いま増殖中の「ゆるブラック企業」について、リクルートワークス研究所の研究員、古屋星斗さんが解説した。
古屋さんが登場したのは『STEP ONE』のワンコーナー「SAISON CARD ON THE EDGE」(ナビゲーター:サッシャ、ノイハウス萌菜)。ここでは3月16日(水)のオンエア内容をテキストで紹介する。
古屋:労働時間が短い、職場の上司や先輩との関係もよいという、とても居心地のいい職場が増えています。そう聞くとよいことだらけに感じますが、そこで働いている若手の話を聞くと、「ここにいても成長できないのではないか」とか、「ほかの会社に転職できなくなるんじゃないか」と焦っていると。つまり近年増えているゆるい職場では、スキルや経験、ネットワークみたいなものを獲得できる機会が不足しているために、若手がそう感じているという様子です。SNSとかもありますから、周りと比較しやすくなっていますからね。
ノイハウス:本当のブラック企業というのもまだまだ社会問題になっていると思うんですけど、なぜ逆のゆるい職場が増えているんですか?
古屋:ブラック企業という言葉自体は、2013年の流行語大賞のトップ10に入りました。その影響もあって、ここ5~6年で急速に職場環境を改善する法律ができているんです。労働時間に条件が設けられたり、最近ですとパワハラ防止法というのもできたりしましたよね。もちろん、ブラック企業といわれるような過剰な労働や職場のハラスメントは絶対に許すことはできませんが、今問題となっているのは成長につながるような、ある種の必要な経験というのも同時に失われてしまった職場が多いということです。
ノイハウス:たとえば残業をしていて、それもある意味、必要な経験とも思えるみたいな……。その部分がなくなってしまったから、ゆるく感じてしまうということなんですかね?
古屋:残業自体は必ず善ではないんですけど、ただ残業するなかで得られた成長や体験、社会人として必要なスキルが得られる機会があったわけですよね。それが、残業時間が短くなったことで失われてしまっている場合があるということが、今わかってきています。
古屋:大きい企業のほうが、昨今のコンプライアンス重視や人的資本が大事みたいなことがあり、それが株式市場の動きに影響しているわけですよ。そういった意味では職場環境をよくしようというということに取り組む動機が強いんですよね。かつ、最近では新人を採用するときにも残業時間の平均や育休の取得率がオープンになっています。優秀な人材を採用するうえでも、ゆるい職場にしようとする動きが加速しているなというふうに見ていますね。
サッシャ:大きい会社のほうがちゃんとそういうのを守ろうとするけど、小さい会社はけっこう経営者の裁量に任されているところがあるってことですよね。
古屋:あと、法律が変わったことの影響でいうと、大手企業から先に施行されるんですよね。
サッシャ:だからゆくゆくは小さい企業にもいくけど、大きい企業から先にそういう状態が広がっているということなんですね。
古屋:その通りです。
番組からの「あなたの職場はゆるいですか?」というアンケートには、なんと48%の人が「ゆるい職場」だと回答。次いで「普通」が25%、「きつい」と感じている人は19%だった。思いのほかゆるい企業だと感じている人が多いようだが、務めている会社が「ゆるい企業」だと気づいた場合、どのように対処すればよいのだろうか。
古屋:いちばん大切なことは、悲しいですけど「職場に育ててもらえる時代は終わった」と知ることです。
サッシャ:終身雇用みたいな発想ですよね。そうじゃないと。
古屋:もともとはそれが日本企業の強みだったんですけどね。10年前みたいに職場は若手にたくさん残業させて、OJTで育てるということがやっぱり難しくなってきています。ですから、「職場を使って自分で育つ」という気持ちが大切になりますよね。「もっと自分はできます」と、上司に伝えているという新入社員の方もいます。
古屋:ポイントは「自分にフィットする成長機会がその会社にあるかないか」なので、実は外から見抜くのは至難の業なんですよね。労働時間が短いか長いかみたいなことだったら外からわかるんですけど、そうじゃないので。ただやれることはたくさんあって、たとえばちょっと上の先輩と話す、自分のロールモデルになる人がいるかいないかというのは重要なポイントになります。
ノイハウス:働き方や求めているものが似ている人がいたりすると、もしかしたら自分にもあっているっていうことですね。
古屋:フィットしている可能性がありますよね、あと同時に、その会社が自分で育つことを支援しているかという視点で見ることもすごく大切です。そういった会社では部署横断の勉強会をやっていたり、職場外の副業兼業をOKしていたり、希望する若手が機会を得やすい体制があります。
サッシャは「海外では会社から何かを教わろうという人はあまりいない印象」だと語る。特にアメリカでは、仕事ができるかどうかで契約を切られたりするため企業側の育成は不要だが、労働法の異なる日本では企業も簡単に解雇ができないため、難しい部分があるという。
古屋:(解雇できないという意味では)やっぱり企業が人を育てざるを得ないんですよね。そういう難しい状態に日本の企業は立っているんです。
ノイハウス:もしかしたらちょうど、変化の時期なのかもしれないですけどね。
古屋:そうですね、新しい時代に入ってきているんだと思いますね。
サッシャ:その変化に対応するために、今現在の理想的な日本の職場環境って、どういうものを求めればいいんですか。
古屋:わかりやすくいうと、ホワイト企業なんだけど成長機会があるホワイト企業っていうのが……そんな会社ってなかなかないんですけど、やっぱりそういう素質がある会社は出てきています。2つ要素があると思っていて、1つはすぐに若手に答えを与えないということ。
サッシャ:考える時間をくれるってこと?
古屋:そういうことでもありますし、あとは否応なく上司や先輩が部下に対して何か教えるっていうスタンスを取らないという会社ですよね。答えを押し付けない姿勢を持った職場というのが今後の人で勝つような会社になってくると思います。もう1つは社会人になってからも、勉強するということを応援してくれる会社。つまり職場だけで育てようとしないというか、職場の外でも学べる、学んできてよということを支えて応援してくれるようなシステムや体制、文化のある会社が新しい会社の在り方になってくるかなと思います。
J-WAVE『STEP ONE』のワンコーナー「SAISON CARD ON THE EDGE」では、毎回ニューノーマル時代のさまざまなエッジにフォーカスする。放送は月曜~木曜の10時10分ごろから。
古屋さんが登場したのは『STEP ONE』のワンコーナー「SAISON CARD ON THE EDGE」(ナビゲーター:サッシャ、ノイハウス萌菜)。ここでは3月16日(水)のオンエア内容をテキストで紹介する。
「ゆるブラック企業」とは
現在、リクルートワークス研究所では「ゆるい職場」について研究をしている。数年前からネットではゆるい職場のことを「ゆるブラック企業」と呼び一部で話題となっているが、改めて「ゆるブラック企業」とはどういった職場を指すのか、古屋さんに解説してもらった。古屋:労働時間が短い、職場の上司や先輩との関係もよいという、とても居心地のいい職場が増えています。そう聞くとよいことだらけに感じますが、そこで働いている若手の話を聞くと、「ここにいても成長できないのではないか」とか、「ほかの会社に転職できなくなるんじゃないか」と焦っていると。つまり近年増えているゆるい職場では、スキルや経験、ネットワークみたいなものを獲得できる機会が不足しているために、若手がそう感じているという様子です。SNSとかもありますから、周りと比較しやすくなっていますからね。
ノイハウス:本当のブラック企業というのもまだまだ社会問題になっていると思うんですけど、なぜ逆のゆるい職場が増えているんですか?
古屋:ブラック企業という言葉自体は、2013年の流行語大賞のトップ10に入りました。その影響もあって、ここ5~6年で急速に職場環境を改善する法律ができているんです。労働時間に条件が設けられたり、最近ですとパワハラ防止法というのもできたりしましたよね。もちろん、ブラック企業といわれるような過剰な労働や職場のハラスメントは絶対に許すことはできませんが、今問題となっているのは成長につながるような、ある種の必要な経験というのも同時に失われてしまった職場が多いということです。
ノイハウス:たとえば残業をしていて、それもある意味、必要な経験とも思えるみたいな……。その部分がなくなってしまったから、ゆるく感じてしまうということなんですかね?
古屋:残業自体は必ず善ではないんですけど、ただ残業するなかで得られた成長や体験、社会人として必要なスキルが得られる機会があったわけですよね。それが、残業時間が短くなったことで失われてしまっている場合があるということが、今わかってきています。
「職場を使って自分で育つ」気持ちが大事
ゆるブラック企業は業種・職種に関係なく「大手企業」に多い傾向だと、古屋さんは語る。古屋:大きい企業のほうが、昨今のコンプライアンス重視や人的資本が大事みたいなことがあり、それが株式市場の動きに影響しているわけですよ。そういった意味では職場環境をよくしようというということに取り組む動機が強いんですよね。かつ、最近では新人を採用するときにも残業時間の平均や育休の取得率がオープンになっています。優秀な人材を採用するうえでも、ゆるい職場にしようとする動きが加速しているなというふうに見ていますね。
サッシャ:大きい会社のほうがちゃんとそういうのを守ろうとするけど、小さい会社はけっこう経営者の裁量に任されているところがあるってことですよね。
古屋:あと、法律が変わったことの影響でいうと、大手企業から先に施行されるんですよね。
サッシャ:だからゆくゆくは小さい企業にもいくけど、大きい企業から先にそういう状態が広がっているということなんですね。
古屋:その通りです。
番組からの「あなたの職場はゆるいですか?」というアンケートには、なんと48%の人が「ゆるい職場」だと回答。次いで「普通」が25%、「きつい」と感じている人は19%だった。思いのほかゆるい企業だと感じている人が多いようだが、務めている会社が「ゆるい企業」だと気づいた場合、どのように対処すればよいのだろうか。
古屋:いちばん大切なことは、悲しいですけど「職場に育ててもらえる時代は終わった」と知ることです。
サッシャ:終身雇用みたいな発想ですよね。そうじゃないと。
古屋:もともとはそれが日本企業の強みだったんですけどね。10年前みたいに職場は若手にたくさん残業させて、OJTで育てるということがやっぱり難しくなってきています。ですから、「職場を使って自分で育つ」という気持ちが大切になりますよね。「もっと自分はできます」と、上司に伝えているという新入社員の方もいます。
理想的な職場環境のポイントは2つ!
就職活動や転職活動の際、ゆるブラック企業かどうかを判断する方法はあるのだろうか。古屋:ポイントは「自分にフィットする成長機会がその会社にあるかないか」なので、実は外から見抜くのは至難の業なんですよね。労働時間が短いか長いかみたいなことだったら外からわかるんですけど、そうじゃないので。ただやれることはたくさんあって、たとえばちょっと上の先輩と話す、自分のロールモデルになる人がいるかいないかというのは重要なポイントになります。
ノイハウス:働き方や求めているものが似ている人がいたりすると、もしかしたら自分にもあっているっていうことですね。
古屋:フィットしている可能性がありますよね、あと同時に、その会社が自分で育つことを支援しているかという視点で見ることもすごく大切です。そういった会社では部署横断の勉強会をやっていたり、職場外の副業兼業をOKしていたり、希望する若手が機会を得やすい体制があります。
サッシャは「海外では会社から何かを教わろうという人はあまりいない印象」だと語る。特にアメリカでは、仕事ができるかどうかで契約を切られたりするため企業側の育成は不要だが、労働法の異なる日本では企業も簡単に解雇ができないため、難しい部分があるという。
古屋:(解雇できないという意味では)やっぱり企業が人を育てざるを得ないんですよね。そういう難しい状態に日本の企業は立っているんです。
ノイハウス:もしかしたらちょうど、変化の時期なのかもしれないですけどね。
古屋:そうですね、新しい時代に入ってきているんだと思いますね。
サッシャ:その変化に対応するために、今現在の理想的な日本の職場環境って、どういうものを求めればいいんですか。
古屋:わかりやすくいうと、ホワイト企業なんだけど成長機会があるホワイト企業っていうのが……そんな会社ってなかなかないんですけど、やっぱりそういう素質がある会社は出てきています。2つ要素があると思っていて、1つはすぐに若手に答えを与えないということ。
サッシャ:考える時間をくれるってこと?
古屋:そういうことでもありますし、あとは否応なく上司や先輩が部下に対して何か教えるっていうスタンスを取らないという会社ですよね。答えを押し付けない姿勢を持った職場というのが今後の人で勝つような会社になってくると思います。もう1つは社会人になってからも、勉強するということを応援してくれる会社。つまり職場だけで育てようとしないというか、職場の外でも学べる、学んできてよということを支えて応援してくれるようなシステムや体制、文化のある会社が新しい会社の在り方になってくるかなと思います。
J-WAVE『STEP ONE』のワンコーナー「SAISON CARD ON THE EDGE」では、毎回ニューノーマル時代のさまざまなエッジにフォーカスする。放送は月曜~木曜の10時10分ごろから。
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