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吉岡里帆が聞く。映画監督・岩井俊二が「2、3才で考えて」今でも創作に役立っていること

吉岡里帆が聞く。映画監督・岩井俊二が「2、3才で考えて」今でも創作に役立っていること

J-WAVEで放送中の番組『UR LIFESTYLE COLLEGE』(ナビゲーター:吉岡里帆)。7月12日(日)のオンエアでは、映画監督・岩井俊二がリモート出演。新作映画を紹介し、幼少期の思い出や自身のライフスタイルについて語った。


■『チィファの手紙』は中国版『ラストレター』として制作

岩井監督は映画『Love Letter』『スワロウテイル』『リリイ・シュシュのすべて』など、数々の名作を夜に送り出してきた。現在はアコースティックユニット・ikireとしても活動し、マルチに活躍の場を広げている。ikireが音楽を手掛け、岩井監督初の中国映画となる『チィファの手紙』は、2020年秋に公開を控えている。



吉岡:『チィファの手紙』は、どのような作品なのでしょうか。
岩井:日本で作った映画『ラストレター』の物語をベースにして、中国版として制作しました。これは、1つのチャレンジなんです。映画というのは、字幕を付ければ各国で観ることはできるじゃないですか。だけど、字幕を付けるだけでは作品を届けきれないなということを、長年活動していくなかで感じていたんですね。なので、自分が実際に他の国に行って、その国の映画として制作すれば、みんなに観てもらえるんじゃないかなと思ったんです。自分の身が続く限り、いろんな国で自分の作品を作り続けていけたらなと考えています。映画がヒットして他の国がリメイクを作るっていうのはよくあることだと思うけれど、映画監督が各国を飛び回るというのは、あまりないと思います(笑)。
吉岡:たしかにそうですね。
岩井:「誰もやっていないこと」っていうのも1つの魅力になっているんですよね。実際にやってみると、そこまで苦労はないんですよ。いろんな国の、新しい人たちと映画を作ることはとても楽しかったですね。いろんな国でいろんな友だちも増えますし、いい経験になりました。活動の1つとして、こうした映画制作を続けていきたいなと思いました。
吉岡:みなさん楽しみに待ちましょう。


■宮城県で暮らした記憶が創作活動に役立っている

岩井監督のものづくりのルーツについて、トークを展開した。地元・宮城県という場所や、幼少期のある気づきが、今での影響を与えているそうだ。

吉岡:幼少期の頃のお話を伺いたいです。最初のものづくりは、どのようなものでしたか?
岩井:自分が子どもの頃って、怪獣世代なんですよね。『ゴジラ』のあと、『ウルトマラン』や『ウルトラセブン』が流れていた時代でした。なので、物心がついた頃には、自身の周りが怪獣だらけでしたね。カタカナを覚えたのは怪獣がきっかけだったんですよ。ひらがなを覚えるよりも早かったんじゃないかな? それぐらい怪獣が好きだったので、創作の怪獣を絵に描いたり、登下校の最中に怪獣と戦うヒーローを空想していました。独り言をつぶやきながら学校に通っていましたよ。
吉岡:(笑)。ご出身が宮城県仙台市とのことですが、映画『ラストレター』は宮城県が舞台でした。そして、NHKの震災復興支援ソング『花は咲く』の歌詞も、岩井さんが手掛けられたそうですね。大人になってから改めて感じる、宮城県の魅力は何ですか?
岩井:離れて故郷を思うと、自分のなかのかなりの部分が「メイドイン宮城」なんだなって感じます(笑)。どんな作品を作っていても、何かしらの強いインスパイアを与え続けてくれる場所だと思います。幼少期、家を出て大きな通りを渡れるようになった日とか、そういう思い出ってけっこう覚えているんですよ。2才か3才のときに、牛乳が苦手な僕に向かって母親が「この間まで母乳を飲んでいたじゃないか」と言ってきたのを覚えています(笑)。
吉岡:(笑)。
岩井:だけど、母乳を飲んでいた記憶は覚えていなかったんですよね。そのとき、「しばらくすると、人は記憶を失うんだ」ということを考えてしまって、すごく怖くなっちゃったんですよ。なので、何かにつけて忘れないようにする努力を欠かさないにしています(笑)。強迫観念に近かったですが、今になってみると莫大な記憶の蓄積になっているので、創作活動をする上で役立っていますね。いろんな形で自分の故郷を“スキャン”しているので、記憶は巨大な財産ですね。
吉岡:その記憶を、作品を通じて何万人もの人たちが感じるんですね。
岩井:ありがたいですね。経験と記憶は僕だけのものなんですけれど、人と分かち合える何かがきっとあるんでしょうね。


■外出自粛の影響で段ボール工作にハマる!

同番組では、ゲストのトークから、よりよい暮らしについて考える。岩井監督の自宅写真を見ながら、生活でいちばん楽しいことを訊いた。

吉岡:お部屋の写真を頂戴しております。
岩井:家の作業場の写真ですね。
吉岡:音楽と密接なのが、写真を見て伝わってきます。
岩井:作業場は、完全防音になっています。自分の創作の居場所で、ほぼここで暮らしていますね(笑)。シナリオや小説を書いたり、音楽を作っています。
吉岡:本がたくさんありますね。どういう本を部屋に置かれているんですか?
岩井:パッと読みたくなるものだけですね。外国の小説をパラっと読んで、英語の勉強をしたりします。短編の小説集が多いですね。
吉岡:そうなんですね。ライフスタイルでいちばん好きなことは何でしょうか?
岩井:最近、手で何かを作ることが好きだってことに気づいたんですよ。なので、宅配で届く段ボールを使って工作をしています(笑)。いろんな仕切りを作って、ケーブル類やイヤホンを仕分けしています。全部段ボールで、ハサミで切って作っていますよ。外出自粛の反動なのかもしれません(笑)。
吉岡:(笑)。自分で作ったら、めちゃくちゃ愛着が湧きそうですね。

ライフスタイルを豊かにするために心がけていることを訊くと……。

岩井:僕にとって、作るっていうことが、人生でいちばん好きなんですね。映画に限った話ではなくて、何かを作ってみると、必ず出会いや発見が見つかるんですよ。その出会いが映画のアイディアに繋がったりもするので、常に何かを作っている生活を心がけていますね。


さまざまな作品を手掛ける岩井の最新情報は、公式Twitterまで。

『UR LIFESTYLE COLLEGE』では、心地よい音楽とともに、より良いライフスタイルを考える。オンエアは毎週日曜18時から。

【この記事の放送回をradikoで聴く】(2020年7月19日28時59分まで)
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

【番組情報】
番組名:『UR LIFESTYLE COLLEGE』
放送日時:毎週日曜 18時00分-18時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/lscollege/

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