音楽、映画、エンタメ「ここだけの話」
坂本龍一が語る 新型コロナウイルス状況下で「音楽・アートの役割」とは何か

坂本龍一が語る 新型コロナウイルス状況下で「音楽・アートの役割」とは何か

音楽家・坂本龍一が、新型コロナウイルスで社会が揺れる中で、音楽・アートの役割とは何か、自身の考えを述べた。

坂本がトークしたのは、4月5日(日)からスタートしたJ-WAVEのPodcast連動プログラム『INNOVATION WORLD ERA』のワンコーナー「FROM THE NEXT ERA」。同番組の第一週目のナビゲーターであるライゾマティクスの真鍋大度と語り合った。状況を鑑み、今回の放送はリモートで収録された。


■新型コロナウイルス、日本の対応に危機感

坂本はニューヨーク在住だが、3月頭からは日本で過ごしているそうだ。ヨーロッパやアメリカの急速な感染の拡大やロックダウンに比べ、日本の状況は「非常にゆるくて」と危機感を示した。坂本は日本にいながらニューヨークの方針に準じ、早い段階から外出の自粛をしていたという。

「友だちと気軽に会ったりできないことは、ストレスです。しかし、世界を見ると、人工呼吸器がなくて一日に何十人も亡くなっている。それに比べれば、家に籠もっているストレスなんて、ニューヨークのアンドリュー・クオモ知事も言っていますが、贅沢です。先進国と言われるヨーロッパやアメリカで、デバイスがないから亡くなっている状況なんだということを、日本のみなさんも共有してほしいですね」(坂本)

また「見たくても見られなかった本や映画などに触れ、自分に養分を与えるいい機会ではないか」とも話し、真鍋も同意した。

ビデオ通話を用いた「オンライン飲み会」も話題になっている。坂本はまだチャレンジしていないが、真鍋は少しずつ試している。ただ会話を楽しむだけではなく、「そこに新しいアイデアもあるかな」と考えているようだ。

「リアルスペースで10人、20人とかで集まって話すと、自然とグループ分けされていくじゃないですか。でも、今のところオンラインのツールは、同じグループで話しますよね。話している内容をAIとかで解析して、自然にグループ分けをするなど、新しいオンラインのコミュニケーションが出てくるんじゃないかと考えながら試しています」(真鍋)

新型コロナウイルスが終息したあとは、ポスト・パンデミックの時代が来る。これまでアナログな方法で仕事をしていた業種でも、オンライン化に適応しないことには生き残れないだろうと、坂本は述べた。

『INNOVATION WORLD ERA』


■「アートや音楽は食えません」 非常時の役割とは

坂本は、過去のライブ映像の無料配信をスタートした。多くの人が家にいる今、「退屈しのぎになれば」と謙遜気味に語る。作品を無料で楽しめる状態にすることは、エンターテインメントのあり方としていいのかどうかという議論はあるが、「今は非常時だから」と坂本は考えている。

このような社会状況の中で、ミュージシャンやアーティストとしての役割をどう考えていくのがいいのか。真鍋が問いかけると、坂本は「当然、そういう疑問は生まれますよね。3.11のときもそうでしたが」と共感しつつ、「結論はないけれど、僕が考えていることとしては、アートや音楽は食えません。自然災害にしろテロにしろ、水がない、寝る場所がないというとき、アートや音楽を楽しむ余裕はない」と率直に答える。自身も9.11のテロ後は、音楽を楽しむ気分にはなれなかったと振り返った。

人類の長い歴史を考えれば、今よりも厳しい状況は出来事は何度もあった。そんな中で世界は、一度もアートや音楽を失わずに発展してきたからこそ、今に受け継がれている。「失われなかったということが、大事な気がします。それを考えると、今のような状況のときのアートや音楽は、“砂漠の中の一滴の水”であればいいかなと」「厳しいときに、救われたり力を得たりということがある。たぶんそういうものなんだと思います」と持論を述べた。

ミュージシャンのみならず、活動を支えるスタッフやライブハウスも危機的状況に陥っている。日本では政府から支援の話が出ていないが、ドイツでは文化大臣がリミットなく援助することを表明している。その理由は「文化は命に関わるもの」と考えているかただ。これに対し坂本は、「文化を大事に思う度合いに、(日本とドイツとで)これだけ開きがあるのか」と衝撃を明かした。

番組ではその他にも、坂本が95年からおこなっている「リモートライブ」に関する話題も。また、今後ライブなどをオンラインで配信していく上でのテクノロジーへの期待なども語り合った。デジタル音声コンテンツ配信サービス 「SPINEAR」の他、SpotifyやYouTubeなど各ポッドキャストサービスではノーカット版を配信中。

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【詳細】デジタル音声コンテンツ配信サービス 「SPINEAR」4月7日よりβ版日本サービス開始!

同番組は、各界のイノベーターが週替りでナビゲートする。第1週目はライゾマティクスの真鍋大度、第2週目はASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正文、第3週目は女優で創作あーちすとの「のん」、第4週目はクリエイティブディレクター・小橋賢児。

【番組情報】
番組名:『INNOVATION WORLD ERA』
放送日時:日曜 23:00-23:54/SPINEAR、Spotify、YouTubeでも配信
オフィシャルサイト: https://www.spinear.com/shows/innovation-world-era/

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