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燃え殻が「ホッとした」大槻ケンヂの言葉とは? 『すべて忘れてしまうから』秘話

燃え殻が「ホッとした」大槻ケンヂの言葉とは? 『すべて忘れてしまうから』秘話

作家・燃え殻が、大槻ケンヂとのエピソードや、夢や目標を叶えるために大切にしていることなどについて語った。

燃え殻が登場したのは12月6日(土)放送のJ-WAVE『KDDI LINKSCAPE』(ナビゲーター:TENDRE、田中シェン)の「CONNECTORS AVENUE」。エンターテイメントシーンなどで活躍するゲストを迎え、つながることで生まれる可能性やヒントを探っていくコーナーだ。

番組は、Spotifyなどのポッドキャストでも聴くことができる。

・ポッドキャストページ

燃え殻の作品でTENDREが劇伴を担当したことも

燃え殻は、2017年『ボクたちはみんな大人になれなかった』で小説デビュー。大きな話題となり、Netflixで映画化された。そのほかにもエッセイ集『すべて忘れてしまうから』、小説『これはただの夏』など多数の著書を発表。さらに、9月には最新エッセイ集『これはいつかのあなたとわたし』が発売された。J-WAVEでは、毎週金曜26時30分から放送の『BEFORE DAWN』のナビゲーターを務めている。

TENDRE:燃え殻さんのエッセイ『すべて忘れてしまうから』という作品が2022年にディズニープラスでドラマ化されまして、そのドラマの音楽を私が担当させてもらいました。その節は本当にありがとうございます。

燃え殻:劇伴をTENDREさんにやっていただきました。とても素敵でした。

TENDRE:貴重な経験をさせてもらいました。さらに、僕は『DRAMA』という曲があるんですが、それを1話のエンディングテーマにしてもらいまして。生演奏で出演するシーンが毎回あるんです。

燃え殻:エンディングに「Bar灯台」というバーで、毎回違うミュージシャンが生で演奏するという。その第1話がTENDREさんでした。

TENDRE:ドラマで『DRAMA』をやらせていただきました。

燃え殻:とてもすばらしかったです。

すべて忘れてしまうから|振り返りMV 第1話 TENDRE|Disney+ (ディズニープラス)

TENDRE:燃え殻さんは『BEFORE DAWN』を担当されて、何年ぐらいになるんですか?

燃え殻:もう4年が過ぎました。早いです、本当に。TENDREさんにも来ていただいて。

TENDRE:1度お邪魔させてもらって。深夜の番組なので、燃え殻さんによる「燃え殻さんワールド」というのでしょうか。深夜に心を落ち着かせられる番組、みたいな感じでした。

大槻ケンヂにかけてもらった言葉

燃え殻は、現在も印象に残っている出会いやつながりについて、最初の小説を世に出した際のトークイベントでのエピソードを明かした。

燃え殻:新宿の紀伊国屋書店でトークイベントをやることになって。そのときに「誰に会いたいですか?」と言われて「大槻ケンヂさんに会わせてください」と。大槻さんのエッセイと小説は全部読んでいて、それこそ『オールナイトニッポン』の大槻さんのラジオをずっと聴いたりしていたので「会わせてください」と。それでお会いすることができました。

TENDRE:燃え殻さんにとって大槻さんはどういう存在ですか?

燃え殻:僕は本読みではないので、そんなに本をたくさん読んできていないんです。そのなかで大槻さんのエッセイは、たぶん読んでいないものがないぐらい、ほぼ全部読みました。なので先生というか、ものを書く上での大先輩というか。「こういうものを書きたいな」というのをずっと思って書いていたので。その大槻さんに会えたのは本当にうれしかった。

TENDRE:すごいですね。その大槻さんからかけてもらった言葉で印象的なものはありますか?

燃え殻:そのときが人生で初めてのトークイベントだったんです。大槻さんが“ヒビ割れメイク”をしているところで、「ちょっとふたりになろう」とふたりになって。恥ずかしいのと緊張するのとで、ハラハラしているときに大槻さんが「緊張してる?」と。「緊張してます」と答えたら、「いいことも悪いことも、そんなに長く続かないから大丈夫。もうね、すべてみんな忘れちゃうから」と言ったんです。

TENDRE:すばらしい。

燃え殻:それがなんかホッとして。ふたりだけの空間にしてくれて、「いいことも悪いことも全部、人は忘れるから。今日は失敗しても大丈夫」と。そのおかげでトークイベントができたというのがあります。

TENDRE:大槻さんの言葉の温度感があるんでしょうね。まさにその出会いがその後、なにかにつながっていきましたか?

燃え殻:大槻さんにもお伝えしましたが、そのときの「すべて忘れてしまうんだよ」といった言葉で、TENDREさんに劇伴も作っていただいた『すべて忘れてしまうから』というエッセイをスタートさせました。

TENDRE:まさに大槻さんの言葉からエッセイが始まったんですね。このエッセイを書き始めるときというのは、「すべて忘れてしまうから」ということを自分でいろいろ思い起こしながら書くということなんですか。

燃え殻:「もし、これを書き留めていなかったら、きっとすべて忘れてしまうなと、思うことを書こう」と。「10年後も覚えているだろうな」と思うことよりも「いま書かないと、これ忘れちゃうんじゃないかな」という「先週あった、とても楽しい話」とか「おととい、いちばんよかったこと」とか。クリスマスイブや卒業とかではなくて「6月7日のよかったこと」みたいな。でも、それがたぶん日常で、それがほとんどの人と共有できることなんです。

感性を刺激するために迷子前提の旅に出る

燃え殻は、自身の感性を刺激するために、迷子を覚悟して地方を旅する「迷子旅」をしていることを明かした。

燃え殻:このあいだ、青森の八戸の本屋さんで、トークイベントをやったんです。そのあとの予定が空いちゃったので「これはもう、迷子前提の旅に出よう」と思って。

TENDRE:最高ですね。

燃え殻:なにも調べないで八戸とか、三沢という場所が近いのでそことか。寺山修司さんの記念館があるのでちょっと行ってみたいなと。あとは泊まるところも食べるものも決めず、Googleマップとかも見ず、「もういいや、迷子になろう」と。たらたら回ろうと。地図で調べると最短距離になっちゃうじゃないですか。そうすると、たしかにたどり着くんですけど「あそこの路地の向こう側、どうなってるんだろう」とか「あの薬局、入ってみようかな」とかがあるじゃないですか。それが楽しくて、そういうことをやったりとか。八戸とかでも「モスバーガーに入ろう」と思って入ったりとか(笑)。本屋さんで立ち読みしてみようかな、とか生活者気分というか。

田中:そこに住んでいるかのように。

燃え殻:僕はそれ、大好きなんですよ。

TENDRE:いいですね。溶け込んでみるというか。八戸にもともと行ったことはあったんですか?

燃え殻:初めて行きました。本屋さんのオーナーの人が「来てくれませんか。トークイベントやりませんか」と言ってくれて、それで初めて行きました。それでぐるぐる回って。

田中:フットワークが軽い。

燃え殻:軽くしようと思って。だいたい東京の同じ場所で、同じようなごはん屋さんで、ということが多いので「もうなにも考えるのやめよう」みたいな。それで迷子になるというのをやっています。

TENDRE:いちばんグッときたポイントはありましたか?

燃え殻:普通のレストランとか、「そこに住んでる人しか行かないよな」という普通のチェーンの居酒屋とかに入りました。当たり前のことなんですけど、外に出たら八戸という、「どこに来ちゃったんだろう」みたいな。

TENDRE:チェーンにだからこそ、その街のリアルがそこにあったりしますよね。

燃え殻:あるんですよ。だから、旅行記になっていなくて「迷子記」みたいな。12月ぐらいにそれはどこかのメディアで出す予定です。

TENDRE:楽しみ。

燃え殻:ほぼ本当のことで、なにも起きないんですけど。ただ迷子になった、モスバーガー食べた、みたいな話ばかりで(笑)。

TENDRE:めちゃくちゃいいですね。

燃え殻:楽しみにしていてください。

やったことのないことにトライしてみる

燃え殻は「夢や目標を叶えるために大切にしていること」について語った。

燃え殻:僕はいま52歳で、周りの人たちも含めて段々と落ち着いてきて「まあ、こんなもんだよ」みたいなことを言い出すんですよ。自分たちがいままでやってきたことをもう一度やってみたりするほうが、それこそ失敗が少ないし、笑われないし、みたいなのはある。でも、「恥ずかしい」とか「めんどくさい」に追いつかれる前に、「なんかやっちゃおう」というのを僕はいまテーマにしています。じゃないと、ふと安全地帯やいままでやっていたものに手が伸びるんですよ。「ま、いっかな」みたいな。「この服にしておくか」とか「前に観た映画のほうがいいか」と配信とかですら、新しいものじゃなくて昔観た映画をもう1回観たりするんです。

田中:名作とか特にやっちゃいますね。

燃え殻:でも「まあいいじゃねえか」と、わけのわからないことや、いままでやったことのない仕事にトライしてみる。大恥かくかもしれないですけど「なにもないよりよかったじゃないか」と先にやっちゃうみたいな。「わかります」「やります」と最初に言って、あとからどうしようと思いながら、どうにかして間に合わせようということをずっと繰り返してきたので、これはこれでいいやと思ってやっています。

最後に燃え殻は、今後やってみたいことについて語った。

燃え殻:さっきのふらっと旅に出るのもそうですが、東京にずっといたので「東京から離れた場所に住む」というのをどこかでやりたいなと。すぐにできないのはわかっていますが、それこそ宣言をしながら、調整をしながら少し遠くに。

TENDRE:なんとなく「この辺がいいな」というイメージはありますか?

燃え殻:2025年は、忙しいと言いながら長野に3回行ったんです。長野は本当に広くて、場所によって全然違うんですよね。なので、長野とかあの辺もいいのかなと思いながら。

TENDRE:自然が多い場所というのでしょうか。

燃え殻:長野だと海がなかったりしますが、「ここに住んだらどうなんだろ?」という視点で旅に出ると、めちゃくちゃ楽しいんですよ。

TENDRE:たしかにそうかも。

燃え殻:東京から離れると決めて、いろいろな人たち、仕事の人たちにも言いながら「どこがいいんだろう?」という話をしていると、「あそこいいですよ」「うちの地元はこうですよ」と言われたりして、ちょっと見に行ったりとかして。それで「自分がもしかして住むかもよ」と思いながら旅をしてみると、ちょっとまた景色が変わって見えていいですよ。

TENDRE:もしかしたらいつか、東京ではない場所で書く燃え殻さんの新しい言葉が見られるかもしれないですね。

燃え殻:そうしたいです、ゆくゆくは。

燃え殻の最新情報は公式ホームページまで。

人、街、そして、音楽やカルチャーでつながる「ワクワクする未来」を描くプログラム『KDDI LINKSCAPE』の放送は毎週土曜日の16時から。

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2025年12月13日28時59分まで

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番組情報
KDDI LINKSCAPE
毎週土曜
16:00-16:54