(画像素材:PIXTA)
三重・鈴鹿市に関する歴史や魅力、独自の風習について、作家・文献学者の山口謠司さんが語った。
この内容をお届けしたのは、J-WAVEのワンコーナー「PLENUS RICE TO BE HERE」。放送日は2026年2月16日(月)〜2月19日(木)。同コーナーでは、独自の文化のなかで育まれてきた“日本ならではの知恵”を、山口さんが解説する。ここではその内容をテキストで紹介。
また、ポッドキャストでも過去のオンエアをアーカイブとして配信している。山口さんが実際に鈴鹿を訪れ、そこで営む人から聞いたエピソードの詳細が楽しめる。
・ポッドキャストページ
山口:三重県の鈴鹿と聞くと、やっぱりサーキットですよね。サーキットといえばフェラーリなどなど……かっこいいですね。
2026年は「午年(うまどし)」です。そしてフェラーリのエンブレムはカバリーノ・ランパンテと呼ばれる跳ね馬ですね。黄色い字にイタリアの国旗、そこに跳ね馬。「力強く元気に、誰にも負けない、世界で一番になるんだ」と言って車を作ったのがフェラーリ創設者のエンツォ・フェラーリです。
フェラーリの跳ね馬のエンブレムは、イタリア軍のパイロットに由来しているという。
山口:第1次世界大戦のとき、イタリア軍パイロットであるフランチェスコ・バラッカという方は、戦闘機に乗ってドイツ軍の飛行機、戦闘機を撃ち落とすのがとても上手だったそうです。戦争で亡くなってしまいますが、そのバラッカのお母様は、フェラーリが1923年のサーキットで初優勝したときに、エンツォ・フェラーリのところにやってきて、「あなた、この跳ね馬のエンブレムを車につけなさい。きっと幸運をもたらしますよ」と言ったそうです。
以来、フェラーリはこの跳ね馬のエンブレムをつけて、駆け抜けるようになったんですね。エンツォ・フェラーリの出身地であるイタリア・モデナのカラーである黄色をまといながら。
山口さんはF1レーサーに「ほかのスポーツに比べて、どこか特別に鍛えるところはありますか?」と質問したことがあるそうだ。
山口:答えは「首」でした。F1で走っていると、コーナーでかかる圧力はものすごいそうです。「首をやられたら、もう車には乗ることができません」ということでした。
そんなF1レーサーが命がけで走っている鈴鹿サーキット。今回、行きたいなと思いながらも、少し遠くて足を運ぶことができませんでした。鈴鹿サーキットは本田技研工業の創業者である本田宗一郎さんがお作りになったものですね。鈴鹿にサーキットがある理由、それはHONDA(ホンダ)の工場が鈴鹿にあったからですが、そんな鈴鹿サーキットにはホテルが隣接されています。
ホテルには「サーキットオーベルジュ」というレストランがあります。そこには子どもから大人までが楽しめるサーキットならではのお料理もあるそうです。
山口さんには、もう1つ行きたいところがあるという。
山口:それは、イタリア・モデナ近郊のマラネッロという場所。フェラーリの本社がある車好きの聖地ですが、そちらには「リストランテ イル・カヴァリーノ」というレストランがあります。1950年に創業したレストランですが、元々はフェラーリ社員のための食堂だったそうです。ただ現在はお車を買いに来る方たちも、ここでお食事をなさるそうです。
山口:皆さんは「茶飲み友だち」はいらっしゃいますか。お茶を飲むだけの友だちというわけではないのでしょうが、ただの知り合いでもなく、それからライフパートナーでもない、関係が近すぎず遠すぎず、言えないこともたくさんあるんだけど、なんかお茶を飲みながら「いい時間だわね」という気持ちが共有できる、いい意味で空気のような存在。そんな茶飲み友だちはいちばん贅沢な関係性かもしれません。
鈴鹿のお茶は「伊勢茶」と呼ばれています。室町時代から日本中に伊勢茶が販売されていきました。鈴鹿では特に空海が唐から持ち帰ったお茶の作り方を、平安時代から伝えているという風に言われていますが、伝説かどうか、本当のことを確かめることはできません。
この伊勢茶を全国に届ける役割を担ったのが、「御師(おんし)」と呼ばれる人たち。お伊勢参りのツーリズムを江戸時代の250年にわたって支えてきたグループだ。
山口:今で言えば観光事業会社のような人たちなんですけども、「みんな、お伊勢参りにいらっしゃいませんか」と言って、お伊勢参りを普及させていきました。そういった観光業をやるときに、お土産として持っていったのが伊勢茶です。
お茶はどこにでも持って行って、お茶飲み友だちを作ることができます。お茶を飲みながら、お菓子を食べながら、「伊勢という場所はいいですよ。やはり一生に一度は伊勢参りにいらっしゃってはいかがでしょうか」と言って、全国にお茶飲み友だちを作っていきます。上手な観光事業ですね。
この伊勢茶でおいしいのは「かぶせ茶」と呼ばれるものだ。
山口:夏も近づく八十八夜、茶摘みの時期のちょうど20日前ぐらいに、お茶の木にあたる光をネットを使って遮断してしまうんですね。
そうすると、お茶の旨味であるテアニンが多く含まれるお茶の葉が新芽となって生まれてきます。そして、色も香りも、まるで玉露やお抹茶のようにおいしくなる。こうやってお茶をおいしくしていく工夫をしながら、伊勢茶を全国に広めていきました。
ラグジュアリーホテルのアフタヌーンティーとはまた違う感覚で、お座敷で茶飲み友だちと伊勢茶をいただく。つまんで食べていたのはたくあん。何の話をしていたのか覚えていないような、たわいもない友だちと過ごす時間……これは本当に至福の時間ですね。
山口:最近、こんにゃくをいっぱい食べています。鈴鹿名物の「椿こんにゃく」。あまりにおいしいので、そうめん風こんにゃくというものも買ってしまいました。
つるつると食べています。朝は納豆にご飯、ブルーベリー。お昼にはこんにゃく。夜はお肉かな。こんにゃくはランチにぴったりです。お昼にいただくと腹持ちがいいんですね。それと炭水化物ではないからでしょうか、こんにゃくを食べても眠くならないんです。お昼寝したいと思わないんですよ。
鈴鹿に行くと「椿こんにゃく」と書かれた看板がいっぱい出ていたそうだ。
山口:看板を見て、「まさか椿の実とか花とかでこんにゃくを作るわけでもないしな……」などと考えていました。こんにゃくの産地といえば、やっぱり群馬ですよね。こんにゃく芋の名産地も群馬県。群馬県の中でも下仁田町。そこで作られるのは、下仁田こんにゃくと言います。
赤城山の水はけのいい火山灰の大地を利用して作られるこんにゃく芋。群馬の刺身こんにゃくというのは「山ふぐ」と呼ばれています。これは、わさび醤油で食べてもいいし、やっぱり合うのは、もみじおろし。もみじおろしをつけて、この山ふぐを食べると、舌がビリビリというような感じで、ふぐを食べているわけではないのに、ふぐを食べているような気になります。安上がりでいいですね。
こんにゃく芋を作っているところは群馬・下仁田が「名産地」ですが、鈴鹿の方は名産地ではありません。「名物」です。名物と名産地は違いますね。群馬県は、こんにゃくの生産量、そして加工量とともに日本一で、全国シェアの90パーセント以上を占めています。
椿大神社の境内には龍神様が祀ってある。そこでは水が飲めるようになっており、「その味はなんと爽やかなこと」と山口さんは振り返る。鈴鹿の水はこんにゃくにも重要な要素だ。
山口:鈴鹿には鈴鹿川が流れています。この川のお水がとってもおいしいんです。鈴鹿川の水がこんにゃくの灰汁(あく)を抜くのぴったりだそうです。みんな「おいしい、おいしい、椿こんにゃく」と言って食べますが、伊勢志摩のあおさ海苔が入っている部分と、普通のこんにゃくだけで作られている左右色が違う刺身こんにゃくが売っています。
酢味噌でいただくとおいしいです。あおさが入っている方のこんにゃくをいただくと、伊勢志摩のあおさの香りが海の香りとなって立ち上がってきます。反対側のちょっと灰色っぽい方をいただくと、山の香りが“ほわっ”と鼻腔に漂ってくるんですね。
お伊勢に行く人たちは大体鈴鹿を通っていきました。昔は多くの旅人が1日程度かけて歩き、鈴鹿から伊勢へと向かいましたが、おいしいものを伊勢で食べるために、ここではただ腹持ちがいいものだけを食べておこうと言って鈴鹿越えをする。そのときに食べたのがこんにゃくだと言われています。腹持ちのいいこんにゃく、ヘルシーですし、ランチにはちょうどいいのではないでしょうか。
(構成=中山洋平)
この内容をお届けしたのは、J-WAVEのワンコーナー「PLENUS RICE TO BE HERE」。放送日は2026年2月16日(月)〜2月19日(木)。同コーナーでは、独自の文化のなかで育まれてきた“日本ならではの知恵”を、山口さんが解説する。ここではその内容をテキストで紹介。
また、ポッドキャストでも過去のオンエアをアーカイブとして配信している。山口さんが実際に鈴鹿を訪れ、そこで営む人から聞いたエピソードの詳細が楽しめる。
・ポッドキャストページ
F1レーサーに質問したこと
東に伊勢湾、西に鈴鹿山脈と恵まれた自然環境の中にある三重県鈴鹿市。世界有数のレーシングコースである鈴鹿サーキットがあることは有名だろう。それゆえか、自動車産業など数多くの企業があり、伊勢湾岸地域有数の内陸工業都市として発展している。山口:三重県の鈴鹿と聞くと、やっぱりサーキットですよね。サーキットといえばフェラーリなどなど……かっこいいですね。
2026年は「午年(うまどし)」です。そしてフェラーリのエンブレムはカバリーノ・ランパンテと呼ばれる跳ね馬ですね。黄色い字にイタリアの国旗、そこに跳ね馬。「力強く元気に、誰にも負けない、世界で一番になるんだ」と言って車を作ったのがフェラーリ創設者のエンツォ・フェラーリです。
フェラーリの跳ね馬のエンブレムは、イタリア軍のパイロットに由来しているという。
山口:第1次世界大戦のとき、イタリア軍パイロットであるフランチェスコ・バラッカという方は、戦闘機に乗ってドイツ軍の飛行機、戦闘機を撃ち落とすのがとても上手だったそうです。戦争で亡くなってしまいますが、そのバラッカのお母様は、フェラーリが1923年のサーキットで初優勝したときに、エンツォ・フェラーリのところにやってきて、「あなた、この跳ね馬のエンブレムを車につけなさい。きっと幸運をもたらしますよ」と言ったそうです。
以来、フェラーリはこの跳ね馬のエンブレムをつけて、駆け抜けるようになったんですね。エンツォ・フェラーリの出身地であるイタリア・モデナのカラーである黄色をまといながら。
山口さんはF1レーサーに「ほかのスポーツに比べて、どこか特別に鍛えるところはありますか?」と質問したことがあるそうだ。
山口:答えは「首」でした。F1で走っていると、コーナーでかかる圧力はものすごいそうです。「首をやられたら、もう車には乗ることができません」ということでした。
そんなF1レーサーが命がけで走っている鈴鹿サーキット。今回、行きたいなと思いながらも、少し遠くて足を運ぶことができませんでした。鈴鹿サーキットは本田技研工業の創業者である本田宗一郎さんがお作りになったものですね。鈴鹿にサーキットがある理由、それはHONDA(ホンダ)の工場が鈴鹿にあったからですが、そんな鈴鹿サーキットにはホテルが隣接されています。
ホテルには「サーキットオーベルジュ」というレストランがあります。そこには子どもから大人までが楽しめるサーキットならではのお料理もあるそうです。
山口さんには、もう1つ行きたいところがあるという。
山口:それは、イタリア・モデナ近郊のマラネッロという場所。フェラーリの本社がある車好きの聖地ですが、そちらには「リストランテ イル・カヴァリーノ」というレストランがあります。1950年に創業したレストランですが、元々はフェラーリ社員のための食堂だったそうです。ただ現在はお車を買いに来る方たちも、ここでお食事をなさるそうです。
鈴鹿のお茶「伊勢茶」
気軽に集まってお茶を飲みながら世間話や雑談を楽しむ。山口さんはそんなひとときを「贅沢な時間」だと説く。山口:皆さんは「茶飲み友だち」はいらっしゃいますか。お茶を飲むだけの友だちというわけではないのでしょうが、ただの知り合いでもなく、それからライフパートナーでもない、関係が近すぎず遠すぎず、言えないこともたくさんあるんだけど、なんかお茶を飲みながら「いい時間だわね」という気持ちが共有できる、いい意味で空気のような存在。そんな茶飲み友だちはいちばん贅沢な関係性かもしれません。
鈴鹿のお茶は「伊勢茶」と呼ばれています。室町時代から日本中に伊勢茶が販売されていきました。鈴鹿では特に空海が唐から持ち帰ったお茶の作り方を、平安時代から伝えているという風に言われていますが、伝説かどうか、本当のことを確かめることはできません。
この伊勢茶を全国に届ける役割を担ったのが、「御師(おんし)」と呼ばれる人たち。お伊勢参りのツーリズムを江戸時代の250年にわたって支えてきたグループだ。
山口:今で言えば観光事業会社のような人たちなんですけども、「みんな、お伊勢参りにいらっしゃいませんか」と言って、お伊勢参りを普及させていきました。そういった観光業をやるときに、お土産として持っていったのが伊勢茶です。
お茶はどこにでも持って行って、お茶飲み友だちを作ることができます。お茶を飲みながら、お菓子を食べながら、「伊勢という場所はいいですよ。やはり一生に一度は伊勢参りにいらっしゃってはいかがでしょうか」と言って、全国にお茶飲み友だちを作っていきます。上手な観光事業ですね。
この伊勢茶でおいしいのは「かぶせ茶」と呼ばれるものだ。
山口:夏も近づく八十八夜、茶摘みの時期のちょうど20日前ぐらいに、お茶の木にあたる光をネットを使って遮断してしまうんですね。
そうすると、お茶の旨味であるテアニンが多く含まれるお茶の葉が新芽となって生まれてきます。そして、色も香りも、まるで玉露やお抹茶のようにおいしくなる。こうやってお茶をおいしくしていく工夫をしながら、伊勢茶を全国に広めていきました。
ラグジュアリーホテルのアフタヌーンティーとはまた違う感覚で、お座敷で茶飲み友だちと伊勢茶をいただく。つまんで食べていたのはたくあん。何の話をしていたのか覚えていないような、たわいもない友だちと過ごす時間……これは本当に至福の時間ですね。

ランチにおすすめな鈴鹿名物・椿こんにゃく
お昼ご飯のおすすめは、ヘルシーで腹持ちのいいこんにゃくだそう。山口:最近、こんにゃくをいっぱい食べています。鈴鹿名物の「椿こんにゃく」。あまりにおいしいので、そうめん風こんにゃくというものも買ってしまいました。
つるつると食べています。朝は納豆にご飯、ブルーベリー。お昼にはこんにゃく。夜はお肉かな。こんにゃくはランチにぴったりです。お昼にいただくと腹持ちがいいんですね。それと炭水化物ではないからでしょうか、こんにゃくを食べても眠くならないんです。お昼寝したいと思わないんですよ。
鈴鹿に行くと「椿こんにゃく」と書かれた看板がいっぱい出ていたそうだ。
山口:看板を見て、「まさか椿の実とか花とかでこんにゃくを作るわけでもないしな……」などと考えていました。こんにゃくの産地といえば、やっぱり群馬ですよね。こんにゃく芋の名産地も群馬県。群馬県の中でも下仁田町。そこで作られるのは、下仁田こんにゃくと言います。
赤城山の水はけのいい火山灰の大地を利用して作られるこんにゃく芋。群馬の刺身こんにゃくというのは「山ふぐ」と呼ばれています。これは、わさび醤油で食べてもいいし、やっぱり合うのは、もみじおろし。もみじおろしをつけて、この山ふぐを食べると、舌がビリビリというような感じで、ふぐを食べているわけではないのに、ふぐを食べているような気になります。安上がりでいいですね。
こんにゃく芋を作っているところは群馬・下仁田が「名産地」ですが、鈴鹿の方は名産地ではありません。「名物」です。名物と名産地は違いますね。群馬県は、こんにゃくの生産量、そして加工量とともに日本一で、全国シェアの90パーセント以上を占めています。
椿大神社の境内には龍神様が祀ってある。そこでは水が飲めるようになっており、「その味はなんと爽やかなこと」と山口さんは振り返る。鈴鹿の水はこんにゃくにも重要な要素だ。

酢味噌でいただくとおいしいです。あおさが入っている方のこんにゃくをいただくと、伊勢志摩のあおさの香りが海の香りとなって立ち上がってきます。反対側のちょっと灰色っぽい方をいただくと、山の香りが“ほわっ”と鼻腔に漂ってくるんですね。
お伊勢に行く人たちは大体鈴鹿を通っていきました。昔は多くの旅人が1日程度かけて歩き、鈴鹿から伊勢へと向かいましたが、おいしいものを伊勢で食べるために、ここではただ腹持ちがいいものだけを食べておこうと言って鈴鹿越えをする。そのときに食べたのがこんにゃくだと言われています。腹持ちのいいこんにゃく、ヘルシーですし、ランチにはちょうどいいのではないでしょうか。
(構成=中山洋平)
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