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Nulbarich・JQが「絶対に見てほしい」と熱弁したチャンス・ザ・ラッパーのパフォーマンスは

Nulbarich・JQが「絶対に見てほしい」と熱弁したチャンス・ザ・ラッパーのパフォーマンスは

NulbarichのJQとライターの奥田翔さんが世界的HIPHOPアーティスト、チャンス・ザ・ラッパーの魅力を語った。

二人が登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。ここでは、4月20日(火)にオンエアした内容をテキストで紹介する。

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新しい時代の音楽シーンを切り開いた存在

この日番組では、ストリーミングだけで全米チャートにランクインしたほか、歴史上はじめて音楽を売らずにグラミー賞を受賞するなど、まさに、現在のアーティストの在り方を示したHIPHOPアーティスト、チャンス・ザ・ラッパーを取り上げた。

チャンス・ザ・ラッパーは、1993年シカゴ生まれの28歳。2012年、フリーダウンロードのミックステープ『10day』をネット上にアップしたことでシーンに登場。実は2010年代前半のシカゴは、全米で最も治安の悪い地域だった。シカゴ系のラッパーもギャングスタラップなどダークなラップが主流だったなか、毛色の違うスタイルが話題に。

その後、2013年、2ndミックステープ『Acid Rap』が100万ダウンロードを記録。同時代に出てきたケンドリックラマー、マック・ミラーらと共に新世代ラッパーとして名を上げる。2015年には、世界的な経済誌『フォーブス』による、30歳未満で影響力を持つ人物の音楽部門に選出。

そんななか発表された2016年の3rdミックステープ『Coloring Book』が、ストリーミング限定作品として史上初のビルボードチャートランクイン。さらに、この作品で2017年のグラミー賞にて三冠を受賞。レーベルに所属せず、ネットでしか音源を発表していなかったアーティストが受賞するという、人類初の快挙を成し遂げた。

その後も活動を続け、昨年ジャスティン・ビーバーとの共演作『Holy』のヒットも記憶に新しい。まさに、新しい時代の音楽シーンを切り開いていった存在、それがチャンス・ザ・ラッパーである。

あっこゴリラ:かなりすごい経歴ですよね。JQさんがチャンスの音楽に触れたのはいつごろだったんですか?
JQ:たぶん『Same Drugs』のときかな。この曲は、どハマりしましたね。
あっこゴリラ:奥田さん、先ほどチャンスが生まれたシカゴは全米で最も治安の悪い場所とありましたが、当時はどんな感じだったんですか?
奥田:シカゴに限らずなんですけど、全米で「セグリゲーション(人種隔離政策)」なるものがあり、表向きには違法となってからも、住宅等の諸制度に隠れるかたちで全米でずっと続いてたんです。その結果、人種によって所得も違えば住む地域も違う状況になるようなことが起きます。
あっこゴリラ:なるほど。
奥田:シカゴも例外でなく、サウスサイドと呼ばれる地域が治安の悪い地域として知られています。10年ほど前は、そういった背景から、今のUKドリルに繋がる、シカゴドリルと呼ばれるダークで激しいラップが流行っていました。
あっこゴリラ:そうなんだ。
奥田:抗争も度々起こり、若くして亡くなるラッパーも多く、イラクとシカゴをかけて「Chiraq(シャイラク)」と呼ばれたほどです。そんななか出てきたのがチャンスで、彼もそのサウスサイド出身です。

ここで、奥田さんがチャンス・ザ・ラッパーを理解するための1曲としてセレクトした、2nd『Acid Rap』に収録されている『Cocoa Butter Kisses』をオンエアした。

【Chance The Rapper『Cocoa Butter Kisses ft. Vic Mensa&Twista』を聴く】

あっこゴリラ:2013年の『Acid Rap』に収録されている楽曲ということですが、このときからスタイルが確立されてますね。
奥田:パッと聴いて、チャンスだっていうのがわかりますよね。
あっこゴリラ:うんうん。客演のヴィック・メンサとトゥイスタもシカゴ出身なんですね。
奥田:はい。『Acid Rap』には、他にもシカゴのラッパーが参加していて、同郷のアーティストと音楽を作るのもチャンスの特徴なのかなと思います。

グラミー賞でストリーミングのみの作品として初受賞

引き続き、ゲストのお二人とチャンス・ザ・ラッパーについて掘り下げた。

あっこゴリラ:CDを出さずにフリーダウンロードやストリーミングのミックステープを発表することで有名になったということですが、これはかなりHIPHOP特有のカルチャーですよね?
奥田:そうですね。ざっくり言うと、(当時は)有料の作品がアルバムないしEPで、無料ダウンロードの作品がミックステープと捉えてもらうとわかりやすいかなと思います。
JQ:わかりやすい!
奥田:チャンスが『10 Day』や『Acid Rap』らを発表した2010年代前半は、ネットでミックステープを発表して、ディールを狙うのが一般的でしたが、今はアーティスト本人がどう呼ぶか次第ですね。
あっこゴリラ:確かに。
奥田:もともとはその名の通り、DJがミックスをテープにダビングしてストリートで売っていたもので、あとはラッパーの正規販売されないオリジナル音源もミックステープとして販売されるようになり、50centなど、そこから登場するスターも現れ、メジャーへの足掛かりとして確立していきました。
あっこゴリラ:へえ~!
奥田:テープからCD、ネットでの発表と、時代の変化に合わせてフォーマットを変えつつも、「ミックステープ」という名前は残り続けています。
あっこゴリラ:そもそも音楽を売らずに、どうやって生計を立てていたんですか?
奥田:ライブで稼ぐとか、Tシャツ売ったりして稼ぐとかは、当時から多かったと思います。
あっこゴリラ:これはもういまのアーティストの在り方ですよね。グラミー受賞に至る背景には、チャンスのどんな部分が作用したと思いますか?
奥田:まず大前提にあるのが、純粋に音楽がいいこと。これがないとグラミーは取れないので。すごいのは、グラミーの基準を変更させる動きで、当時は販売された作品のみが対象だった中、それをおかしいと訴え、署名活動などもあり、ストリーミングのみの作品として初受賞したことです。

【Chance The Rapper『No Problem ft. 2 Chainz&Lil Wayne』を聴く】

地元への還元を意識しているアーティスト

ストリーミング作品でグラミー賞を初めて受賞したアーティスト、チャンス・ザ・ラッパーだが、他のラッパーと何が違ったのだろうか。

あっこゴリラ:大きな要素は「キリスト教愛」かなと思っていて、チャンスの音楽に多用されるゴスペルもそうですよね。ラッパーでここまでゴスペルを押し出した人って、これまでいたのでしょうか?
奥田:昔からクリスチャンラップというジャンルはありましたが、チャンスのようにゴスペルを音楽的に取り入れて、メインストリームでここまで人気を博した人はなかなかいなかったんじゃないかなと思います。
あっこゴリラ:そうなんだ~! そう考えたら、チャンスすげーな(笑)。
奥田:同じくシカゴのカニエ・ウエストがゴスペルのアルバム出したのも、チャンスが影響を与えたのかもしれないですね。
JQ:俺はそれ、あると思うな~。
あっこゴリラ:先ほどもちょっと話に出ていましたが、チャンスのリリックにもキリスト教徒の面が大きく出ているんですか?
奥田:出ていると思います。かなり敬虔なクリスチャンで、宗教観も他のラッパーと違うように感じます。祈りを捧げることを歌うとき、ざっくり2つのタイプがあって、一つが「現在の自分と理想の自分の差を縮めるための祈り」で、もう一つが「純粋な神への賛美」です。そう考えると、ラップでキリスト教、宗教が言及されるときって、圧倒的に前者が多いんですね。
あっこゴリラ:うんうん。
奥田:でもチャンスは後者で、神への賛美みたいなものが歌詞にも現れているので、そこはチャンスならではなのかなと思います。

続いてJQがお気に入りの一曲として、チャンスが率いるバンド・Donnie Trumpet & the Social Experimentの『Sunday Candy』を紹介。なかでも、「2016 National Christmas Tree Lighting Ceremony」で披露されたパフォーマンスが好きなのだとか。

【Donnie Trumpet & the Social Experiment『Sunday Candy』(2016 National Christmas Tree Lighting Ceremony)を聴く】

JQ:本当極論なんですけど、チャンス・ザ・ラッパーが好きなんじゃなくて、この曲が好きなんですよ。
あっこゴリラ:あはははは!
JQ:これ、本当にヤバくて、是非みなさんにYouTubeの動画を見てほしいんです! 教会をバックにしてオバマ大統領とそのお客さんがいっぱいいるところに聖歌隊を入れて外で歌ってるんですけど、こういうトラップっぽいアレンジじゃなくて、オルガン一つくらいな感じで、チャンスがどうやってみんなの心を射抜いているのかが、一目でわかります。音源だけでは伝わらない良さってあるから、これに出会えたときはその動画を上げてくれた人にマジ感謝って本当に思いましたね。絶対見てほしい!
あっこゴリラ:ちなみに、この曲ではどんなことを歌っているんですか?
奥田:幼少期に祖母と行った教会の思い出と、祖母への思いを歌っています。
あっこゴリラ:チャンスと言えば、「シカゴ愛」が強いですが、この曲にも現れているのでしょうか?
奥田:そうですね。この曲のコーラスを歌っているのがシカゴのシンガー、Jamila Woodsですので、そこにもやっぱりシカゴ愛が出ているのかなと思います。トラック自体も、当時シカゴで流行っていたジュークのリズムが取り入れられていて、とにかくシカゴのアーティストやカルチャーをフックアップしているなって伝わってきます。

そんなチャンス・ザ・ラッパーは、近年はどのような活動をしているのだろうか。

奥田:昨年12月にはシカゴのシンガー、Jeremihとクリスマスアルバムを作成しました。この曲の中で、地元シカゴのホームレスのために無償でコートを配る活動を想起させるラインがあったり、人道支援活動も多く行なっています。
あっこゴリラ:これまで、どのような支援活動をしてきたのでしょうか?
奥田:昔から地元の小学校へ1億円寄付したり、シカゴへのチャリティーをしばしば行っています。ちなみに、昨年のジャスティン・ビーバーとの楽曲『Holy』がヒットしたときも、ファンへの恩返しとして約2600万円を寄付しています。そういう地元への還元をかなり意識しているアーティストなんじゃないかなと思います。

【Chance The Rapper『Same Drugs』を聴く】

J-WAVE『SONAR MUSIC』は月~木の22:00-24:00にオンエア。

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