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小林武史×小橋賢児が話し合う、サステイナブルな社会のデザイン 必要なのは「利他のセンス」

小林武史×小橋賢児が話し合う、サステイナブルな社会のデザイン 必要なのは「利他のセンス」

クリエイティブディレクター・小橋賢児が、音楽プロデューサーの小林武史と対談。「循環する社会」をキーワードに「サステナブル(持続可能)な社会をどうデザインしていくのか?」を語り合った。

小橋と小林がトークを展開したのは、4月26日(日)放送のJ-WAVEのPodcast連動プログラム『INNOVATION WORLD ERA』のワンコーナー「FROM THE NEXT ERA」。小橋賢児は同番組の第四週目のナビゲーターを務めている。

小橋と小林の出会いは、映画『スワロウテイル』(1996)。小橋が俳優として出演し、小林が音楽を担当した。それ以来、ふたりは長年に渡って関係を築いており、小林が昨年秋に千葉県木更津市にオープンしたサステナブルファーム&パーク「KURKKU FIELDS/クルックフィールズ」に足を運ぶなど親交は深い。


■現代アートで社会のなかのマインドの循環を作る

この日は新型コロナウイルスの感染防止のため、小林はリモートで出演。小林は、小橋のイベントプロデューサーとしての活躍について「面白い生き方をしているな」という印象を抱いていたという。一方で小橋は、小林のように音楽家でありながら環境問題にも熱心に取り組む日本人はあまりいないと語り、「先頭をきって生きているような気がします」とコメント。小林は非営利団体「ap bank」(※)の立ち上げといった、現在に至るまでの活動の意義について語った。

※ap bankとは、環境プロジェクトなどへの融資をはじめ、持続可能な社会を創るためのさまざまな活動を行う組織。小林武史とMr. Childrenの櫻井和弘、坂本龍一の3名が拠出した資金をもとに2003年に設立された。http://www.apbank.jp/about/

小林:環境のサステナビリティということを考えて「ap bank fes」を2005年に立ち上げたとき、「ap bank」として融資をするだけではなくて、自分たちの実践の場としてやってみたいという仲間の声を聞いて作ったのが(レストランやカフェ、バー、フードストアを展開する)「kurkku」でした。だけど、そのあとにリーマンショックという世界的な金融危機がきて、僕がやっているオーガニックや、サステナビリティという環境の問題への意識にブレーキがかかったなという印象でした。「ap bank fes」で食やゴミの問題といったことをやるなかで、千葉県の木更津のある場所をつないでくれた人たちがいました。そこに縁があって農業法人を作れるということになって、10年前に作ったのが今の「KURKKU FIELDS」の始まりです。

去年11月にオープンした体験型ファーム「KURKKU FIELDS」。ここではファームやカフェに加えて、現代アーティストによるアート作品も展示。小橋は、このスタイルが「日本では今まで見られなかった」と話す。

導入しているアートのなかには草間彌生のものも。草間との交流が始まったきっかけは、2011年の東北の震災後に開催した「Reborn-Art Festival」。アートと食と音楽をテーマにしたフェスは成功を収め、草間の作品がキーになったという。そこで2019年の「Reborn-Art Festival」で展示した草間の作品を「KURKKU FIELDS」に持ち込んだ。それからはフランスのアーティスト、カミーユ・アンロの作品などを設置。現在は日本のアーティストである名和晃平と作品展示について話し合いをしているという。

小林:アートが持っているメッセージの発信の仕方は他になかなかないというか、今はやっぱり音楽もややもすると、エンターテイメントとして、聴いてくれる人の数にどうしても寄っていかないといけないということがあります。現代アートはヨーロッパのコングロマリットと言われるようなファッションブランドなどが価値を操作している側面もありますが、ポピュリズムというか、みんなが集まるから価値が上がるという枠からちょっと出ているんですよね。だから未来になって、今の体制で果たしていいのか、ということに、ある種柔らかく優しくマッサージするだけじゃなくて、お灸や針みたいなものを刺して、社会のなかのマインドの循環をちゃんと作っていくという、現代アートだけが持っている立ち位置があると思うんです。


■「GREAT FARMERS to TABLE」で食文化を応援

小林は現在、新型コロナウイルスの影響を受けて出荷先をなくした良質な食生産者をシェフが推薦し、消費者とマッチングさせるサービスをポータルサイト「GREAT FARMERS to TABLE」で行っている。「優秀な、才能のあるシェフたちが作っているレストランが、1つのハブになっていた」と話す小林は、「経済の合理性から生まれるものではなく、さまざまなセンスや勘といった、豊かな感性から生まれるものだった」と続け、現在の自粛ムードでその流れが途切れてしまうことを懸念する。

小林:本当にすばらしいものを作っているのに活かせない方が多くなっているという由々しき事態だと思います。ニュース等では、スーパーマーケットがパンクするとか、いわゆる大手の流通のところが「足りない、回らない」と言っているのに、個の力でつながっていた食文化というのは寸断されている。だからこそ、それをピックアップしてシェフの声を挙げて、ポータルサイトを作っていく。どこかに食を全部集めて出荷するところまでやれるかどうか、我々は今、検討をしています。


■小橋と小林が考える、新型コロナウイルスが社会に与えた影響

世界中で新型コロナウイルスの感染拡大が広がっている。小橋は、その渦中で価値観が大きく変わっていく「パラダイムシフト」が今まさに起きていると話す。わずか一か月や二か月の営業自粛で、長年やってきた飲食店がつぶれてしまう可能性がある現状について「どこかで資本主義のなかの利己主義みたいなことになってきている部分がある」と指摘した。

「小林さんを見ていると、シンプルに『格好いいな』『楽しいな』『これが新しい正しい生き方じゃないか』と思えたんです」と、リスペクトを送る小橋は「コロナの現象を客観的にどう見ているか」と質問を投げかけた。

小林:日銀はお金をいっぱい刷れるわけですから、今は本当に苦しんでいる人たちに、どんどんとお金を与えてもいいんじゃないか。それができないのは、株の価値とかお金の価値を守らないといけないという力が強いんだと思います。でも、実際に僕らがテレワークでやっていると、そのなかで見えてくる自分たちの範囲が、お金だけに左右されているものじゃないということに気づけたりする。実際に大気がきれいになっていて、僕らはサステナビリティのなかで気候危機やCO2の問題というものを考えないといけないんだけど、それに関しては今、どこかでブレーキがかかっていると思います。


■大事なのは「利他のセンス」を身に着けていくこと

小林は人間という種について「数百年前から『個の自由』というものを優先するようになった初めての種だという話がある」と解説。このままいけばユートピアとは真逆のディストピアになるのではないか、というムードが若者のなかにあると指摘して、利他と利己をつないでいくことが重要だと語った。

小林:利他のセンス、感覚を僕らがいろいろなところで身につけていくということが、すごく大事なことだと思っています。実は「ap bank」でそういう活動を始めようと思っていました。それは櫻井(和寿)くんとも話をしていて、地球感覚で自分たちを見てみるとか、生き物として生きているけど生かされているんだという感覚。そういうことを楽しんでやれるような社会づくりというのに向かって行かなきゃだめだと思っています。

最後に小林は、「利他なセンスを取り入れよう」とリスナーに訴えかけた。

小林:利他と利己というのは、循環していることだと思っています。それはきっと、言葉で正解のように書いてあるというものでもない気がしていて……言葉で考えることは大事なことだけど、やっぱり近視眼になって思考することをやめてしまうと行き詰ってしまうでしょ? あきらめてしまう。やっぱりあきらめないで、いろいろなことを考えてやっていく。それは手探りのようなんだけど、すごく面白いことだと思うから、「その感覚を楽しもうよ」という感じですね。利己はみんな持っているから、利他のセンスを楽しんで取り入れていきましょう。

「KURKKU FIELDS」は現在、新型コロナウイルスの感染防止対策で、営業形態が変更されている。詳しい情報はオフィシャルウェブサイトをチェック。
https://kurkkufields.jp/

デジタル音声コンテンツ配信サービス 「SPINEAR」の他、Apple PodcastsやSpotifyなど各ポッドキャストサービスでは、今回のオンエアのノーカット版を配信中。濃密なトークを堪能してみては。

SPINEAR: https://spinear.com/shows/innovation-world-era/

同番組は、各界のイノベーターが週替りでナビゲートする。第1週目はライゾマティクスの真鍋大度、第2週目はASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正文、第3週目は女優で創作あーちすとの「のん」、第4週目はクリエイティブディレクター・小橋賢児。

【この記事の放送回をradikoで聴く】(2020年5月3日28時59分まで)
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

【番組情報】
番組名:『INNOVATION WORLD ERA』
放送日時:日曜 23:00-23:54/SPINEAR、Spotify、YouTubeでも配信
オフィシャルサイト: https://www.spinear.com/shows/innovation-world-era/

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