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毎週「東京都と同じ面積の森林」が消失している。日本では林業の担い手不足が問題に

(画像素材:PIXTA)

毎週「東京都と同じ面積の森林」が消失している。日本では林業の担い手不足が問題に

地球の未来を守るために今できることを考える、J-WAVEで放送中の番組『ENEOS FOR OUR EARTH -ONE BY ONE-』(ナビゲーター:堀田 茜)。12月11日(金)のオンエアでは、持続可能な開発目標「SDGs(Sustainable Development Goals)の目標15「陸の豊かさも守ろう」をテーマにした。「SDGs教育日本一」を目指す郁文館夢学園の理事・渡邉烈士さんに話を聞いた。

木を植えるだけでは、森は守れない

目標15「陸の豊かさも守ろう」は、陸の生態系の保護、回復を図るとともに、持続可能な利用の推進と森林管理をおこなうことで砂漠化を食い止め、土地劣化を阻止、回復する。そして森林を保護することで、生物の多様性をしっかりと生み出し、自然を守るという目標だ。

堀田:地球の森林環境は具体的にどんなことが問題になっているんでしょうか?
渡邉:地表のおよそ30パーセントを占めるのが森林です。そこに陸地に住む動植物や昆虫のおよそ80パーセントが生息していると言われています。しかし毎年ものすごい勢いで森林は減少していて、その結果、生態系が破壊され、食物連鎖のバランスが崩されるほか、地球温暖化が起きていると言われています。
堀田:森林はどのくらいのペースで減少しているんでしょうか。
渡邉:2015年以降、毎年失われている天然林の森の面積が約10万平方キロメートルと言われています。毎週、東京都と同じぐらいの面積の森林がなくなっているとイメージしてください。
堀田:え、そんなにですか!? そう考えたら本当に深刻な状況ですよね。
渡邉:なかなか日本にいるとわからないですけどね。
堀田:なんでそんなになくなってしまうんですか?
渡邉:原因はたくさんあります。ここではあえてふたつ大きな原因をお伝えします。ひとつめの原因としては、世界でいまもなお天然林を伐採する人たちがたくさんいるということ。ただ、ブラジルなどの南アメリカの国々の人たちは、生きるためにどうしてもアマゾンの木々を伐採しなければいけないという理由があるんですね。もうひとつは、いま日本でもたくさん植樹をしましょうと言って、空いている土地に森を再生させようと、森に木々を植樹するんですけど、その木々の手入れをしないといけないんですね。林業の間伐をしないと結果的に森が病気になっていってしまいます。世界的にはアマゾンで起きている森林伐採が大きな原因ですが、日本では林業の担い手が不足して手入れが行き届いていないという問題があります。
堀田:手入れが足りないから、どんどんだめになっちゃっている、ということですか?
渡邉:木々は、もちろん水も必要なんですけど、太陽の光を必要とします。だから木を集中して植えたとしても、結果的に木が細くなってしまうんです。丁寧に間伐して、あいだを空けて木を切っていくことで光が入り、木が1本1本太く大きくなることで森が豊かになっていきます。

林業と「自分が使う机」を結びつけて考える。子どもへのSDGs教育の意義

渡邉さんが理事を務める郁文館夢学園は、今年で創立131年の中高一貫の私立学校。夏目漱石の著書『吾輩は猫である』にも登場した「落雲館」のモデルでもあり、「子どもたちの幸せのためだけに学校はある」という理念のもと、SDGs教育日本一を掲げている。

堀田:どのような活動をされているんですか?
渡邉:森林再生保全活動を「夢教育プログラム」に取り入れています。「公益財団法人 Save Earth Foundation」と協力して、長野県東御市にある森で「実際にどのような林業がされているか」という講義を受けたり、国が指定している特定外来植物のオオハンゴンソウの抜き取りをおこなったりしています。先ほどお伝えした、間伐した杉とか栗の間伐材で机のカバーを作って、それを使って子どもたちは一人ひとり自分の机で勉強しています。大分県臼杵市では「林業を通して子どもたちにどんなふうに持続可能な森林管理を学んでもらうか」という新たなプログラムを作っています。
堀田:自分が勉強している机がそういう活動からできたものだと知っていると身近に感じられますし、中高生の多感な時期にそういったことを勉強できるのはすごくいいことだなと思います。実際に生徒たちからどんなリアクションがありますか?
渡邉:陸の豊かさを守るとなったときに、目標はわかりますが、何をすればいいのかわからないんですね。だから実際に「これが間伐材で作った机だよ」とか「実際にいまの陸はどうなっているんだろう?」と視覚的に学習できる機会が必要です。長野県東御市や大分県臼杵市では、実際に大きな木を切る伐倒を見学します。子どもたちは街中の木を何気なく見ると思いますが、伐倒で木が音をたてて倒れる姿を見て「木は生きている」「そんな木を私たちは使っている」と実感できます。

渡邉さんは「10、20年後、SDGsの取り組みに関わりを持たない職業または企業は、まったくないと言っても過言ではないと思っています」と話す。中高生からSDGsの考えを理解して将来の職業選択をおこなうことが、生徒の将来の幸せにも結びつくと考えているそうだ。

ささいなことでも継続すれば、立派な森林再生保全活動となる

堀田は「私たちができる森林再生保全活動は?」と質問する。

渡邉:たとえばマイ箸を使うとか、紙の無駄遣いを減らすとか、できることはたくさんあると思います。大切なことは、まず現状の環境問題をちゃんと知って、「どうして環境保全活動をするのか」という理由をしっかりと知ることが大切かなと思います。ただマイ箸を使うとか、周囲に「使いなさい」と言うのではなく、マイ箸を使うことによって、それが環境にどのように貢献できるのかということを考えたり、紙の無駄遣いを減らすことでどんないいことがあるのかをちゃんと考えたりしていく。それは私たちひとりひとりができることかなと思います。ささいなことでも継続すれば、それは立派な森林再生保全活動だと私は思います。
堀田:渡邉さんは、紙の台本ではなくiPadを使用されていますね。
渡邉:そうですね。極力ペーパーレスでいきたいと思っています。ただ、どうしても紙は必要だと思いますので、今お伝えしたように無駄遣いをしなければいいかなと。
堀田:まずは、今どんなことが起きていて、事の重大さを理解してからマイ箸を使ったり、紙をなるべく減らしたり、ちょっとした意識を高めることが大切なんですね。

『ENEOS FOR OUR EARTH -ONE BY ONE-』は、わたしたちの未来を守るために、いまできることを一緒に考える。放送は毎週金曜日の22時から。

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2020年12月18日28時59分まで

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番組情報
ENEOS FOR OUR EARTH -ONE BY ONE-
毎週金曜
22:00-22:30