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のんが聞く。奈良美智のアートの話「わかりすぎるものは、想像力を縮める」

のんが聞く。奈良美智のアートの話「わかりすぎるものは、想像力を縮める」

女優・創作あーちすと のんが、現代芸術界を代表するアーティストのひとり、画家・彫刻家の奈良美智と対談。表現やアートの役割、日本のアートについて語り合った。

のんと奈良が登場したのは、8月16日(日)放送のJ-WAVEのPodcast連動プログラム『INNOVATION WORLD ERA』のワンコーナー「FROM THE NEXT ERA」。のんは同番組の第3週目のマンスリーナビゲーター。

わかりすぎるものは想像力を縮める

のんと奈良は、これまでに雑誌の対談などで交流を深めてきた。のんは奈良から絵を教えてもらったこともあるという。

のん:絵を描いても、「あとであっても、水で消しちゃえばいいんだ」と言われたことを覚えています。そのとき、創作あーちすととして活動を始めて、初の大きな絵に挑戦したときでした。
奈良:そのあとも、たくさん大きな絵を描いたでしょう?
のん:あのあと、勇気が湧いて大きい絵を描いたりしてました。
奈良:描けば描くほど慣れてくるから、いいんじゃない。
のん:そのときに「何かわかるようなものじゃない方が面白い」って言われました。
奈良:わかりすぎるものって想像力を縮めるから、わからないくらいのほうが観る人も作る人も自分が知らない自分の能力を引き出すから。決して作る人だけでモノができているんじゃなくて、観る人がいてはじめて(作品が)できるじゃない。観る人が想像力豊かだと、作品もそこではじめて生きてくる。
のん:めっちゃ名言がでました!
奈良:明日になったら忘れてると思うよ(笑)。

自分の気持ちに忠実になることが大切

これまで数々の作品を生み出してきた奈良にとって、「表現する」とは一体どんなアクションなのだろうか?

奈良:人って誰でも常に何かを表現している。散歩していても、歩き方を早くしたり遅くしたり、立ち止まったり、必ず何かしようという意思が無意識に働いている。その中で一番大切だなと思っているのは、作品を作るときもそうだけど、自分がどう感じるのか。「この絵がいいから観なよ」と言われて、実際に観に行って「あんまり大したことないな」と思ったけど、みんながいいって言っているから「すごくよかった」とか言うのはおかしい。

奈良は「自分の気持ちに忠実になることが大切だ」と続ける。

奈良:そのときにみんながいいと思うものが、よく見えなくて自分だけ「どうしてもこれがいい」と思う気持ちが、自分がひとつ違う表現をするきっかけになるような気がして。どこかに必ず一人か二人、自分と同じようにそれがいいと思う人がいたりとか、どこかで出会ったりするとすごくうれしい。最終的には、たくさんの人たちとわかり合えるものになればいいと思うけど、最初からそれを目指すのではなくて、「確実にこれがわかる人がいるんじゃないか」と、それを信じてやってみて、その延長でどんどん広がっていくものが出ていく。そういう表現であったらいいなと思うけどね。
のん:カッコいい。
奈良:思ってるだけだけど(笑)。
のん:でも、それを体現されているから。奥深い言葉でした。

最新展示で一番好きなポイント

東京・六本木にある森美術館では、現在『STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ』が開催中だ(2021年1月3日(日)まで)。奈良をはじめ、草間彌生、李禹煥(リ・ウファン)、宮島達男、村上 隆、杉本博司ら6名のアーティストの初期作品から最新作までを紹介している。

奈良:自分は最新作の大きな絵と、お月様が小屋の上にのっている、昔作った大きな立体作品を暗い部屋で展示しています。でも、自分が今回一番やりたかったのは、その部屋に入るひとつ前に小さな部屋があって、そこに自分が子どものときから今まで読んできて「この本を読んだから自分があるんだ」って漫画とか小説とか伝記とかいろんなものがごちゃ混ぜになった本棚があって。そこに子どもの頃から好きだった人形とか、そういうものがいっぱいある。あとは、LPレコードのジャケットをダーッと何枚も飾ってたりして、「こういうもので奈良美智ができたんだ」とわかるようなそういう部屋があって。自分はそこが一番好きかな。
のん:実は、今日観に行きました。すごく癒やされて、楽しかったです。
奈良:すごく個人的なものがケースの中にあったでしょ。昔の写真とか、子どもたちが描いた絵とか、そういうもので自分ができあがっているんだよね。あんまり美術とかすごく専門的なものでできあがっているんじゃなくて、それ以外のものをどれだけスピリッツに詰め込められるかをやらなきゃいけないっていうか、そういうことをやりたい。そうじゃないと、自分が出てこないからね。

みんなからは絵描きだとか彫刻家だとか言われるけど…

アートは現代社会に対するカウンター的な役割を果たしていると言える。奈良は社会に対してのカウンターについてどう考えているのだろうか?

奈良:これまで大人たちが社会で決めたしきたりとかルールってあるじゃない。それを横から違うルールを持った人たちがいて、それはたいてい若者なんだけど。たとえば「大人になったらヘアスタイルをキチッとしてネクタイを締めて会社に通わないといけない」っていうものがルールとして決まっているとしたら、「そんなことじゃなくて、好きな仕事についてもっと自由に生きようよ」っていう人たちが現れて、そっちの気持ちの人の方が多くなっていったらそれが社会を変えていくことになったりとか。「森に入って、木を切ってそれで家を建てようよ」ってことから「それだけだと森がなくなるから、切ったらまた植えようよ」って人が出てきたりとか。都会とか街の中での出来事だけじゃなくて、いろんなことや今までのルールをちょっとずつ変えていこうみたいなことがおそらくカウンターだと思う。自分もどちらかというとそっち側にいたいなと思うね。

現在、奈良は田舎に住み、木を育てることで、ある意識が芽生えたという。

奈良:青森県には世界遺産の白神山地にブナの原生林がいっぱいある森があるんだけど、そこから拾ってきたブナの種をうちの兄貴が育てて、その苗を育ててそれを僕の家に持って来てくれて。200本の苗を植えて森を作ろうかなって。
のん:森を作ろうとしているんですか。めっちゃすごい!
奈良:もしかしたら、そういうことをやるために自分は生きてきたというか。みんなからは絵描きだとか彫刻家だとか言われたり思われたりするけど、本当にやりたかったことってこういうことかなって最近思ったりしている。

大きなものではなく、小さなコミュニティに目を向ける

日本は海外に比べて、「アート・バーゼル」をはじめするアートフェアやレジデンス文化が定着しないと言われている。奈良は今後の日本のアートシーンにどんな変化が必要だと考えるのか。

奈良:あんまり深刻に考えないで、大きなものを見ない。「アート・バーゼル」って世界で一番大きなアート・フェアなんだけど、田舎でもどこでもいいけど、やりがいがあるようなかたちでそれぞれが生み出した小さなコミュニティ、たとえばアート・フェスとか作家同士の繋がりをしておけばいいような気がするけどね。
のん:なるほど。
奈良:地方に行って輝いている人を見ると、すごくその街がよく見えるじゃん。だから、「アート・バーゼル」とか僕はあまり興味なくて、アーティストを呼んでそこに住んでもらう、アーティスト・レジデンスも東京とかでやるのではなくて、日本っていい田舎がたくさんあるから、そこにアーティストを呼んでね。みんながみんな大都会が好きなわけじゃないじゃん。湖の見える湖畔で作品を制作したいってアーティストを迎え入れる場所は、国立公園の中に作るとかね。
のん:コミュニティが集まってできあがっていくわけですね。
奈良:そうなんだ。
のん:シビれました!

J-WAVEのポッドキャストサービス「SPINEAR」ほか、各種ポッドキャストサービスでは、ロングバージョンを配信中だ。

・SPINEAR
https://spinear.com/shows/innovation-world-era/episodes/from-the-next-era-2020-08-16/

『INNOVATION WORLD ERA』では、各界のイノベーターが週替りでナビゲート。第1週目はライゾマティクスの真鍋大度、第2週目はASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正文、第3週目は女優で創作あーちすとの「のん」、第4週目はクリエイティブディレクター・小橋賢児。放送は毎週日曜日23時から。

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2020年8月23日28時59分まで

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番組情報
INNOVATION WORLD ERA
毎週日曜
23:00-23:54
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