10月、トルコ軍がシリア北部のクルド人勢力に対して軍事作戦を展開し、人道危機が深刻化している。11月6日(水)放送の『JAM THE WORLD』のワンコーナー「UP CLOSE」では、現在シリアを巡ってどんな動きが起きているのかを、シリア・イラクなど中東の取材を終えたばかりの安田と考えた。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年11月13日28時59分まで)
■シリアを巡る混乱が続いている
まずは現在のシリアを巡る動きについて安田が解説した。シリアでは2011年から内戦が続いている。そこには政府軍と反政府軍だけではなく、過激派勢力も加わり、そのひとつにはIS(イスラム国)も含まれる。また、アメリカが支援をし続けてきたISを掃討しようとするシリア北部に暮らす少数民族・クルド人部隊の勢力がある。
さまざまな勢力が混在するなか、アメリカがシリア北部のクルド人勢力を支援することに、国境を接するトルコが反発。シリア側のクルド人が勢力を伸ばすことで、自国にいるクルド人の独立の機運が再燃したり、対立したりするのではないかと懸念を抱いていた。
10月半ばに、アメリカ・トランプ大統領がシリアの米軍の撤退を表明。それと同時期にクルド人部隊が支配するシリア北部にトルコ軍が侵攻。そこでシリア政府の後ろ盾をしていた大国のひとつであるロシアがトルコに交渉をし、クルド人の部隊をトルコの国境から30キロメートル南側に撤退させることで合意した。
■家族や個人を孤独にさせない支援を
安田は今回の中東取材で、イラク北部にあるクルド自治区の病院に身を寄せている8歳の少女とその母親にインタビューを行った。
その母親は、10月10日の15時に家族で避難準備をしていたところに砲弾とおもわれるものが建物の外を直撃したと振り返る。そのことにより、13歳の長男はほぼ即死。8歳の娘は右足がちぎれ、左足の骨が砕けてしまった。そして11歳の次男は右目に重傷を負い、このままだと失明の恐れが高い。悲惨な状況を伝え、今の思いをこう語った。
母親:息子は13歳で亡くなってしまった。彼のことを忘れることは絶対にできない。いつだってその顔が浮かびます。ただ、私の人生はたったこの5分で壊されてしまいました。今の私は死んでいるのも同然です。でも、娘を支えられるように強くなりたいです。彼女が歩けるようになってほしい。長男は死んでしまったけど、娘までは失いたくない。私たちと同じような悲劇が他の人たちに起こらないことを強く望みます。
安田は、現地の子どもたち自身が過酷な状況に追い込まれている一方で、それを支える大人にも大きな負荷がかかっていると感じたという。だからこそ、家族や個人を孤独にさせないような多方面の支援が必要だと述べた。
■傷付くのはいつも市民
安田は、トルコ国境から約2キロメートルにあるシリア国内で暮らす安田の友人、サラーにも取材を行った。彼はこの地域にどのように戦車がやってきて、どのように地域が攻撃を受けたのかを説明しつつ、こう語った。
サラー:私たちは攻撃そのものを恐れはしないんだ。大人はいざとなれば軍に入り武器を取って戦うこともできるかもしれない。でも、子どもたちはどうなるのかを真っ先に考える。私たちは「一体、テロリストって誰のことなのか」と考えなければいけない。テロリストの定義とは何なのか。誰がテロリストなのか。トルコ側がテロリストとの戦いと言うならば、なぜ彼らはこうして私たち市民を攻撃するのだろうか。
安田はシリアを巡る動きについて「侵攻を受けたシリア北部のクルド人部隊に強硬的な部分があるので、どちらの軍が正義だとは言えない」としながらも「少なくともトルコ軍の侵攻を受けたことで、傷付くのはいつも市民であることに私たちがどう向き合うのかが今問われている」と語った。
■大切なのは日本からできる支援を知ること
安田は今回の取材中に「この事態に対して日本は何もしないの?」「日本は何も発言しないの?」といろいろな人から問われたという。
安田:今すぐ支援がほしいというわけではなく、言葉を発するだけでも私たちに届くものになると現地の人から繰り返し言われました。
この厳しい情勢を少しでも改善するために、私たち一人ひとりは何ができるのだろうか。
安田:誰しもが現地に行って直接的に支援をすることは難しいかもしれない。でも、現地で支える人を日本から支えることは私たちにもできます。例えば、シリア人が暮らす難民キャンプを支援する「ピースウィンズ・ジャパン」や、シリアの危機に対して緊急支援を行う「JIM-NET」などの団体もあります。そういった日本からできる支援を知り、それぞれ自分で判断することが必要です。
番組では他にも、1万人以上のシリア人が暮らすイラクの難民キャンプや、トルコ国境から2キロメートルほどにあるシリア国内の学校が戦争の拠点となり、がれきに包まれている状況など、現地の様子を伝えた。こちらもradikoで聴いてみてほしい。
J-WAVE『JAM THE WORLD』のコーナー「UP CLOSE」では、社会の問題に切り込む。放送時間は月曜~木曜の20時20分頃から。お聴き逃しなく。
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PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年11月13日28時59分まで)
■シリアを巡る混乱が続いている
まずは現在のシリアを巡る動きについて安田が解説した。シリアでは2011年から内戦が続いている。そこには政府軍と反政府軍だけではなく、過激派勢力も加わり、そのひとつにはIS(イスラム国)も含まれる。また、アメリカが支援をし続けてきたISを掃討しようとするシリア北部に暮らす少数民族・クルド人部隊の勢力がある。
さまざまな勢力が混在するなか、アメリカがシリア北部のクルド人勢力を支援することに、国境を接するトルコが反発。シリア側のクルド人が勢力を伸ばすことで、自国にいるクルド人の独立の機運が再燃したり、対立したりするのではないかと懸念を抱いていた。
10月半ばに、アメリカ・トランプ大統領がシリアの米軍の撤退を表明。それと同時期にクルド人部隊が支配するシリア北部にトルコ軍が侵攻。そこでシリア政府の後ろ盾をしていた大国のひとつであるロシアがトルコに交渉をし、クルド人の部隊をトルコの国境から30キロメートル南側に撤退させることで合意した。
■家族や個人を孤独にさせない支援を
現在、弊会の安田菜津紀@NatsukiYasudaと佐藤慧@KeiSatoJapanが、トルコから侵攻を受けたシリアなど中東を取材中です。現地の様子を速報でお伝えします。#DialogueforPeople #安田菜津紀 #NatsukiYasuda#佐藤慧 #KeiSato #シリア #Syria #イラク #Iraq #クルディスタン #Kurdistan #トルコ #Turkey pic.twitter.com/O6sd5ekmzq
— Dialogue for People (@dialogue4ppl) October 30, 2019
安田は今回の中東取材で、イラク北部にあるクルド自治区の病院に身を寄せている8歳の少女とその母親にインタビューを行った。
その母親は、10月10日の15時に家族で避難準備をしていたところに砲弾とおもわれるものが建物の外を直撃したと振り返る。そのことにより、13歳の長男はほぼ即死。8歳の娘は右足がちぎれ、左足の骨が砕けてしまった。そして11歳の次男は右目に重傷を負い、このままだと失明の恐れが高い。悲惨な状況を伝え、今の思いをこう語った。
母親:息子は13歳で亡くなってしまった。彼のことを忘れることは絶対にできない。いつだってその顔が浮かびます。ただ、私の人生はたったこの5分で壊されてしまいました。今の私は死んでいるのも同然です。でも、娘を支えられるように強くなりたいです。彼女が歩けるようになってほしい。長男は死んでしまったけど、娘までは失いたくない。私たちと同じような悲劇が他の人たちに起こらないことを強く望みます。
安田は、現地の子どもたち自身が過酷な状況に追い込まれている一方で、それを支える大人にも大きな負荷がかかっていると感じたという。だからこそ、家族や個人を孤独にさせないような多方面の支援が必要だと述べた。
■傷付くのはいつも市民
安田は、トルコ国境から約2キロメートルにあるシリア国内で暮らす安田の友人、サラーにも取材を行った。彼はこの地域にどのように戦車がやってきて、どのように地域が攻撃を受けたのかを説明しつつ、こう語った。
サラー:私たちは攻撃そのものを恐れはしないんだ。大人はいざとなれば軍に入り武器を取って戦うこともできるかもしれない。でも、子どもたちはどうなるのかを真っ先に考える。私たちは「一体、テロリストって誰のことなのか」と考えなければいけない。テロリストの定義とは何なのか。誰がテロリストなのか。トルコ側がテロリストとの戦いと言うならば、なぜ彼らはこうして私たち市民を攻撃するのだろうか。
安田はシリアを巡る動きについて「侵攻を受けたシリア北部のクルド人部隊に強硬的な部分があるので、どちらの軍が正義だとは言えない」としながらも「少なくともトルコ軍の侵攻を受けたことで、傷付くのはいつも市民であることに私たちがどう向き合うのかが今問われている」と語った。
■大切なのは日本からできる支援を知ること
安田は今回の取材中に「この事態に対して日本は何もしないの?」「日本は何も発言しないの?」といろいろな人から問われたという。
安田:今すぐ支援がほしいというわけではなく、言葉を発するだけでも私たちに届くものになると現地の人から繰り返し言われました。
この厳しい情勢を少しでも改善するために、私たち一人ひとりは何ができるのだろうか。
安田:誰しもが現地に行って直接的に支援をすることは難しいかもしれない。でも、現地で支える人を日本から支えることは私たちにもできます。例えば、シリア人が暮らす難民キャンプを支援する「ピースウィンズ・ジャパン」や、シリアの危機に対して緊急支援を行う「JIM-NET」などの団体もあります。そういった日本からできる支援を知り、それぞれ自分で判断することが必要です。
番組では他にも、1万人以上のシリア人が暮らすイラクの難民キャンプや、トルコ国境から2キロメートルほどにあるシリア国内の学校が戦争の拠点となり、がれきに包まれている状況など、現地の様子を伝えた。こちらもradikoで聴いてみてほしい。
J-WAVE『JAM THE WORLD』のコーナー「UP CLOSE」では、社会の問題に切り込む。放送時間は月曜~木曜の20時20分頃から。お聴き逃しなく。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年11月13日28時59分まで)
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/
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