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人気の温泉リゾートがDXを実現。大幅な業務効率化の先に見える、未来の旅館の楽しみ方

人気の温泉リゾートがDXを実現。大幅な業務効率化の先に見える、未来の旅館の楽しみ方

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提供:クラリス ファイルメーカー

「通りすがりの天才」川田十夢が、日々仕事の技術を磨き続けきら星のごとく輝いているスペシャリスト=その世界のスターと対談するポッドキャスト番組「その世界のスターたち supported by Claris FileMaker」。

第四回のゲストは、岩手県西和賀町にある温泉リゾート「山人-yamado-」の総支配人、佐々木耀(ささき・ひかる)さん。佐々木さんは、東京で美容師として働いたのち、地元・岩手にUターンして起業、その後アルバイトとして「山人-yamado-」に入ったというユニークな経歴を持つ。現在は総支配人になり、自らシステム開発を行って業務効率化に成功。東京と岩手との二拠点生活をしながら事業の拡大を目指している。

アナログ的な情報管理が主流の宿泊事業で、どのようにデジタル化に踏み切ったのか。その方法や成果などを中心に、後半では、Web3以降の旅館の可能性についても語り合った。

ふたりのトークはポッドキャストでも配信中。ここではテキストでお届けする。

美容師を経て起業。アルバイトから総支配人になるまで

川田:温泉リゾート「山人-yamado-」はどんな宿なんでしょうか?

佐々木:岩手県西和賀町にある全12部屋の温泉旅館です。四方を山に囲まれ、各部屋には源泉かけ流しの温泉がついており、プライベート感ある空間でたっぷりと温泉やお食事を楽しんでもらえる施設です。特にお料理には力を入れていますね。「山人-yamado-」という名前には「山仕事の達人」という意味があります。山仕事に精通した人たちだけが知る山の恵みの豊かさ、隠された食体験・食文化をトータルで楽しんでいただける施設です。

川田:「総支配人」とは、どんなお仕事なんでしょうか。

佐々木:施設の規模によってさまざまですが、私達の場合は、現場スタッフの人材マネジメントや業績の管理はもちろん、お部屋掃除やお客さま対応など、人手が足りない部分にヘルプに入る「何でも屋さん」として待機する面もあります。
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川田:以前は別の業界で働かれていたそうですね。

佐々木:2008年から約3年間は東京で美容師をやっていました。東日本大震災をきっかけに、地元のために何かできないかと岩手に戻って起業し、子どもたちのプログラミング教育や、子どもたちの読書感想文などをまとめたメディアビジネスを展開しました。しかし、なかなかうまく波に乗れず……。

実家が「YAMODE(やもおど)」という屋号の美容室だったので、いつかはこの名前で会社を作りたいと思っていて、しかし同じ市町村内に似たような名前の会社を登記することは法律上できませんから、あるとき調べてみたんです。そうして「山人-yamado-」を発見しました。焦りましたね(笑)。

でもよく調べてみると、結構面白そうなコンセプトだなと。そこで、事業がうまくいかず生活費に困り始めていた時期でもあったので、アルバイトとして手伝わせてもらうことにしました。

川田:美容師だったんですか? 見た目がすごくシャキッとしていて、あまり想像できませんが……かつてはロン毛だったとか?

佐々木:ロン毛ではなかったですが、髪はブリーチをして真っ白でした(笑)。

川田:ギャップがありますね(笑)。今のお仕事をする上ではどんなことを気にされているんでしょうか。

佐々木:社員との1対1の面談をとても大切にしています。面談を入れる際は、その後に予定を一切入れず、何時間でも話を聞く姿勢で臨みます。

宿泊業とClaris FileMakerの相性の良さ

川田:旅館といえば、台帳のようなアナログなもので情報を管理しているイメージがあります。

佐々木:おっしゃる通りで、まさに紙の台帳がありました。たしかに一覧性があって見やすいし、目にも優しい。一方、当時はパソコンにインストールしているシステムにも予約管理の機能があり、予約を管理するデータベースが2つ存在していたんですね。一方に予約が入れば一方に転記、あるいは手書き・手入力をしなければいけない。これがヒューマンエラーの温床になっていたんです。「山人-yamado-」は12部屋しかないので、もしダブルブッキングをしてしまったら大変なことになってしまいます。

川田:業務用のシステム開発をした経験があったんですか?

佐々木:経験はなかったんですが、当時のシステムは使い勝手が悪くてストレスを感じていたんです。それから、宿のフロントにMacBookを置いていたんですが、システムがWindowsにしか対応していなかったため、OSをWindowsに入れ替えて無理やり動かしていた状況で、もっとスマートにやれるのではないかと思い、自分で模索し始めました。
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<Claris FileMakerを用いて運用する、現在の予約管理ページ>

川田:Claris FileMakerにはどのように行き着いたんでしょうか?

佐々木:Macネイティブで探していたので、選択肢は最初からある程度絞られていました。その中でも、UIから入っていけるClaris FileMakerにとても魅力を感じました。Webを組み上げる感覚でシステムを構築できることは大きかったです。慣れるまでは少し時間がかかりましたが、慣れてしまうと、ストレスがないですね。

川田:ただ、開発しながらも、一方で旅館は常に動き続けていたわけですよね。

佐々木:そうですね。以前のシステムを使いながら、プライベートの時間でコツコツと、3年ぐらいかけて新しいシステムを作りました。データの移行も苦心しましたが、なんとかタイミングを決めて一斉に移行させました。
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川田:それは、あらゆる仕組みでできることではないですよね。そうした事情もClaris FileMaker向きだったのかもしれないですね。

佐々木:そうですね。それから、Claris FileMakerはバージョン13、14あたりから外部連携機能を強化し始めたと記憶しています。これによって自分たちのシステムを上手に連携させながら運用できるかもしれないと思ったことが決め手になりました。

というのも、外部との連携は、我々にとって必須機能だからです。世の中にはいろんな予約サイトがあり、それらの予約を一元管理する必要があるんですが、在庫状況のすり合わせ機能はホテルシステムと別で動いているんです。このシステムは自前で組み込めないものなので、うまく連携できるプラットフォームを探していました。

川田:なるほど、それでClaris FileMakerだったんですね。具体的には、書き出して連携するんですか?

佐々木:はい。APIでリクエストを送ってデータをもらう、という処理です。

川田:リクエスト単位で対応できるのは大きいですよね。他に、Claris FileMakerを使ったシステム化によって便利になったことはありますか?

佐々木:まず、事務にかかる時間が従来の5分の1、あるいはそれ以上に短くなりました。それから、転記と手入力が減ったことも非常に大きいです。ミスがなくなるだけでなく、ミスをしないように気を遣う必要もなくなり、本来自分たちが集中すべきことに集中できるようになりました。

お客さまからも好評をいただいていて、たとえば、以前は当日にチェックインした順番で取っていた貸切風呂の予約を事前に受けられるようにしたり、当日の日の入り時間と翌日の日の出時間をAPIから取得して、お客さま全員にお配りする館内図に反映させたりしています。そういった現場の声も、Claris FileMakerなら容易に反映させることができるのが良いですね。
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<実際のシステム画面。イラストは従業員が手がけたものを用いたのだそう>

VRやブロックチェーンで旅館の未来はどうなる?

川田:システムに関して、今後考えていることがあれば教えてください。

佐々木:VRやブロックチェーンを組み合わせたら面白いのではないかと思っています。宿泊施設はある種の建築作品でありながら、法律上の制限などから実現できなかった想いを抱えていることが多いんです。もし現実を拡張できる手段を組み合わせることができれば、いろんな可能性を模索することができるし、新しいサービスを生み出すこともできるのではないかと考えています。

田舎にはまだ暗号通貨を使っている人がほとんどいないのであまり気づかないんですが、実際には、無数の暗号通貨が存在していて、それぞれに独特のコミュニティ・世界観が存在しているんですよね。

川田:佐々木さん、詳しいですね!

佐々木:うちでも今ブロックチェーンを導入しているんですが、Claris FileMakerとブロックチェーンはそんなに相性が悪くないんです。個人的に今、Claris FileMakerで暗号通貨を自動注文するプログラムを作ったり、チェーンの情報を取得して整理したりしていて、これをもう少し深堀りすればビジネスでも使えるのではないかと考えています。

川田:なるほど。旅館と仮想通貨を絡めたサービスにはめちゃくちゃ可能性がありますよね。もし今後、Claris FileMakerとウォレットが繋がるようになったら、かなり面白いことになる気がします。「山人-yamado-」のお客さんの中にはきっと、特定の部屋のファンがいると思うんです。そういう人たちがブロックチェーンで課金することによって、現実の部屋が何かしら影響されるようになったら……。
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佐々木:そうですよね。今私たちが使っているのは「Symbol」というブロックチェーンですが、独自のトークンをスムーズに発行しやすい仕組みなので、いずれは「山人-yamado-トークン」を発行してお客様に活用してもらうアイデアもあります。やりようによってはすごく面白いことができると思っているので、今後はチームでやっていきたいですね。

“いろんな可能性”にオープンでいることを大切に

川田:仕事の哲学についても伺います。お仕事をする上で、どんなときに喜びを感じますか?

佐々木:平凡な表現ですが、従業員が仕事に楽しみや喜びを感じてくれている時です。西和賀町は田舎ですから、周辺に娯楽施設も少ないですし、宿泊業は外から見るよりもハードで力仕事も多い。そんな中でも会社の理念に共感して、一生懸命頑張ってくれて、仕事が楽しい、面白いと言ってくれる。そんな姿を見聞きすると、じわじわと嬉しみが湧いてきます。

私自身は以前、キャリア的な目標や夢を持っていなかったんですが、今は従業員一人ひとりの夢を叶えたいので、より事業を拡大したいと考えるようになりました。

川田:佐々木さんはアルバイトとして「山人-yamado-」で働くようになってから、たった3年で支配人になったそうですね。かなり早い出世ではないですか?

佐々木:そうかもしれませんが、会社や施設の規模が小さいので、人材の層もそんなに厚いわけではないんです。私としては3年間、ただひたすら楽しく働いただけだったと感じています。他の施設だったら通用していないかもしれません。
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川田:そう聞くと、地方には若い人にチャンスがあるように感じますね。

佐々木:そうですね。そこかしこに溢れていると思います。

川田:では最後に、大切にしている言葉を教えてください。

佐々木:私は「絶対は絶対にない」とよく言います。言葉自体に矛盾をはらんでいますが、言い換えれば、「いろんな可能性に対して常にオープンでいよう」ということですね。

ものすごくハードルの高い提案があったとき、「絶対にできない」と考えるのではなく、「こうしたらできるかもしれない」と、いろんなやり方を考える。あるいは逆に「絶対にできる」と考えるのでもなく、できない可能性も考えてプランBを用意しておく。

そういった柔軟性、ある種の曖昧さを大切にしたいです。論理的な思考力が重視される時代ではありますが、なるべく頭をやわらかくして、非論理的な想像力や発想力も大事にしたいですね。

<構成=山田宗太朗、編集=ピース株式会社、撮影=竹内洋平>

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