音楽、映画、エンタメ「ここだけの話」
10人に1人が清潔な水を使えない。先進国も抱える「水の課題」を専門家が解説

10人に1人が清潔な水を使えない。先進国も抱える「水の課題」を専門家が解説

J-WAVEで放送中の番組『ENEOS FOR OUR EARTH -ONE BY ONE-』(ナビゲーター:堀田 茜)。11月20日(金)のオンエアでは、持続可能な開発目標「SDGs(Sustainable Development Goals)の目標6「安全な水とトイレを世界中に」について、ウォーターエイドジャパン事務局長・高橋 郁さんに話を聞いた。

世界でおよそ7億8500万人が清潔な水を使えない

高橋さんは、ロンドン大学東洋アフリカ研究所で開発学修士を取得後、緊急人道支援のNGOに入り、広報、マーケティングなどを担当。2013年からウォーターエイドジャパンの事務局長として活躍。ウォーターエイドジャパンは、開発途上国を中心に、世界中で安心安全な水を届ける活動や衛生習慣の改善に取り組んでいる。

堀田:目標6「安全な水とトイレを世界中に」とは、具体的にどのような目標なんでしょうか。
高橋:実は世界中には、まだまだきれいな水やトイレを使用できない人がたくさんいます。このような課題を受けて、世界のすべての人が安全な水を使えるように、きちんとしたトイレを使えるように、というのがこの目標になります。
堀田:日本にいると水やトイレを使用できない人がたくさんいる、という実感が湧きにくいですね。
高橋:そうなんです。では、清潔な水を使うことができない人は世界中にはどれくらいいると思いますか?
堀田:難しいですね……。数億人くらいですか?
高橋:はい。実は世界人口の10人に1人、およそ7億8500万人も清潔な水を使うことができない人がいるんです。日本の人口より断然多いんです。
堀田:想像よりも多くて驚きました。

清潔な水が使えない理由は、地域によって違う

高橋さんがウォーターエイドの活動と、その意義について解説した。

高橋:ウォーターエイドはもともと、1981年にイギリスで設立されました。途上国すべての人々が清潔な水を使えるように、きちんとしたトイレを使えるように、そして手洗いなどの衛生習慣を実践できるように、ということを目指して活動をしている国際NGOです。日本法人は2013年に設立されました。2020年現在、世界34カ国に拠点があって、26カ国で水と衛生の支援をおこなっております。
堀田:世界34カ国も。グローバルに活動されている団体なんですね。具体的にはどんな活動をされているんでしょうか。
高橋:実はきれいな水を使うことができない理由は、地域によってさまざまなんです。たとえば水道や井戸などの給水設備がないという地域。給水設備はたくさんあるけど、ほとんどが壊れたまま修理されていないという地域。そもそもどこに給水設備があって、どれが動いていて、どれが壊れているかといったデータ情報がまったくないので、どこから改善していったらいいかわからない地域などがあります。私たちはこうした課題を解決するために、井戸などの給水設備を作ったり、修理する人材を育成したり、どこに給水設備があるかわからない地域では、行政と連携してデータ集めをすることもあります。
堀田:給水設備がないだけではなく、壊れたまま修理されていない地域もあるんですね。知らなかったです。きれいな水を引くことで、生活は具体的にどう変わっていくんでしょうか。
高橋:下痢などの病気にかからなくなって健康になる、ということがまずひとつ。それから、きれいな水を村で得られない場合、遠くまで歩いて水汲みに行かなければならないんですが、多くの場合、水汲みの仕事は女性や子どもたちの仕事で、毎日何往復もして、2、3時間かけて水を汲まなければならない。そうすると女性たちは、たとえば農作物を育てるなど、ほかの仕事をする時間がなくなってしまいますし、子どもたちは学校に行く時間がなくなって中退してしまうこともあります。村で清潔な水が使えるようになると、大人たちは水汲みに使っていた時間を農業などほかのことに使って生活を改善していけますし、子どもたちは学校で集中して勉強することができるようになります。
堀田:そこまで生活が変化していくんですね。

高橋さんも実際、村できれいな水が使えるようになってから半年後の変化に驚いたことがあるという。

高橋:私たちのプロジェクトによってきれいな水が使えるようになって半年が経った東ティモールの村へ行きました。そうしたらそれぞれのおうちの周りに青々とした大きな野菜畑ができていて、とてもびっくりしました。どうやら村のみなさんは昔から、水が村に届いたら野菜を育て始めたいと思っていたそうなんです。みなさん、水汲みに使っていた時間を使って畑を作ったり、村に届いた水を使ってトマトなどの野菜を育てたりしていて、「一度水が届いたら、あとは自分たちで生活を変えていくんだ」と、そのパワーにとても感激しました。

手洗いの大切さを世界に

ウォーターエイドジャパンでは、人々に清潔な水を届けるだけではなく、衛生習慣の改善にも取り組んでいる。

高橋:コロナ禍で手洗いの大切さが注目されていると思います。実は世界の4割の人たちが自宅で清潔な水と石けんを使って手洗いすることができないといった状況にあるんです。
堀田:4割もですか!?
高橋:そうなんです。仮に家や村のなかで水が使えるようになったとしても、手洗いの大切さ、正しい手洗いの方法がわからないと、手洗いをすることができなくて感染症にかかってしまうということが起きてしまいます。ウォーターエイドでは、新型コロナウイルス感染症が拡大する前から手洗いの大切さについて各国の学校や村の集会などで啓発する取り組みをしてきました。今回、感染症の拡大を受けて取り組みを強化しているところです。たとえば村にあるスピーカーやポスターを使ったり、看板を立てたりしながら、たくさんの人に手洗いをするようにと呼び掛けています。

私たちは、水不足の地域の水を使っている

水の問題は開発途上国だけではなく先進国でも深刻な課題が存在していると高橋さんは言います。

高橋:日本にいる私たちも海外の水を使っているんです。たとえばみなさんが着るTシャツの綿花を育てたり、工場でTシャツを作ったりする過程は多くの場合、海外でおこなわれていて、その地域の水をたくさん使っているんです。Tシャツ1枚に使われる水は3000リットルで、給水車1台分とも言われているんです。
堀田:え、そんなにですか!?
高橋: Tシャツを作ったり、綿花を作ったりといったことが、水不足の地域やこれから深刻な水不足になる地域でおこなわれていることも多く、私たちは水不足の地域の水を使っていると知っておくが大切だと思います。
堀田:身近な水なのに、あまりにも知らないことが多すぎて驚いています。本当に他人事ではないということですよね。これから私たちにもできることはあるんでしょうか?
高橋:私たちの生活のなかでも実はいろいろな国の水を使っている、ということに関心を寄せていくことが大切かなと思います。それから、「清潔な水を使えない人たちがいる」ということが“驚くべき事実"ではなく“当たり前の事実"にだんだんとなってきてしまっている、と私たちは感じています。2020年になって世界の10人に1人が清潔な水を使えないというのはとても深刻な課題です。「これではいけない」ということを私たちと一緒に声をあげていただけるとうれしいなと思います。
堀田:世界中の水のおかげで、いまの私たちの生活が成り立っているということを改めて思い出さなきゃいけないですね。水に感謝をしながら、もっともっと大切に使っていきたいなと思いました。高橋さんのこれからの目標はなんですか?
高橋:私たちの団体の目標はSDGsと同じ期限で、2030年までにすべての人が清潔な水とトイレを使って、衛生習慣を実践していくようになることが目標です。この目標の実現に向けて、これからも活動を頑張っていきたいと思っています。

ウォーターエイドジャパンの公式サイトはこちら

『ENEOS FOR OUR EARTH -ONE BY ONE-』では、私たちの地球の未来を守るために、いまできることを一緒に考える。オンエアは毎週金曜の22時から。

この記事の続きを読むには、
以下から登録/ログインをしてください。

  • 新規登録簡単30
  • J-meアカウントでログイン
  • メールアドレスでログイン
radikoで聴く
2020年11月27日28時59分まで

PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

番組情報
ENEOS FOR OUR EARTH -ONE BY ONE-
毎週金曜
22:00-22:30