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「障がい者」「健常者」で分けることへの違和感─事故で手足を失った山田千紘さんが語る

「障がい者」「健常者」で分けることへの違和感─事故で手足を失った山田千紘さんが語る

事故で手足を3本失いながらも、会社勤めをしながらチャンネル登録者11万人のYoutuberとして活躍する山田千紘さんが自身が歩んできた軌跡をたっぷりと語った。

山田さんが登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』(ナビゲーター:別所哲也)のワンコーナー「Allbirds MORNING INSIGHT」。ここでは、11月8日(月)のオンエア内容をテキストで紹介する。

車椅子ではなく義足で歩くことを選んだ理由

今年9月で30歳となった山田さん。現在は会社勤めをしながらYoutuberとして活躍する彼が不慮の事故に遭ったのは10年前、20歳のときだった。別所は「お話できる範囲でいいので」と当時の事故の状況を聞いた。

山田:当時も会社勤めをしていて、営業マンだったんですが仕事を終わったあと、先輩とお食事に行って疲れて電車で寝てしまったんですね。そのまま終点の駅まで寝過ごしてしまって、電車から降りてもまだ睡眠状態で、ホームから線路へ足を滑らしてしまって、そこに電車が入ってくるという感じでした。目が覚めたら、手足が3本なかったという事故でした。
別所:それが20歳のときだった……。
山田:そうでしたね。
別所:その後、仲間と生きることを目標に生きていこうという決意をされて、お医者さんから「1年から1年半はかかるぞ」と言われた、義足歩行のリハビリも半年でクリアされたと。車椅子という選択肢もあったと思うんですけど、義足を選ばれたというのは?
山田:今までと同じに戻りたかったというか。20歳までは両足があって、友達と遊ぶときも自分の意思で遊びに行っていたので、それと同じように歩いて遊びに行きたい、友達に会いたいなと思ったので、車椅子という選択肢は最初からなかったんです。
別所:義足は、バランスを取ることもなかなか難しいと聞いていますけど。
山田:バランスもそうですし、痛みとかも最初はすごくあったりとか、自分に合う義足を出来なかったりもしたのでそこが大変だったかなと思います。
別所:試行錯誤はどのくらいされたんですか? なかなか合わないですよね?
山田:そうですね。何度も作り直していただいたりとか、僕も履いた状態で、1万歩とか、義足に慣れないといけないのでとにかくひたすら歩くということをしていましたね。

周囲の“見守り”で自分らしさを取り戻した

「今までと同じに戻りたい」という思いを胸に、義足を選んだ山田さん。そんな彼に感銘を受けながら、別所は彼が8月に出版した著書について話を続けていった。

別所:8月に出た著書『線路は続くよどこまでも』。こちらは線路で事故にあったのにタイトルにはあえて線路を入れていますし、表紙もしっかりと線路の上に立ってらっしゃいますよね。これは、けっこう勇気がいると思うんですけど。
山田:線路って僕の中では人生と同じような感じだなと思っていて。要するに自分の人生の線路が20歳までは健常者としての線路があったんです。そこでいろんな駅を通って行くわけなんですよ。小学校とか中学校とか高校とか、その駅を通るごとに本当にいろんな仲間と出会うことができて。そのおかげで僕は成長することができたなというふうに思っているんです。

「線路に落ちることによって、自分の人生の線路が変わってしまった」と語る山田さん。しかし、そこからまた新しい出会い、今まで通るはずがなかった出会いも多く合った。

山田:病院のスタッフもそうですし、障がいを持ってる方もそうですし、それこそYouTubeをやることもあのまま行っていたら始めてなかったなと思っているので、じゃあ、この11万人の登録者の方とも出会うことがなかったなと思うと感慨深いものがあるなと思っていますし。
別所:その前向きになれる強さというか、本の中にも色々と悩まれたことも書かれていますけど、本には「ただ側にいてくれるだけでいい」という言葉が何度か出てくるんですけど、それが印象的でした。そういった気持ちになる山田さんの支えになったんですね?
山田:ひとりでは生きていけない、いろんな人がいてくれたおかげでと思っているんですけど、ただそういった人たちもサポートというよりかは見守ってくれるという人たちがけっこう多くて、そういった人たちのおかげで自分自身も“らしさ”を取り戻せていけたのかなと思っています。

誰かの「勇気」に繋がればと開設したYouTube

現在はひとり暮らしをしながら、YouTubeチャンネル「山田千紘 ちーチャンネル」を配信している山田さん。別所は、「かぼちゃを一生懸命切っている動画を観ましたよ!」と笑いながら話し、始めたキッカケ、そしてSNSについて話を聞いた。



山田:僕自身、友人に車椅子のYouTuberの方がいて。そのチャンネルに去年出させていただいたんですね。その当時からSNSの発信はしていたんですけど、そのYouTubeをキッカケに自分のSNSを見てくださる方が増えて、自分自身もSNSをやってる理由って自分が普段やっていることを発信することによって、誰かが「勇気が湧いた」とかそういったところにつながればいいなと発信をしていたので、YouTubeという媒体はより多くの人に届くなと思っていたので自分のチャンネルを作ってみようと思って、去年開設しましたね。
別所:本当にね、同じような立場というか、不慮の事故にあわれたり、病気で苦しんでる方が観て、本当に勇気をいただけるんじゃないかと思うんですよ。

誰かの「勇気」や「元気」に繋がればと思い開設したYouTubeチャンネル。しかし、障がいを持つ方がSNSなどで発信することに対し、ネガティブな反応があることも事実。そのような状況を山田さんはどう思っているのか。

別所:ちーちゃんは本当に明るくいろんなことを届けてくれているわけなんですけども、SNSなどで発信し続けることに対してどう思っています?
山田:ネガティブな反応ってそりゃあるなと思っていて。十人十色という言葉あるように受け手にもいろんな人がいて当然だなって思っているので、そういった意見も僕の方に来たりするんですけど自分が発信をしていくことでね、逆に「元気をもらえた」、「勇気をもらえた」という人も中にはいるので、そういう人がいる限りは自分が発信することは意味があることなのかなと思っていますね。

「健常者」「障がい者」に分けることに違和感がある

義足と義手を駆使して生活を続ける山田さんは日常生活でギャップを感じることはあるのだろうか、別所は聞く。

別所:現在は義足と義手を駆使しながら都内でひとり暮らしをされていて、平日は自作のお弁当を作って、電車通勤、休日には掃除や洗濯、趣味はひとり旅! コロナ前は弾丸旅行にもよく出かけていたということなんですけども。今はどうですか? 改めて、手足が不自由になりながら、ギャップを感じることはどんなところにありますか? 
山田:僕自身は、普通でいたいというか。健常とか障がいというのもあまり好きではなくて。そもそも二分割に分けることも好きではないんです。僕はあくまで手足が3本ないだけだというふうに思っているので、他の人と同じように仕事ももちろんするし、友達と遊ぶし恋愛だってするしということで大きくギャップがあるなと感じることはないんですけど。例えば、時間の面で、みんな信号に間に合わないときに走って渡ることができるけど僕は走れなかったりするので、そういったところで時間の不利は受けるなとは思うことはありますけど、それくらいですかね。
別所:本の中にも「今持っているもの、すでに存在するものをもう一度見つめ直す」とあります。よく言われる言葉ではありますけど、無くしたものを追いかけるのではなく今自分の周りにあるもの、自分が持っているものを最大限に光り輝かせるものって大切ですよね。そしてそれをサポートできる、今使っている義足との出会いも大きかったみたいですね。オズールっていうんですか?
山田:義足メーカーのオズールというメーカーがありまして、世界でいうと2位のシェアのすごく大きな会社なんですけど、そちらに出会って義足を提供していただくようになったのが大きかったなと思います。
別所:これはどんな違いがあるんでしょうか。
山田:もちろん最先端の義足を作っている企業ではあるんですけど、それだけでなく自分としては、義足ってけっこう細かいメンテナンスが発生したりするんですけど、その都度、申請とかが大変だったりする中で瞬時にメンテを対応していただけたりとか、すごく助かっています。
別所:こういったメンテナンスを含めて当たり前に社会に存在するそういう状況になって欲しいなって思いますよね。
山田:そうですね。手続きとか本当にめんどくさかったりするので、都や区にいろいろと手続きをしなきゃいけなかったりとか……。

コーナーは終盤。最後に別所は、山田さんに今後に展望について聞いた。

山田:今やっていることをひとつひとつというか、SNSの発信であったり、YouTubeの配信もそうですし、こういった形でテレビやラジオもやっていくことで、ひとりでも僕の存在を知っていただいて、「勇気をもらえた、元気になった」という方々が多く増えていけばと思っていますし、日本のモチベーショナルスピーカーというか人々のモチベーションを上げられるような存在になれればなと思っています!

『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』のワンコーナー「Allbirds MORNING INSIGHT」では、あらゆる世界の本質にインサイトしていく。放送は月曜~木曜の6時30分頃から。

(構成:笹谷淳介)

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