J-WAVEで放送中の番組『JAM THE WORLD』(ナビゲーター:グローバー)のワンコーナー「UP CLOSE」。8月29日(水)のオンエアでは、水曜日のニュース・スーパーバイザーを務めるフォトジャーナリスト・安田菜津紀が登場しました。
夏休み前後は、子どもたちの自殺のリスクがとても高まると言われています。この日は、勉強をやり直したいと思う方たちの個別指導塾「キズキ共育塾」の代表で、『暗闇でも走る 発達障害・うつ・ひきこもりだった僕が不登校・中退者の進学塾をつくった理由』の著者、安田祐輔さんをゲストにお迎えし、いじめ問題を考えました。
■「いつ死んでもよかった」と思った時期も
ご自身も発達障害、うつ、ひきこもり、父からの暴力など過酷な環境で過ごし、「いつ死んでもいいや。明日が来なければいいのに」と思っていた時期もあったという安田祐輔さん(以下、祐輔さん)。そこから「キズキ共育塾」を立ち上げるまでにどんなことがあったのでしょうか。
祐輔さんは軽度の発達障害で、物事に集中すると周りの声が聞こえなくなったり、ひとりごとを言ってしまったり、運動神経が極度に鈍かったり……といった特性が子どもの頃からあります。「変なやつ」だと、小学3年生の頃から同級生に無視をされるいじめに遭いました。
自身が発達障害であると知ったのは、30歳くらいの頃。検査に行くと、これまでうまくいかなかった物事が発達障害の症状に当てはまっており、「そのことが原因なら、自分は悪くないんだと思えて、本当に楽になりました」と語ります。
祐輔:「自分はこれが苦手です」「自分はこれが得意じゃないのであまりやりたくありません」と言いやすくなりましたね。障害のせいだからしょうがないと思えて、周りにも伝えられることが、楽になったなと思います。
著書では、父親からの熾烈な暴力についても綴られています。外に家庭をつくって帰ってこなくなったこともあり、「自分は生きている意味はないんじゃないか」と悩む10代を過ごしました。
■一念発起して勉強、大学へ! しかし…
学ぶ環境から遠ざかっていた祐輔さんですが、国際基督教大学(ICU)を卒業しています。12歳ごろから勉強をしていませんでしたが、18歳から猛勉強、20歳で入学しました。
祐輔:発達障害の影響で、人とのコミュニケーションがすごい苦手だったんで、高校時代のアルバイトも3ヶ月おきに対人関係で問題になって辞めていて。どんくさいので、作業系のバイトだと怒られたりして。そういうことを繰り返しているときに、小学校は勉強は中の上くらいできたことを思い出し、「ここにかけてみるしかない」と。
最初は勉強のやり方からわからず非常に苦労したそうです。それでも諦めなかったモチベーションはなんだったのでしょうか。
祐輔:ひとつは、「このままの人生だとまずい」という気持ち。もうひとつは、高校3年生のときに9・11とかアフガニスタンの空爆とかがあって。自分ではどうすることもできない「環境」に翻弄される子どもたちの姿が、いじめや家庭環境に振り回されてきた自分の人生と重なったんです。いつか国際的な分野で活躍できるようになりたいと思い、それが強いモチベーションになって、勉強も続けられました。
大学卒業後は就職しましたが、4ヶ月で鬱になって休職することに。その後、ひきこもりに。
祐輔:今になって考えると、発達障害特有の様々な課題があったからで。たとえば感覚が過敏なので、革靴の感覚がすごく苦手で履けなくて。ずっと靴を脱いで、靴下も耐えられなくなって脱いだりとかしてて、それがけっこう上司に怒られたり。
安田:発達障害のことを知らない方からすると「だらしない格好で仕事して……」となりますよね。
祐輔:まさにそうです。当時は自分が発達障害って知らなかったし、10年前の当時は、発達障害について社会の理解が進んでいませんでしたから。
休職・退社を経て、「キズキ共育塾」を立ち上げます。その経緯を伺いました。
祐輔:「僕は人と働けないんだ」とすごく悩んだんですよね。高校時代のアルバイトもそうですけど、いつも空気を読めなくて周りと合わなくて失敗するのを繰り返してきたので、「自分でお金を稼ぐしかないんだ」と。
安田:なるほど。発想の転換ですね。「組織でうまくやっていけないなら、自分でコントロールできるような場を作っていくこともひとつじゃないか」という。
■「自分はダメ」なわけじゃない
現在「キズキ共育塾」の規模はどんどん大きくなり、塾の生徒は約400名ほど。卒業生は1000名以上になります。卒業生の中には、過去にいじめに遭い、塾に通えるのも週に1日ほどだったのが、根気よく2年間塾に通い、勉強を続けることで学力が伸び大学に合格、現在は会社に勤められている人もいます。
祐輔:彼は大学に受かるとすごいイキイキしたんですね。いじめによる中退で「みんなが当たり前にできることが、できない」と思ってしまっていたけれど、勉強して大学に受かったことで「自分はダメな人間じゃない。運悪く、たまたまいじめられてしまったんだ」と発想が転換できたから。大学入学後はイキイキして、サークルの代表をつとめたり、発展途上国を旅したりして、最後は自分で行きたい会社を調べて直接メールを送って。それくらいアクティブになって、今は普通に会社員をやってます。
この話を聞いた安田は、「いい状態ではないときに、そっと寄り添うことを、みなさんが大事にしたことも理由のひとつかもしれない」とコメント。
祐輔:そうですね。学校や塾に来られないときに、「なんで来られないの?」と言いたくなると思うんですよね。「なんで寝坊するの?」「なんで遅刻するの?」「気持ちが落ち込んでも来なきゃダメだよ」とか。でもそれは、本人に何も響かない言葉で。そうじゃなくて、苦しみに寄り添うというか。どうやったら少しでも苦しみからラクになれるか、と考えて支援してきました。
最後に、いじめで学校に行くのがつらいと思っている子どもたちへ、祐輔さんからメッセージをいただきました。
祐輔:「周りが当たり前にできているのに、自分はできない」「行けないことで将来、自分の人生は終わってしまうかもしれない」と思っているかもしれません。そんなときに、ひとつおすすめしたいことがあります。それは、学校に行ってなかったけれども大人になって普通に働いていたり、すごく活躍したりしている人の体験談を読むこと。ネットにたくさんあります。そういう話を読んで「自分は学校に行きたくない、あるいは行っていないけれど、将来はぜんぜん終わらないないし、活躍できる可能性だってある」と感じられるといいなと。
安田祐輔さんが代表をつとめる「キズキ共育塾」、そして著書の『暗闇でも走る 発達障害・うつ・ひきこもりだった僕が不登校・中退者の進学塾をつくった理由』。気になるかたはぜひ調べてみてください。
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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld
夏休み前後は、子どもたちの自殺のリスクがとても高まると言われています。この日は、勉強をやり直したいと思う方たちの個別指導塾「キズキ共育塾」の代表で、『暗闇でも走る 発達障害・うつ・ひきこもりだった僕が不登校・中退者の進学塾をつくった理由』の著者、安田祐輔さんをゲストにお迎えし、いじめ問題を考えました。
■「いつ死んでもよかった」と思った時期も
ご自身も発達障害、うつ、ひきこもり、父からの暴力など過酷な環境で過ごし、「いつ死んでもいいや。明日が来なければいいのに」と思っていた時期もあったという安田祐輔さん(以下、祐輔さん)。そこから「キズキ共育塾」を立ち上げるまでにどんなことがあったのでしょうか。
祐輔さんは軽度の発達障害で、物事に集中すると周りの声が聞こえなくなったり、ひとりごとを言ってしまったり、運動神経が極度に鈍かったり……といった特性が子どもの頃からあります。「変なやつ」だと、小学3年生の頃から同級生に無視をされるいじめに遭いました。
自身が発達障害であると知ったのは、30歳くらいの頃。検査に行くと、これまでうまくいかなかった物事が発達障害の症状に当てはまっており、「そのことが原因なら、自分は悪くないんだと思えて、本当に楽になりました」と語ります。
祐輔:「自分はこれが苦手です」「自分はこれが得意じゃないのであまりやりたくありません」と言いやすくなりましたね。障害のせいだからしょうがないと思えて、周りにも伝えられることが、楽になったなと思います。
著書では、父親からの熾烈な暴力についても綴られています。外に家庭をつくって帰ってこなくなったこともあり、「自分は生きている意味はないんじゃないか」と悩む10代を過ごしました。
■一念発起して勉強、大学へ! しかし…
学ぶ環境から遠ざかっていた祐輔さんですが、国際基督教大学(ICU)を卒業しています。12歳ごろから勉強をしていませんでしたが、18歳から猛勉強、20歳で入学しました。
祐輔:発達障害の影響で、人とのコミュニケーションがすごい苦手だったんで、高校時代のアルバイトも3ヶ月おきに対人関係で問題になって辞めていて。どんくさいので、作業系のバイトだと怒られたりして。そういうことを繰り返しているときに、小学校は勉強は中の上くらいできたことを思い出し、「ここにかけてみるしかない」と。
最初は勉強のやり方からわからず非常に苦労したそうです。それでも諦めなかったモチベーションはなんだったのでしょうか。
祐輔:ひとつは、「このままの人生だとまずい」という気持ち。もうひとつは、高校3年生のときに9・11とかアフガニスタンの空爆とかがあって。自分ではどうすることもできない「環境」に翻弄される子どもたちの姿が、いじめや家庭環境に振り回されてきた自分の人生と重なったんです。いつか国際的な分野で活躍できるようになりたいと思い、それが強いモチベーションになって、勉強も続けられました。
大学卒業後は就職しましたが、4ヶ月で鬱になって休職することに。その後、ひきこもりに。
祐輔:今になって考えると、発達障害特有の様々な課題があったからで。たとえば感覚が過敏なので、革靴の感覚がすごく苦手で履けなくて。ずっと靴を脱いで、靴下も耐えられなくなって脱いだりとかしてて、それがけっこう上司に怒られたり。
安田:発達障害のことを知らない方からすると「だらしない格好で仕事して……」となりますよね。
祐輔:まさにそうです。当時は自分が発達障害って知らなかったし、10年前の当時は、発達障害について社会の理解が進んでいませんでしたから。
休職・退社を経て、「キズキ共育塾」を立ち上げます。その経緯を伺いました。
祐輔:「僕は人と働けないんだ」とすごく悩んだんですよね。高校時代のアルバイトもそうですけど、いつも空気を読めなくて周りと合わなくて失敗するのを繰り返してきたので、「自分でお金を稼ぐしかないんだ」と。
安田:なるほど。発想の転換ですね。「組織でうまくやっていけないなら、自分でコントロールできるような場を作っていくこともひとつじゃないか」という。
■「自分はダメ」なわけじゃない
現在「キズキ共育塾」の規模はどんどん大きくなり、塾の生徒は約400名ほど。卒業生は1000名以上になります。卒業生の中には、過去にいじめに遭い、塾に通えるのも週に1日ほどだったのが、根気よく2年間塾に通い、勉強を続けることで学力が伸び大学に合格、現在は会社に勤められている人もいます。
祐輔:彼は大学に受かるとすごいイキイキしたんですね。いじめによる中退で「みんなが当たり前にできることが、できない」と思ってしまっていたけれど、勉強して大学に受かったことで「自分はダメな人間じゃない。運悪く、たまたまいじめられてしまったんだ」と発想が転換できたから。大学入学後はイキイキして、サークルの代表をつとめたり、発展途上国を旅したりして、最後は自分で行きたい会社を調べて直接メールを送って。それくらいアクティブになって、今は普通に会社員をやってます。
この話を聞いた安田は、「いい状態ではないときに、そっと寄り添うことを、みなさんが大事にしたことも理由のひとつかもしれない」とコメント。
祐輔:そうですね。学校や塾に来られないときに、「なんで来られないの?」と言いたくなると思うんですよね。「なんで寝坊するの?」「なんで遅刻するの?」「気持ちが落ち込んでも来なきゃダメだよ」とか。でもそれは、本人に何も響かない言葉で。そうじゃなくて、苦しみに寄り添うというか。どうやったら少しでも苦しみからラクになれるか、と考えて支援してきました。
最後に、いじめで学校に行くのがつらいと思っている子どもたちへ、祐輔さんからメッセージをいただきました。
祐輔:「周りが当たり前にできているのに、自分はできない」「行けないことで将来、自分の人生は終わってしまうかもしれない」と思っているかもしれません。そんなときに、ひとつおすすめしたいことがあります。それは、学校に行ってなかったけれども大人になって普通に働いていたり、すごく活躍したりしている人の体験談を読むこと。ネットにたくさんあります。そういう話を読んで「自分は学校に行きたくない、あるいは行っていないけれど、将来はぜんぜん終わらないないし、活躍できる可能性だってある」と感じられるといいなと。
安田祐輔さんが代表をつとめる「キズキ共育塾」、そして著書の『暗闇でも走る 発達障害・うつ・ひきこもりだった僕が不登校・中退者の進学塾をつくった理由』。気になるかたはぜひ調べてみてください。
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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld
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