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「日本三大美肌の湯」と“トロトロの名物豆腐”と580年以上続くお茶と……佐賀・嬉野の魅力を全国を旅する作家が語る

〈嬉野名物の「温泉湯豆腐」/画像素材:PIXTA〉

「日本三大美肌の湯」と“トロトロの名物豆腐”と580年以上続くお茶と……佐賀・嬉野の魅力を全国を旅する作家が語る

佐賀・嬉野に関する歴史や魅力、独自の風習について、作家・文献学者の山口謠司さんが語った。

この内容をお届けしたのは、J-WAVEのワンコーナー「PLENUS RICE TO BE HERE」。放送日は2026年5月25日(月)〜5月28日(木)。同コーナーでは、独自の文化のなかで育まれてきた“日本ならではの知恵”を、山口さんが解説する。ここではその内容をテキストで紹介。

また、ポッドキャストでも過去のオンエアをアーカイブとして配信している。山口さんが実際に嬉野を訪れ、そこで営む人から聞いたエピソードの詳細が楽しめる。

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嬉野のお茶で最高のティーツーリズム

佐賀県南西部に位置し、長崎県と隣接する緑豊かな街・嬉野。「日本三大美肌の湯」として名高い嬉野温泉は九州でも屈指の人気を誇る温泉地だ。濃厚な旨味が特徴の嬉野茶、そして伝統工芸の肥前吉田焼が有名で、長崎街道宿場町の面影を残す町並み「塩田津」など、多彩な観光資源も有する。

山口:東京から嬉野に行くには、新幹線で博多まで向かって、そこで特急「リレーかもめ」に乗り換えます。武雄温泉まで来れば西九州新幹線「かもめ」が待っています。これに乗れば、博多から嬉野温泉までは1時間程度で着きます。東京を朝早く出ると、もう午後には嬉野温泉に到着しています。

皆さん、観光地に行く目的は何ですか? 観光という言葉は、中国の古典「易経(えききょう)」という本に出てくる古い言葉です。

<国の光を観るは、もって王にひんたるによろし>


この言葉は、その場その場に行って素晴らしいところを発見し、そして客人として大いに学ばせていただく、ということを表す言葉です。

嬉野市には塩田川という川が流れている。

山口:この川の流れが“遠くへ来たな”という思いにさせてくれます。加えて、東京から行くと様々な不要なもの、自分が抱えてきたモヤモヤしたもの、それらを川に流してしまおうかな、という思いにもさせてくれます。

そして、嬉野は「美肌の湯」と呼ばれている温泉があり、「日本三大美肌の湯」の1つということで歴史もあります。奈良時代初期に書かれた、「肥前国風土記」という本がありますが、ここにも嬉野のお湯が出てくるんです。

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嬉野は580年以上続く嬉野茶の産地でもある。

山口:嬉野では、ティーツーリズムという名称で“お茶を使って贅沢な学びを体験してみませんか”という提案が行われています。その中でも最高のティーツーリズムとして、茶畑に点在する茶空間で、ティーセレモニーをしてくださるプログラムがあります。

3月から6月まではお茶農家さんが繁忙期なので出来ません。それ以外の期間で、茶畑のど真ん中で、あるいは檜と杉に囲まれた空間で、綺麗な大村湾を見ながら、お茶を1人でいただくことができるんです。

観光に来て、名所を巡るだけではなく、日本の中には、その土地が持っている光があります。その光をその土地の人たちが磨いていらっしゃると感じられるところ、それが嬉野だと思います。

嬉野にはお茶に合うおいしいお茶菓子があるという。

山口:「橋爪菓子舗」というお菓子屋さんのどら焼きです。これが非常にお茶と合う。そして、この美肌の湯でいただくお茶。その3つが重なると、光が“キューっ”と自分のところに集まったような気がしました。

大正10年創業・橋爪菓子舗の名物はまんまるカステラというお菓子です。このまんまるカステラというお菓子は、藤井聡太さんが将棋のお茶菓子にも選ばれたということです。とにかく嬉野のお茶にぴったりのお菓子ですね。

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くるりの岸田繁が作った「MUSIC FOR THE ONSEN」

山口さんは嬉野で「日本三大美肌の湯」に数えられる名泉を楽しんだようだ。

山口:橋爪菓子舗のおばさまがいらっしゃいました。「これからお泊まりではなくて、日帰り温泉に行きたいと思うんですけども、どこか紹介していただけませんか?」と聞いたら、「それは大村屋さんしかなかですよ」と紹介してくださいました。

北川健太さんという方が、この大村屋の第15代目当主さんです。地元のFMでTHE BEATLESの番組をやっていらっしゃる素敵な方でした。大村屋さんのラウンジに通されて、お風呂を待っていたのですが、いきなり僕の目の前に現れたのは、中林梧竹(ごちく)という幕末から明治期にかけて活躍した書家の字です。

ラウンジに「初」「大」「万」という3字が書かれていました。この中林梧竹という人は、中国大陸、日本国内を自由自在に歩き回っては、独自の書の世界を作り出していった明治時代の三大書家の1人だと言われています。佐賀県の出身の人です。

一度、嬉野の街が火事で焼けてしまったときに、当主が「この額だけは燃やしてはいけない」ということで、前にある川に入っていって、この書を助けたという風に言われています。

嬉野では名物の「温泉湯豆腐」を楽しむ旅が人気だ。

山口:この嬉野温泉で食べる湯豆腐のおいしいこと。大村屋さんでいただくことができるんですけれども、持ち帰り用のパックになっているものもございます。

美肌の湯。日本でも本当に珍しいぐらい、お湯に入るとトロトロ、肌もトロトロになるようなお湯なんですけども、このトロトロになるようなお湯で作った湯豆腐。食べてみたら、体の中の嫌なものをどんどん流してくれるような気がするんです。

山口さんは大村屋で「MUSIC FOR THE ONSEN」というCDを見つけたそうだ。

山口:これは、くるりの岸田繁さんが北川さんに頼まれて作った曲なんですけども、聴いてみると耳からもトロトロになってしまうような感覚でした。温泉に入っている間にかかっている音楽がこの「MUSIC FOR THE ONSEN」でしたが、お湯に入ってトロトロ、湯豆腐を食べてトロトロ、耳の中からトロトロ、頭の中もトロトロ……。

本当に嬉野というところは嬉しいの〜。他に何も言うことができないところですね。いろんなことを忘れて帰ってきてしまいました。もうトロトロで言葉も忘れてしまいました。

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「JAXAGA SCHOOL」と「呉豆腐」

武雄市には「佐賀県立宇宙科学館 ゆめぎんが」がある。九州で最大規模を誇る自然科学系博物館だ。

山口:教育プログラムを通じて未来へのチャレンジをする心・科学への興味を湧き立たせると言う目的で、ここでは、佐賀県とJAXA(宇宙航空研究開発機構)が一緒になって、「JAXAGA SCHOOL」を開校しています。

この宇宙ステーションのような博物館「ゆめぎんが」にも、自然科学系の本を集めた図書館やブックショップがありますが、武雄市立図書館にもぜひ足を運んでみてください。本当に素晴らしい施設です。

そんな武雄市立図書館は2013年にリニューアルオープンしたという。

山口:ここの居心地のよさ、開放感が素晴らしいんです。次々に本を選んで、適当なところに腰をかけて、いいアイデアをもらえたなと思わせてくれるような図書館です。

ところで武雄というところはまるで異次元空間です。大衆浴場温泉がありますが、レトロで、明治時代に建てられたそのままの温泉が残っているんです。熱湯とぬる湯。2つの浴槽が用意されていて、この温泉に入ると自分が宇宙にいるのか、現在にいるのか、それとも明治時代にいるのか、どこかにタイムスリップしてしまったのではないかと錯覚してしまうくらいです。

山口さんは武雄のすごいところとして武雄神社にある「御神木」を紹介した。

山口:樹齢3000年を超える武雄の大きな楠木。幹の中には畳12畳の空間に神様が祀ってあります。お参りをしてからいただくものは、呉豆腐(ごどうふ)というお豆腐です。

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普通、お豆腐はにがりで固めてあります。一方、この呉豆腐は、くずと澱粉で固めてあります。ぷるんぷるんとしているんですね。この、呉豆腐に何をかけて食べるかというと、ゴマ醤油。ゴマ醤油をかけてぷるんぷるんの呉豆腐をいただくのが武雄風のお豆腐の召し上がり方。なんだか、もちもちしているんですね。プリンを食べているような。そしてゴマ醤油が甘いのかしょっぱいのかもよくわからない。

武雄の通の方に聞くと、この呉豆腐は、ご飯を食べるときにはゴマ醤油をかけて食べるそうですが、デザートにするときには黒蜜をかけて食べるとおいしいそうです。きな粉をかけて食べるとまた違う感覚を楽しめるそうです。

宇宙空間に行くことがあったら、この呉豆腐を無重力空間の中に浮かべて、口の中でいただきたいと思うんですけども、残念ながら、ゆめぎんがの中には無重力空間は用意されていません。ぜひ、JAXAGA SCHOOLで作っていただいて、無重力空間で武雄の呉豆腐を食べてみたいものです。

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