“男性育休の義務化”が話題になっています。厚生労働省によると、育児休暇の取得率は女性が83パーセントなのに対し、男性はわずか5パーセント。こうした現状を変えるべく、「男性の育休『義務化』を目指す議員連盟」の設立が予定されています。設立総会が、6月5日(水)に開かれます。
男性が育休を取得できない理由はなんなのか。義務化に向けた課題はなんなのか。育児休業制度に詳しい、労働政策研究・研修機構の主任研究員・池田心豪さんと考えました。
【5月29日(水)のオンエア:『JAM THE WORLD』の「UP CLOSE」(ナビゲーター:グローバー/水曜担当ニュースアドバイザー:安田菜津紀)】
http://radiko.jp/share/?sid=FMJ&t=20190529202125
■男性の育休、会社に制度があっても取得できない理由
男性の育休の取得率が5パーセントと低い数字なのは、取りたくても取れないというケースが多いからなのでしょうか。
池田:確かに取りたいけれども取れない、という人もいます。厚生労働省が昨年3月に発表した男性の育休に関する報告書によると、会社に制度があって、本人に取得を希望していても実際には取ってない人が、17パーセントいました。
職場に取得しづらい雰囲気があるなど、職場環境の理由が目立つそうです。また、育休制度は非正規雇用の人でも一定の条件を満たせば適用されますが、実際のところは非正規で育休を取っている男性もほとんどいません。正規・非正規に関わらず育休を取る男性は非常に少ないのが現状です。
他の国はどうなのでしょうか。たとえばスウェーデンは、男性の育休取得率が約90パーセント。女性だけで長期の育休を取ることができず、その期間は夫が育休を取る制度が作られているそうです。パートナーと育休をシェアするという考え方です。
■育休によって起こるふたつの「ロス」
日本で男性がなかなか育休を取れない要因として、育休によるふたつの「ロス」があると言われています。ひとつが「所得ロス」。育休期間、給付は出ますが賃金は支払われません。もうひとつが「キャリアロス」。育休中に将来のキャリアアップに繋がるような仕事をする機会を逃してしまうというものです。
池田:「キャリアロス」は、仕事の性質や、置かれている立場、どういうキャリアの将来性があるかなど、人によって多様なので、そう考えると、なかなか一律にみんなが育休を取るということは難しいと言えます。
厚生労働省のデータによると、育休を取らない男性正社員の半数くらいは「自分に育児休業制度が適用されることを知らなかった」「会社に制度がなかった」とアンケートに回答。池田さんは、「育児休業制度は女性が取るもの」という思い込みがあるのかもしれない、と分析しました。
■男性の育休義務化の問題点
「男性の育休『義務化』を目指す議員連盟」のように、男性の育休を義務化することについて、池田さんはどのように感じているのでしょうか。
池田:法律としては、すでに企業に対する義務というのは定められているんです。実際、労働者の男性に子どもが生まれたときに「育児休業を取りたい」と会社に申請した場合には、会社は原則としてこれを拒否できない。そういう義務があるんです。
しかし、本人が会社の雰囲気や状況に配慮して取る意思を表明しない、そもそも自分に制度が適用されることを知らない場合は申請をするはずもありません。そこにもう少し会社側の能動的な育児休業への関与を求める、というのが今の義務化の議論だと池田さんは解説しました。
育休が義務化されてしまうと、「所得ロス」というデメリットが「仕事を休める」というメリットよりも大きくなってしまうケースも起こり得るため、「本人の意思で取らない自由」もないと制度がうまく機能しないとも指摘しました。
単に義務化するのではなく、「子育て」と「仕事」どちらも充実した生活を送る環境づくりが必要です。池田さんは「それを国の政策で一律にできるかどうかは、私としても想像がつきません」と話しました。
また、男性が育児休業を取ったとしても、果たして家事や育児に取り組むのかという懸念の声もあります。政府の統計では、6歳未満の子どもを持つ男性が育児をしている割合は約3割だそう。男性の“意識”を変える必要もあると言えるでしょう。
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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/
男性が育休を取得できない理由はなんなのか。義務化に向けた課題はなんなのか。育児休業制度に詳しい、労働政策研究・研修機構の主任研究員・池田心豪さんと考えました。
【5月29日(水)のオンエア:『JAM THE WORLD』の「UP CLOSE」(ナビゲーター:グローバー/水曜担当ニュースアドバイザー:安田菜津紀)】
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■男性の育休、会社に制度があっても取得できない理由
男性の育休の取得率が5パーセントと低い数字なのは、取りたくても取れないというケースが多いからなのでしょうか。
池田:確かに取りたいけれども取れない、という人もいます。厚生労働省が昨年3月に発表した男性の育休に関する報告書によると、会社に制度があって、本人に取得を希望していても実際には取ってない人が、17パーセントいました。
職場に取得しづらい雰囲気があるなど、職場環境の理由が目立つそうです。また、育休制度は非正規雇用の人でも一定の条件を満たせば適用されますが、実際のところは非正規で育休を取っている男性もほとんどいません。正規・非正規に関わらず育休を取る男性は非常に少ないのが現状です。
他の国はどうなのでしょうか。たとえばスウェーデンは、男性の育休取得率が約90パーセント。女性だけで長期の育休を取ることができず、その期間は夫が育休を取る制度が作られているそうです。パートナーと育休をシェアするという考え方です。
■育休によって起こるふたつの「ロス」
日本で男性がなかなか育休を取れない要因として、育休によるふたつの「ロス」があると言われています。ひとつが「所得ロス」。育休期間、給付は出ますが賃金は支払われません。もうひとつが「キャリアロス」。育休中に将来のキャリアアップに繋がるような仕事をする機会を逃してしまうというものです。
池田:「キャリアロス」は、仕事の性質や、置かれている立場、どういうキャリアの将来性があるかなど、人によって多様なので、そう考えると、なかなか一律にみんなが育休を取るということは難しいと言えます。
厚生労働省のデータによると、育休を取らない男性正社員の半数くらいは「自分に育児休業制度が適用されることを知らなかった」「会社に制度がなかった」とアンケートに回答。池田さんは、「育児休業制度は女性が取るもの」という思い込みがあるのかもしれない、と分析しました。
■男性の育休義務化の問題点
「男性の育休『義務化』を目指す議員連盟」のように、男性の育休を義務化することについて、池田さんはどのように感じているのでしょうか。
池田:法律としては、すでに企業に対する義務というのは定められているんです。実際、労働者の男性に子どもが生まれたときに「育児休業を取りたい」と会社に申請した場合には、会社は原則としてこれを拒否できない。そういう義務があるんです。
しかし、本人が会社の雰囲気や状況に配慮して取る意思を表明しない、そもそも自分に制度が適用されることを知らない場合は申請をするはずもありません。そこにもう少し会社側の能動的な育児休業への関与を求める、というのが今の義務化の議論だと池田さんは解説しました。
育休が義務化されてしまうと、「所得ロス」というデメリットが「仕事を休める」というメリットよりも大きくなってしまうケースも起こり得るため、「本人の意思で取らない自由」もないと制度がうまく機能しないとも指摘しました。
単に義務化するのではなく、「子育て」と「仕事」どちらも充実した生活を送る環境づくりが必要です。池田さんは「それを国の政策で一律にできるかどうかは、私としても想像がつきません」と話しました。
また、男性が育児休業を取ったとしても、果たして家事や育児に取り組むのかという懸念の声もあります。政府の統計では、6歳未満の子どもを持つ男性が育児をしている割合は約3割だそう。男性の“意識”を変える必要もあると言えるでしょう。
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放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
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