ライゾマティクス主宰の真鍋大度と、俳優のムロツヨシがリモートで対談。ムロが2020年、真鍋たちと立ち上げた映像制作ユニット「非同期テック部」や真鍋との意外なエピソード、自身の“突破ストーリー”などを語った。
ふたりが対談したのは、6月6日(日)放送のJ-WAVEのPodcast連動プログラム『TOPPAN INNOVATION WORLD ERA』のワンコーナー「FROM THE NEXT ERA」。真鍋は同番組の毎月第1週目のナビゲーターを務める。
番組はポッドキャストでも楽しめる。
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「非同期テック部」真鍋大度×上田誠が対談。物語の“圧”を生み出す方法とは?
真鍋:2020年、コロナ禍に入って予定が立たない状況になったときに、ムロさんとリモートで夜な夜な話すようになって。
ムロ:お互い、ありがたいことにお仕事がある状況から、昔のようにない状況になり(笑)。
真鍋:そこでムロさんが声をかけてくれて、上田 誠さんを紹介してくれて。
ムロ:まずはふたりでお酒を飲んだりしてリモートで話をしながら「何かやりましょう」なんていつも通りの口約束はしていたんだけど、あるとき「今、上田(誠)くんと(真鍋)大度を引き合わせたら何か面白いことになるんじゃないかっていう思いつきと、その頃の何もない状況をとにかく何とかプラスにしたいという私の欲が行動させて。
真鍋:それで一発目が5月5日でしたね。
真鍋:これをやろうって言って1カ月もなかったよね。
ムロ:ないない。だって緊急事態宣言が出て少し経ってからだから。そういう状況で、ちょうど俺もインスタライブを始めたところで、そこと引き合わせて、サプライズじゃないけど、できることをやってみましょうかってところから始まったからね。
真鍋:そのときに、画面で見ている情報って本当に少ないんだなって思った。僕のイメージだと上田さんの身長は僕と同じか少し小さいイメージで話してたらけっこう背も高いし、演出もやっているから声も大きいし、Zoomの雰囲気と全然違うわと思ってビックリしたんです(笑)。
ムロ:それこそ、上田 誠の名言で「空気で伝わる手段」(って言葉があって)、空気という手段がどれだけ大事かが身に染みてわかると。リモート会議とかリモートのコミュニケーションを取っているとなおさら。さらに音楽や演劇を考えると、配信で伝わることが何割なのか、それから空気で伝えたいことがどれだけ大きいか。間であり音量であり、それ以外も空気で伝わるものですよね。音圧なのかわからないけど。
真鍋はムロのおかげで今まで足りなかったピースが埋まって、このインスタライブが実現したと振り返る。
ムロ:真鍋大度と上田 誠を出会わせてからすぐ、ふたりが俺の知らない世界の話をずっとするからさ。単語をはじめ、今どの次元の話をしているのか全然わからないから、もうちょっと俺がわかる世界まで下りてきてくれないかなっていうくらい、飛び交うカタカナや単語。ふたりで「それいいですね!」って盛り上がっているときに、俺も「いいね!」って言ってたけど全然理解していなかったからね。
真鍋:あはは(笑)。上田さんを紹介してもらって、テクノロジーの使い方もすごく面白いなって思って。僕が持っているネタとかって普段はダンスや映像で使う非言語的なパフォーマンスが多かったけど、そこに上田さんがちゃんとお芝居や脚本を入れてくれたから、自分にとっては本当に新しいチャレンジになりました。めちゃくちゃ「非同期テック部」の活動が刺激的で、今振り返るとあの時期に救われてたなって思いますね。
真鍋とムロは「非同期テック部」の次回作を8月31日までに公開するとリスナーに向けて約束した。
真鍋:お互いバリバリの理系で数学科に進んで。大学の数学って高校の数学と全然違ってめちゃくちゃ難しくて。
ムロ:いやあ、難しかった。入り口さえ理解しないまま大学からいなくなってるからね。
真鍋:あれから25、26年くらい経ってるけど、その頃と変わらない感じでしゃべれてるなって思う。今となってはお互い何かしらのプロになったわけで。でも、本当に昔と変わらず、ふたりで会ったらしゃべってるから。
大学を中退して役者の道を目指したムロと、大学を卒業して就職した真鍋。ふたりは意外なかたちで再会した。
ムロ:俺は大学で「役者目指すわ。またね」って言ってしばらく結果も出ないから恥ずかしくて顔を合わせられない時期があって。ある日、洗濯物をたたみながら『情熱大陸』(毎日放送)を流していたら、オープニングでナレーターの方が「真鍋大度」って言って、「えっ!」って振り向いたら大度の写真が出てるの。「うわ、大度だ!」「なんで『情熱大陸』にいるの?」と思って。
真鍋:でも、それですぐに連絡が来たとかじゃないもんね。
ムロ:そう。それでTwitterで「大学の友だちが『情熱大陸』に上陸してた」みたいなことをつぶやいたら、「真鍋さんもムロさんのことを気にかけてますよ」って教えてくれて。
真鍋:そうそう。まさか「ムロツヨシ」が大学の同級生のムロさんだと思ってなかったわけ。字面で見てたから。だから「ムロツヨシに似た名前の友だちがいて突然大学を辞めていったな。役者になるって言ってたけど、今はどうしているかな」みたいなことをつぶやいたんだよね(笑)。
ムロ:そうそう(笑)。
真鍋:最近、ムロさんは音楽活動もやっているみたいで。
ムロ:そうなの。ビックリしたよ。これは人生の設計図に一切なかったから。
真鍋:ビックリしたし、僕は音楽がすごく好きだからうれしい。スカパラもすごく好き。僕は舞台『muro式.がくげいかい』も観ているから、この歌が頭に残りますよ。
ムロ:そうだよね。すごく残るよね。舞台を観に来てくれた子どもたちが、この曲がラジオやサブスクで流れると踊ってくれるんだって。
真鍋:振りもいいからね。
ムロ:それを広めたいなって思えてきて、ちょうど舞台のロングランも決定したから、みなさんに覚えてもらいながら意識に残しつつ、また再会できたらいいなって。だからこの曲にいろんな思いを託そうかなと思って、大みそかも予定を空けてある(笑)。
真鍋:それいったら、すごいね。いってほしいな。
ムロ:絶対に今の学生さんにおすすめしないです。ただ、あそこで大学を辞めたことで、苦しんだ部分は多いけれども、当時19歳の俺はそれを“失敗した人”にしたくなくて。それがすごいんだって言いたいがために、そこからずっと頑張ってきたし、45歳の今の俺も頑張ってるから、19歳のときに大学を辞めたことが“突破ストーリー”になったかな。でも、大学を卒業していたらもっと違う芸能の道があったと思う。役者は大学を卒業してもできることではあったから。そこに関しては考えが浅かったし、その後3年間はバイトしかしてない真っ暗な中を歩いて、あそこには戻れないっていう自分を生んだから、そう考えるとそこにはいろんな突破が入っているのかな。
真鍋:なるほどね。辞める決断ってやる決断より難しいから。僕もサラリーマンを辞めることもあって。全然それはおすすめしないけど、確かに何かを辞めてリスクを取ることが突破になるって、僕もわかるなって思いました。
ムロ:あらためて、こうやって大度の前で話すことで、あそこが突破ストーリーだったんだろうなって。
ムロは「大学入学前に予備校で偏差値を20上げて、予備校のパンフレットの模範生徒として掲載もされたのに、それでも大学を辞めたのが本当にバカだった」と笑う。
真鍋:でも、勝ち目があるかどうかってそのときはわからないからね。
ムロ:わからない。ただ、そのときは勝ち目があると思っちゃってるしね。でも、今の学生さんに声を大にして言いたいのは、もし親御さんが許してくれて経済的状況も許すのであれば、絶対に大学は卒業するべき。そこでしか見れない景色が絶対にあるから。辞めた景色は大学が終わってからでも、まあまあ見る(笑)。
最後に、ムロは自身の突破を支えた1曲として、ビートたけしの『浅草キッド』を選曲。好きな歌詞を紹介しながら、「当時聴いた歌詞よりも、また10年後、その10年後と、特に今聴いたらなおさらいろんな景色を思い出し、言語化できないけど『ああ……』ってなってしまう曲」と語った。
ムロツヨシの最新情報は、公式サイトまたは、Twitterまで。
番組は、J-WAVEのポッドキャストサービス「SPINEAR」などでも聴くことができる。
・SPINEAR
https://spinear.com/shows/innovation-world-era/
『TOPPAN INNOVATION WORLD ERA』では、各界のイノベーターが週替りでナビゲート。第1週目はライゾマティクスの真鍋大度、第2週目はASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正文、第3週目は女優で創作あーちすとの「のん」、第4週目はクリエイティブディレクター・小橋賢児。第5週がある場合は毎回異なるナビゲーターが登場する。放送は毎週日曜日23時から。
ふたりが対談したのは、6月6日(日)放送のJ-WAVEのPodcast連動プログラム『TOPPAN INNOVATION WORLD ERA』のワンコーナー「FROM THE NEXT ERA」。真鍋は同番組の毎月第1週目のナビゲーターを務める。
番組はポッドキャストでも楽しめる。
コロナ禍で生まれた映像制作ユニット
2020年春、真鍋とムロ、そしてヨーロッパ企画の上田 誠で映像制作ユニット「非同期テック部」を立ち上げた。【関連記事】
「非同期テック部」真鍋大度×上田誠が対談。物語の“圧”を生み出す方法とは?
真鍋:2020年、コロナ禍に入って予定が立たない状況になったときに、ムロさんとリモートで夜な夜な話すようになって。
ムロ:お互い、ありがたいことにお仕事がある状況から、昔のようにない状況になり(笑)。
真鍋:そこでムロさんが声をかけてくれて、上田 誠さんを紹介してくれて。
ムロ:まずはふたりでお酒を飲んだりしてリモートで話をしながら「何かやりましょう」なんていつも通りの口約束はしていたんだけど、あるとき「今、上田(誠)くんと(真鍋)大度を引き合わせたら何か面白いことになるんじゃないかっていう思いつきと、その頃の何もない状況をとにかく何とかプラスにしたいという私の欲が行動させて。
真鍋:それで一発目が5月5日でしたね。
非同期テック部第1回作品「ムロツヨシショー、そこへ、着信、からの」 @インスタライブ(2020年5月5日)
ムロ:ないない。だって緊急事態宣言が出て少し経ってからだから。そういう状況で、ちょうど俺もインスタライブを始めたところで、そこと引き合わせて、サプライズじゃないけど、できることをやってみましょうかってところから始まったからね。
真鍋:そのときに、画面で見ている情報って本当に少ないんだなって思った。僕のイメージだと上田さんの身長は僕と同じか少し小さいイメージで話してたらけっこう背も高いし、演出もやっているから声も大きいし、Zoomの雰囲気と全然違うわと思ってビックリしたんです(笑)。
ムロ:それこそ、上田 誠の名言で「空気で伝わる手段」(って言葉があって)、空気という手段がどれだけ大事かが身に染みてわかると。リモート会議とかリモートのコミュニケーションを取っているとなおさら。さらに音楽や演劇を考えると、配信で伝わることが何割なのか、それから空気で伝えたいことがどれだけ大きいか。間であり音量であり、それ以外も空気で伝わるものですよね。音圧なのかわからないけど。
真鍋はムロのおかげで今まで足りなかったピースが埋まって、このインスタライブが実現したと振り返る。
ムロ:真鍋大度と上田 誠を出会わせてからすぐ、ふたりが俺の知らない世界の話をずっとするからさ。単語をはじめ、今どの次元の話をしているのか全然わからないから、もうちょっと俺がわかる世界まで下りてきてくれないかなっていうくらい、飛び交うカタカナや単語。ふたりで「それいいですね!」って盛り上がっているときに、俺も「いいね!」って言ってたけど全然理解していなかったからね。
真鍋:あはは(笑)。上田さんを紹介してもらって、テクノロジーの使い方もすごく面白いなって思って。僕が持っているネタとかって普段はダンスや映像で使う非言語的なパフォーマンスが多かったけど、そこに上田さんがちゃんとお芝居や脚本を入れてくれたから、自分にとっては本当に新しいチャレンジになりました。めちゃくちゃ「非同期テック部」の活動が刺激的で、今振り返るとあの時期に救われてたなって思いますね。
真鍋とムロは「非同期テック部」の次回作を8月31日までに公開するとリスナーに向けて約束した。
洗濯物をたたみながら『情熱大陸』を観ていたら…
和気あいあいと会話する真鍋とムロ。ふたりは東京理科大学理学部数学科の同級生で、かれこれ25年ほど前からの付き合いだと明かす。真鍋:お互いバリバリの理系で数学科に進んで。大学の数学って高校の数学と全然違ってめちゃくちゃ難しくて。
ムロ:いやあ、難しかった。入り口さえ理解しないまま大学からいなくなってるからね。
真鍋:あれから25、26年くらい経ってるけど、その頃と変わらない感じでしゃべれてるなって思う。今となってはお互い何かしらのプロになったわけで。でも、本当に昔と変わらず、ふたりで会ったらしゃべってるから。
大学を中退して役者の道を目指したムロと、大学を卒業して就職した真鍋。ふたりは意外なかたちで再会した。
ムロ:俺は大学で「役者目指すわ。またね」って言ってしばらく結果も出ないから恥ずかしくて顔を合わせられない時期があって。ある日、洗濯物をたたみながら『情熱大陸』(毎日放送)を流していたら、オープニングでナレーターの方が「真鍋大度」って言って、「えっ!」って振り向いたら大度の写真が出てるの。「うわ、大度だ!」「なんで『情熱大陸』にいるの?」と思って。
真鍋:でも、それですぐに連絡が来たとかじゃないもんね。
ムロ:そう。それでTwitterで「大学の友だちが『情熱大陸』に上陸してた」みたいなことをつぶやいたら、「真鍋さんもムロさんのことを気にかけてますよ」って教えてくれて。
真鍋:そうそう。まさか「ムロツヨシ」が大学の同級生のムロさんだと思ってなかったわけ。字面で見てたから。だから「ムロツヨシに似た名前の友だちがいて突然大学を辞めていったな。役者になるって言ってたけど、今はどうしているかな」みたいなことをつぶやいたんだよね(笑)。
ムロ:そうそう(笑)。
年末は歌手としてあの番組に出演!?
5月、ムロが東京スカパラダイスオーケストラのゲストボーカルとして参加した新曲『めでたしソング feat.ムロツヨシ』がリリースされた。この曲はムロが演出・出演の舞台『muro式.がくげいかい』のテーマ曲となっている。めでたしソング feat.ムロツヨシ
ムロ:そうなの。ビックリしたよ。これは人生の設計図に一切なかったから。
真鍋:ビックリしたし、僕は音楽がすごく好きだからうれしい。スカパラもすごく好き。僕は舞台『muro式.がくげいかい』も観ているから、この歌が頭に残りますよ。
ムロ:そうだよね。すごく残るよね。舞台を観に来てくれた子どもたちが、この曲がラジオやサブスクで流れると踊ってくれるんだって。
真鍋:振りもいいからね。
ムロ:それを広めたいなって思えてきて、ちょうど舞台のロングランも決定したから、みなさんに覚えてもらいながら意識に残しつつ、また再会できたらいいなって。だからこの曲にいろんな思いを託そうかなと思って、大みそかも予定を空けてある(笑)。
真鍋:それいったら、すごいね。いってほしいな。
“突破ストーリー”は19歳の決断
真鍋は「今、活躍している扉を開けた“突破ストーリー”は?」と訊くと、ムロは「ひとつの突破は自分の人生設計を全てリセットしようとして大学を辞めたこと」と答えた。ムロ:絶対に今の学生さんにおすすめしないです。ただ、あそこで大学を辞めたことで、苦しんだ部分は多いけれども、当時19歳の俺はそれを“失敗した人”にしたくなくて。それがすごいんだって言いたいがために、そこからずっと頑張ってきたし、45歳の今の俺も頑張ってるから、19歳のときに大学を辞めたことが“突破ストーリー”になったかな。でも、大学を卒業していたらもっと違う芸能の道があったと思う。役者は大学を卒業してもできることではあったから。そこに関しては考えが浅かったし、その後3年間はバイトしかしてない真っ暗な中を歩いて、あそこには戻れないっていう自分を生んだから、そう考えるとそこにはいろんな突破が入っているのかな。
真鍋:なるほどね。辞める決断ってやる決断より難しいから。僕もサラリーマンを辞めることもあって。全然それはおすすめしないけど、確かに何かを辞めてリスクを取ることが突破になるって、僕もわかるなって思いました。
ムロ:あらためて、こうやって大度の前で話すことで、あそこが突破ストーリーだったんだろうなって。
ムロは「大学入学前に予備校で偏差値を20上げて、予備校のパンフレットの模範生徒として掲載もされたのに、それでも大学を辞めたのが本当にバカだった」と笑う。
真鍋:でも、勝ち目があるかどうかってそのときはわからないからね。
ムロ:わからない。ただ、そのときは勝ち目があると思っちゃってるしね。でも、今の学生さんに声を大にして言いたいのは、もし親御さんが許してくれて経済的状況も許すのであれば、絶対に大学は卒業するべき。そこでしか見れない景色が絶対にあるから。辞めた景色は大学が終わってからでも、まあまあ見る(笑)。
最後に、ムロは自身の突破を支えた1曲として、ビートたけしの『浅草キッド』を選曲。好きな歌詞を紹介しながら、「当時聴いた歌詞よりも、また10年後、その10年後と、特に今聴いたらなおさらいろんな景色を思い出し、言語化できないけど『ああ……』ってなってしまう曲」と語った。
ムロツヨシの最新情報は、公式サイトまたは、Twitterまで。
番組は、J-WAVEのポッドキャストサービス「SPINEAR」などでも聴くことができる。
・SPINEAR
https://spinear.com/shows/innovation-world-era/
『TOPPAN INNOVATION WORLD ERA』では、各界のイノベーターが週替りでナビゲート。第1週目はライゾマティクスの真鍋大度、第2週目はASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正文、第3週目は女優で創作あーちすとの「のん」、第4週目はクリエイティブディレクター・小橋賢児。第5週がある場合は毎回異なるナビゲーターが登場する。放送は毎週日曜日23時から。
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