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吉岡里帆×柚木麻子が対談。「女性の友情は長続きしない」世の風潮を変えたい

吉岡里帆×柚木麻子が対談。「女性の友情は長続きしない」世の風潮を変えたい

吉岡里帆と作家・柚木麻子が6月6日(日)、J-WAVEで対談した。柚木が、自著の人気シリーズのモデルとなった人物について語った。

柚木が登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『UR LIFESTYLE COLLEGE』(ナビゲーター:吉岡里帆)。ゲストのライフスタイルなどに迫る番組だ。

お喋りをやめさせるために本を与えられた子ども時代

2008年に作家デビューを果たした柚木麻子は、『伊藤くん A to E』『ナイルパーチの女子会』など数多くのヒット作を世に送り出してきた。女性悩みや心の揺れを的確にとらえた作品を発表する柚木は、どのような子ども時代を過ごしていたのだろうか?

吉岡:ご出身は東京都。どんなお子さんでしたか?
柚木:本当にお喋りだったので、黙らせるために親が読書をさせていたところがあります。本を読んでいるあいだは黙っているんですけど、読み終わった本のストーリーの解説するようになって、より喋るようになって。今もそうなんですけど、本を読んだり映画を観たりすると、講談師のように話してしまうんですよ。うるさくて、親をとても困らせていた子どもだったらしいです。
吉岡:(笑)。作品のよかったところを喋りたくなる気持ち、めちゃくちゃわかるタイプです。
柚木:私、香川照之さんのファンなんですね。『ディア・ドクター』でやっていた演技の説明をするために、椅子から落ちて大けがをしたことがあります。
吉岡:ええ!?
柚木:「香川照之の真似をして椅子から落ちました」と伝えて、整体師に呆れられました。本や映画の面白さをうまく伝えたくて、ついお喋りになっちゃうんですよね。
吉岡:私にとって最高のゲスト様です(笑)。
柚木:あら、うれしい! ありがとうございます。

価値観をアップデートしながら古典作品を愛し続ける

柚木は子ども時代に影響を受けた書籍として『赤毛のアン』や『若草物語』などを挙げ、「好きだった本は作品のフォーマットがだいたい似ていて。ちょっと風変わりだったり、悪い子がある場所に来て、その場所のルールを変えていく、あるいは成長していく物語」と語る。

海外の古典作品を愛する柚木だが、『風と共に去りぬ』が当時の人種差別問題を孕んだ作品であることに気づいてからは、そうした部分を意識して作品を読み返しているという。一方で、古典作品が今の自分を作り上げたと柚木は語る。

柚木:「『風と共に去りぬ』なしに今の私はいない」ってことにも向き合わないといけないし、それが(自分の)作品の源になっているんですね。物語の舞台となった時代は人種差別が、今も問題ですがさらに凄まじく、おまけに主要人物は特権側に立っていると踏まえた上で、スカーレットとメラニーの関係性が今の自分を作っているんですよ。私、吉岡さんが演じるスカーレットを見てみたい願望があります(笑)。
吉岡:(笑)。私は舞台を観るのがすごく好きなんですけど、舞台だったら日本人が海外の方を演じていてもすごく自然に観られるんですよ。古典的な作品を日本人が解釈して演じるとか、日本の作家さんが影響を受けて小説を出されることに魅力を感じます。
柚木:ありがとうございます。古典の扱い方ってすごく難しくて。価値観をアップデートして批判的な目を持つと同時に、そのときの時代性も勉強する必要があるんですね。反省と勉強をしながら好きであり続けて向き合っていきたいなって考えています。最近、自分が昔好きだった作品の研究がライフワークになってきています。

作家を志すきっかけとなった人物

大学時代は脚本家を目指していた柚木だったが、卒業後に就職した先は製菓メーカーだった。

柚木:(脚本を)賞に応募しても全然引っかからなかったのもあるし、脚本にはさまざまな制約があったのも大きかったです。制約のなかでいろんなドラマを生み出してらっしゃるから、脚本家さんを心から尊敬します。駅を使ってはいけないとか、女優さんによってはNGな表現があるなど、脚本にはルールがいっぱいあるんですよね。そうしたルールを私が忘れがちなんです。
吉岡:(笑)。
柚木:「なんで電車のシーンを書いた」とか「早朝の駅のシーンにどれだけお金がかかると思っているんだ」みたいなことをずっと言われた結果、「私は脚本家に向いてないな」って思っちゃって。それで別業種に就職したんですけど、会社員もあんまり向いていませんでした。当時は商品開発に携わっていたんですけど、そこでもさまざまな制約があったんですよ。原価率とか「これいくらすると思っているの!?」みたいなことを言われる、失敗続きの日々でした。

さまざまな制約に苦しむ柚木を救ったのは、製菓メーカーの先輩がかけてくれた言葉だった。

柚木:先輩から「作家とかになったほうがいいんじゃないの?」って言われて。その言葉で作家になることを決めました。「作家になったら先輩をモデルに小説を書いてもいいですか?」って言ってできたのが、『ランチのアッコちゃん』シリーズなんですよね。
吉岡:ええー(笑)! 就職された先の先輩が作品のモデルだったんですね。

実在する何かを小説に書けることは「気持ちいい」と話す柚木は、坂元裕二や宮藤官九郎の作品で固有名詞が使われているのを見ると「『使うんだ!?』って、ドキッとする」とも語った。これに対し吉岡は「固有名詞が出ると自分の世界と繋がった気がする」とコメントした。

柚木:わかる。アメリカの映画を観ていると、本とか映画の引用をすごくするんですよ。我々がよくわからないギャグを入れるときがある。ラブコメ映画なのに『白鯨』(ハーマン・メルヴィルの長編小説)を全人類が読んでいる前提で例え話をしてくるんですよね。「やつはモビーディック(『白鯨』に登場する巨大鯨)、捕まらないよ」みたいなことを言うの。「彼はアッパー・イースト・サイドのジョージ・クルーニーだよ」みたいな台詞が出てきたときも「使っていいんだ!?」って思ってしまいます。
吉岡:そういう台詞ある(笑)! いいですよね。

「女性の友情は長続きしない」に抗う物語

柚木は4月15日に新作小説『踊る彼女のシルエット』(双葉社)を発売。年齢や環境によって揺さぶられる女性の友情を描いた長編小説だ。自身の出産目前に書かれた作品ということもあり、主人公と自分がリンクする部分があるという。

柚木:「主人公は制約があって動けないキャラクターにしよう」と思っていたタイミングで、ちょうど自分が妊娠していたんですね。出産間近に書くと動きに縛られている女性を作れるなと思ったから、主人公を自分と似た環境にしました。「お腹が大きくなるとお腹が痒くなるといった感覚も書けるな」と思ったので、かなり超特急で書きました。

柚木は「女性の友情は長く続かない」という世間の声を「脅し」と表現し、反発心を抱いているという。

柚木:友情が長く続いていても、「今は踏みこんじゃだめなときだ」っていうそれぞれの優しさや気遣いによって、友情にブランクが生まれるときってあると思うんですよね。そういう事情もあるから、「女の友情は長く続かないよね」って声は変えていきたいし、「友情はずっと仲よくしていないといけない」ってのもなんか嫌だなと思って。出産で前のように遊びに行けなくなったりするなかで、「動けないなかで最大限のことを主人公にやらせたいな」って思って作品を書きました。

主人公の親友はアイドルグループのマネージャーをしている。作中では、輝かしい世界で働く親友に対して、主人公が憧れる心情が描写されている。

柚木:「あなたには自由でいつも楽しそうにやっていてもらいたい」って言葉が、実はプレッシャーになっていたってことはあるんですよね。そういったことですれ違うと女性のあいだでは「追わないほうがいいよ」とか「自然の流れに任せよう」っていう風調があると思うんですけど、私は断固として抗いたくて。友だちを繋ぎ止めるために自分が変わっていく物語にしたかったんです。それは自分が動けなかった状況だったのと、いろんな反省が出てきた時期だったからなのかな、って思っています。

『UR LIFESTYLE COLLEGE』では、心地よい音楽とともに、より良いライフスタイルを考える。オンエアは毎週日曜18時から。

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