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バイアスを外すには自分の常識を疑う必要がある…パックンが語る、視野を広げた先に見える世界とは?

バイアスを外すには自分の常識を疑う必要がある…パックンが語る、視野を広げた先に見える世界とは?

J-WAVEで放送中の番組『JAM THE WORLD』(ナビゲーター:グローバー)のワンコーナー「UP CLOSE」。2月6日(水)のオンエアでは、水曜日のニュース・スーパーバイザーを務める安田菜津紀が登場。お笑い芸人・パックンことパトリック・ハーランさんを迎え、「日本バイアス」を外すことで、どんな考え方、生き方ができるのかを考えました。


■「バイアス」とは…?

パックンは、著書『「日本バイアス」を外せ!: 世界一幸せな国になるための緊急提案15』を昨年11月に出版しました。偏ったものの見方、誤解、偏見につながりかねない先入観、思い込みを「バイアス」といいますが、より「バイアス」を理解するために、あるエピソードを紹介しました。

車に乗っていた親子が事故に遭いました。残念ながら父親は亡くなり、男の子は大怪我をして病院に運ばれました。幸い、その病院には素晴らしいキャリアを持つ、有名なベテラン外科医がいます。しかし、オペ室に運ばれた子どもを見た瞬間、外科医は「オペはできない。なぜなら、我が子だから」とメスを降ろしてしまいました。

安田:これって、どういうことなんでしょう?
パックン:親子で事故に遭って、お父さんは亡くなります。そこで「なぜ、外科医が『我が子だ』と言い張るんだ」と思う人もいると思うんです。「義理のお父さんだ」「幽霊なのでは」と言う人もいます。でも、正解は「外科医はお母さんだったから」。
安田:「お医者さん=男性」っていうバイアスがかかっていたかもしれないということですね。
パックン:同じように、総理大臣や、校長先生と聞くと浮かぶものが固定してくるんです。
安田:確かに、男性像を思い浮かべる人が多いかもしれませんね。
パックン:そういう固定概念が先に働いて、決まっていないことを勝手に決めてしまうのが「バイアス」です。


■日本には本当に“移民”はいないのか?

『JAM THE WORLD』でも度々、移民・難民の問題、入管難民法の改正について取り上げています。日本のバイアスの中で、難民の方々、あるいは移民問題に対するバイアスを挙げるとすれば、どういったことが考えられるのでしょうか。

パックン:まず思い浮かぶのは、「日本には移民がいないから」という考え方です。ある番組に呼んでいただいて、「これから日本は移民を迎えるかどうか。パックンはどう思いますか?」と訊かれたことがありました。そうなると「俺、移民ですけど……」っていうところからスタートすることになるんです。
安田:事実上、この国には移民がいるという前提が抜け落ちてしまっているということですよね。
パックン:そうなんです。例えば、視聴者アンケートで「移民に反対:7割」という結果が出て、反対の声を聞かされたことがあります。「俺はどうすればいいんだ」と思って。移民がいることは間違いありません。また、移民と聞くと、「仕事を奪いにくる」という考え方もバイアスのひとつだと思います。

また、ニュースで移民問題が取り上げられる際、「移民を受け入れるのに経済的なコストがかかる」と指摘されることがあります。実際に移民はコストがかかるものなのでしょうか。

パックン:経済的なコストがかかるというのは、完全な勘違いなんです。あとは、移民が増えると犯罪率が上がるというのも、欧米の例を見るとありません。日本の場合は、最初から犯罪率がほぼ0パーセントですから、少しは上がるかもしれませんが、危ないというほどでは全くありません。移民の方々は家族を置いて、人生をかけて日本に来ています。そこで問題を起こして強制送還される可能性があるとすれば、大きな抑止力が働くはずです。絶対に行儀よくすると思います。「移民は自分とは違う」と思ってしまうのも、バイアスのひとつです。

パックンは著書の中で、難民の受け入れにはコストがかかるように見えるが、この国の一員として暮らしながら税金を納めるため、実はかけるコストよりも、収めてくれた税金の方が上回る、と説いています。

パックン:移民の方々は全員税金を払っていますし、幼少期は外国で過ごしてます。一番お金のかかる教育費などは、違う国が負担します。生産性を持っている人が日本に来るわけです。受け入れるのにコストはかかるかもしれませんが、それをはるかに上回る税金を納め、経済に貢献しています。だから、仕事を奪いにきているのではなく、我々のために働いてくれると思ったほうがいいのかなと思います。
安田:お仕事をするのが困難な人々も含めて、人道上の配慮はしつつも、やはり全体で見たときに、コスト面や治安の面で誤解がありますよね。ドイツが難民を特に受け入れた年の犯罪率を見てみると、実は下がってるんですよね。
パックン:時々、センセーショナルな事件が起きたりして、イメージが一人歩きすることもあります。しかし、実際にはアメリカ生まれのアメリカ人よりも、移民系アメリカ人の方が犯罪率が低いんです。


■常識を疑うこと

先入観を持った考え方(バイアス)をなくすには、まず自分の常識を疑うことが必要になります。自分の考えに対して、「その元になっているエビデンスはあるのか」と考え直すことも大切だとパックンは続けます。

パックン:例えば、トランプは国境沿いの壁の建設を呼びかけています。僕はずっと、トランプの意見だからという理由で反対していました。でも、「反対するためのエビデンスはあるのか」と思い1ヶ月ほど前からずっと調べていますが、実はアメリカの南の国境に1000kmほどの壁があることがわかりました。「壁を作ろう」というよりも、「壁ができたぞ」と言ってもいいくらいです。ただし、残り2000kmほどあるわけです。この2000kmはどうするべきなのか。僕は、トランプが嫌いだから条件反射で反対していましたが、既に1000kmほどの壁があって、そこまでの損がないのであれば、あと数百kmの壁を作ってもいいのではないか、とも思うようになりました。
安田:なるほど。
パックン:ただし、調べてみると建設コストが考えられないほど高いんです。また、砂漠だと岩盤まで数百メートル掘らないと、ちゃんとした壁ができません。そういうところに建てるのであれば、バカバカしいと思って……エビデンスをもう一回見直してから、反対することにしています。
安田:エビデンスをさらに見ていくと、アメリカの州の中では不法移民といわれる方々が、経済の10パーセント近くをまわしているという州もあります。失業率を鑑みたとしても、全員に帰ってもらうとなると、逆に人手不足になって、経済の損失なのではないかというエビデンスもありましたね。
パックン:本でも取り上げましたが、テキサスの例があります。建設業者の何割かの労働力は、不法移民でできています。そこで、全員を帰したとして、アメリカ人が失業率0パーセント・完全雇用になった途端に、残り15から20パーセントの穴が開くわけです。何万人もの人材不足で、建設業者の破産や建設プロジェクトの凍結といったことが起こると、果たしてそれが住民のためになるのか。だったら、不法移民を合法移民に変えるほうが合理的ではないかと思うわけです。


■「バイアス」を外すことでどう変わる?

移民やトランプの政策を例にバイアスについて考えたこの日のオンエア。パックンとの会話のなかで、バイアスに向き合うために「前提を疑ってみる」「エビデンスを探してみる」といったことが重要になることがわかりました。最後に安田が、「バイアスを外したことによって、生き方はどういう風に変わっていく可能性があるのか」と問いかけます。

パックン:自分のバイアスに気付くことによって、自分が見落としていた可能性、娯楽、仕事、出会い、付き合い、生き方など、全て見えてくるようになります。自分が「怖い」「汚い」「気持ち悪い」と思っているものも、もう一度論理的、合理的に考えて、NGであればやる必要はありませんが、もしかしたら自分の選択肢や可能性を狭めてるんじゃないかと気付くこともあると思うんです。今、ラジオを聴いた瞬間から人生が変わるかなと思います。

安田は「視野が狭まることによって、心が収縮してしまうことがあると思います。逆にそのブラインダーを外すことによって心が解放されることもあるかもしれません」と感想を述べました。自分に対する優しさの鍵となる「前提を疑ってみる」「エビデンスを探してみる」ことを実践してみてはいかがでしょうか。

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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/

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