ひとりひとりが繋がれる みんなの“劇場”を目指す、バリアフリーなオンラインシアター「THEATER for ALL」でディレクターを務める金森 香さんが、発足の経緯やプロジェクトの詳細、そして展望を語った。
金森さんが登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』(ナビゲーター:別所哲也)のワンコーナー「Allbirds MORNING INSIGHT」。ここでは、11月25日(木)のオンエア内容をテキストで紹介する。
金森:コンテポラリーダンスや現代演劇、社会派のドキュメンタリー映画、メディアアートの映像作品などそういった動画コンテンツにバリアフリー字幕や音声ガイド、あるいは手話通訳とか多言語字幕、翻訳などをつけて配信しています。
別所:いまお話にあったように“バリアフリー”が特徴のひとつだと思うんですが、字幕や手話を用いて具体的にはどんな劇場体験を届けているのでしょう?
金森:インターネットで配信をしているんですけども、具体的には見えなくても音や音声ガイドで映画を楽しんだりとか、聴こえなくても字幕で映画を鑑賞したりできるよう、ひとつひとつ存在しているバリアを取り除いて鑑賞体験を届けるということをしています。
アーティスト自身が考えるバリアフリーが表現されるのもの特徴だ。
金森:例えばミュージシャンの和田 英さんの作品ですと、ご自身の声で作品紹介をしています。あるいは金原亭世之介さんという方がやっている落語ミュージカルという作品は字幕がマンガのセリフのようなデザインになっていて、視覚的にも活き活きした文字デザインで出てくるものがあったりとか、詩人の方が現代アーティストの作品の音声ガイドを作っていたりなど、いろんなアプローチにチャレンジしていたりもします。こういった取り組みですと障害当事者の方々はもちろんなんですけど、そうでない方々にも新たな作品の見かたを楽しんでいただけていると思います。
別所:サイトをちょっと見させていただいているんですけど、それぞれの作品の下に「多言語対応」とか「手話」、それから「バリアフリー字幕」、これはバリアフリー字幕と普通の字幕はちょっと違うんですか?
金森:いわゆる字幕だと喋っている言葉だけが字幕になっているケースが多いかなと思うんですけど、バリアフリー字幕だとそうでない環境音とかドアのノックの音がするとか、そういったことも含めて字幕になっています。
金森:最初のきっかけは、コロナで映画館や劇場での鑑賞が誰もできなくなってしまったということ。そして、それ以前に車椅子でお出かけしにくいとか、言葉わからないとか、視覚や聴覚の障害があって映画・演劇を楽しめないという方々が多くいることに気づいたんです。そういったこともあわせて、オンライン配信の劇場であれば、いろんな課題が解決できるんじゃないかなと思ったんです。
別所:僕もね、今年パラリンピックがあったじゃないですか。そこで多様性や素晴らしさを実感したはずなのに、日常生活に戻ってどれだけそういうところを共有・共感できているかなって本当に思うようになっちゃったんですよね。だからエンターテイメントに関わる中でまさに素晴らしいことをされているなと思うんですよ。そんな金森さんはファッション業界に長くいらっしゃったんですって?
金森:そうですね。なんだかんだ17年くらいブランドの経営とかに携わっていました。
17年間ファッション業界に身を置く中で、金森さんは違和感を覚える場面があったと話す。この違和感こそ、「THEATER for ALL」に繋がるものだったそうだ。
金森:いまは多様性社会、SDGsなどいろんなキーワードもあってファッション業界も随分変わったと思いますが、私がやっていたころはファッションモデルやミューズ的な存在の人間像というと、押し並べて痩せていてスラっとしていて、顔が小さくてなど、ある特定の体型とか顔・形の人にすごく偏っていた時代でして。理想像として掲げる人間像みたいなものが世界に溢れる多彩な美しさに向き合っているとは言い難いなと、やっている自分たちが思うような状況がありましたね。
別所:そうですよね! スーパーモデルというと、あるひとつの形があるというか。その中にはもちろん個性もおありなんですけど、いまおっしゃったように10頭身じゃなきゃいけないとかね、細くないといけないとかありましたもんね。
金森:そうですね。そんな中で義足を使っている方々とファッションショーをする機会がありまして、そのときに脚があるとういう状態しか前提にしてないモノづくりをやってきていたなとか、義足を使っている方々の楽しみ方やライフスタイルみたいなものを考えたことがなかったなということ、自分の視野がいかに狭いものだったかを気づかされまして、そのときの体験はいまのプロジェクトにすごく繋がっているかなと思っています。
金森:映画祭です! ちょっと変わったというか新しい取り組みをしようと思ってまして、大人も子供もあるいは知的や発達の障害のある人でも言葉が分からなくても、みんなが楽しめるインクルーシブな映画祭というのを目指しています。
別所:すごい! その名も「まるっとみんなで映画祭」!
金森:名前もわかりやすくつけたいと思って、この名前にしました!
別所は「映画がいろいろ観られると思っていいんですよね?」とこのイベントに興味津々。どんなイベントなのか、金森さんは詳しく説明する。
金森:いま申し上げたようにノンバーバルで楽しい映像を中心に12月4日に野外上映をするんですけど、ドライブインシアターや芝生で寝転びながら楽しめる映画の鑑賞体験を作ろうと思ってやっていまして。配信の方では視覚・聴覚の障害がある方へのバリアフリーも充実させていろんな作品を配信しようと思っています。
別所:どこでやるんですか?
金森:ドライブインシアターのほうは千葉県の印西市にあるtheGreenという施設でやります。オンラインは「THEATER for ALL」で配信します。
別所:ドライブインシアターはこれから体験型の映画祭としてとてもいいなと思うんですけど、いまサイトを見ていますとチェコのアニメなんかもやったり。
金森:そうですね。お子さんも観れるようにと桃太郎の作品とかチェコのアニメとか、あとはコムアイさんのナレーションでお送りするアニメの「もるめたも」という作品やドキュメンタリー映画で「ぼくと魔法の言葉たち」という作品も上映するんですけど、車の中では好きな声の量というか、お話してもいいですし一緒に歌ったりしてもいいですし、音量上げても下げてもいいし、途中で車から出て息抜きして走って戻ってきてもいいですし(笑)。そういう自由な鑑賞の仕方が許容できる鑑賞方法なのかなって思ってやってみています。
金森:より多くの当事者の方にきちんと届けていきたいなと思っているのと、あとは映画を撮る段階、舞台作品を作る段階から多様な観客のことを考えて作ると自ずと映像の撮り方や編集の仕方もきっと変わってくると思っているので、創作段階からこういった視点を取り入れて作るプロジェクトも作っていきたいなと思っています。
別所:そうですね。すでにできあがっているものをどんなふうに届けるかという字幕であったり手話というものも大切ですけども、確かに制作する前のプリプロの段階からもしスタッフに入っていただいたり、そういった障害者の方の声を取り入れていったりしたら随分変わりそうですもんね!
金森:皆さんの声を聞くことはとても大事だと思っていて。今回の映画祭でも知的や発達の障害を持つお子さんがいる家族の方に「どんなイベントだったら楽しめますか?」というのを聞きながら作っていったところもあるので、そういうモノづくりがみんなにとって当たり前になるような社会になればいいなと思っています。
「THEATER for ALL」の詳細は公式ページまで。
『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』のワンコーナー「Allbirds MORNING INSIGHT」では、あらゆる世界の本質にインサイトしていく。放送は月曜~木曜の6時30分頃から。
(構成:笹谷淳介)
金森さんが登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』(ナビゲーター:別所哲也)のワンコーナー「Allbirds MORNING INSIGHT」。ここでは、11月25日(木)のオンエア内容をテキストで紹介する。
みんなの劇場を目指す「THEATER for ALL」とは?
バリアフリーなオンラインシアター「THEATER for ALL」。ディレクターを務める金森 香さんに、別所がプロジェクトの詳細を聞いた。金森:コンテポラリーダンスや現代演劇、社会派のドキュメンタリー映画、メディアアートの映像作品などそういった動画コンテンツにバリアフリー字幕や音声ガイド、あるいは手話通訳とか多言語字幕、翻訳などをつけて配信しています。
別所:いまお話にあったように“バリアフリー”が特徴のひとつだと思うんですが、字幕や手話を用いて具体的にはどんな劇場体験を届けているのでしょう?
金森:インターネットで配信をしているんですけども、具体的には見えなくても音や音声ガイドで映画を楽しんだりとか、聴こえなくても字幕で映画を鑑賞したりできるよう、ひとつひとつ存在しているバリアを取り除いて鑑賞体験を届けるということをしています。
アーティスト自身が考えるバリアフリーが表現されるのもの特徴だ。
金森:例えばミュージシャンの和田 英さんの作品ですと、ご自身の声で作品紹介をしています。あるいは金原亭世之介さんという方がやっている落語ミュージカルという作品は字幕がマンガのセリフのようなデザインになっていて、視覚的にも活き活きした文字デザインで出てくるものがあったりとか、詩人の方が現代アーティストの作品の音声ガイドを作っていたりなど、いろんなアプローチにチャレンジしていたりもします。こういった取り組みですと障害当事者の方々はもちろんなんですけど、そうでない方々にも新たな作品の見かたを楽しんでいただけていると思います。
「字幕」と「バリアフリー字幕」の違い
別所は「THEATER for ALL」のサイトを見ながら、「字幕」と「バリアフリー字幕」の違いについて聞く。一体このふたつにはどのような違いがあるのだろうか。別所:サイトをちょっと見させていただいているんですけど、それぞれの作品の下に「多言語対応」とか「手話」、それから「バリアフリー字幕」、これはバリアフリー字幕と普通の字幕はちょっと違うんですか?
金森:いわゆる字幕だと喋っている言葉だけが字幕になっているケースが多いかなと思うんですけど、バリアフリー字幕だとそうでない環境音とかドアのノックの音がするとか、そういったことも含めて字幕になっています。
義足の人のファッションショーで気づいたこと
さまざまな人に寄り添った「THEATER for ALL」の活動。金森さんはなぜこの活動を始めようと思ったのだろう。その背景にはコロナ禍での気づきや、自身の社会人経験が影響していると話す。金森:最初のきっかけは、コロナで映画館や劇場での鑑賞が誰もできなくなってしまったということ。そして、それ以前に車椅子でお出かけしにくいとか、言葉わからないとか、視覚や聴覚の障害があって映画・演劇を楽しめないという方々が多くいることに気づいたんです。そういったこともあわせて、オンライン配信の劇場であれば、いろんな課題が解決できるんじゃないかなと思ったんです。
別所:僕もね、今年パラリンピックがあったじゃないですか。そこで多様性や素晴らしさを実感したはずなのに、日常生活に戻ってどれだけそういうところを共有・共感できているかなって本当に思うようになっちゃったんですよね。だからエンターテイメントに関わる中でまさに素晴らしいことをされているなと思うんですよ。そんな金森さんはファッション業界に長くいらっしゃったんですって?
金森:そうですね。なんだかんだ17年くらいブランドの経営とかに携わっていました。
17年間ファッション業界に身を置く中で、金森さんは違和感を覚える場面があったと話す。この違和感こそ、「THEATER for ALL」に繋がるものだったそうだ。
金森:いまは多様性社会、SDGsなどいろんなキーワードもあってファッション業界も随分変わったと思いますが、私がやっていたころはファッションモデルやミューズ的な存在の人間像というと、押し並べて痩せていてスラっとしていて、顔が小さくてなど、ある特定の体型とか顔・形の人にすごく偏っていた時代でして。理想像として掲げる人間像みたいなものが世界に溢れる多彩な美しさに向き合っているとは言い難いなと、やっている自分たちが思うような状況がありましたね。
別所:そうですよね! スーパーモデルというと、あるひとつの形があるというか。その中にはもちろん個性もおありなんですけど、いまおっしゃったように10頭身じゃなきゃいけないとかね、細くないといけないとかありましたもんね。
金森:そうですね。そんな中で義足を使っている方々とファッションショーをする機会がありまして、そのときに脚があるとういう状態しか前提にしてないモノづくりをやってきていたなとか、義足を使っている方々の楽しみ方やライフスタイルみたいなものを考えたことがなかったなということ、自分の視野がいかに狭いものだったかを気づかされまして、そのときの体験はいまのプロジェクトにすごく繋がっているかなと思っています。
みんなが楽しめるインクルーシブな映画祭!
「THEATER for ALL」は12月4日(土)にイベント「まるっとみんなで映画祭」を開催する。別所はこのイベントについてトークを進めていく。/div>
別所:映画祭じゃないですか!
金森:映画祭です! ちょっと変わったというか新しい取り組みをしようと思ってまして、大人も子供もあるいは知的や発達の障害のある人でも言葉が分からなくても、みんなが楽しめるインクルーシブな映画祭というのを目指しています。
別所:すごい! その名も「まるっとみんなで映画祭」!
金森:名前もわかりやすくつけたいと思って、この名前にしました!
別所は「映画がいろいろ観られると思っていいんですよね?」とこのイベントに興味津々。どんなイベントなのか、金森さんは詳しく説明する。
金森:いま申し上げたようにノンバーバルで楽しい映像を中心に12月4日に野外上映をするんですけど、ドライブインシアターや芝生で寝転びながら楽しめる映画の鑑賞体験を作ろうと思ってやっていまして。配信の方では視覚・聴覚の障害がある方へのバリアフリーも充実させていろんな作品を配信しようと思っています。
別所:どこでやるんですか?
金森:ドライブインシアターのほうは千葉県の印西市にあるtheGreenという施設でやります。オンラインは「THEATER for ALL」で配信します。
別所:ドライブインシアターはこれから体験型の映画祭としてとてもいいなと思うんですけど、いまサイトを見ていますとチェコのアニメなんかもやったり。
金森:そうですね。お子さんも観れるようにと桃太郎の作品とかチェコのアニメとか、あとはコムアイさんのナレーションでお送りするアニメの「もるめたも」という作品やドキュメンタリー映画で「ぼくと魔法の言葉たち」という作品も上映するんですけど、車の中では好きな声の量というか、お話してもいいですし一緒に歌ったりしてもいいですし、音量上げても下げてもいいし、途中で車から出て息抜きして走って戻ってきてもいいですし(笑)。そういう自由な鑑賞の仕方が許容できる鑑賞方法なのかなって思ってやってみています。
創作段階からバリアフリーの心を!
別所は、最後に「THEATER for ALL」を今後どういった形で成長させたいかと金森さんへ聞いた。金森:より多くの当事者の方にきちんと届けていきたいなと思っているのと、あとは映画を撮る段階、舞台作品を作る段階から多様な観客のことを考えて作ると自ずと映像の撮り方や編集の仕方もきっと変わってくると思っているので、創作段階からこういった視点を取り入れて作るプロジェクトも作っていきたいなと思っています。
別所:そうですね。すでにできあがっているものをどんなふうに届けるかという字幕であったり手話というものも大切ですけども、確かに制作する前のプリプロの段階からもしスタッフに入っていただいたり、そういった障害者の方の声を取り入れていったりしたら随分変わりそうですもんね!
金森:皆さんの声を聞くことはとても大事だと思っていて。今回の映画祭でも知的や発達の障害を持つお子さんがいる家族の方に「どんなイベントだったら楽しめますか?」というのを聞きながら作っていったところもあるので、そういうモノづくりがみんなにとって当たり前になるような社会になればいいなと思っています。
「THEATER for ALL」の詳細は公式ページまで。
『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』のワンコーナー「Allbirds MORNING INSIGHT」では、あらゆる世界の本質にインサイトしていく。放送は月曜~木曜の6時30分頃から。
(構成:笹谷淳介)
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別所哲也