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吉岡里帆も驚いた、松浦弥太郎の転機。海外で「本の路上販売」をしたところ…

吉岡里帆も驚いた、松浦弥太郎の転機。海外で「本の路上販売」をしたところ…

UR』(ナビゲーター:吉岡里帆)。3月28日(日)のオンエアでは、文筆家・松浦弥太郎がリモート出演。自身の原点を振り返り、暮らしを送るうえで大切にしている考え方について語った。

10代から単身でサンフランシスコへ

松浦は2005年に雑誌『暮しの手帖』(暮しの手帖社)の編集長を9年間務め、その後はウェブメディア「くらしのきほん」を設立。現在は株式会社おいしい健康の共同代表とCOW BOOKSの代表を務めながら、エッセイスト、編集者、クリエイティブディレクターとして多岐に渡って活動している。

今の松浦を形成した原点は、10代で訪れたサンフランシスコでの暮らし。高校を中退し、自分を見つめ直すため、ひとりで過ごしていたそうだ。

吉岡:渡米された期間は18歳から20代の半ばとお聞きしました。日本に戻ったらアルバイトをして資金を貯めて、アメリカに行くことを繰り返されていたそうですけども、また行きたいと思えた理由は?
松浦:10代の頃って、いろいろ挫折したり、思うままにいかなかったりするじゃないですか。そういうことを繰り返していくなかで、僕は「アメリカには自由な“何か”があるな」と憧れていたんですね。その憧れの街で、とにかく自分を変えたいって気持ちがすごく強かったんです。誰の助けも借りないというか、ひとりぼっちになる環境って大変なんですけども、「何かのきっかけになるかもしれない」と思っていました。

「本の路上販売」が人生の前進につながった

サンフランシスコに滞在していた松浦は、「何かをしなければならない」と思いつつも、英語が堪能ではなかったため、会話を恐れている部分もあったという。ところが、あるアクションがきっかけで、予想外のコミュニケーションが生まれた。

松浦:サンフランシスコは文学の街と言われておりまして、本屋さんが多いんです。オーナーが得意な分野や好きな本だけを扱う個人店もたくさんありました。そういうところで時間を過ごしていると、本好きな友だちができて。あるとき、古本屋の軒先で安売りしている本のなかから、読めないんだけど「素敵だな」と思えるものを集めて、公園のベンチで並べて路上販売みたいなことをはじめたんです。そうしたら、本自体は売れなかったんですけど、自分の行動に対して興味を持ってくれた方がたくさんいらっしゃったんですよ。
吉岡:へええ!
松浦:「君のやっていることは面白い」と、サンフランシスコに来て、はじめて自分を認めてくれたような体験を得たんですね。自分がいいと思うものを道端でもいいから広げてみたら、関心を持って認めてくれる人がいるんだってことを気付けたんです。僕にとって、その経験がすごく嬉しいことでした。

日本に帰国後、松浦はオールドマガジン専門の書籍店であるm&co. booksellersを東京・赤坂に開業。その後は規模を拡大し、中目黒にセレクトブックストア・COW BOOKSをオープンした。

松浦:古い雑誌だったり古いアートブックを扱っていたんですけど、当時は古本屋を若い人がはじめるってことがほぼなかったんですよ。
吉岡:そうだったんですか。
松浦:なので、かえって注目を集めたというか、いろんな方が訪れてくれて、1歩2歩と前進することができました。
吉岡:すごい。面白い人生ですね。アメリカで過ごした時間がなかったら、こういったお店がなかったってことですもんね。
松浦:そうなんですよ。独りぼっちのアメリカで、1冊1ドルとか50セントで買った本を通じて、人と挨拶やお話ができたり興味を持ってもらえたりしたんです。本というものは、人や場所との関係づくりのきっかけになっているんだなって今でもつくづく思いますね。

マイナスな感情をプラスにする方法

松浦が大切にしていることは「物言わぬものとの接し方」と「ながら感謝」。家具、食器、植物などの「物言わぬもの」に向ける意識こそが大切なのだという。

松浦:(相手が)人の場合は言葉や行動に対して反応を示してくれるけれど、物言わぬものは自分が意識を向けなければ自分勝手に扱ってしまうと思うんですよ。暮らしのなかで大切にしていることの1つですね。あと1つは、「ながら感謝」です。ご飯を食べたり仕事をしたり本を読んだりってことは当たり前のことなんですけど、それができるってことに対して一つひとつ感謝をすべきだなって僕は考えていて。なので、いろんなことをしながら感謝をすることを心掛けています。
吉岡:いいですね、「ながら感謝」。

できるだけ前向きに生きていきたいと語る松浦。「マイナスなことをプラスにしていく発想や工夫がすごく大事」だと話すが、生活のなかでは具体的にどのような発想の転換をしているのだろうか。

松浦:つらいこと、苦しいこと、アクシデントが起きたとしても、物事を違った角度で見てみる。そうすると、最初は悲しくてネガティブなことだなと思っていることでも、周りにとってはチャンスだったり実は価値があることだったりってことが見えてくるんですね。「僕にとってこの出来事は必要だったんだ」と思えたりすると、マイナスなことがプラスになるんですよ。
吉岡:なるほど。ありがたいお話ですね。
松浦:人って不安になったり心がザワザワすることっていっぱいあると思うんですけど、そういうときに心のなかで「ありがとう」と思うと、マイナスな気持ちって薄まるそうですよ。
吉岡:そうなんですか。
松浦:笑い話ですけど、僕ってジェットコースターが大の苦手なんですよ。
吉岡:意外です(笑)。
松浦:だけど、どうしても乗らなければならない状況になったとしますよね。乗っている最中は「怖いな」って感情が押し寄せてくるんですけど、そんなときは「ありがとう! ありがとう!」って思うと恐怖がだいぶ薄くなるんですよ(笑)。この感覚、なんとなくわかります?
吉岡:なんとなくわかりました(笑)。すごくわかりやすい例えでした。

リノベーションされた部屋には懐かしさと温かさが宿る

新しい地域コミュニティのかたちや、団地の再生について考える「MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト」。団地にある歴史を活かしつつ、人が長く心地よく住むことができるリノベーションを施す取り組みだ。

松浦は「2020年度MUJI×UR新プラン発表会」に参加し、実際に国立市・富士見台にある団地を訪れた。吉岡もこのプロジェクトでリノベーションされた団地を訪れたことがあり、「以前から使われているものが、けっこう残っていますよね」とコメントした。

松浦:当時の団地というものは、すごく丁寧に作られているんですよ。今でも使えるし素敵だなって思えるものがきれいに残されていると、リノベーションされたものよりも魅力的に見えたりするんですよね。
吉岡:あれって不思議な感覚ですよね。パーツで気になったものはありましたか?
松浦:人の手によって長い期間磨かれたドアノブだったりとか、部屋の四隅にあるような木枠が好きでした。
吉岡:私も木枠、気になりました。
松浦:今作ろうと思っていても、ああいった細工ってできないような気がしています。だからこそ、リノベーションされた部屋のなかで輝いて見える。
吉岡:そうですね。私が気に入ったものはガラスでした。昔のガラスって今よりも透明度は高くないんですけど、模様が入っていたり温かみを感じるんですよね。
松浦:ガラスやちょっとした金具に「冷たさ」がないですよね。不思議な温かさがある。懐かしさと温かさが共存しているような親しみやすさがありますよね。風通りのいい空間だなと思いました。

お気に入りの暮らしのアイテムは「テディベア」

番組では、松浦から自宅の写真を見せてもらった。吉岡も「家具選びが素敵すぎます」と興味津々。中でもアンティークの雑貨が気になり、「手に入れて心がはしゃいだものはありますか?」と問うと、テディベアが好きであると明かした。

暮らしは朝型で、4時に起きマラソンを終えてから朝食をとり、8時から仕事開始。13時に昼食、17時に夕食を取った後は散歩に出かけるという生活リズムを守っているという。21時にシャワーを浴び、読書をして、22時には眠る日々を続けている。

吉岡:ルーティーンのような心地よさもあるんですかね?
松浦:そうなんですよ。だから、朝起きるとすごくウキウキしますよ(笑)。
吉岡:インタビューを拝見したのですが、朝起きたときに「今日も起きれた」ってことにまず感謝をされるそうですね。全肯定の感覚になると書かれていたので「悟りかな」って思っちゃいました(笑)。
松浦:午前中が元気なんですけど、午後になるとまるで電池が切れるかのように体と頭の動きが遅くなります。

松浦にとって初めてとなるドキュメンタリー監督作品『場所はいつも旅先だった』の公開が11月に控えている。海外5ヵ国の街の暮らしを映しながら、自分が書いた文章をナレーションしたそうだ。書籍は、『仕事のためのセンス入門』(筑摩書房)が発売中。5月に結婚と恋愛について自分の価値観をまとめた本が刊行予定。

『UR LIFESTYLE COLLEGE』では、心地よい音楽とともに、より良いライフスタイルを考える。オンエアは毎週日曜18時から。

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