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日本周辺の海は「マイクロプラスチック」が世界の30倍。魚を通じて人体への悪影響も

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日本周辺の海は「マイクロプラスチック」が世界の30倍。魚を通じて人体への悪影響も

地球の未来を守るために今できることを考える、J-WAVEで放送中の番組『ENEOS FOR OUR EARTH -ONE BY ONE-』(ナビゲーター:堀田 茜)。12月4日(金)のオンエアでは、持続可能な開発目標「SDGs(Sustainable Development Goals)の目標14「海の豊かさを守ろう」について、東京農工大学教授・高田秀重さんに話を聞いた。

「化学繊維の服を洗濯」でもマイクロプラスチックは発生する

高田さんは、日本のマイクロプラスチック海洋汚染研究の第一人者。2007年に東京農工大学農学部教授に就任し、水環境保全学研究室および有機地球化学研究室を運営。「マイクロプラスチックによる海洋汚染の研究」で内閣総理大臣賞を受賞した。

堀田:目標14「海の豊かさを守ろう」は、どのような目標なんでしょうか?
高田:持続可能な開発のために、海や海洋資源を守りながら利用するという目標です。利用するためには海がきれいでなければいけないので、海洋汚染は極力少なくしていくこと。そのなかでもプラスチックによる海の汚染は完全にゼロにしていくという目標です。
堀田:「マイクロプラスチック」がキーワードになってくると思いますが、具体的にどのようなものなんでしょうか。
高田:5ミリ以下の小さなプラスチックのことをまとめて「マイクロプラスチック」と呼んでいます。どのようなものからできるかというと、使い捨てのプラスチックですね。レジ袋やペットボトルのフタ、使い捨てのお弁当箱などが捨てられて、最後に海に入ってきてしまうと、紫外線や波の力、砂浜に打ち上げられて熱によって劣化してボロボロになったものがマイクロプラスチックになります。
堀田:それが海で生きている魚にも影響してくるんですよね。
高田:我々はたくさんのプラスチック、あるいは化学繊維を使っています。フリースはポリエステル製で、そういうものを洗濯すると「洗濯くず」として繊維状のマイクロプラスチックが発生するんです。
堀田:洗濯するだけで?
高田:そうですね。1着のフリースを1回洗濯すると、2000本のマイクロプラスチックが発生します。こういうものも全部、最終的には海に入るんです。使い捨てのプラスチックがボロボロになったもののほか、我々が着ている化学繊維の衣服を洗濯した排水やタイヤのくずもそうです。あとは台所で使うスポンジも削れていきます。陸で使ったものが全部海に入って溜まってしまいます。

環境や人間にはどんな悪影響がある?

堀田は「想像以上に、私たちの身の回りにあるものからマイクロプラスチックが生まれているんだ」と驚く。

高田:「陸で暮らす我々とは遠い話かな」と思うかもしれませんが、もとをたどれば私たちの暮らしから出ている話なのです。
堀田:具体的にどのくらいですか?
高田:世界全体で見ると、約2トンのごみ収集車を満タンにしたものが5秒から10秒に1回、海に捨てられている状況です。
堀田:そんなにですか!?
高田:捨てられたものが、生物が分解できるものであればまだいいんですが、生物によっては分解をしません。そうすると何十年もかけて分解されずに溜まっていってしまいます。
堀田:数で言うとどのくらいになるんでしょうか。
高田:細かくなったものが世界の海に50兆個、あるいはそれ以上浮遊していると考えられています。重さにすると30万トンですね。
堀田:日本でもマイクロプラスチックは多いほうなのでしょうか。
高田:「日本でも」というより、日本の周りの海は世界のほかの海と比べると30倍ほど多いと、環境省などから報告されています。
堀田:そんなに! 日本の周りにいる魚にも大きな影響がありますよね。
高田:魚がエサとなるプランクトンを食べるとき、一緒にマイクロプラスチックも食べてしまうため、魚の内臓からも見つかっています。
堀田:それはどんな魚ですか?
高田:東京湾で調べたのは、カタクチイワシというアンチョビの材料ですね。ほかにはハゼやスズキといった魚の胃の中からも見つかっています。
堀田:魚の内臓は食べるときに捨てますが、それでも影響があるのでしょうか。
高田:身の部分にはプラスチック自体は吸収されませんので、内臓を取り除いて食べれば、我々がプラスチックを食べることはありません。問題はそのプラスチックにもともと有害な化学物質が含まれていることです。あるいは海の中で有害な化学物質をくっつけていきます。そういうプラスチックにくっついていたり含まれたりする有害な化学物質が、魚の身のほうに吸収されてしまいます。
堀田:それが人間の体に影響があるのでしょうか?
高田:すぐに影響があるわけではありませんが、何十年、あるいは世代を超えて生殖に影響が出たり、免疫力が下がってしまったりする影響が出てくる物質です。
堀田:想像以上に深刻な状況なんですね。

マイクロプラスチック削減のためにできること

高田さんが、マイクロプラスチックを削減するためにどのような取り組みが必要なのかを解説した。

高田:50兆個浮遊していると言いましたが、目に見えないくらい細かいものなんですよ。だから一度海に出たら、もはや回収することは不可能です。そのため海に入る前に集める、あるいは海に入らないようにすることが大事です。たとえば海岸清掃される方がいますよね。そういう方がレジ袋を拾うだけでも効果があります。レジ袋1枚が最終的にマイクロプラスチック数千個になってしまいますので、拾えば、数千個のマイクロプラスチックを取り除くのと同じ効果があるということになります。しかし海岸清掃している方の話では、拾っても次の週にまた同じだけあるそうで、拾っても拾ってもキリがない。すなわち、我々が使い捨てのプラスチックを使わないようにしていくことが大事だと思います。
堀田:私たちにもできることはあるのでしょうか?
高田:簡単なことがいくつもあると思います。マイバッグを持ち歩いてレジ袋をもらわないようにする。マイボトルを持ち歩いてペットボトルを買わないようにする。もう少し進んだところでは、液体せっけんをやめて固形せっけんにするということも大事だと思います。

高田さんによると、液体洗剤の詰め替え容器が特殊なプラスチックでできているため、それが環境に悪影響を与えるのだという。

高田:特殊なだけにリサイクルしにくいんです。だからけっきょく他の可燃ごみと一緒に燃やされてしまい、二酸化炭素が発生して温暖化が進んでしまう。これもまたSDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」の達成を困難にしてしまいます。SDGsは目標同士が繋がっているので、目標14だけをなんとかすればいいということではないんです。ほかの目標についても考えると、詰め替え容器といった特殊なプラスチックを使用するのは、おすすめしません。固形せっけんであれば紙の包装もできますし、包装なしで売っているメーカーさんもあります。なるべくそういうプラスチックの包装や容器を減らしていくことを、身の回りを見回して考えていけばいいんじゃないかと思います。

プラスチックに代わる素材の開発を進める

高田さんが最後に、これからの目標を語った。

高田:今お話したようなことは、まだあまり知られていません。特に生物への影響は知られていないことが多いので、そういったことを調べてみんなに伝えていこうと思います。もうひとつは、大学のほかの先生方と協力して、プラスチックに代わる素材を開発したり、うまく使う方法を考えたりしています。紙や木はプラスチックに代わる素材になるので、こういうものをうまく利用する方法です。あるいはバイオマス。たとえばカイコの絹(シルク)から作ったプラスチックや、捨ててしまうカシューナッツの殻から作ったプラスチックなど、バイオマスからプラスチックを作る取り組みもおこなっています。

『ENEOS FOR OUR EARTH -ONE BY ONE-』では、私たちの地球の未来を守るために、いまできることを一緒に考える。オンエアは毎週金曜の22時から。

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2020年12月11日28時59分まで

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番組情報
ENEOS FOR OUR EARTH -ONE BY ONE-
毎週金曜
22:00-22:30