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北朝鮮の経済は今、どうなっている? 元『朝鮮新報』平壌特派員が語る

北朝鮮経済の実態をお届けした、J-WAVEで放送中の番組『JAM THE WORLD』(ナビゲーター:グローバー)のワンコーナー「UP CLOSE」。1月15日(火)のオンエアでは、火曜日のニュース・スーパーバイザーを務める青木 理が登場。ゲストに、北朝鮮の経済を現地ルポした『麦酒とテポドン:経済から読み解く北朝鮮』(平凡社新書)を上梓した、元『朝鮮新報』平壌特派員で、現在は『週刊金曜日』の編集部に在籍されているジャーナリストの文 聖姫(ムン ソンヒ)さんを迎えました。

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が先日、先日、中国を訪問しました。経済支援の要請をし、経済技術開発区を視察したという報道がありました。金委員長が最も力を入れていると言われているのが「国民を食べさせる」「国民を豊かにする」という経済政策です。

経済制裁の影響もあり、北朝鮮経済の実態はなかなか見えてこないなか、「トンジュ」という新興富裕層が増えていたり、市場経済が広がっていたり、経済制裁を受けているのに経済成長していると報じられることもあります。今、北朝鮮はどうなっているのでしょうか?


■北朝鮮で闇市が広がった結果、「総合市場」が生まれた

共産主義である北朝鮮。本来は計画経済で、国民の必需品は配給制を取っているはずでしたが、各地で(闇)市場が生まれているような報道もあります。

:そもそも北朝鮮の経済は計画経済なので、そのシステムをなくしているわけではありません。配給もなくてはならないので、一生懸命やろうとしている部分が前提としてあります。北朝鮮は1990年代後半にソ連が崩壊したり、金日成が亡くなったり、水害が押し寄せてきたりなど、いろいろなことが重なり、経済が立ちゆかなくなりました。
青木:当時は100万人を越える餓死者も出ていたといわれ、北朝鮮がある意味でいちばん厳しかった時代ですよね。
:その後、1995年から2000年くらいにかけて、国家自体が配給をできなくなり、配給システムが崩壊しました。そのなかで、人々が「これじゃダメだ」と考え、闇市で自分の持ち物で売れるものをとにかく売ったりして、食糧を買う日銭を稼いでいました。一部合法として行われていた農民市場がどんどん広がり闇市化したと思われます。

闇市場が広がる状況を政府が罰してしまうと人々が食糧を得る場所がなくなってしまうため、政府はその流れを認め、2003年に総合市場を建設しました。

:そこから工業製品を売ることも可能になり、政府が認可した地域市場と言われるドーム型の施設も生まれました。
青木:その市場はどのような様子なんですか。
:他の国の市場とあまり変わらず、(上野の)アメ横のようにいろいろなものを売っていて、ガヤガヤした雰囲気でした。


■新興富裕層「トンジュ」とは

北朝鮮の計画経済が破綻し市場が広がるなか、昨今では「トンジュ」という新興富裕層が増えていると言います。

:「トンジュ」という言葉は私も現地で聞いてはいないんですが、北朝鮮では「商売人」と呼ばれることが多く、彼らは金貸しからはじまって富を蓄積し、それを不動産などに投資することで利益を得ていくニューリッチのような人々です。
青木:共産主義体制のまま資本主義化が進んでいる中国のようなことが起きているということですか?
:私はそう考えています。

国際社会で経済制裁を受けている北朝鮮が、なぜこれまでに経済成長が進んでいるのでしょうか。

:私もそこはよくわかっていません。ただ、金日成が昔よく「我々は制裁を受けながら生きてきた。だから制裁は怖くない」と言っていたように、北朝鮮は国内で完結させる経済をやってきました。経済制裁でいちばん困るのは下層の人たちですが、政府幹部の人はあまり困らないかと思います。加えて、どこかに経済の抜け穴があるんじゃないかと考えています。


■これから北朝鮮の経済はどう進む?

昨年は南北首脳会談や、史上初の米朝首脳会談が行われました。ところがここにきて、非核化の方向で足踏みをしている北朝鮮。今後はどう進んでいくのでしょうか。

:今年の新年の辞で、金委員長は「アメリカとの関係を改善したい」と言っていました。当分核実験は行わず、得るものを得ながらなんとか非核化していくと思っています。

『麦酒とテポドン:経済から読み解く北朝鮮』は、文さんのある気持ちを込めた1冊だと続けます。

:この先北朝鮮は、おいしい北朝鮮の大同江ビールを輸出する道を選ぶのか、もしくはテポドンに代表されるミサイルを作り続けて、国際的に孤立を深める道を選ぶのか。それを考えた場合に、国民のためにはビールを作り輸出した方がいい。そう進んで改革開放をしてほしいという気持ちを込めた1冊です。北朝鮮はそっちの方向に進んでいくのではないか、そんな希望的観測を持っています。

大きな転換期を迎えている北朝鮮。今年はどのような動きがあり、北朝鮮経済はどう進んでいくのでしょうか。文さんの『麦酒とテポドン:経済から読み解く北朝鮮』もぜひ手にとってみてください。

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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld

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