J-WAVEで放送中の番組『UR LIFESTYLE COLLEGE』(ナビゲーター:吉岡里帆)。1月27日(日)のオンエアでは、小説家の朝井リョウさんをゲストに、子どものころや青春時代のこと、「私の一番星です」と語るオススメ小説について伺いました。
■小学生から持っていた「根拠のない自信」
朝井さんは大学在学中の2009年、『桐島、部活やめるってよ』でデビュー。2013年、『何者』で直木賞を受賞しました。いずれも映画化された話題作です。
吉岡:どちらも映画館に観に行きました。
朝井:げーっ! げーっとか言っちゃった(笑)。ありがとうございます。
吉岡:あはは(笑)。若い人が新しい感性で書いていると感じて、そのあと小説で詳しく読んでみたいと感じられる作品でした。
朝井:私、映画スタッフ運がいいんですよ。素敵につくっていただけて。私は草葉の陰からニヤニヤして、もらえるものだけもらっていこうという気持ちでおります。
吉岡:いやいや、小説がすてきだからですよ。
謙虚な姿勢を見せつつ、吉岡に「真面目な方なので……」と紹介されると「そうなんです。日本でいちばん真面目なんです、私」とボケてみせる朝井さん。ユーモラスな人柄が伝わってきます。少年時代は、どんなふうに過ごしたのでしょうか?
朝井:小学6年生のときに、初めて出版社に小説を投稿しました。気持ち悪いんですけど、当時は賞を獲れると思いながら送っていたんです(笑)。
吉岡:自信があったんですね。
朝井:「根拠のない自信」がありました。「これで忙しくなっちゃうな。小学校と両立できるの?」って思いながら、ポストに投函したのが記憶にあります。同級生には、小説を書いていることがバレない方が過ごしやすいとわかっていたので、中高に進むに連れて「小説を書いていないですよ!」という振る舞いをすることを意識しながら、投稿を続けました。
■青春に自覚的な少年だった
中学の頃になると、手に取る本や性格も変わっていったそうです。
朝井:変わっていったと言うより、「変えていかなければ」という気持ちが芽生えたというか。それまでは『青い鳥文庫』という児童書レーベルが大好きで、はやみねかおる先生や松原秀行先生の本を読んでいました。そこから、「一般文芸」と呼ばれる棚に手が移っていって。読んでいくと、世の中の小説家はいかに自分の学生時代のことを小説で書き直しているかに気づいたんです。「いま自分が過ごしている時間って、あとから思い出すんだろうな」と客観視してしまったんですよね。だからある種、そこで青春が終わったんです。「夢中で青春を楽しむ」のではなく、「あとから小説を書くためにやっておかなきゃ」「今、吸い取れる感情を、全部ゲットしなきゃ」という気持ちになりました。
吉岡:早熟ですよね。
朝井:今、思うと、愛しにくいですよね(笑)。でも、その状態になって、無理やり明るくなったというか、「小説家になりたい」という気持ちのために、明るくならされましたね。
自覚的に青春を味わっていた朝井さんが「私の一番星です」と紹介した青春小説は、佐藤多佳子さんの『一瞬の風になれ』です。
朝井:高3の終わりに読んで、「自分がもう一生経験できない時間が、全部ここに書かれている」と思い、残された時間に自覚的になりました。プロになってからも何度も読み返しているんですけど、言葉一つ一つの選び取り方も素敵。また、キャラクターがたくさん出てくるんですけど、自然に書き分けられているんです。例えば「この人はいつも5分前に来る」というような、さりげない描写を重ねることで「真面目なんだろうな」と伝わってきたりとか。何度、読み直しても新しい発見がある素晴らしい小説です。
吉岡:読んでみたくなりますね。
朝井:ぜひ読んでください!
■学生の万能感にあふれている…思い出深い街は?
思い出に残っている街を訊くと、「高田馬場」との返答。朝井さんが通っていた早稲田大学が近くにある街です。
朝井:高田馬場のロータリーで早大生が集まって、校歌を歌ったりしているんですよ。「人生最後の万能感」で満ちている街なんです。
吉岡:なるほど。
朝井:大学生って「人生最後の万能感」だと思っていて、社会人になると「根拠のない自信」がどんどん削がれていく。最後の一番危ういバランスの万能感でぎゅうぎゅうの街なんです。
吉岡:そういうエネルギーで満ちているんですね。
朝井:苦しい……エネルギー酔いしちゃう。
吉岡:感性が面白いです(笑)。
朝井:休みの日に歩いてみてください。疲れるから(笑)。
■精神デトックスはバレーボール
考え込むタイプだという朝井さん。メンタルを救ってくれるのはバレーボールだそう。
朝井:私、バレーボールが好きなんです。
吉岡:『桐島、部活やめるってよ』でもバレーボールが出てきますね。
朝井:バレーボールしているときって、ボールを落とさない方法しか考えないんですよ。「今日書けていない」とか「あの本の売上どうか」とか全部忘れて、一般開放している体育館でその場にいる人たちや知り合いと試合するのが気持ちいいんですよ。
吉岡:楽しそうですね。
朝井:外国人もいて性別や年齢関係なく、全部取り除かれて肉体だけになるからシンプルなんです。デトックスです。肉体デトックスと見せかけて精神デトックス。
吉岡:仲間たちはどこで出会ったんですか?
朝井:チームメンバーは僕が務めていた会社の同僚です。
吉岡:会社の縁で続いているんですね。
朝井:バレーボールが続けさせてくれている感じです。私、めちゃくちゃ声出しますからね。「今の取れたよね!?」って(笑)。
吉岡:意外な一面! 見たい!
朝井:罵り合います(笑)。肩書とか関係なくなるので、そういう場面は大事だと思います。
吉岡:たしかに真逆の時間は大事ですね。
終始、明るく、吉岡を笑わせる朝井さんでした。現在、講談社文庫から小説『世にも奇妙な君物語』の文庫版が発売されています。ぜひチェックしてみてください!
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【番組情報】
番組名:『UR LIFESTYLE COLLEGE』
放送日時: 毎週日曜 18時?18時54分
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/original/lscollege/
■小学生から持っていた「根拠のない自信」
朝井さんは大学在学中の2009年、『桐島、部活やめるってよ』でデビュー。2013年、『何者』で直木賞を受賞しました。いずれも映画化された話題作です。
吉岡:どちらも映画館に観に行きました。
朝井:げーっ! げーっとか言っちゃった(笑)。ありがとうございます。
吉岡:あはは(笑)。若い人が新しい感性で書いていると感じて、そのあと小説で詳しく読んでみたいと感じられる作品でした。
朝井:私、映画スタッフ運がいいんですよ。素敵につくっていただけて。私は草葉の陰からニヤニヤして、もらえるものだけもらっていこうという気持ちでおります。
吉岡:いやいや、小説がすてきだからですよ。
謙虚な姿勢を見せつつ、吉岡に「真面目な方なので……」と紹介されると「そうなんです。日本でいちばん真面目なんです、私」とボケてみせる朝井さん。ユーモラスな人柄が伝わってきます。少年時代は、どんなふうに過ごしたのでしょうか?
朝井:小学6年生のときに、初めて出版社に小説を投稿しました。気持ち悪いんですけど、当時は賞を獲れると思いながら送っていたんです(笑)。
吉岡:自信があったんですね。
朝井:「根拠のない自信」がありました。「これで忙しくなっちゃうな。小学校と両立できるの?」って思いながら、ポストに投函したのが記憶にあります。同級生には、小説を書いていることがバレない方が過ごしやすいとわかっていたので、中高に進むに連れて「小説を書いていないですよ!」という振る舞いをすることを意識しながら、投稿を続けました。
■青春に自覚的な少年だった
中学の頃になると、手に取る本や性格も変わっていったそうです。
朝井:変わっていったと言うより、「変えていかなければ」という気持ちが芽生えたというか。それまでは『青い鳥文庫』という児童書レーベルが大好きで、はやみねかおる先生や松原秀行先生の本を読んでいました。そこから、「一般文芸」と呼ばれる棚に手が移っていって。読んでいくと、世の中の小説家はいかに自分の学生時代のことを小説で書き直しているかに気づいたんです。「いま自分が過ごしている時間って、あとから思い出すんだろうな」と客観視してしまったんですよね。だからある種、そこで青春が終わったんです。「夢中で青春を楽しむ」のではなく、「あとから小説を書くためにやっておかなきゃ」「今、吸い取れる感情を、全部ゲットしなきゃ」という気持ちになりました。
吉岡:早熟ですよね。
朝井:今、思うと、愛しにくいですよね(笑)。でも、その状態になって、無理やり明るくなったというか、「小説家になりたい」という気持ちのために、明るくならされましたね。
自覚的に青春を味わっていた朝井さんが「私の一番星です」と紹介した青春小説は、佐藤多佳子さんの『一瞬の風になれ』です。
朝井:高3の終わりに読んで、「自分がもう一生経験できない時間が、全部ここに書かれている」と思い、残された時間に自覚的になりました。プロになってからも何度も読み返しているんですけど、言葉一つ一つの選び取り方も素敵。また、キャラクターがたくさん出てくるんですけど、自然に書き分けられているんです。例えば「この人はいつも5分前に来る」というような、さりげない描写を重ねることで「真面目なんだろうな」と伝わってきたりとか。何度、読み直しても新しい発見がある素晴らしい小説です。
吉岡:読んでみたくなりますね。
朝井:ぜひ読んでください!
■学生の万能感にあふれている…思い出深い街は?
思い出に残っている街を訊くと、「高田馬場」との返答。朝井さんが通っていた早稲田大学が近くにある街です。
朝井:高田馬場のロータリーで早大生が集まって、校歌を歌ったりしているんですよ。「人生最後の万能感」で満ちている街なんです。
吉岡:なるほど。
朝井:大学生って「人生最後の万能感」だと思っていて、社会人になると「根拠のない自信」がどんどん削がれていく。最後の一番危ういバランスの万能感でぎゅうぎゅうの街なんです。
吉岡:そういうエネルギーで満ちているんですね。
朝井:苦しい……エネルギー酔いしちゃう。
吉岡:感性が面白いです(笑)。
朝井:休みの日に歩いてみてください。疲れるから(笑)。
■精神デトックスはバレーボール
考え込むタイプだという朝井さん。メンタルを救ってくれるのはバレーボールだそう。
朝井:私、バレーボールが好きなんです。
吉岡:『桐島、部活やめるってよ』でもバレーボールが出てきますね。
朝井:バレーボールしているときって、ボールを落とさない方法しか考えないんですよ。「今日書けていない」とか「あの本の売上どうか」とか全部忘れて、一般開放している体育館でその場にいる人たちや知り合いと試合するのが気持ちいいんですよ。
吉岡:楽しそうですね。
朝井:外国人もいて性別や年齢関係なく、全部取り除かれて肉体だけになるからシンプルなんです。デトックスです。肉体デトックスと見せかけて精神デトックス。
吉岡:仲間たちはどこで出会ったんですか?
朝井:チームメンバーは僕が務めていた会社の同僚です。
吉岡:会社の縁で続いているんですね。
朝井:バレーボールが続けさせてくれている感じです。私、めちゃくちゃ声出しますからね。「今の取れたよね!?」って(笑)。
吉岡:意外な一面! 見たい!
朝井:罵り合います(笑)。肩書とか関係なくなるので、そういう場面は大事だと思います。
吉岡:たしかに真逆の時間は大事ですね。
終始、明るく、吉岡を笑わせる朝井さんでした。現在、講談社文庫から小説『世にも奇妙な君物語』の文庫版が発売されています。ぜひチェックしてみてください!
11/15『世にも奇妙な君物語』(講談社文庫)が発売されます。本家の原作に採用されるという夢を叶えたく、2時間分、5編の物語を書きました。加えて欲が出まして、1人の著者が5編全て書くからこそ、そして小説だからこそ出来る仕掛けも御用意致しました。解説はミステリー書評家・村上貴史さん。是非! pic.twitter.com/TMsJjNuEHL
— 朝井リョウ (@asai__ryo) 2018年11月9日
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【番組情報】
番組名:『UR LIFESTYLE COLLEGE』
放送日時: 毎週日曜 18時?18時54分
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/original/lscollege/
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