に耐えられないと、日本の監督は心に深い傷を負いますね。
葉加瀬:心が折れちゃうよね(笑)。
深田:日本の観客は真面目で優しいので、つまんないなと思っても最後まで観てくださいます。あと、上映後には映画の質疑応答をする時間があるのに、エンドクレジットが流れ出すと人がどんどんと出ていくんですよ。「このあとトークがあるのにな。映画がつまんなかったのかな」と心配になって見ていたら、出て行こうとしたおじいさんと目が合ったんですね。そうしたら、おじいさんは笑顔を浮かべながら「すごくおもしろかったよ」と言ってくれたんです。おもしろかったのなら、残ってくれたらいいのにって思いました(笑)。
葉加瀬:(笑)。コンサートに関しても言えることなんだけれど、海外の観客は「エンターテインメントをどう楽しむか」に重きを置いているよね。日本人は優しいというか、何かと気を遣うのよ。
深田:ほかのお客さんや作り手のことを考えながら映画鑑賞していると思いますね。最初は海外の反応に戸惑いはしたのですが、その経験を経て日本の映画館に行くと「もっと自由に映画を観てもいいのにな」と感じることはあります。
葉加瀬:たしかに(笑)。暗黙のルールみたいなものはありますよね。
一生に一度あるかないかの経験なのに…
さまざまな国際映画祭から招待を受ける深田監督は、その中でも南アフリカのダーバン国際映画祭で起きた、あるエピソードを明かした。深田:2011年に映画『歓待』を上映するためにアフリカのダーバンに行きました。印象に残っているのは、アパルトヘイト政策が廃止されてからだいぶ経ってはいるけれど、やはり差別が根強かったところですね。黒人が都心部に移ってからは、白人が都心を離れて郊外にコロニーを形成してしまったので、全然交わりがないんですよ。
葉加瀬:なるほど。
深田:映画祭に関しても白人ばかりが参加することになってしまっているので、映画祭の関係者たちも現状を嘆いていました。ただ、『歓待』を上映したときは黒人のお客さんも何人か来てくれていて、映画祭を楽しんでいましたね。『歓待』という作品は、日本における人種問題や外国人排除をテーマにした作品だったので、映画終了後の質疑応答を楽しみにしていたんです。そして、お客さんたちと一緒に15分ぐらい映画を観ていたのですが、慌てたスタッフさんがいきなり入ってきて、スクリーンの前でディレクターとミーティングをはじめちゃったんですよ。
葉加瀬:えっ、上映中にですか?
深田:はい。映画がまだ続いているにもかかわらず、話し合いがはじまってしまいました。そうこうしているうちに館内アナウンスが流れてきたのですが、内容は「火事です。今すぐ映画館を出てください」でした。映画館はショッピングモールの中にあるシネコンでしたので、映画をストップして避難することになりました。外に出てみたら消防車が3台ぐらい集まっていました。
葉加瀬:大変な状況だね。
深田:どうやらショッピングモールでボヤ騒ぎがあったそうです。
葉加瀬:それで、映画上映は中止になっちゃったの?
深田:もう一度上映することになっていたのですが、1週間以上先だったので、自分はその日まで滞在できませんでした。ダーバンに行くこと自体、一生に一度あるかないかの経験なのに、それに加えて映画鑑賞中の火事ですからね。これはもう奇跡だなって思いました。
葉加瀬:本当だね(笑)。いろんなことがすごいタイミングで重なったんですね。
深田監督の最新作『本気のしるし 劇場版』が現在上映中。第73回カンヌ国際映画祭のオフィシャルセレクション2020に選出された同作は、漫画家・星里もちるによる同名コミックを原作に、森崎ウィンを主演に迎えた作品だ。
【深田晃司監督インタビュー】男性が求める女性像のアンチテーゼ。映画『本気のしるし』はイライラするけど…
『本気のしるし 劇場版』予告編
中小商社に勤める会社員・辻一路。社内の評判はよく、恋人関係のような女性もいるが、他人に好かれるのも他人を好きになるのも苦手で、本気の恋をしたことがない。ある日、彼はコンビニで不思議な雰囲気の女性・葉山浮世と知り合う。しかし、彼女と関わったばかりに次々とトラブルに巻き込まれていく。魅力的だが隙と弱さがあり、それゆえ周りをトラブルに巻き込んでいく浮世と、それに気づきながら、なぜか彼女を放っておけない辻。辻は裏社会の人間と関わり、仕事や人間関係を失いながらも、何とか彼女を手に入れようと、さらなる破滅の道へと歩み出す……。
(公式サイトより)
『ANA WORLD AIR CURRENT』では、スタジオを飛行機の機内に見立て、葉加瀬とゲストが「旅」をテーマに語り合う。放送は毎週土曜日の19時から。
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2020年10月24日28時59分まで
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番組情報
- ANA WORLD AIR CURRENT
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毎週土曜19:00-20:00
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葉加瀬太郎