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キリンジの名曲『エイリアンズ』に投影される、2つの“あの頃の景色”─堀込泰行が語る

キリンジの名曲『エイリアンズ』に投影される、2つの“あの頃の景色”─堀込泰行が語る

堀込泰行が、キリンジの名曲『エイリアンズ』の歌詞制作について語った。

堀込が登場したのはJ-WAVEで放送中の新番組『BEFORE DAWN』(ナビゲーター:燃え殻)。ここでは12月13日(火)のオンエア内容をテキストで紹介する。

燃え殻のドラマに出演した理由

燃え殻と堀込は5年前に対談を行った経験があり、燃え殻というペンネームは堀込のソロプロジェクト・馬の骨の楽曲『燃え殻』から拝借した、と伝えたという。

その縁もあり、堀込は燃え殻の完全書き下ろしオリジナルドラマ『あなたに聴かせたい歌があるんだ』(Huluオリジナル)でカメオ出演を果たした。
燃え殻:(出演してみて)どうでした?

堀込:なんで出ようかと思ったかというと、まずこのドラマのキーとなる曲が(キリンジの)『エイリアンズ』だったのがありがたかったのと、よく友だちと飲んで話しているときに「もし芝居の話とかきたときに、うまくいっても失敗しても、あとで絶対話のネタになるから出たほうがいいよ」と言われてたんですよ。僕もそれを真に受けて、ラーメン屋の客みたいな役でしたよね。

燃え殻:でしたね。

堀込:お話が来た当初は「おいしそう」とか言うくらいの役だったので、これだったらカメオ出演いいなと思って引き受けたんです。いざ引き受けてみたら途中からもうちょっと長めのセリフがになって。

燃え殻:僕は堀込さんを見ていて、ラーメン屋に入ってくるサラリーマン役が自然過ぎてウケたんです(笑)。

堀込:よく見ると目が死んでるっていうか、焦点が合ってないと思います(笑)。本当にセリフをかまなくてほっとしたっていう。

燃え殻は、『あなたに聴かせたい歌があるんだ』のテーマ曲でもある『エイリアンズ』は、漫画家のおかざき真里が強く押したことで決定したと明かす。

【関連記事】『あなたに聴かせたい歌があるんだ』 おかざき真里×燃え殻が制作を振り返る

燃え殻:もともとは僕が書いて当てていた曲があったんですけど、それよりもこっちの曲のほうがいいんじゃないかっていうことで、僕はペンネームも燃え殻で、『エイリアンズ』もテーマ曲に使わせていただくとこれは本格的に怒られるぞと思いながら。

堀込:いやいや(笑)。

燃え殻:でもすごく響いて、おかざき真里さんも「これは絶対に合う」というかたちで使わせていただきました。

『エイリアンズ』の評価は「うれしいし不思議」

2000年リリースの『エイリアンズ』はアーティストのカバーやCM曲での使用、はたまたYouTubeで海外の人が歌った動画がアップされるなど幅広く愛される1曲だ。
燃え殻:ずっといろいろな人たちに愛される楽曲になっていくのはどう思いました?

堀込:もちろんファンの間では人気のある曲ではあったんですけど、テレビCMで流れたりしたことがひとつ大きいかなと思います。そこからまたあの曲がいろんな人に聴いてもらえるようになったっていうのはすごくうれしいし不思議な気持ちではありますよね。自分ではいいと信じているものが自分の想像よりももうちょっとたくさんの人にいいと思ってもらえてることが、それ以外の曲ではなかったので今もわりと不思議ですね。

燃え殻:カバーとかYouTubeとかで、シティポップというくくりであったりされていますが、聴いているほうも不思議だなと思って。

堀込:当時シティポップっていう気持ちで作ったわけではなくて、ロックバンドのあるバラードの1曲みたいなイメージで作りました。なのでサウンドとかもいわゆるシティポップとかAORと比べるとドラムなんかもロック寄りの音作りをしているんですけど、そういうマインドで作った曲ではあるんですよね。ただ、曲自体を聴いてみるとそれはシティポップとかAORのくくりに入れられるのはしょうがないなっていう作りにはなってるんですけど、今となってはどこに入ってもこの曲を選んでくれてありがとうみたいな気持ちではありますね。

燃え殻:いろいろな人たちがいろいろなところで聴いてくれてうれしいなって。

堀込:そうですね。

以前、燃え殻はNONA REEVESの西寺郷太と『エイリアンズ』の歌詞について語り合ったと伝える。

燃え殻:この歌詞は堀込さんの住んでいた場所とか見た景色とかが入ってると思うんだよね、って話を西寺さんがされていたんです。

堀込:高校生のときの付き合っていた彼女との、なんとなくお互い好きなんだけどうまく噛み合わないみたいな思い出がベースにはあるんですけど。埼玉県出身なんですけどバイパスとか大きい通りが走っているので、その辺の風景も影響してるし。

燃え殻:公団が出てきますね。

堀込:団地も確かに多かったんですよね。子どものときとか上京する前までの僕が見てきた景色と、『エイリアンズ』を書いていた頃に住んでいた中野の中野通りの端っこのほうに新井薬師ってところがあって、中野通りって交通量がまあまあ多いんだけど、新井薬師のほうになると夜中は車は通らなくて横断歩道の真ん中でずっと寝そべってもひかれないだろうなってくらい。

燃え殻:ええ(笑)!

堀込:それくらい静かで、その横が桜並木になっていてきれいな通りなんですけど、『エイリアンズ』を書いているときに、それは桜の時期じゃなかったけど深夜の緑の多い静かな中野通りを歩いてコンビニまでよくビールを買いに行ったりとかおでんを買いに行ったりとかしてたんですね。なのでその風景も入ってるという。思い出の風景とその書いている風景が混ざっているというか。そういう感じですかね。

ぼやぼやしてたら60歳になるぞって

これまで数多くの楽曲提供も行う堀込に「自分の楽曲と楽曲提供のすみ分けはあるか」と燃え殻が質問すると「基本的には、あまりない」と答えた。

堀込:そうなんだけど、自分が自分用に作っていたら使わないよなっていうような甘い言葉とかを(入れたりすることはあります)。例えば「藤井 隆さんだったらありだよね」みたいなことでOKになるとか、発信する人が変わると言葉も変わるというか。だから人に書くほうが変に自分で自分にブレーキをかけないというか。

燃え殻:ちょっと当て書きというか。

堀込:藤井さんがこれ言ったらグッとくるだろうなみたいな、そういうことをイメージしながら作るっていうのがすごく面白かったですね。



最後にソロアーティストとして10年を迎えた堀込に、燃え殻が今の心境を訊くと「今のところ達成したなって感覚はなくて」とこれまでの振り返る。

堀込:結果的には若手の人とコラボしたりとか、面白いものを残してきたって気持ちはあるんですけど、10年っていう区切りを考えたとすると、それらが集大成になったものを出しときたかったなって。ぼやぼやしてたら60歳になるぞっていう。

燃え殻:(笑)。

堀込:40歳から50歳がすごく早かったので。

燃え殻:それは僕も思います。僕、今49歳なんですけど43歳からものを書き始めたので、とんでもない早さで。

堀込:ジェットコースターみたいな。燃え殻さんの場合はこの期間はものすごく濃いからうらやましいな。

燃え殻:いや、堀込さんも濃いですよ(笑)。

堀込:僕はもうちょっと頑張らないとっていうのが正直なところで、でも戻れないんだったら頑張るしかないなって(笑)。

燃え殻:来年は新曲とかニューアルバムを計画していたりするんですか。

堀込:来年は何かいい曲を出したいなってことで今頑張ってる感じですね。

燃え殻:待ってます。

堀込は12月20日(火)の同番組でも、引き続きゲストに登場する。オンエアは26時から。放送開始から一週間、radikoでも楽しめる。

【radikoで聴く】https://radiko.jp/share/?sid=FMJ&t=20221221020000

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毎週火曜
26:00-27:00