J-WAVEで放送中の番組『JAM THE WORLD』(ナビゲーター:グローバー)のワンコーナー「UP CLOSE」。11月22日(木)のオンエアでは、木曜日のニュース・スーパーバイザーを務める堀 潤が登場しました。
この日のテーマは、手話を言語のひとつとして認め、手話が使える人たちを増やすためさまざまな取り組みをしていく「手話言語条例」。現在、全国的に制定する自治体が増えています。
スタジオには、その制定に向けて活動してきた、「全日本ろうあ連盟」手話言語法制定推進運動本部委員で弁護士の田門 浩さんをお迎えし、現状を伺いました。田門さんは手話言語を使うため、手話通訳者とともにお届けしました。
■聴覚に困難を抱えるなか、弁護士に合格
まずは、ろう者や聴覚障害を持つ方は日本に何人ぐらいいるのかを伺いました。
田門:全国で障害者手帳を持つ聴覚障害者は34万人くらいと言われ、障害者手帳のない方を含めるとさらに多くなります。そのなかで、ろう者と呼ばれる、手話をメインに使う聴覚障害者は数万人程度と聞いています。
堀:そんななかで、田門さんは弁護士をされているんですよね。聴覚にさまざまな困難を抱えているなかでの司法試験突破は、大変だったんじゃないですか?
田門:大変でしたね。私の場合は司法試験合格までに8年かかりました。私が大学に通った時期は今から20年ほど前になります。当時は手話通訳者の保証がされていませんでした。(通訳がいない授業では)講義の内容がわからず、試験に合格するまでの実力がなかなか追いつかないという大きな課題がありました。
堀:具体的にはどのような困難がありましたか。
田門:大学入学後は自分で手話通訳者のボランディアをお願いをしていました。しかし、以前は手話通訳者の数が非常に少なく、講義を全て通訳していただくのは難しかった。「もっと手話通訳者がいれば非常に助かったのに」と感じる経験がありました。
■手話言語条例の制定は鳥取県から…東京は?
聴覚障害を持つ方々に対して、各地ではどのような対応をしているのでしょうか。
田門:やはり人口の多い地域は障がい者の福祉が進んでいる所が多く、一方で人口が少ない地域は遅れている部分があるかもしれません。そういった面は行政のトップがしっかりとリーダーシップをとって進めていただくと、上手くいくところがあると感じています。
堀:では、手話言語条例を制定している自治体は、どのくらいの数になりますか?
田門:11月14日現在で197の自治体がこの条例を制定しています。いちばん早かった地域は鳥取県で、2013年に鳥取県手話言語条例が制定されました。東京都はまだ制定されていないんです。都会の方が進まないことを不思議に思うところもあります。
堀:2020年東京オリンピック・パラリンピックを控えているのに、東京は制定がなぜ遅れているのでしょうか?
田門:手話言語条例は、自治体のトップがリーダーシップをとってくれないと進みにくいのです。各地域のリーダーに理解してもらい、取り組んでもらえるとありがたいです。
■国連は「手話は言語に含まれる」と定義
続いて、手話言語条例のはじまりについて伺いました。
田門:2006年に国連で採択された障害者権利条約がきっかけになります。そのなかで「手話は言語に含まれる」と定義されたことを受け、国内で2010年から全日本ろうあ連盟が中心となり、手話言語法を推進しようと動きが始まりました。
堀:すでに条例を制定する自治体は、どんな取り組みをしているのですか?
田門:たとえば、以前と比べると手話の普及の取り組みをする自治体が増えてきています。他には、手話通訳にかける予算の拡充や、ろう学校の先生を増やすための予算を増やしているところもあります。
群馬県の手話言語条例は、“教育の確保”という部分が大きく条文に盛り込まれているそうです。
田門:生まれたときから手話を獲得したり、学校のなかでも手話で学べる環境が作られている。そういった具体的な施策が、群馬県の条例のなかには盛り込まれています。また、耳が聴こえない教員や職員も増やす必要があるというような条例もあります。
堀:子どもの頃から手話や筆談、口での会話などいろんなコミュニケーションがミックスされ、それが当たり前になると、手話などに対するハードルも下がっていくんじゃないかなと思います。
■聴こえにくい、聴こえない人のためにできること
では、聴こえにくい、聴こえない人たちとのコミュニケーションに対して、今すぐ私たちができることは何でしょうか。
田門:ひとつは聴こえない人たちと出会ったときに、驚かないこと。これがいちばん大事です。もうひとつは、聴こえない人と出会って、いいコミュニケーションを一緒に考えることが重要だということ。最後に、聴こえない人とどんどん会って、交流を深めていくと、自然と「私も手話を使いたい」と考えるようになると思います。それをきっかけに聴こえない人と一緒に手話を勉強していくことが大切です。私は聴こえる学生さんと一緒の高校に通っていました。その時は手のひらに指で文字を書いてもらい、コミュニケーションを取ったりしていました。高校を卒業する頃には、まわりの友達が自然と手話を覚えてくれたという経験があります。そういったように、聴こえない人にたくさん会って、交流していくことが大事だと思っています。
最後に、田門さんはリスナーにこんなメッセージを送りました。
田門:聴こえない人にとって、手話通訳がいる環境があれば、さまざまな可能性が広がります。私はいま、ろう者の弁護士として20年仕事をしています。その期間、ずっと同じ手話通訳者と一緒に仕事をしてきました。そうすることで、聴こえる人と対等に仕事ができ、法廷や弁論、主張、尋問などの際は、手話通訳者を付けておこなうことができています。それほど、手話通訳者は非常に大事な仕事だと思います。ぜひみなさんに手話言語法や手話に興味を持っていただいて、手話言語条例の制定に向けて協力していただければうれしいです。
手話を理解する人が今以上に増えることによって、誰もが生きやすい社会に一歩近づけるのではないでしょうか。ぜひ「全日本ろうあ連盟」の取り組みについてもホームページでご覧ください。
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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld
この日のテーマは、手話を言語のひとつとして認め、手話が使える人たちを増やすためさまざまな取り組みをしていく「手話言語条例」。現在、全国的に制定する自治体が増えています。
スタジオには、その制定に向けて活動してきた、「全日本ろうあ連盟」手話言語法制定推進運動本部委員で弁護士の田門 浩さんをお迎えし、現状を伺いました。田門さんは手話言語を使うため、手話通訳者とともにお届けしました。
■聴覚に困難を抱えるなか、弁護士に合格
まずは、ろう者や聴覚障害を持つ方は日本に何人ぐらいいるのかを伺いました。
田門:全国で障害者手帳を持つ聴覚障害者は34万人くらいと言われ、障害者手帳のない方を含めるとさらに多くなります。そのなかで、ろう者と呼ばれる、手話をメインに使う聴覚障害者は数万人程度と聞いています。
堀:そんななかで、田門さんは弁護士をされているんですよね。聴覚にさまざまな困難を抱えているなかでの司法試験突破は、大変だったんじゃないですか?
田門:大変でしたね。私の場合は司法試験合格までに8年かかりました。私が大学に通った時期は今から20年ほど前になります。当時は手話通訳者の保証がされていませんでした。(通訳がいない授業では)講義の内容がわからず、試験に合格するまでの実力がなかなか追いつかないという大きな課題がありました。
堀:具体的にはどのような困難がありましたか。
田門:大学入学後は自分で手話通訳者のボランディアをお願いをしていました。しかし、以前は手話通訳者の数が非常に少なく、講義を全て通訳していただくのは難しかった。「もっと手話通訳者がいれば非常に助かったのに」と感じる経験がありました。
■手話言語条例の制定は鳥取県から…東京は?
聴覚障害を持つ方々に対して、各地ではどのような対応をしているのでしょうか。
田門:やはり人口の多い地域は障がい者の福祉が進んでいる所が多く、一方で人口が少ない地域は遅れている部分があるかもしれません。そういった面は行政のトップがしっかりとリーダーシップをとって進めていただくと、上手くいくところがあると感じています。
堀:では、手話言語条例を制定している自治体は、どのくらいの数になりますか?
田門:11月14日現在で197の自治体がこの条例を制定しています。いちばん早かった地域は鳥取県で、2013年に鳥取県手話言語条例が制定されました。東京都はまだ制定されていないんです。都会の方が進まないことを不思議に思うところもあります。
堀:2020年東京オリンピック・パラリンピックを控えているのに、東京は制定がなぜ遅れているのでしょうか?
田門:手話言語条例は、自治体のトップがリーダーシップをとってくれないと進みにくいのです。各地域のリーダーに理解してもらい、取り組んでもらえるとありがたいです。
■国連は「手話は言語に含まれる」と定義
続いて、手話言語条例のはじまりについて伺いました。
田門:2006年に国連で採択された障害者権利条約がきっかけになります。そのなかで「手話は言語に含まれる」と定義されたことを受け、国内で2010年から全日本ろうあ連盟が中心となり、手話言語法を推進しようと動きが始まりました。
堀:すでに条例を制定する自治体は、どんな取り組みをしているのですか?
田門:たとえば、以前と比べると手話の普及の取り組みをする自治体が増えてきています。他には、手話通訳にかける予算の拡充や、ろう学校の先生を増やすための予算を増やしているところもあります。
群馬県の手話言語条例は、“教育の確保”という部分が大きく条文に盛り込まれているそうです。
田門:生まれたときから手話を獲得したり、学校のなかでも手話で学べる環境が作られている。そういった具体的な施策が、群馬県の条例のなかには盛り込まれています。また、耳が聴こえない教員や職員も増やす必要があるというような条例もあります。
堀:子どもの頃から手話や筆談、口での会話などいろんなコミュニケーションがミックスされ、それが当たり前になると、手話などに対するハードルも下がっていくんじゃないかなと思います。
■聴こえにくい、聴こえない人のためにできること
では、聴こえにくい、聴こえない人たちとのコミュニケーションに対して、今すぐ私たちができることは何でしょうか。
田門:ひとつは聴こえない人たちと出会ったときに、驚かないこと。これがいちばん大事です。もうひとつは、聴こえない人と出会って、いいコミュニケーションを一緒に考えることが重要だということ。最後に、聴こえない人とどんどん会って、交流を深めていくと、自然と「私も手話を使いたい」と考えるようになると思います。それをきっかけに聴こえない人と一緒に手話を勉強していくことが大切です。私は聴こえる学生さんと一緒の高校に通っていました。その時は手のひらに指で文字を書いてもらい、コミュニケーションを取ったりしていました。高校を卒業する頃には、まわりの友達が自然と手話を覚えてくれたという経験があります。そういったように、聴こえない人にたくさん会って、交流していくことが大事だと思っています。
最後に、田門さんはリスナーにこんなメッセージを送りました。
田門:聴こえない人にとって、手話通訳がいる環境があれば、さまざまな可能性が広がります。私はいま、ろう者の弁護士として20年仕事をしています。その期間、ずっと同じ手話通訳者と一緒に仕事をしてきました。そうすることで、聴こえる人と対等に仕事ができ、法廷や弁論、主張、尋問などの際は、手話通訳者を付けておこなうことができています。それほど、手話通訳者は非常に大事な仕事だと思います。ぜひみなさんに手話言語法や手話に興味を持っていただいて、手話言語条例の制定に向けて協力していただければうれしいです。
手話を理解する人が今以上に増えることによって、誰もが生きやすい社会に一歩近づけるのではないでしょうか。ぜひ「全日本ろうあ連盟」の取り組みについてもホームページでご覧ください。
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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld
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