6月1日から6月7日までの1週間は、HIV検査普及週間だ。これは2007年以降、厚生労働省が行っているもので、毎年普及啓発イベントを実施している。
J-WAVEの番組『JAM THE WORLD』のワンコーナー「CASE FILE」では6月1日(月)~6月4日(木)、このHIV検査普及週間やHIVについて、HIV・エイズの診療医で公衆衛生、健康づくりの専門家、ヘルスプロモーション研究センターの代表でもある岩室紳也さんが解説。
HIVに感染、エイズを発症するとどうなるのか? ここでは、1日、2日のオンエアをお届けしよう。
■HIV検査普及週間とは?
HIVとは、ヒト免疫不全ウイルス(通称・エイズウイルス)のこと。感染後に治療をしないと免疫力が低下し、病気にかかりやすくなる。その病気が23の合併症に当てはまると、エイズが発症したと診断される。
HIV感染者は、年間1300人前後、増えているという。1日に約4人の割合だ。しかし、感染しても自覚症状がないため、検査をしようという気にならない人が多いのが現状だ。そのため、HIV検査普及週間を設けて検査を呼びかけている。
HIV検査普及週間が6月1日に始まるのは、12月1日に行われるHIVやエイズへの理解を進める取り組み「世界エイズデー」の半年後だから。世界エイズデーの半年後に、再びHIVへの意識を促すことが目的だ。
岩室:この検査週間は世界的には実施されていません。そのわけは、検査がなかなか受けられないためです。新型コロナウイルス感染症の検査もそうですが、かなり先進的な技術が必要なんです。先進国ではないとその環境が整わないため、まずは日本で実施するかたちになっています。もちろん他にも行われている地域はあります。
■3割は、エイズを発症してから感染がわかる
現在、日本ではHIV感染者の8割以上、もしくは9割以上が男性同性間の性的接触が原因だと考えられている。その他に薬物の回し打ちや、稀に輸血で感染する人もいる。
HIVは、感染しても10年くらい症状が出ないと言われているため、日本において症状が出る前に検査を受けて感染がわかる人は全体の7割ほどだ。残りの3割はエイズに発病してから見つかることが多くなってきていることが問題だという。
岩室:エイズの症状が出る前にできるだけ早く検査を受けてほしいのでHIV検査普及週間が行われています。検査自体はかなり確立され、それに対応する保健所に行けば、基本的に対応できないということはありません。ただ、最近は新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の影響で関心がエイズに向けられにくくなり、HIVの検査を受ける人が減っている印象があります。
■HIVウイルスに感染するとどうなるのか?
HIVウイルスは、症状が出なくても、自然に消えてしまうということはない。
岩室:よく「HIVに感染するとどのような症状が出ますか?」と言われます。たとえば、新型コロナだと風邪のような症状や発熱、味覚が失われるなど言われていますが、エイズウイルスは基本的に症状がないんですね。反対に、エイズが発病すると症状があまりにも多い。たとえば、肺炎になれば咳や熱が出るし、女性だと子宮頸がんになることもあります。そのため「この症状があるからエイズの疑いがある」とは言えません。ちょっとでも心配なら検査を受ける、これしかないんですね。
HIV感染後、約10年の潜伏期間を経てエイズの状態になると言われるが、早い人は1年ほどで発症することもある。
岩室:これは新型コロナで無症状の人の人もいれば、重症化して亡くなってしまう人もいることと同様だと理解しています。30年間ほどHIVウイルスを持っていてもエイズにならない人もいます。しかし、それは非常にまれなこと。最近ではよい治療薬も開発されているので、今は感染したとわかったら、すぐにエイズにならないようにHIVを抑え込む薬を飲んでもらう。そういう時代になっています。
■HIVに「感染しやすい性行為」と「感染しにくい性行為」がある
HIVの一番多い感染経路はコンドームを使わない性行為だ。しかし、岩室さんは「感染しやすい性行為」と「感染しにくい性行為」があると話す。
岩室:男女で性行為をする場合は、男から女に比べ、女から男のほうが10分の1くらい感染しやすいと言われています。男性同士の性行為では、射精した側は意外と感染しにくく、精液を受ける側が感染しやすい。他の性行為として「ディープキスはどうか?」と言われることもありますが、唾液に含まれるエイズウイルスはわずかで、その程度では感染しません。今ほとんど報道されていませんが、新型コロナは唾液の中にいるので、パートナーが持っていればキス程度でも高い確率で感染してしまう。今キスで心配するのはHIVやエイズではなく、むしろ新型コロナのほうですね。
HIVやエイズの正しい知識を持ち、少しでも気になるようなら早めにHIVの検査をする。その意識を持つことが重要だ。
『JAM THE WORLD』のワンコーナー「CASE FILE」では、時代を映すニュースなキーワードを、リスナーの記憶にファイリングする。放送は月曜~木曜の19時25分頃から。
【岩室さんによる解説1回目】2020年6月8日28時59分まで
【岩室さんによる解説2回目】2020年6月9日28時59分まで
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/
J-WAVEの番組『JAM THE WORLD』のワンコーナー「CASE FILE」では6月1日(月)~6月4日(木)、このHIV検査普及週間やHIVについて、HIV・エイズの診療医で公衆衛生、健康づくりの専門家、ヘルスプロモーション研究センターの代表でもある岩室紳也さんが解説。
HIVに感染、エイズを発症するとどうなるのか? ここでは、1日、2日のオンエアをお届けしよう。
■HIV検査普及週間とは?
HIVとは、ヒト免疫不全ウイルス(通称・エイズウイルス)のこと。感染後に治療をしないと免疫力が低下し、病気にかかりやすくなる。その病気が23の合併症に当てはまると、エイズが発症したと診断される。
HIV感染者は、年間1300人前後、増えているという。1日に約4人の割合だ。しかし、感染しても自覚症状がないため、検査をしようという気にならない人が多いのが現状だ。そのため、HIV検査普及週間を設けて検査を呼びかけている。
HIV検査普及週間が6月1日に始まるのは、12月1日に行われるHIVやエイズへの理解を進める取り組み「世界エイズデー」の半年後だから。世界エイズデーの半年後に、再びHIVへの意識を促すことが目的だ。
岩室:この検査週間は世界的には実施されていません。そのわけは、検査がなかなか受けられないためです。新型コロナウイルス感染症の検査もそうですが、かなり先進的な技術が必要なんです。先進国ではないとその環境が整わないため、まずは日本で実施するかたちになっています。もちろん他にも行われている地域はあります。
■3割は、エイズを発症してから感染がわかる
現在、日本ではHIV感染者の8割以上、もしくは9割以上が男性同性間の性的接触が原因だと考えられている。その他に薬物の回し打ちや、稀に輸血で感染する人もいる。
HIVは、感染しても10年くらい症状が出ないと言われているため、日本において症状が出る前に検査を受けて感染がわかる人は全体の7割ほどだ。残りの3割はエイズに発病してから見つかることが多くなってきていることが問題だという。
岩室:エイズの症状が出る前にできるだけ早く検査を受けてほしいのでHIV検査普及週間が行われています。検査自体はかなり確立され、それに対応する保健所に行けば、基本的に対応できないということはありません。ただ、最近は新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の影響で関心がエイズに向けられにくくなり、HIVの検査を受ける人が減っている印象があります。
■HIVウイルスに感染するとどうなるのか?
HIVウイルスは、症状が出なくても、自然に消えてしまうということはない。
岩室:よく「HIVに感染するとどのような症状が出ますか?」と言われます。たとえば、新型コロナだと風邪のような症状や発熱、味覚が失われるなど言われていますが、エイズウイルスは基本的に症状がないんですね。反対に、エイズが発病すると症状があまりにも多い。たとえば、肺炎になれば咳や熱が出るし、女性だと子宮頸がんになることもあります。そのため「この症状があるからエイズの疑いがある」とは言えません。ちょっとでも心配なら検査を受ける、これしかないんですね。
HIV感染後、約10年の潜伏期間を経てエイズの状態になると言われるが、早い人は1年ほどで発症することもある。
岩室:これは新型コロナで無症状の人の人もいれば、重症化して亡くなってしまう人もいることと同様だと理解しています。30年間ほどHIVウイルスを持っていてもエイズにならない人もいます。しかし、それは非常にまれなこと。最近ではよい治療薬も開発されているので、今は感染したとわかったら、すぐにエイズにならないようにHIVを抑え込む薬を飲んでもらう。そういう時代になっています。
■HIVに「感染しやすい性行為」と「感染しにくい性行為」がある
HIVの一番多い感染経路はコンドームを使わない性行為だ。しかし、岩室さんは「感染しやすい性行為」と「感染しにくい性行為」があると話す。
岩室:男女で性行為をする場合は、男から女に比べ、女から男のほうが10分の1くらい感染しやすいと言われています。男性同士の性行為では、射精した側は意外と感染しにくく、精液を受ける側が感染しやすい。他の性行為として「ディープキスはどうか?」と言われることもありますが、唾液に含まれるエイズウイルスはわずかで、その程度では感染しません。今ほとんど報道されていませんが、新型コロナは唾液の中にいるので、パートナーが持っていればキス程度でも高い確率で感染してしまう。今キスで心配するのはHIVやエイズではなく、むしろ新型コロナのほうですね。
HIVやエイズの正しい知識を持ち、少しでも気になるようなら早めにHIVの検査をする。その意識を持つことが重要だ。
『JAM THE WORLD』のワンコーナー「CASE FILE」では、時代を映すニュースなキーワードを、リスナーの記憶にファイリングする。放送は月曜~木曜の19時25分頃から。
【岩室さんによる解説1回目】2020年6月8日28時59分まで
【岩室さんによる解説2回目】2020年6月9日28時59分まで
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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/
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