小説家・綿矢りさが吉岡里帆と対談。同じ出身地である京都の話や、小説の書き方、自身の原作が映画化『ひらいて』(公開中)にまつわるエピソードから私生活についてまえ、たっぷりと語った。
綿矢が登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『UR LIFESTYLE COLLEGE』(ナビゲーター:吉岡里帆)。10月24日(日)のオンエア内容をテキストで紹介する。
吉岡:(出身が同じなので)もしかしたら見ていた景色や空気感みたいなものは、知らないあいだに共有しているのかなと思います。綿矢さんはどんな少女時代を過ごされましたか?
綿矢:子どもの頃から本がすごく好きで。引っ込み思案なタイプだったんですけど、好奇心が旺盛で、「大人の世界を早く知りたいな」と思っていました。
吉岡:綿矢さんは最年少で文藝賞を受賞されていますよね。映画版の『インストール』は私も観たんですが、当時この映画に少年役で出演していた神木隆之介くんと私は同い年なんですよ。
綿矢:そうなんですか!
吉岡:本当に面白い映画でした。当時の私は主演の上戸 彩さんじゃなくて、神木くんの目線で映画を楽しんでいました。それが、私にとって初めての綿矢さん作品との出会いです。
綿矢:ありがとうございます。あの頃の神木くんって本当にまだ小さくって。でも、撮影現場にお邪魔したときはすごく礼儀正しいイメージの方でしたね。
文藝賞の受賞当時17歳だった綿矢は、受験勉強のプレッシャーから逃れるために小説を書いていたことを明かした。
綿矢:受賞したことで、「(小説家という)職業を決めるチャンスをもらえたのかな」と思いましたね。
吉岡:当時、本以外で興味があるものはありましたか?
綿矢:生まれが京都だったので、近くの神社に行ったりするのが好きでしたね。嵐山とかが近くって、そういうところに遊びに行っていました。
吉岡:私の家も嵐山にすごく近くって。竹林のところとかをよく走っていました。
綿矢:あー! いいですよね。住んでいるからこそ、観光じゃない目的で行くのって楽しいですよね。
吉岡:連載と読み切りの大きな差って、どういうところにありますか?
綿矢:読み切りだと終わりを決めてから書き始めることができるけれど、連載だと「たぶんこういう風に終わるかな?」と思いながら書いていくんですよ。正直、連載は自分でもどこに着地するのかわからないまま始まってしまうんですね(笑)。そこが書いていく過程の違いかなって思います。
吉岡:映画の脚本や小説を書かれる方って、「キャラクターが自分の思っているように走り出したり、違っているほうに動き出したりする」という表現をよくされますよね。そういうことって実際にありますか?
綿矢:ありますね。「脇役やな」って思っていた人が生き生きしだして物語を引っ張っていってくれることがあります。あとは、後半になるにつれて主人公たちのキャラが確立していって、執筆初期では考えてもいなかった展開になることもありますね。
吉岡:女性の内面の描き方が非常に繊細ですよね。綿矢さんのなかで主人公の人物像が生まれてから物語が進んでいくんですか? それとも違うものが決まってから主人公が生まれだすのでしょうか。どういうふうに作品が生まれていくのかも気になります。
綿矢:主人公が何かをしている、たとえば湯船に浸かりながら悩んでいるシーンとかが、頭のなかに浮かんでくるんですよ。それで、「その人はなぜ悩んでいるのか?」「シーンのあとはどんな風に話が進んでいくのか」を考えたりします。書きたいなと思うシーンが、頭のなかで先に浮かぶことが多いです。
綿矢:私はありました。吉岡さんは(笑)?
吉岡:私もありますね。話が進んでいくと「この話はどこに終結するんだろう」ってことはいつも気になっています。自分の話をするときも、「終結ポイントを作りたい」と思って喋っているかもしれないです(笑)。
綿矢:わかります! 関西人だから「で、オチは?」と言われた経験が自分のなかにちょっと残っているんですよね(笑)。
吉岡:関西に住んでいると周りからめっちゃ言われますよね。「で、オチは?」「今回はオチがないんだけど……」みたいな(笑)。
綿矢:オチに対するプレッシャーはありました(笑)。「京都の人っておっとりしているからそういうことってなさそう」って他府県の方は思われるかもしれないですけど、けっこうそういう“関西ノリ”ってありますよね。東京に来てからは、「オチがない話でもみんな話を聞いてくれるんや」ってすごく思いました。
吉岡:めっちゃわかります! みんなが優しいというか。
綿矢:優しい(笑)。
吉岡:「そうなんだ」って全部聞いてくれるから、「そうなのよ~!」ってなるっていう(笑)。
綿矢:そうですよね(笑)。落ち着いて話せます。
<あらすじ>
成績もよくて、明るくて目立つタイプの愛(山田杏奈)は、同じクラスの“たとえ”(作間龍斗)にずっと片思いをしている。 ひっそりとした佇まいで寡黙なタイプだけど、聡明さと、どことなく謎めいた影を持つたとえの魅力は、 愛だけが知っていた。 そう思っていたある日、彼には「秘密の恋人」がいることを知る。 それが病気がちで目立たない美雪(芋生悠)だとわかった時、いいようのない悔しさと心が張り裂けそうな想いが彼女を動かした─。 「もう、爆発しそう─」 愛は美雪に近づいていく。誰も、想像しなかったカタチで…。
(公式サイトより)
吉岡:映画、拝見しました。
綿矢:お忙しいなか、ありがとうございます!
吉岡:すごく面白かったです。とにかく繊細。心の機微と作品の設定があまりにも秀逸過ぎてびっくりしました。
綿矢:すごく嬉しい。
吉岡:綿矢さんの作品を読むときのドキドキ感を味わえました。「こんな子いるの?」って感じるキャラクターなのに、隣の席の子が実はそうなんじゃないかって思わせるような“生っぽさ”に本当に痺れました。
綿矢:小説もけっこうリアルな感じで書いていたんですけど、映画だとさらに生々しさみたいなところを監督が強調して描かれていました。私も映画を観てすごく感動しました。
映画の脚本・監督を務めた首藤 凛は、17歳の頃に原作小説を読んだときから『ひらいて』の映画を撮りたい思いを抱いていたという。
吉岡:監督が原作を読んでからずっと「映画を撮りたい」と思われていたって、すごく感動的と言いますか、グッとくるお話ですよね。
綿矢:そうですね。撮っていただく前にお手紙もいただいたんですけど、すごく熱意があるもので。長年のあいだ映画を撮りたいと思ってくださっていたのが伝わってきたので、「こんな風に自分の本が伝わっていたんだ」と思い、すごく感動しました。
綿矢:レトロな雑貨が好きなので、オークションサイトやフリーマーケットで昭和ぐらいの時期の電気スタンドとか扇風機とかタンスとかを買っています。そうやって、自分の部屋の年代を古くすることに凝っています(笑)。
吉岡:へええ! 面白そうです。買ってお気に入りのアイテムって何ですか?
綿矢:扇風機って昔のものだとスイッチをガチャンと押し込むから、流れてくる空気が昔に染まっているように感じるんですよね。
吉岡:たぶん綿矢さんの感受性も相まって、すごく楽しめることなのかなって思います。
綿矢:そうですね。書いているとき、自分の部屋だけど別世界にいるみたいな感覚が楽しめるように、いろんな雑貨を置いて気分転換をしています。
吉岡:では、ライフスタイルにまつわることで好きなことは何でしょうか?
綿矢:洗濯が一番好きです。自分で服を手洗いして、浴室乾燥で干して仕上げるのがすごく好きです。
吉岡:洗濯って家事のなかでは時間がかかる工程ですよね。
綿矢:シワにならないで干せたりすると、意外と嬉しいんです(笑)。
吉岡:(笑)。
綿矢:洗剤を選ぶのとか、浸けたものをもみ洗いするのとか、全部の工程が楽しいなって思います。
吉岡:綿矢さんのこういうお話を聞けるとは思ってもみなかったので、めっちゃ新鮮な気持ちです(笑)。逆に苦手なことは?
綿矢:苦手なのは料理ですね。よく焦がしたり、味見しているうちに正解が見つからなくなったりします。計量をちゃんとしなかったせいで、すごい味のものができたこともありました(笑)。本当に下手くそです。
吉岡:ちょっと意外でした(笑)。今日はいろんなお話をありがとうございました。
『UR LIFESTYLE COLLEGE』では、心地よい音楽とともに、より良いライフスタイルを考える。オンエアは毎週日曜18時から。
綿矢が登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『UR LIFESTYLE COLLEGE』(ナビゲーター:吉岡里帆)。10月24日(日)のオンエア内容をテキストで紹介する。
最年少で文藝賞を受賞し、小説家の道を切り拓いた
綿矢りさは高校在学中の2001年に『インストール』(河出書房新社)で第38回文藝賞を受賞し、小説家デビュー。2004年には『蹴りたい背中』(河出書房新社)で第130回芥川龍之介賞受賞し、以降もさまざまな作品を生み出し続けている。吉岡と綿矢は初対面だが、京都府京都市出身という共通点がある。吉岡:(出身が同じなので)もしかしたら見ていた景色や空気感みたいなものは、知らないあいだに共有しているのかなと思います。綿矢さんはどんな少女時代を過ごされましたか?
綿矢:子どもの頃から本がすごく好きで。引っ込み思案なタイプだったんですけど、好奇心が旺盛で、「大人の世界を早く知りたいな」と思っていました。
吉岡:綿矢さんは最年少で文藝賞を受賞されていますよね。映画版の『インストール』は私も観たんですが、当時この映画に少年役で出演していた神木隆之介くんと私は同い年なんですよ。
綿矢:そうなんですか!
吉岡:本当に面白い映画でした。当時の私は主演の上戸 彩さんじゃなくて、神木くんの目線で映画を楽しんでいました。それが、私にとって初めての綿矢さん作品との出会いです。
綿矢:ありがとうございます。あの頃の神木くんって本当にまだ小さくって。でも、撮影現場にお邪魔したときはすごく礼儀正しいイメージの方でしたね。
文藝賞の受賞当時17歳だった綿矢は、受験勉強のプレッシャーから逃れるために小説を書いていたことを明かした。
綿矢:受賞したことで、「(小説家という)職業を決めるチャンスをもらえたのかな」と思いましたね。
吉岡:当時、本以外で興味があるものはありましたか?
綿矢:生まれが京都だったので、近くの神社に行ったりするのが好きでしたね。嵐山とかが近くって、そういうところに遊びに行っていました。
吉岡:私の家も嵐山にすごく近くって。竹林のところとかをよく走っていました。
綿矢:あー! いいですよね。住んでいるからこそ、観光じゃない目的で行くのって楽しいですよね。
作品の主人公たちはどうやって生まれる?
約20年にわたり第一線で活躍している綿矢に、吉岡は「プレッシャーを感じるときは?」と質問。連載作品を書いているときには「次回の締切までに間に合うだろうか」とプレッシャーを感じながら日々執筆をしているという。吉岡:連載と読み切りの大きな差って、どういうところにありますか?
綿矢:読み切りだと終わりを決めてから書き始めることができるけれど、連載だと「たぶんこういう風に終わるかな?」と思いながら書いていくんですよ。正直、連載は自分でもどこに着地するのかわからないまま始まってしまうんですね(笑)。そこが書いていく過程の違いかなって思います。
吉岡:映画の脚本や小説を書かれる方って、「キャラクターが自分の思っているように走り出したり、違っているほうに動き出したりする」という表現をよくされますよね。そういうことって実際にありますか?
綿矢:ありますね。「脇役やな」って思っていた人が生き生きしだして物語を引っ張っていってくれることがあります。あとは、後半になるにつれて主人公たちのキャラが確立していって、執筆初期では考えてもいなかった展開になることもありますね。
吉岡:女性の内面の描き方が非常に繊細ですよね。綿矢さんのなかで主人公の人物像が生まれてから物語が進んでいくんですか? それとも違うものが決まってから主人公が生まれだすのでしょうか。どういうふうに作品が生まれていくのかも気になります。
綿矢:主人公が何かをしている、たとえば湯船に浸かりながら悩んでいるシーンとかが、頭のなかに浮かんでくるんですよ。それで、「その人はなぜ悩んでいるのか?」「シーンのあとはどんな風に話が進んでいくのか」を考えたりします。書きたいなと思うシーンが、頭のなかで先に浮かぶことが多いです。
会話の“オチ”をつい意識してしまう2人
吉岡は以前、綿矢がとあるインタビューで「ラストにオチがある作品が多いのは、会話にオチを求める京都人の気質が影響している」と語っていたことを引き合いに出し、「東京と京都で会話の流れとかテンポ感とかで『ちょっと違うな』と思うことってありましたか?」と、質問を投げかけた。綿矢:私はありました。吉岡さんは(笑)?
吉岡:私もありますね。話が進んでいくと「この話はどこに終結するんだろう」ってことはいつも気になっています。自分の話をするときも、「終結ポイントを作りたい」と思って喋っているかもしれないです(笑)。
綿矢:わかります! 関西人だから「で、オチは?」と言われた経験が自分のなかにちょっと残っているんですよね(笑)。
吉岡:関西に住んでいると周りからめっちゃ言われますよね。「で、オチは?」「今回はオチがないんだけど……」みたいな(笑)。
綿矢:オチに対するプレッシャーはありました(笑)。「京都の人っておっとりしているからそういうことってなさそう」って他府県の方は思われるかもしれないですけど、けっこうそういう“関西ノリ”ってありますよね。東京に来てからは、「オチがない話でもみんな話を聞いてくれるんや」ってすごく思いました。
吉岡:めっちゃわかります! みんなが優しいというか。
綿矢:優しい(笑)。
吉岡:「そうなんだ」って全部聞いてくれるから、「そうなのよ~!」ってなるっていう(笑)。
綿矢:そうですよね(笑)。落ち着いて話せます。
女子高生の三角関係を描いた小説が映画化
綿矢の同名小説が原作の映画『ひらいて』が、10月22から公開されている。<あらすじ>
成績もよくて、明るくて目立つタイプの愛(山田杏奈)は、同じクラスの“たとえ”(作間龍斗)にずっと片思いをしている。 ひっそりとした佇まいで寡黙なタイプだけど、聡明さと、どことなく謎めいた影を持つたとえの魅力は、 愛だけが知っていた。 そう思っていたある日、彼には「秘密の恋人」がいることを知る。 それが病気がちで目立たない美雪(芋生悠)だとわかった時、いいようのない悔しさと心が張り裂けそうな想いが彼女を動かした─。 「もう、爆発しそう─」 愛は美雪に近づいていく。誰も、想像しなかったカタチで…。
(公式サイトより)
吉岡:映画、拝見しました。
綿矢:お忙しいなか、ありがとうございます!
吉岡:すごく面白かったです。とにかく繊細。心の機微と作品の設定があまりにも秀逸過ぎてびっくりしました。
綿矢:すごく嬉しい。
吉岡:綿矢さんの作品を読むときのドキドキ感を味わえました。「こんな子いるの?」って感じるキャラクターなのに、隣の席の子が実はそうなんじゃないかって思わせるような“生っぽさ”に本当に痺れました。
綿矢:小説もけっこうリアルな感じで書いていたんですけど、映画だとさらに生々しさみたいなところを監督が強調して描かれていました。私も映画を観てすごく感動しました。
映画の脚本・監督を務めた首藤 凛は、17歳の頃に原作小説を読んだときから『ひらいて』の映画を撮りたい思いを抱いていたという。
吉岡:監督が原作を読んでからずっと「映画を撮りたい」と思われていたって、すごく感動的と言いますか、グッとくるお話ですよね。
綿矢:そうですね。撮っていただく前にお手紙もいただいたんですけど、すごく熱意があるもので。長年のあいだ映画を撮りたいと思ってくださっていたのが伝わってきたので、「こんな風に自分の本が伝わっていたんだ」と思い、すごく感動しました。
レトロなものを置くことで自室を特別な空間にする
『UR LIFESTYLE COLLEGE』では、ゲストのライフスタイルに注目。綿矢が「快適に暮らすために心掛けていること」は、レトロ商品のコレクションだという。綿矢:レトロな雑貨が好きなので、オークションサイトやフリーマーケットで昭和ぐらいの時期の電気スタンドとか扇風機とかタンスとかを買っています。そうやって、自分の部屋の年代を古くすることに凝っています(笑)。
吉岡:へええ! 面白そうです。買ってお気に入りのアイテムって何ですか?
綿矢:扇風機って昔のものだとスイッチをガチャンと押し込むから、流れてくる空気が昔に染まっているように感じるんですよね。
吉岡:たぶん綿矢さんの感受性も相まって、すごく楽しめることなのかなって思います。
綿矢:そうですね。書いているとき、自分の部屋だけど別世界にいるみたいな感覚が楽しめるように、いろんな雑貨を置いて気分転換をしています。
吉岡:では、ライフスタイルにまつわることで好きなことは何でしょうか?
綿矢:洗濯が一番好きです。自分で服を手洗いして、浴室乾燥で干して仕上げるのがすごく好きです。
吉岡:洗濯って家事のなかでは時間がかかる工程ですよね。
綿矢:シワにならないで干せたりすると、意外と嬉しいんです(笑)。
吉岡:(笑)。
綿矢:洗剤を選ぶのとか、浸けたものをもみ洗いするのとか、全部の工程が楽しいなって思います。
吉岡:綿矢さんのこういうお話を聞けるとは思ってもみなかったので、めっちゃ新鮮な気持ちです(笑)。逆に苦手なことは?
綿矢:苦手なのは料理ですね。よく焦がしたり、味見しているうちに正解が見つからなくなったりします。計量をちゃんとしなかったせいで、すごい味のものができたこともありました(笑)。本当に下手くそです。
吉岡:ちょっと意外でした(笑)。今日はいろんなお話をありがとうございました。
『UR LIFESTYLE COLLEGE』では、心地よい音楽とともに、より良いライフスタイルを考える。オンエアは毎週日曜18時から。
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